〇外国株
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02/06 09:25
【米国株決算速報】アーム・ホールディングス (ARM):受注がやや軟調、株価は-7.62%(時間外取引)
決算概要:2024年10-12月期(2025.3期第3四半期) EPS実績は市場予想を上回った 米国時間2月5日引け後に、半導体知財(IP)のリーダー企業で、高性能CPUを設計・開発し外部にライセンス供与する英アーム・ホールディングス(ARM US)が2024年10-12月期(2025.3期第3四半期)決算を発表しました。売上高は市場予想を3.8%上回り、EPSは市場予想を14.7%上回りました。 会社の2025年1-3月期見通しは、市場予想を売上高は上回った一方で、EPSはやや下回りました。 先端製品の好調継続、ライセンス受注額の成長率がやや軟調 会社は、エヌビディア(NVDA US)の製品などに採用されているCPUアーキテクチャー「Armv9」や、AI向け次世代プラットフォーム「CSS」への需要が引き続き旺盛だったとコメントしました。 一方で、ライセンス事業の受注額にあたる年間契約額(ACV)は前年同期比+9%と、前四半期の同+13%や前年同期の同+15%から成長率が鈍化しました(会社は複数の大規模契約が進行中と説明)。 売上高とEPSの推移 株価は時間外取引で下落 アーム・ホールディングスの株価は、前日比6.82%高で引けた後、決算発表を受けて時間外取引では、終値比7.62%安の160.06ドルで推移しています(NY時間17:27)。 業績に対する期待値が高く株価が年初から5日終値までに40%上昇していたことに加え、受注の成長率がやや鈍化し、2025年1-3月期EPS見通しが市場予想を大きく上回らなかったことなどに反応していると考えられます。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は非米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2025年2月5日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2024年10-12月期(2024/12)。2025年1-3月期の白丸は会社見通し中間値。灰色はLSEG集計による市場予想平均。2025年1-3月期以降の予想は2025年2月4日時点。(出所)会社発表、LSEGより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・ 竹綱 宏行) ※こちらの銘柄は、今期から決算速報を開始しました。 ご投資にあたっての注意点
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02/05 08:58
【米国株決算速報】アルファベット(GOOGL):クラウドの実績軟調も設備投資強化へ、株価は-7.94%(時間外取引)
決算概要:2024年10-12月期(2024.12期第4四半期) EPS実績は市場予想を上回った 米国時間2月4日引け後に、「グーグル」や「ユーチューブ」といったインターネット広告事業やAI・クラウド事業などを行うアルファベット(GOOGL US)が2024年10-12月期(2024.12期第4四半期)決算を発表しました。売上高は市場予想を0.1%下回り、EPSは市場予想を1.0%上回りました。 クラウド部門の実績軟調も、設備投資強化へ クラウド部門の売上高実績は、市場予想を下回りました。AIによるクラウド部門収益への貢献が市場予想よりも遅れたためと考えられます。一方で、会社はAIへの顧客からの需要は強いとコメントしました。 検索広告事業ではAIによる要約機能や画像の一部についての検索などの新機能がユーザーの満足度向上につながり、また、動画配信のYouTube 事業も引き続き堅調だったと会社はコメントしました。 会社が示した2025年12月期通期の設備投資額の見通しは、市場予想を大きく上回りました。会社は、AIによる「今後の機会に自信を持っており、その進展を加速させるため」と説明しました。 売上高とEPSの推移 株価は時間外取引で下落 アルファベットの株価(A株)は、前日比2.56%高で引けた後、決算発表を受けて時間外取引では、終値比7.94%安の190.00ドルで推移しています(NY時間17:17)。クラウド部門のAI関連の収益化が遅れる状況下で巨額の設備投資を実施することによる短期的な収益への不確実性を、一部の市場参加者が懸念したためと考えられます。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2025年2月4日時点。株価はA株。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2024年10-12月期(2024/12)。灰色はLSEG集計による市場予想平均。2025年1-3月期以降の予想は2025年2月3日時点。(出所)会社発表、LSEGより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・ 竹綱 宏行) ご投資にあたっての注意点
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02/01 19:00
【来週の米国株】DeepSeekショックで変わったもの、変わらないもの/年内「利下げゼロ」へ(2/1)
■今週:「DeepSeekショック」の影響は限定的 中国のAIスタートアップDeepSeekが発表した生成AIソフトウェアである「DeepSeek-R1」がApp Storeのダウンロード数ランキングでChatGPTを超えたことで大きな注目を集めました。ChatGPTより効率的との評価もある同アプリケーションに関心が集まったことで、半導体需要の鈍化が懸念されたエヌビディア(NVDA)をはじめとしたテクノロジー株が下落し相場の重石となりました。 ただし、週を通してみればS&P500は小幅反落、NYダウは上昇と一部のハイテク株以外への影響は限定的だったと言えます。今後も引き続き、株式市場の方向感はトランプ新大統領の政策とFRB(米連邦準備理事会)の金融政策が左右していると言えそうです。 ■来週①DeepSeekショックと今後の注目点 DeepSeekの特徴は「低コスト・低電力」 DeepSeekが市場の注目を集めたのは、その性能もさることながら低コスト・低電力消費といった特徴にあります。DeepSeekが関心を集める前の株式市場では、生成AIの普及には半導体生産や発電能力増強への投資が必須との見立てから、電力株や電線株、また省エネを実現するための電子部品にまで広く恩恵が及ぶと考えられていました。 ところが、DeepSeekでは検索内容に応じ最適の範囲のデータしか使用しないアルゴリズム(典型的には、日本国内の話題であれば日本語で書かれたデータのみを活用する等)を組み入れることで、演算や電力消費を抑えることができるとされ、産業の裾野の広がりに対する期待が後退したと言えます。 半導体にはやや向かい風だが川下には恩恵も 半導体銘柄への見方はまだ定まっていません。低コストで運用できることで最先端半導体への需要が低下するとの見方が強まっていますが、データセンターなどへの投資額自体は変わらず性能が向上し利便性が高まる(企業目線で見れば売上高が高まる)とのシナリオも考えられます。 また、生成AIを利用したソフトウェアを顧客に提供する企業にとってみれば、コスト低下や性能向上は業績に恩恵があると言えます。 ”生成AI関連”株価にも明暗 今まで生成AI関連と見做されてきた銘柄の中でも明暗が分かれたのが今回の市場反応の特徴であったと言えます。クリーンエネルギー企業のコンステレーションエナジー(CEG)は前週末比-11.2%、データセンター向け半導体メーカーではエヌビディアが同-12.6%、AMDは同-3.2%と下落する一方、生成AI機能を搭載した顧客管理システムソフトウェアを提供するセールスフォースは同+2.9%と上昇しました。 川上企業への強気材料も 先端半導体製造装置の最大手であるASMLホールディング(オランダ企業で米国預託証券のティッカーコードはASML)は29日(水)に行われた2024年10-12月期決算発表の際に、経営陣がDeepSeekのような技術は製造装置業界にも追い風との見方を示しました。また、メタ・プラットフォームズ(META)は同四半期決算発表において、2025年12月期通期の会社の設備投資額見通しが前年度比で約6割増と市場予想を23%上回りました。会社は設備投資が中長期的な「戦略的アドバンテージ」につながる、と説明しています。ここまでのところ、生成AI産業のサプライチェーンの川上~川中にあたる企業が強気な見通しを変えていないことは、相場の下支えになっているとみられます。 来週の注目点はアマゾン、グーグル決算 とはいえ、まだDeepSeekが市場の関心を集めて日が浅く、ハイパースケーラー(大規模データセンターを持つ企業群)の決算発表も続くことから、同投資テーマの先行きは予断を許しません。来週のアルファベット(GOOGL/4日)やアマゾン・ドットコム(AMZN/6日)の決算発表では、メタ・プラットフォームズと同様に強気の設備投資を続けるかに注目が集まります。 仮に、今後も生成AIを効率化・適正化する方向での開発競争が続くとすれば、企業は生成AI向けの大規模なデータセンター投資を躊躇する可能性もあり、同関連分野ではソフトウェアなど川下(エンドユーザー向け)の企業の方が見通しが立てやすいとも想定されます。今後の状況をよく確認していきたいと考えます。 ■来週②本当にFOMCは「無風」だったか 「据え置き」かつ利下げに慎重なトーン 1月FOMCの結果が29日(水)に発表され、大方の予想通り政策金利は据え置かれました。声明文はタカ派的(=追加緩和に慎重)で、過去のインフレ減速方向と労働市場の鎮静化への言及が削除されました。また、結果発表後に行われたパウエルFRB議長の記者会見では、ハト派的(緩和に前向き)なトーンが強かった一方で次回3月FOMCでの利下げの可能性には距離を置く内容でした。 野村予想は「2025年中利下げゼロ」に 野村ではこれまで2025年3月FOMCでの0.25%ポイントの利下げを予想していましたが、その可能性はなくなったと判断し、2025年末まで政策金利は据え置かれるとの予想に修正しています。野村では今後数ヶ月でトランプ大統領による関税政策の影響が実現し始めインフレが進展することを前提に、年内は利下げの機会が限られると考えています。関税引き上げによるインフレへの影響が一巡すると見込まれる2026年には利下げが再開され、同年6月から計3回の利下げが実施されると予想しています。 実データの重要性は変わらず、ISMと雇用統計に注目 1月FOMCは政策金利見通しが示される会合ではなく、FOMCが想定する新しい政策金利見通しは明示的には示されていません。市場参加者は引き続き、経済指標やFRB高官の発言等を通して、今後の金融政策を探っていくとみられます。来週の経済指標では、1月ISM製造業・サービス業景気指数(3・5日)には1月雇用統計(7日)等、重要指標が発表されます。 (投資情報部 デジタル・コンテンツ課) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール
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01/31 09:17
【米国株決算】アップル(AAPL):AI機能への需要は強い、株価は+3.26%(時間外取引)
決算概要:2024年10-12月期(2025.9期第1四半期) EPS実績は市場予想を上回った 米国時間1月30日引け後に、モバイル端末の製造販売とAI・クラウドサービス事業を行うアップル(AAPL US)が2024年10-12月期(2025.9期第1四半期)決算を発表しました。売上高は市場予想を0.1%上回り、EPSは市場予想を2.2%上回りました。 会社が示した2025年1-3月期の売上高見通しは為替の悪影響を除けば、市場予想を上回りました。 AI機能の規制で明暗 中華圏(中国本土、香港、台湾)の売上高は、前年同月比で11%減と軟調でした。決算発表前に中国でのiPhone販売の軟調が報道されていましたが、会社は中国でApple IntelligenceやChatGPTなどのAI機能が規制により利用できないことや消費の落ち込みが原因とコメントしました。 一方で、中国以外の地域は年末商戦での需要が強く堅調で、会社は2025年4月以降にApple Intelligenceが多くの言語で利用可能となることに期待を示しました。中国とその他地域の差は、消費者のAI機能への需要の高さを浮き彫りにしたと考えられます。 売上高とEPSの推移 株価は時間外取引で上昇 アップルの株価は、前日比0.74%安で引けた後、決算発表後の時間外取引では、終値比3.26%高の245.34ドルで推移しています(NY時間17:32)。順調な売上高見通しに反応したと考えられます。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2025年1月30日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2024年10-12月期(2024/12)。灰色はLSEG集計による市場予想平均。2025年1-3月期以降の予想は2025年1月29日時点。(出所)会社発表、LSEGより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・竹綱 宏行) ご投資にあたっての注意点
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01/30 11:30
【米国株決算速報】マイクロソフト(MSFT):クラウド事業の売上高が予想に届かず、株価は-5.79%(時間外取引)
決算概要:2024年10-12月期(2025.6期第2四半期) EPS実績は市場予想を上回った 米国時間1月29日引け後に、「Office」や「ウインドウズ」、クラウドソフトの「Azure(アジュール)」などで知られるソフトウェア企業であるマイクロソフト(MSFT US)が2024年10-12月期(2025.6期第2四半期)決算を発表しました。売上高は市場予想を1.2%上回り、EPSは市場予想を3.8%上回りました。ただし、クラウドサービス「Azure(アジュール)」を含むクラウド部門の売上高が市場予想に届きませんでした。 クラウド部門の売上高成長見通下限が24年10-12月期実績と一致 会社は、売上高およびEPSが前年同期比で二桁の成長を達成したことについて、AIインフラへの継続的な投資が成長に貢献したとコメントしました。クラウドとAI製品への高い需要が、今後も大口顧客との新規契約やそれによる業績成長を牽引するとコメントしました。 一方で、2025年1-3月期の部門別売上高見通し中間値の合計は、市場予想を下回りました。そのうちクラウド部門のアジュール及びその他クラウドサービスの為替調整後の売上高について、前年同期比31~32%成長との見通しを示しました(市場予想は同33%成長)。 売上高とEPSの推移 株価は時間外取引で下落 マイクロソフトの株価は、前日比1.09%安で引けた後、決算発表を受けて時間外取引では、終値比5.79%安の416.74ドルで推移しています(NY時間18:15)。クラウド部門の売上高が市場予想に届かず、また、2025年1-3月期見通しが市場予想を下回ったことも嫌気されたと考えられます。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2025年1月29日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2024年10-12月期(2024/12)。2025年1-3月期の売上高の白丸は会社見通し中間値。灰色はLSEG集計による市場予想平均。2025年1-3月期以降の予想は2025年1月28日時点。(出所)会社発表、LSEGより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・引網 喬子) ご投資にあたっての注意点
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01/30 07:52
【米国株決算速報】メタ・プラットフォームズ(META):AI強化で設備投資額は大きく拡大へ、株価は+1.11%(時間外取引)
決算概要:2024年10-12月期(2024.12期第4四半期) EPS実績は市場予想を上回った 米国時間1月29日引け後に、「フェイスブック」や「インスタグラム」などSNS広告事業を行うメタ・プラットフォームズ(META US)が2024年10-12月期(2024.12期第4四半期)決算を発表しました。売上高は市場予想を2.9%上回り、EPSは市場予想を18.4%上回りました。 会社の2025年1-3月期売上高見通しは市場予想を下回りました。 広告単価・ユーザー数堅調、設備投資額は6割増へ 広告単価が前年同期比で14%上昇と前年同期や前四半期の伸びを上回り、SNSのユーザー数の増加が継続するなど、主力のSNS広告事業が堅調でした。AIによる自動広告が貢献しました。 2025年12月期通期の会社の設備投資額見通しは、前年度比で約6割増で、市場予想を23%上回りました。会社は設備投資が中長期的な「戦略的アドバンテージ」につながる、と説明しました。中国の生成AIアプリDeepSeekについて、会社のオープンソースモデルであるLlama3が利用されていることを念頭に、知的財産は守られている、とコメントしました。 売上高とEPSの推移 株価は時間外取引で上昇 メタ・プラットフォームズの株価は、前日比0.32%高で引けた後、決算発表を受けて時間外取引では、終値比1.11%高の684.01ドルで推移しています(NY時間18:14)。実績が好調な一方、巨額の設備投資の回収への不透明性から株価は小幅上昇にとどまったと考えられます。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2025年1月29日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2024年10-12月期(2024/12)。2025年1-3月期の売上高の白丸は会社見通し中間値。灰色はLSEG集計による市場予想平均。2025年1-3月期以降の予想は2025年1月28日時点。(出所)会社発表、LSEGより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・竹綱 宏行) ご投資にあたっての注意点
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01/30 07:43
【米国株決算速報】テスラ(TSLA):サイバーキャブは2026年に量産へ、株価は+4.57%(時間外取引)
決算概要:2024年10-12月期(2024.12期第4四半期) EPS実績は市場予想を下回った 米国時間1月29日引け後に、EVの製造販売や太陽光発電事業を行うテスラ(TSLA US)が2024年10-12月期(2024.12期第4四半期)決算を発表しました。売上高は市場予想を5.7%下回り、EPSは市場予想を4.3%下回りました。 値下げや研究開発費が重石、新型車の量産計画をアップデート 自動車部門については、車両の平均販売価格が市場予想を下回りました。利益率についても車両の値下げや、AIやその他の研究開発費が利益率に悪影響を及ぼしました。 会社は、新型車の量産計画について、低価格モデルの量産を従来の工法と製造ラインを用いて2025年前半に開始すると改めて表明しました。また、自動運転タクシー「サイバーキャブ」の量産を新しい「箱なし (unboxed)」工法で2026年に開始するとの見通しを示しました。 売上高とEPSの推移 株価は時間外取引で上昇 テスラの株価は、前日比2.26%安で引けた後、決算発表を受けて時間外取引では、終値比4.57%高の406.88ドルで推移しています(NY時間16:52)。新型モデルYの発売前に従来のモデルYの値引きが報じられるなど、株価は決算前にある程度の値引きによる悪影響を織り込んでいたと考えられます。また、サイバーキャブの量産の目途が立ったことを市場は歓迎したと考えられます。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は非米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2025年1月29日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2024年10-12月期(2024/12)。灰色はLSEG集計による市場予想平均。2025年1-3月期以降の予想は2025年1月28日時点。(出所)会社発表、LSEGより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・竹綱 宏行) ご投資にあたっての注意点
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01/25 19:00
【来週の米国株】テスラなど決算発表/FOMCはトランプ相場に乱気流?(1/25)
※執筆時点 日本時間1月24日(金)12:00 今週の振り返り ※1月17日(金)- 1月23日(木)3営業日(20日はキング牧師記念日で休場)の騰落 20日(月)にトランプ新大統領の就任式が開かれました。就任初日にメキシコ、カナダに対する25%の関税等、関税発動に関する大統領令に署名するのではとの警戒感がありましたが、就任演説や、当日公表された「米国第一の優先課題」は、2024年の大統領・議会選挙で繰り返し主張されてきた公約に沿った内容に留まりました。市場には安心感が広がり、米国株の主要3指数は揃って上昇しました。 ソフトバンクグループとオラクルおよびオープンAIによる米国内への4年間で5000億ドルのAI関連投資の発表、ダボス会議でのトランプ新大統領によるOPEC(石油輸出国機構)に対する原油価格の引き下げ要請等、ポジティブなニュースフローが週を通して株式市場への追い風となりました。 来週①:FOMCはリスクか? 23日(木)-24日(金)に開催された日銀会合では0.25%ポイントの利上げが決定されましたが、利上げは事前に広く予想されていたことから株価への影響は比較的小さなものにとどまりました。一方、来週29日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)には注意が必要です。S&P500の向こう数週間の期日別オプションプレミアムを見ると、今週中は下方リスクを警戒している模様です。来週のFOMCでは金利据え置きがコンセンサスであることもあり、来週は警戒度が低くなっています。このため予想外に利下げが実施されたり、今後の利下げパスに関して声明や議長会見で想定以上にタカ派的(利下げに消極的)もしくはハト派的(利下げに積極的)な発言が聞かれた場合には市場にサプライズと受け止められる可能性があります。 据え置きの場合でも声明次第で株高/株安に 2018年以降のFOMCにおいて、政策金利据え置きの際の米国株価指数の反応を見ると、声明がハト派的な際の株高と、タカ派的な際の株安といったコントラストが目立っています。 注: 2018年以降のFOMCで政策金利が据え置かれた34回中、声明文のトーンがタカ派的であった11回、ハト派的であった11回、中立的であった12回に分けて株価指数の平均的な動きを算出。ハト派・タカ派・中立派はブルームバーグのLLM(大規模言語モデル)が判定。出所: ブルームバーグ、野村證券市場戦略リサーチ部より野村投資情報部作成 FOMC声明文で、足元の堅調な景気指標が強調されるのか、それとも2024年12月CPI(消費者物価指数)の落ち着きや先行きのインフレ抑制見通しが強調されるか、そして今後の利下げ停止の可能性などが焦点となりそうです。 25年は24年よりもややハト派的か 注)野村セキュリティーズ・インターナショナルの政策姿勢についての評価。「FRB」は本部理事、地名は地区連銀名。「V」は25年の投票権を持つFOMC参加者であることを示す。FRB本部理事とニューヨーク連銀総裁は常に投票権を持つ。「26年」は2026年に投票権をもつことをを示す。フィラデルフィア連銀ハーカー総裁は25年6月に退任予定。出所: 野村セキュリティズ・インターナショナルより野村証券投資情報部作成 FOMCでは常に投票権を持つFRB(米連邦準備理事会)議長・副議長・理事・ニューヨーク連銀総裁に加え、地区連銀総裁が輪番制で投票権を持つ仕組みになっています。投票権を持つ地区連銀総裁では、クリーブランド連銀ハマック総裁に代わり、カンザスシティ連銀のシュミッド総裁が投票メンバーとなるため、引き続き強力なタカ派的なメンバーが1名いることになります。しかし、2024年にタカ派的だったリッチモンド連銀バーキン総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁の3名に代えて、タカ派(セントルイス連銀ムサレム総裁)、中道派(ボストン連銀コリンズ総裁)、超ハト派(シカゴ連銀グルースビー総裁)が2025年の投票メンバーとなるため、全体としてはややハト派化します。 こうしたメンバー変更が、前述の声明文にどの程度影響しているのかに関心が集まります。 来週②:テスラ・マイクロソフトなど決算本格化 30日(木)にマイクロソフト(MSFT)、テスラ(TSLA)、メタ・プラットフォームズ(META)、サービスナウ(NOW)、31日(金)にアップル(AAPL)、ビザ(V)など多くの銘柄が2024年10-12月期決算を発表します。 新政権の政策は企業向けソフトウェアに有利か トランプ新大統領が掲げる政策は、関税政策やエネルギー政策など相対的に米国内の中小企業に有利な政策を多く含みます。2025年は中小企業が一般業務で利用する企業向けソフトウェアに支出を振り向けることも大いに考えられます。マイクロソフトやサービスナウの見通しや経営陣のコメントに変化があるかを確認したいと考えます。 冬続く自動車業界 また、テスラに関しては消費鈍化や高止まりする自動車ローン金利の影響で厳しい自動車業界の中で堅調さを見せられるかに注目が集まります。2024年10-12月期の納入台数は既に発表されており、市場予想を2%ほど下回り、平均販売価格は前四半期比2,000ドルほど下落しています。ただ同社の業績は蓄電池をはじめとするエネルギー事業が高い粗利益率(約30%)が下支えすることで維持されている側面もあり、同部門の動向も併せて確認したいと考えます。 オンライン広告は製品構成の変化に注目 メタ・プラットフォームズなどのオンライン広告を手掛ける企業では、大きな環境変化はないものの、プロダクト構成の変化(例えば、フェイスブック上での短時間動画が占める構成の変化)や、X(旧twitter)に対抗して作られたThreadsの収益化など、ビジネスモデルの変化点が企業利益につながっているかが注目されます。 (投資情報部 デジタル・コンテンツ課) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール
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01/18 19:00
【来週の米国株】いよいよトランプ新大統領就任式、何に警戒すべきか(1/18)
※執筆時点 日本時間1月17日(金)12:00 今週の振り返り ※1月10日(金)- 1月16日(木)4営業日の騰落 15日(水)に発表された12月CPI(消費者物価指数)でコア指数が前月比+0.2%と市場予想の同+0.3%を下回ったことから、インフレ懸念が後退して利下げ幅縮小懸念が弱まり、今週の米国株主要3指数は揃って上昇しました。しかし、20日(月)のトランプ氏の大統領就任日を控える中、トランプ氏や政府高官の新たな発言に対する様子見姿勢が強まり、株価の上値は限定的でした。 安心感広がるも、インフレ鈍化は一時的か 12月CPIのコアインフレ率は前月比+0.225%となり、2024年7月以来初めて同+0.25%を下回りました。野村の予想(0.27%)に対する下振れは、家電製品やパーソナルケア製品の急落、住居費の伸び悩み、ホテル宿泊料金の下落が要因でした。中古車価格の高止まりや航空運賃の回復が見られたものの、全体としてはインフレ鈍化を印象付ける内容でした。ただ、足元では消費支出が底堅いことからインフレ鈍化は一時的となる可能性もあります。また、ロサンゼルス周辺で続く大規模な山火事が家賃や宿泊費、中古車価格等を短中期的に押し上げる可能性もあります。野村ではトランプ氏が掲げる関税政策の影響で、2025年度を通じてインフレ傾向が上振れしやすいとの見方を維持しています。 金融セクター決算も好材料 2024年10-12月期決算発表の幕開けとなる金融株は総じて好調なスタートを切りました。15日(水)に発表されたJPモルガン・チェース(JPM)、ゴールドマン・サックス(GS)、シティグループ(C)、ウェルズファーゴ(WFC)の一株当たり利益(EPS、調整後)は全て市場予想を上回りました。純金利収入やトレーディング収入が各社の業績を牽引しました。 半導体セクターにも一旦安堵感 16日(木)に台湾のTSMC(米国預託証券(ADR)を上場しており、ティッカーはTSM)の2024年10-12月期決算が発表されました。当社は半導体受託生産の世界最大手であり、近年ではエヌビディア(NVDA)などから最先端のAI関連の半導体を受託していることで高い関心を集めています。2025年1-3月期の売上高の会社計画は254億ドル(レンジの中間値)でと市場予想(244億ドル)を上回りました。特に「AIアクセラレーター関連売上高」は2024年に前年比3倍以上になったと見込まれ、全社売上901億ドルの10%半ばを占めることが示唆されました。設備投資計画も400億ドルと市場予想(351億ドル)を上回り、特に最先端半導体分野の製造装置株や素材株への安堵感が広がる内容でした。 来週①:トランプ新大統領就任式と追加関税の想定 トランプ新大統領の就任式関連のイベントは、米国東部時間で1月18日(土)から21日(火)にかけて行われ、就任式自体は20日(月)、宣誓が同日正午に行われる予定です。 第2次トランプ政権の政策には株式市場にプラスとなるもの(減税政策など)とマイナスとなるもの(関税政策など)が混在しています。ただし、スケジュールを考えると、議会を通さずに大統領令で実行可能な関税政策の影響が早く出やすいと考えられます。そのため、市場では就任式直後の「デイ1」から追加関税などを実施するリスクへの警戒が見られます。 追加関税を阻むものは? トランプ新大統領は引き続き追加関税の導入について前向きな発言を続けており、就任式を経て具体的な方針を発表または実施に踏み切る高い可能性があると考えられます。しかし、第2次トランプ政権は、大統領選前よりは追加関税に対して慎重になっている面もあります。大統領選の前には、トランプ新大統領は対中国で60%、その他全世界には10~20%の関税を課す意向を示していましたが、SNSでは対中国について10%にとどまり、従来の主張よりも小幅な追加関税率しか示されていませんでした。 トランプ新政権が大統領選の前に比べて追加関税に対して慎重化している背景には、①株式市場への影響が不透明であること、②最終解決を先送りし根強いインフレへの対応のような問題から国民の目を逸らさせ、米国内の支持率を維持しようとしていること、③関税対象国がある程度交渉に応じる姿勢を見せていることなどが挙げられます。 予想される選択肢 米国株の下落を回避する観点(①)からは追加関税を小規模なものにとどめることが望ましいと考えている模様です。一方、支持率を高止まりさせる観点(②)では、対外強硬姿勢を継続的に示すことが望ましいため、少なくとも即時には極端に大規模な追加関税を決定することについて慎重になると予想されます。それに加え、移民規制のうち大統領令で実施可能な施策を追加関税と合わせて決定すると考えられます。 特に追加関税については就任式後に、対中国では既に関税が実施されている品目について10%の追加関税を即日実施し、それ以外の品目については10%の追加関税を検討する可能性が高いでしょう。また、対メキシコ・カナダでは25%の関税を、その他全世界に対しては10%の追加関税を検討する考えられますが、追加関税については当初2~5%前後の段階的な引き上げも検討されるでしょう。 一方で、最終的な関税率が示されないまま、毎月2~5%の関税率引き上げ方針が示されることも考えられます。この場合、政権発足初期にはこれまでのトランプ氏による言及と比べて実際の追加関税が小幅との見方が生じますが、引き上げが繰り返されるにつれ、大規模していくとの懸念が高まりそうです。 市場の織り込みはあまり進んでいない インフレスワップ市場で取引されている1年先のCPI(消費者物価指数)は前年比+2.6%前後で、12月のCPI(前年同月比+2.9%)に近い水準が今後も継続と市場では想定しています。当社の米国拠点は、トランプ新大統領が大統領選前に主張していた対中で60%、その他全世界で10%の追加関税が課されることによるCPIへの影響を+1%ポイントと推計しており、2025年末のCPIは前年比で+3%台半ばに上昇すると予想しています。これに対し、同市場での織り込みは進んでいないと考えられます。また、株式市場でも、トランプ政権の1期目において追加関税を受け大きく下落した銘柄が、現在大幅下落しているわけではありません。 20日の就任式以降にトランプ新大統領が追加関税の方針を公表・実施すれば、市場が反応する余地が残されていると想定されます。なお、大統領選以降に対ドルで人民元安が急速に進むなど、対中関税の織り込みは相対的に進展していると考えられます。このため、対中関税よりも中国以外の国々への関税政策への警戒が必要です。 来週②:決算本格化、消費の先行きのヒントを探る FRB幹部は28日(火)から29日(水)にかけて開催される1月FOMCを前に沈黙期間に入り、講演などの予定はなく目立った経済指標もありません。こうした中、本格化する2024年10-12月期決算に注目が集まります。 16日(木)に発表された12月の小売売上高(合計)の前年同月比は+3.9%となり、11月改定値の同+4.1%から伸び率が鈍化し、市場予想も下回りました。業種別に見ると、自動車・同部品が前年同月比+8.4%、家具が同+8.4%、無店舗販売が同+6.0%、電気製品が同+5.8%と好調でしたが、建設資材・ガーデニング用品が同-1.8%、百貨店が同-1.8%、ガソリンスタンドが同-1.2%と低調でした。 多くの業種で売上高が増加していることは好材料ですが、消費拡大の一つの要因として、トランプ次期政権が打ち出す政策に消費者が防衛的に反応している可能性には注意が必要です。例えば、海外からの商品に対する新たな関税による価格上昇を見越して、高額商品を今のうちに購入していることが考えられます。また、自動車・同部品の売上高が前年比で+8.4%となったのは、トランプ次期大統領がEV販売に対する税控除の廃止を掲げていることへの駆け込み需要によるものかもしれません。 こうした要因を確認するためにも、今週は個別企業の決算実績や見通し、コメントが重要となります。住宅大手のDRホートン(DHI、21日)、運輸業界では鉄道大手のCSX(CSX、23日)、航空大手のユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス(UAL、21日)、アメリカン・エアラインズ・グループ(AAL、23日)、クレジットカード大手のアメリカン・エクスプレス(AXP、24日)に消費動向を見通すヒントがないか、注目したいと思います。 (投資情報部 デジタル・コンテンツ課) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール