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【オピニオン】日経平均5万円台達成の舞台裏

※画像はイメージです。 2025年4月2日のトランプ関税ショックで急落した日経平均株価は4月7日に底を付け、その後38,000円台の推移が続き、7月に日米間で関税交渉が合意に達して以降は上昇基調に転じています。 この間、業績面でも激震が走り、4月以前に増益予想だった2025年度(経常)利益は、5月に減益予想に沈み、足元で再度増益予想に復帰しています(図1)。年度ベースの予想利益が短期間のうちに増益~減益を行き来することは極めて稀で、近年ではリーマン・ショック時とコロナ禍時が該当する程度です。今回は、アナリストによる予想利益の方向性から株価の動きを追ってみることにしましょう。 短期間で業績予想が 増益⇒減益⇒増益 と変化した事例(4図表)図1:今回 ※注記は図4の下に集約 【きっかけはリビジョン・インデックス(RI)】‥今回7月からの株価上昇の定量的裏付けとなったのは、RIだったと見られます。4月に米国が示した国別の追加関税率を受け、我が国でもアナリストによる業績予想への織り込みが急速に進み、RIはそれ以前のプラスから6月には-40%を超える極めて大きなマイナスに沈みました(図2)。しかし、その後はマイナス幅は縮小し、7月下旬にはプラス転換しています。経験則では、RIのマイナス幅縮小は株価に対して、絶大な(良い)影響を与えることが知られており、今回も経験則どおりとなりました。 図2:今回 リビジョン・インデックス(RI) ※注記は図4の下に集約 【RIマイナス幅縮小後に起きること】‥RIのマイナス幅が縮小に転じたからといって、依然下方修正が優勢な状況は変わらず、予想経常増減益率の改善はRIよりも遅れます。今回も、予想経常増減益率の底打ちは8月以降、増益転換は11月に入ってからでした。 【バリュエーション】‥リーマン・ショック時、コロナ禍時とも今回と同様に、(当時の)今期予想経常増減益率が切り下がる過程でPERは逆に大きく上昇しています。今期予想経常増減益率が切り下がっているうちは、EPS(1株当たり利益)が減少しているため、RI好転を好感⇒株価上昇⇒バリュエーション上昇、という図式から逃れることは困難です。ここから脱却するにはEPSの増加局面を待つ必要があります。今回の場合は11月に入り増益予想へ転換を果たしました。現在では、予想利益(EPS)増加⇒株価上昇へと、フェーズが変わったと考えられます。なお、来期予想経常増益率は今回例示したすべての局面において高水準を維持しています。足元の業績予想の落ち込みにも関わらずバリュエーションが切りあがったのは、来期業績への信頼が厚かったためと思われます。 図3:リーマン・ショック時 ※注記は図4の下に集約 図4:コロナ禍時 (注)リーマン・ショック前後、コロナ禍前後、今回の予想経常増減益率および、日経平均株価の12ヶ月先予想EPSベースのPER。RIおよび経常増減益率はラッセル野村Large Cap(除く金融)のもので、野村證券市場戦略リサーチ部予想。予想経常増減益率、PER、RIの直近値はいずれも2025年11月7日時点。(出所)日本経済新聞社、東洋経済新報社、野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成 RIの好転は、投資家の注目度が高く株価に短期的に極めて大きなインパクトを与える反面、株価水準に対する説明力は希薄です。一方、遅れて実現する予想利益(EPS)の上方修正は、株価水準を押し上げる直接的な原動力になります。今後は、予想EPSの上方修正を後ろ盾に、株価上昇と、PERの適正化が同時進行する展開が想定されます。 ご投資にあたっての注意点

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