〇外国株
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01/11 19:00
【来週の米国株】追加関税の米国株への影響はどの程度か?(1/11)
※執筆時点 日本時間1月10日(金)12:00 今週:AI普及の期待感高まるも金利上昇が重石 ※1月3日(金)- 1月8日(水)3営業日の騰落 AI普及拡大への期待が株価を押し上げる場面もありましたが、米長期金利(10年国債利回り)上昇が重石となりました。 5日(日)に公表された鴻海精密工業の2024年10-12月期の売上高とその後の業績見通しが良好だったことや、米国ラスベガスで開催される世界最大のテクノロジー見本市「CES2025」の基調講演に登壇するエヌビディアのジェンスン・ファンCEOへの期待感などから週前半はテクノロジー株が株価をけん引しました。しかし、トランプ次期大統領が関税政策をこれまでの発言通り実行する旨の発言があったことなどから、インフレ再燃懸念が広がり米長期金利は前週末の4.5%台から4.6%台へと上昇し、株価の重石となりました。(編注:執筆時点は10日(金)の12月雇用統計の発表前)。 追加関税の米国株への影響はどの程度か 1月20日にトランプ新大統領が就任します。野村では、新政権が重視する政策の一つである追加関税によって米国株が受け得る影響を分析した結果、一定の仮定の下ではEPS(一株当たり利益)が4年間で数%~20%程度押し下げられると試算しています。 関税政策の米国株式市場への影響としては、2つの経路が考えられます。1つが①輸入物価上昇などコスト増加を通じて関税対象国からの原材料・部品調達の多い銘柄を中心に株価が下落する影響、もう1つが②景気減速懸念を通じてシクリカル銘柄を中心に株価が下落する影響です。 第1次トランプ政権では②の影響が中心でした。一方、関税の主な対象が中国の一部品目に留まったこともあり①については大きな悪影響は観察されませんでした。ただ、第2次トランプ政権では中国に対する大幅な追加関税や、中国以外も含めた全世界に対する追加関税の可能性も懸念され、いずれの経路も想定しておく必要があります。 ブルームバーグの市場予想では、2025年10-12月期EPS(一株当たり利益)が前年比+16.6%となることが予想されています。この予想にどこまで関税の影響が織り込まれているかは定かではありませんが、米大統領選挙以降、米国株が総じて堅調であることを踏まえれば、現在の市場は楽観的(関税の影響はない)と推察されます。次の2つのシナリオにおける野村の試算は以下です。 Ⅰ.対中で+40%ポイントの追加関税が課された場合 ②の影響が大きくなりますが、第1次トランプ政権と同様に①が主な経路となるため影響は限定的で、EPSが4年間で4.7%ポイント押し下げられる計算です。この場合、年あたりで見れば増益基調は維持されるとも考えられます。 Ⅱ.「Ⅰ」に加え、対世界で+10%ポイントの追加関税が課された場合 上記に加え①の影響が大きくなり、EPSが4年間で20.8%ポイント押し下げられる計算です。複数年にわたって増益率が大きく下振れる可能性が警戒されやすくなります。 こうした試算は仮定に基づくものであるため、実際に影響がどの程度生じるか不透明感は高いものの、関税の対象が広がる場合には一旦は米国株の下落リスクに注意が必要となると想定されます。 来週①:15日(水)の12月CPI 米長期金利が再び上昇しており、その動向には引き続き注意したいと考えます。経済指標では12月CPI(消費者物価指数、15日)が注目されます。 12月コアCPI(食料・エネルギー除く)の市場予想は前月比+0.2%(11月同+0.3%)と、減速が予想されています。前回11月分では自動車が大きくプラスに寄与しました。今回については、先行指標の中古車価格が減速していることから、自動車のプラス寄与は一旦縮小すると想定されます。一方、前回11月分では家賃が大きめに減速し、新型コロナ危機以前の伸びにまで戻りました。今回12月分では反動が生じる可能性もあります。サービスに先行する傾向のある中小企業販売価格計画DI・人件費計画DIはここ数ヶ月上昇しており、家賃やサービスが再加速すれば、12月分は市場予想を上回ることも考えられます。 来週②:10-12月企業決算が本格化 米主要企業の2024年10-12月期決算の発表が本格化します。金融がスターターとなり、15日(水)のJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスなどに注目が集まります。発表された際には、会社業績見通しや経営陣の事業環境に関するコメント等から、今後の業績動向を見極めていきたいと考えます。 また、20日(月)のトランプ氏の大統領就任が近づき、次期政権での政策についての情報発信が一段と活発化することも考えられ、留意したいと思います。 (投資情報部 デジタル・コンテンツ課) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール
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2024/12/21 19:00
【来週の米国株】株価で負けて為替で勝った1週間、次のポイントは(12/21)
※執筆時点 日本時間12月20日(金)12:00 今週:株価は大幅下落もドル円は上昇 ※12月13日(金)- 12月19日(木)4営業日の騰落 FOMC「タカ派的利下げ」でNYダウ1100ドル超安 12月FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が18日(水)に発表されました。市場予想通り0.25%ポイントの利下げが決定されたと同時に、FOMC参加者の政策金利見通し(ドット・チャート)が引き上げられました。1回当たりの利下げ幅を0.25%ポイントとした場合、2025年と2026年の利下げ回数はそれぞれ2回に留まる見通しとなり、同3回程度を織り込んでいた市場予想に比べタカ派的(インフレ抑制に前向き)な内容であったと言えます。これを受けて18日の米国株式市場ではNYダウ指数が前日比1100ドル超安の大幅下落となりました。 一方で為替は19日(水)に一時1ドル=157円台をつけるなど、円安ドル高も進みました。前週末比でドルは円ベースで+2.46%(19日終値1ドル=157.42円、13日終値1ドル=153.64円として計算)です。ドル建で投資する本邦投資家の円ベースパフォーマンスは米国株指数ほど悪い内容ではなかったと考えられます。 足元の株価・為替変動に対する野村ストラテジストの見方 野村のストラテジストは「FRBのタカ派化懸念に伴う株安は1-3週間続く可能性もあるが、それ以上長期化するケースは2023年以降は見られない」とコメントしています。同期間の最長は2024年4月10日に発表された米CPI(消費者物価指数)が市場予想を上回った「CPIショック」時の3週間程度があたります。為替に関しては今後1週間程度のドル円レンジを155.0円~160.0円とし「ドル円は高止まりが基本線」と予想しています。 一部決算は半導体需要見通しに逆風 個別決算では、18日(水)引け後に発表されたメモリー半導体大手のマイクロン・テクノロジーの決算が注目されました。発表された会社見通しでは、2024年12月-2025年2月期の売上高を約79億ドル(市場予想は89.9億ドル)、一部項目を除いた1株当たり利益(EPS)の予想レンジ上限は1.53ドル(市場予想は1.92ドル)として、いずれも市場予想を下回りました。生成AI向けデータセンターで必要とされる半導体(HBM)への業績貢献期待が高かっただけに、翌日の株価は大幅下落となりました。 特に弱かったのがNAND(フラッシュメモリ)で、データセンター用向けだったとみられます。同じデータセンター向けでも生成AI向けに必要とされるHBM(広帯域メモリー、NANDではなくDRAMと呼ばれるメモリーの一種)は好調でしたが、「データセンター向けであれば全てよいというわけではない」と示唆されます。メモリー半導体メーカーの製品はスマートフォン向けやPC向けを含むため、製品構成によって業績が変動し易いことには注意が必要です。 来週:ドル円は日銀コミュニケーションに注意 米国はクリスマス休暇に入ります(24日は短縮取引、25日は休場)。12月資本財受注(24日)や週次の新規失業保険申請件数(26日)などのデータ発表が予定されるものの、株式市場を大きく動かすことは想定しにくいと考えられます。現時点ではFRB高官の発言機会も予定されず、米国側の材料は乏しい週になります。一方で、ドル円を見る上では、日銀からのコミュニケーションに前後して値動きが荒くなる可能性に注意したいと考えています。 足元の円安再加速を受け、25日(水)植田日銀総裁講演で2025年の利上げに向けた前向きな姿勢が回復するかが焦点となります。27日(金)12月日銀金融政策決定会合における主な意見では政策金利据え置きに反対票を投じた田村審議委員の議論を含め、どの程度利上げに前向きな委員が増えているかを把握したいと考えます。27日(金)の12月東京CPI(消費者物価指数)といったデータも重要ですが、よほどのサプライズがない限り、国内データは「オントラック(想定通り)」との日銀の見方は継続する公算です。円安圧力再燃の中、本邦当局からの口先介入が強化されるかも重要となります。 (投資情報部 デジタル・コンテンツ課) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール
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2024/12/14 19:00
【来週の米国株】堅調なテック株、よくみると明暗/FOMCの注目点は(12/13)
※執筆時点 日本時間12月13日(金)12:00 今週:米CPI無事通過&テック決算明暗 ※12月6日(金)- 12月12日(木)4営業日の騰落 11月の米CPI(消費者物価指数)の内容が概ね市場予想通りとなったことから先物金利は2024年12月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げをほぼ完全に織り込み、市場金利が低下しました。これを受けて金利に敏感な情報技術関連株が上昇し、ナスダック総合指数は一時、史上初の20,000ポイント台を付けました。 注目決算はまちまちの内容 ただ、情報技術株のファンダメンタルズは必ずしもポジティブなものばかりではありませんでした。注目されたソフトウェア大手2社、アドビ(ADBE)とオラクル(ORCL)の2024年9-11月期決算発表では、いずれも2024年12月-2025年2月期のEPS(一株当たり利益)会社見通しが市場予想を下回りました。アドビは生成AI需要増による画像編集ソフトウェアの業績拡大が、オラクルは生成AI向けを中心としたクラウドサーバー需要増による業績拡大がそれぞれ期待されていただけに、決算発表日翌日にはどちらの株価も下落しました。 一方、通信向け半導体及びソフトウェア大手のブロードコム(AVGO)の2024年11月-2025年1月期のEPS会社見通しは市場予想を上回りました。アップル(AAPL)がAI用半導体を自社開発すると伝わり業績懸念もありましたが、ブロードコムは決算発表の際にアップルとのAI半導体開発が複数年契約になるとコメントし、安心感が広がりました。 同社は、2024年8月-10月期決算で部門別売上高も開示しましたが、インフラストラクチャーソフトウェア部門が市場予想を下回り、半導体部門が市場予想を上回っています。なお、インフラストラクチャーソフトウェア部門の売上急増は買収効果に起因しています。 (ご参考)ブロードコム決算 個社の決算内容だけでセクター全体を判断することに注意は必要ですが、前述の3社を見る限り生成AIの活用によるソフトウェアセクターの業績上振れシナリオにはまだ注意が必要と考えられます。まずは、設備投資などで堅調なハード(特に半導体)が情報技術セクターのけん引役であることに注目すべきでしょう。 AI関連の成長は終わっていないが、それ以外にも目を 野村では、AI関連産業を引き続き強気にみていますが、2025年後半からAIの投資テーマが変化する可能性が高いことから、局面変化に応じ柔軟に投資対象を選抜すべきだと考えています。指標として注目されるのは、クラウド事業者の設備投資計画とAIサーバーメーカーの在庫です。向こう6~9ヶ月間の短期については、エヌビディア(NVDA)のGB200の納入が2025年のAIサイクルの上昇局面を維持するカギになるでしょう。ただし、エヌビディアが公表しているロードマップによると、次のAIシステム性能の大幅な向上は2027-2028年との見通しが示されており、2027年前半頃までに設備投資が鈍化する可能性があります。足元ではGB200自体が米国の大手クラウド事業者の設備投資を一段と高めますが、2年後頃から不透明感が出てくると想定されます。また、足元ではビットコイン採掘の需要も想定されますが、これまでの歴史から考えるとAIサーバーメーカーにおける過剰在庫はAI半導体にとっても良くない兆候とされており、その動向を確認していきたいと考えます。 AI関連以外の情報技術銘柄について、仕様アップグレード(特にオンデバイスAI)とバリュエーションの割安感を踏まえ、L字型サイクルの底から脱しつつあるなかで選択肢の一つであると考えています。 来週:FOMCでは「見通し」の上振れに注意 17日(火)~18日(水)に米国でFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。FRB(米連邦準備理事会)の政策判断を見極める上で注目された11月CPI(消費者物価指数)は食品・エネルギーを除くコア指数の前月比上昇率が市場予想に一致したことから、市場では今回のFOMCにおける利下げをほぼ織り込んでいます。 ただし、コアCPIは4ヶ月連続で前月比+0.3%と、年率換算でインフレ目標である2.0%を上回る上昇率を続けていること、11月PPI(生産者物価指数)は市場予想を上回ったこと、トランプ次期政権が関税の引き上げを公言していること等から、「FRBは早晩、様子見に転じるのではないか」との見方が高まっています。今回の会合では経済・政策金利見通しが公表されることから、FRBが次期政権の政策をどの程度経済見通しに織り込んでいるかを含めて注目が集まります。 株価に水を差す「長期金利上昇」をどこまでとみるか? 足元では米長期金利(10年国債利回り)がやや上昇し、4.3%台で推移しています。米長期金利上昇は株価への下押し圧力となりますが、野村ではインフレ再燃リスクが台頭しても米長期金利が5%超へ上昇することは見込み難いと考えています。米長期金利は、利下げ到達点の市場期待を示す3年先1ヶ月金利と相関が高いことが知られています。過去の相関に基づけば5%超となるのは、 3年先1ヶ月金利が4.5%前後以上となるような場合と想定されます。ただ、12月FOMCで0.25%ポイントの利下げが実施され政策金利が4.25%~4.50%となれば、 3年先1ヶ月金利が4.5%以上となるシナリオは再利上げが視野に入るケースに該当することになります。景気・インフレは1~2年のようなスパンで見れば減速傾向を辿っているため、金融政策は引き締め的と推察され、再利上げはあくまでリスクシナリオの位置づけです。インフレ再燃時に米10年長期金利が4%台後半まで上昇した場合の株価への下押し圧力は想定しなければなりませんが、仮に5%が近づけば行き過ぎと考えることができます。 堅調な景気は続くかを年末商戦でチェック そのほか、11月小売売上高(17日)では、業種別の売上動向等から、年末商戦の個人消費動向を確認したいと考えます。FRBが重視する11月コアPCEデフレーター(20日)は、FOMC直後でもあり、相場に与える影響は限定的とはみられますが、足元のインフレの状況を把握する上で、確認が必要です。 ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール