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2023/12/27 19:00
【年末特集】株主優待、NISAで買い付ける銘柄選びのポイントは?優待情報誌編集長に聞く
個人投資家の投資の楽しみの一つと言える「株主優待」。コロナ禍で廃止する企業が増えたものの、景気が回復し、株式市場が盛り上がる中で再び優待は増えつつあるようです。野村インベスター・リレーションズ(野村IR)が発行する年刊情報誌「知って得する株主優待」編集長の石井良明氏に、株主優待を実施する企業の動向や、2024年度に拡充されるNISAを活用して株主優待銘柄を選ぶポイントなどを聞きました。 上場企業の3社に1社が株主優待を導入 ――2023年を振り返って、株主優待を導入した企業、廃止した企業などがあったと思いますが、例年と比べて特徴はありましたか。 2023年10月末時点で上場銘柄が4413社ある中で、優待を導入している企業は1475社でした。これは全体の33.4%、およそ3社に1社が株主優待を導入していることになります。業種別では、食料品や小売業など、「消費者に近い業種」が積極的に株主優待を実施している印象があります。 当社には1992年からのデータがありますが、1992年時点の導入割合は9.5%に過ぎませんでした。それが現在30%超まで増えています。その間、リーマンショックやコロナ禍などで、導入企業の割合が多少減った時期もありました。 特にコロナ禍の影響は大きく、業績が厳しくなり、株主優待の提供が困難になった企業もあったようです。各年9月末時点の集計で2020年が「27社減」、2021年が「15社減」、2022年が「22社減」でした。 一方、今年株主優待を導入した企業は10月末時点で計45社、廃止した企業は44社で、差し引きで「1社増」となっています。底を打って、元に戻りつつあると言えそうです。 なお、株主優待を実施している企業が最も多かったのは、記録上はコロナ禍直前の2019年9月末です。計1532社、上場企業全体の37.2%でした。 抽選で太陽光発電システムをプレゼント ――株主優待には金券や食品などがありますが、それぞれ何社ぐらいが実施しているのでしょうか。また、風変わりな優待品を提供している企業はありますか。 当社のデータでは食品が多く、616件が採用しています。次いでQUOカードなどの金券が512件、洗剤などの生活用品を提供している企業が486件です。 風変わり、といえばビットコインを優待品にしている企業がありました。金券に近いものではありますが、さすがに驚きましたね。 このほか、株主の中から抽選で一部の人に提供するというものではありますが、100万円相当の戸建住宅向けの太陽光発電システムを無料で提供する企業や、50万円相当の旅行券を贈ったりする企業もあります。 また、株主優待でポイントが付与され、ポイントに応じて景品と交換できる通信販売のようなサービスを使う企業も増えている印象です。別の企業の優待ポイントと合算し、景品と引き換えることもできます。 NISA拡充、注目企業と銘柄選びのポイント ――2024年のNISA(少額投資非課税制度)の改正を前に、これまで株式投資をしていなかった人たちの関心も高まっていますが、今年導入した企業で注目すべき企業はありますか。 今後もNISAの改正を受けて株主優待を導入したり、拡充したりする企業は増える可能性があります。 身近に活用できる利便性の理由から報道等で注目された企業としては、無印良品を展開する良品計画(7453)でしょうか。買い物の際に5%割引になる株主優待カードの発行を始めました。日ごろからよく無印良品で買い物をする方にはメリットでしょう。 また、不動産仲介業者と引っ越し業者と連携し、電気やガス、インターネット回線などの契約取次ぎを展開するラストワンマイル(9252)は大手インターネット通販サイトで使えるギフトカードを、1株以上の株主には1,000円分、100株以上の株主には5,000円分をそれぞれ年2回贈呈する優待を導入しました。いずれも対象となるのは2期以上保有する長期の株主に限定していますが、100株に満たない小規模株主にも贈呈するのは珍しいと言えそうです。 ――NISAの改正をきっかけに、投資を始めようという方もいると思います。新しく参入する投資家にとっても株主優待銘柄はわかりやすいのではないかと思いますが、優待銘柄を選ぶ際のポイントや注意点があれば教えてください。 投資初心者の方は、頻繁に売買するのは難しいのではないかと思います。そういう方にとってもわかりやすいのは株主優待と配当金ではないでしょうか。 銘柄選びのポイントは、やはり多くの人が知っている「有名な銘柄」「人気の銘柄」がよいのではないか、という点です。多くの投資家が株式を買えば、当然株価も上昇しますし、優待だけでなく、値上がり益を享受することもできるかもしれません。 春夏秋冬の旬の食品などを優待品として送ってくる企業もあります。これを利用し、株主優待で各月に食品など送ってくる企業を調べて、毎月優待品が届くような形で銘柄を保有してみるのも一つの楽しみ方といえるかもしれません。 12銘柄を1単元ずつ買おうとすると、それなりのお金は必要かもしれませんが…。 企業が株主優待を実施する理由 ――企業にとって、優待にはどのようなメリットがあるのでしょうか。 東京証券取引所(以下、東証)が市場区分をプライム、スタンダードなどに見直したり、上場企業にPBR(株価純資産倍率)の改善を要請したりしたのは記憶に新しいところです。 PBRを上げるためには、短期的には配当も含めた株主への還元が有効です。東証の要請を踏まえ、株式の流動性を高めるなどの観点で導入・拡充すると発表した企業も複数あります。 また、個人投資家向けに年に1回アンケートを実施しているのですが、株主優待があるかないかで売買するか否かを決める方もかなり多くいる印象です。 特に消費者と直接取り引きしているBtoCの企業にとっては、自社の商品を使ってもらってよさを知ってもらったり、買い物に来てもらったりできるという点で、企業側にとって、ロイヤリティの観点でも有益と言えそうです。 株主優待制度に詳しい大阪公立大学教授の宮川壽夫氏に以前、投資家向けのセミナーで講演していただいたのですが、「優待には経済学でいうギフト効果というものがあり、一定の株主層に対して金銭で受け取る以上の満足度(効用)を提供することが期待できる」(※1)とおっしゃっていました。投資家心理に訴えかけるものがあるのかもしれません。 ――株式市場の下落局面などで、人気の優待銘柄は値下がりしにくいといったような傾向はありますか。 宮川氏が話していましたが、株主優待が株価のパフォーマンスを向上させているという研究結果(※2)があるそうです。優待制度に対する個人投資家層の選好が出来高や株価に一定の影響を及ぼし、結果的に資本市場でのビジビリティ(認知度)効果につながるとのことでした。(※3) 日本の株主優待に好意的な海外の機関投資家も存在するそうです。 私たちの調査でも、多くの株式を扱う機関投資家の中には、食品を「送ってこないでほしい」と依頼してくるケースがあることはわかっています。しかし「優待をやめてほしい」と言われるケースはほぼないようです。 以前は優待銘柄として有名だった大手サービスグループは、早くに優待廃止を発表し、代わりに増配するという方針を株主の間に浸透させました。結果、国内外の機関投資家などに買い支えられ、優待廃止による株価への影響は最小限にとどまったと言えます。 一方、東証スタンダード市場や東証グロース市場に上場するいわゆる「中小型株」と呼ばれる企業群が優待廃止を発表すると、株価が急落するケースもあります。 これらの企業群は個人投資家に株式を買ってもらわないと出来高もなかなか増えず、株価も上がりにくいので、優待を活用して個人投資家を「味方につける」必要がある。このため、やはりNISAで個人投資家が増えれば、導入する企業も同じように増えていく可能性はあるのではないでしょうか。 ※1 宮川壽夫 (2013) 「株主優待制度のパズルに関する考察」『証券アナリストジャーナル』第51巻 第10号※2 2021年 ”How do firms attract the attention of individual investors? Shareholder perks and financial visibility” 野瀬義明, 宮川壽夫, 伊藤彰敏 Journal of Behavioral and Experimental Finance Volume 31.※3 Nose, Y., H., Miyagawa, A., Itoh, ‘How do firms attract the attention of individual investors? Shareholder perks and financial visibility’ Journal of Behavioral and Experimental Finance, vol.31, September 2021.※4 インタビューは2023年12月に実施しました。※5 掲載している画像はイメージです。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) ご投資にあたっての注意点
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2023/12/27 16:07
【イブニングFINTOS!】日経平均株価、4営業日続伸。新規材料に乏しく伸び悩む(12/27)
本日の株式市場 日経平均株価は、前日比227円高の33,532円で取引を開始しました。寄り付き後も堅調に推移すると、7月3日に付けた年初来高値(33,753円)を上回る場面も見られました。しかし、目新しい取引材料に乏しい中、積極的に上値を追う展開とはならず、本日の高値圏となる33,700円近辺で膠着が続きました。終値は前日比375円高の33,681円となり、4営業日続伸で取引を終えました。 個別では、約1.1兆円相当の米通信大手TモバイルUS株を無償取得すると発表したソフトバンクグループが前日比+4.23%となったほか、前日の米国株式市場で、ナスダック総合指数が2022年1月以来、約2年ぶりの高値を付けたことが好感され、東京エレクトロンやアドバンテストなど半導体関連銘柄の上昇が相場をけん引しました。 東証プライム市場では、値上がり銘柄数が1,492銘柄と、全体の9割に迫る全面高となりました。売買代金は3営業日ぶりに3兆円を回復しました。 本日発表予定の海外経済指標等 特にありません。 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/27 09:30
【チャート分析】ルネサス、今秋に半値押し達成後反発へ(12/27)
このたび、日本株の年初来騰落率上位銘柄をチャート分析しました。 【TOPIX100採用銘柄】年初来騰落率上位ランキング(2022年12月末~2023年11月末) (注)対象はTOPIX100採用銘柄。騰落率は、2022年12月末値と2023年11月末値の比較で算出。(出所)東京証券取引所より野村證券投資情報部作成 今回は11月末時点で上昇率第3位のルネサスエレクトロニクス(6723)を取り上げました。週足チャートを用いて、チャート分析上の注目点を記しています。投資戦略を考える上で、ご参考になれば幸いです。 早期に11月高値などを奪回となるか注目 当社は、日本有数の半導体メーカーで、車載マイコンでは世界トップクラスのシェアを誇ります。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (図1)当社の株価は、2022年12月から2023年7月にかけて大幅上昇した後、押しを入れる展開となりました。10月には直前の上昇幅に対する半値押し(2,031円)を達成し、 一時2,000円割れの水準まで下落しました。 その後は反発し、13週移動平均線や26週移動平均線の水準まで値を戻す展開となりました。この先2023年11月高値(2,649.5円)や同年7月高値(2,899.5円)を早期に奪回となるか注目されます。 調整継続の場合は、まず上向きの52週線が下値メド (図2)一方、この先調整継続となり13週線(12月15日:2,320円)を割り込んだ場合は、2023年10月安値形成時に下値サポートとなった上向きの52週線(同:2,097円)や当時の安値水準(1,950.5円)が下値メドとして挙げられます。 (注1) 株価は修正株価でザラ場ベース。直近値は2023年12月15日。 図中の「〇週線」 とは移動平均線を指す。 (注2)株価表記について、2014年7月以降、一部の銘柄の呼値の単価変更により、小数点以下第1位まで表記しているものがある。(注3)トレンドラインには主観が含まれていますので、ご留意ください。またご投資に際しては、企業業績や投資尺度などテクニカル以外の要素についてもご確認ください。(注4)掲載している画像はイメージ。 (出所)東京証券取引所データより野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 丹羽 紘子) この資料は、投資判断の提供を目的としたものではなく、一般的なテクニカル分析の手法について記したものです。テクニカル分析は過去の株価の動きを表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。 また、記載されている内容は、一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。 ※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/27 08:36
【モーニングFINTOS!】9週連騰へ期待が膨らむ米国株(12/27)
海外市場の振り返り 欧州など多くの市場が休場で薄商いとなる中、米国株式市場ではS&P500指数が3営業日連続で上昇しました。S&P500指数は過去最高値の4796.56ポイントまであと0.5%未満と迫り、NYダウに続いて過去最高値更新への期待が高まっています。また、年末5営業日と年明け2営業日の株式相場は堅調に推移することが多いとして、サンタクロース・ラリーと称されています。このままS&P500指数が堅調に推移し9週連騰となれば、2004年以降では最長記録となるなど、米国株式市場は記録ずくめの動きにやや楽観ムードが高まっているようです。 相場の注目点 米国株楽観ムードの背景には、利下げ期待があると見られます。FF(フェデラル・ファンド)金利先物を見ると、24年末までに6回の利下げ(1回当たり0.25%ポイントと想定)が織り込まれています。12月FOMC(米連邦公開市場委員会)で示された政策金利見通し(中央値)は3回の利下げであったことから、市場の一部には利下げ観測の行き過ぎ懸念があります。市場の見通しがFRBに鞘寄せする形になれば長期金利上昇・株安となることが想定されます。一方、FRBの見通しが下方修正される場合、景気悪化が原因となることが予想され、やはり株安につながるとの見方もあります。 本日のイベント 米5年国債入札が注目されます。米国債への堅調な需要が確認できれば、金利上昇懸念がさらに緩和することが期待できます。 (投資情報部 尾畑 秀一 ) (注)データは日本時間2023年12月27日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【週間ランキング】最も閲覧数が多かった個別銘柄は?トップ10を紹介(12/26) 【野村の投資判断】2024年前半の日本株の物色の考え方 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/26 16:07
【イブニングFINTOS!】材料難で小動き、日経平均株価51円高(12/26)
本日の株式市場 本日の日経平均株価は、前日比41円高の33,295円で取引を開始しました。クリスマス休暇で前日の欧米市場は休場となり、特段の新規材料も見当たらず、寄付き後の日経平均株価は前日終値を挟んで小幅に一進一退となりました。午後に入っても材料難から動意に乏しく、終日狭い値幅での推移を続けたまま、前日比51円高の33,305円と小幅ながら3営業日続伸して取引を終えました。東証プライム市場の売買代金概算は約2兆5,600億円と、8月以来4ヶ月ぶりに2営業日連続で3兆円を下回りました。日経平均株価の高値と安値の差である日中値幅は130.90円と5月10日以来約7ヶ月半ぶりの低水準となりました。 個別株では、指数計算上日経平均株価に大きな影響を及ぼすファーストリテイリングは前日比-0.39%、東京エレクトロン同+1.09%、アドバンテスト同+1.62%とまちまちでした。 本日発表予定の海外経済指標等 特にありません。 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/26 09:30
【チャート分析】アドバンテ、半値押しを達成後、反発(12/26)
このたび、日本株の年初来騰落率上位銘柄をチャート分析しました。 【TOPIX100採用銘柄】年初来騰落率上位ランキング(2022年12月末~2023年11月末) (注)対象はTOPIX100採用銘柄。騰落率は、2022年12月末値と2023年11月末値の比較で算出。(出所)東京証券取引所より野村證券投資情報部作成 今回は11月末時点で上昇率第2位のアドバンテスト(6857)を取り上げました。週足チャートを用いて、チャート分析上の注目点を記しています。投資戦略を考える上で、ご参考になれば幸いです。 26週線を明確に上放れとなるか注目 当社は、半導体製造装置の世界的大手メーカーです。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (図1)当社の株価は、2023年7月に高値形成以降、軟調な動きとなり、2022年10月安値~2023年7月高値の上昇幅に対する半値押し(3,621円)の水準を達成しました。 ただ2023年11月安値形成時に長い下ヒゲを伴うローソク足が現れ、その後反発の展開となりました。この先26週移動平均線(12月15日:4,518円)を明確に上放れとなれば、同年7月につけた高値(5,593.8円)が次の上値メドとして挙げられます。 13週線割れの場合は52週線などが下値メド (図2)一方再び押しを入れる展開となり、13週線(同:4,330円)を下放れた場合は、2023年11月安値形成時に下値サポートとなった上向きの52週線(同:3,739円)が次の下値メドとして挙げられます。 (注1) 株価は修正株価でザラ場ベース。直近値は2023年12月15日。 図中の「〇週線」 とは移動平均線を指す。 (注2)株価表記について、2014年7月以降、一部の銘柄の呼値の単価変更により、小数点以下第1位まで表記しているものがある。(注3)トレンドラインには主観が含まれていますので、ご留意ください。またご投資に際しては、企業業績や投資尺度などテクニカル以外の要素についてもご確認ください。(注4)掲載している画像はイメージ。 (出所)東京証券取引所データより野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 丹羽 紘子) この資料は、投資判断の提供を目的としたものではなく、一般的なテクニカル分析の手法について記したものです。テクニカル分析は過去の株価の動きを表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。 また、記載されている内容は、一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。 ※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/26 08:24
【モーニングFINTOS!】クリスマスで欧米市場は休場(12/26)
海外市場の振り返り 25日はクリスマスで欧米市場は休場でした。日本では、植田日銀総裁が講演で「物価2%目標の持続的・安定的な達成に向けて確度は少しずつ高まってきている。実現する確度が十分に高まれば金融政策の変更を検討していく」と述べました。特に目新しい材料はなく、為替、債券市場への影響は限定的でした。 相場の注目点 歴史的な高インフレに直面したFRBは、2022年3月に利上げを開始し、急速なペースで利上げを継続してきました。FRBの想定以上にインフレが加速したことは否定できず、その意味で金融政策は「バックワード・ルッキング」(経済の足元の動きを重視)に軸足を置いてきたと言えます。インフレのピークアウトを迎えた今、金融政策は「フォワード・ルッキング」(経済の先行きを重視)へ転換しつつあります。最近のFRB高官の発言に「利下げ」という言葉が散見されるのはその証左でしょう。つまり、米国経済がソフトランディングできるよう、適宜利下げを実施してゆくものと予想されます。とは言え、インフレターゲットの2%までは未だ距離があり、市場の利下げ期待が先行して長期金利が大幅に低下するような状況は避けたいところでしょう。因みに、2023年12月FOMCで示された参加メンバーの2024年末のFFレート予想中央値は4.625%ですが、FF金利先物市場での同時点の予想値は3.85%です。このギャップが市場のボラティリティー(変動性)の材料となることが予想されます。 2024年の年明けには早速、重要統計が発表されます。1月3日には2023年12月ISM製造業景気指数、5日には12月雇用統計(非農業部門雇用者数の市場予想:前月差+16.8万人(11月同+19.9万人)・平均時給の市場予想:前年比+3.9%(11月同+4.0%))、12月ISMサービス業景気指数が発表されます。3日には米国議会の新会期がスタートします。 (投資情報部 佐々木 文之 ) (注)データは日本時間2023年12月26日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【今週の米国株】2024年12月末のS&P500は4900を予想(12/25) 【野村の投資判断】日銀ハト派サプライズの日本株インプリケーション ご投資にあたっての注意点
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2023/12/25 20:00
【今週の米国株】2024年12月末のS&P500は4900を予想(12/25)
来週1月1日(月)は「今週の米国株」をお休みいたします。本年もご愛読いただきましてありがとうございました。 先週:利下げをサポートする指標相次ぐ、8週連騰 FOMCと株式市場の反応 先週、米国株式市場は堅調に推移しました。米国経済がソフトランディングするとの期待と、FRB(米連邦準備理事会)が2024年に利下げに転じるとの見方は強く、相場を押し上げました。FRB高官による早期利下げ観測をけん制する発言はありましたが、株式市場に与える影響は限定的でした。 野村證券では2024年末のS&P500指数を4900と予想 野村證券では、米国株の代表的な株価指数であるS&P500指数に関し、2024年12月末に4900と予想しています。米国経済に減速懸念はありますが、イノベーション創出を原動力に、S&P500の企業業績を示す1株当たり利益(EPS)は史上最高益更新へ向かうと予想されています。また、米金利低下は株価にはプラスに作用します。企業業績拡大と金利低下を反映し、S&P500指数は史上最高値更新へ向かうと見込まれます。 史上最高益更新が続く 上の図は、米国の代表的な株価指数であるS&P500指数の、構成企業のEPS(一株当たり利益)の推移です。2022年は過去最高となりましたが、続く2023年、24年、25年と毎年史上最高益を更新することが予想されています。米国経済については、2024年は成長率鈍化が予想されるにも拘わらず、米国企業の業績拡大が予想される要因としては、米国には独自の技術力やビジネスモデルで新しい製品・サービスを投入し、グローバルに業容を拡大している企業が多数あることが挙げられます。そのような企業のイノベーション創出力が、業績予想に織り込まれていることが大きいと推察されます。 株式市場では、株価水準が先行きの業績予想で形成される傾向があります。例えば、2024年末のS&P500指数を予想する場合、12ヶ月予想EPSを用いますので、図中の2025年予想EPSが参考になります。 株価水準の考え方 一方、株価水準を考える上では、PER(株価収益率)も参考になります。PERは株価をEPSで割って計算される数値で、高ければ企業利益から見て割高、低ければ割安と考えられます。ただし、このPERはこのような単純な割り算で割高割安の判断基準とする面以外に、むしろ市場の期待を反映している面があります。なお、2000年~2023年10月の期間における米長期金利(10年国債利回り)とS&P 500 指数のPERとの関係からすると、米長期金利が4~5%程度であれば、PERは16~20倍程度が妥当と思われます。足元の市場環境では、PERは18.0倍程度が適当と考えられますので、2025年予想EPS(275.42) × 18.0倍≒4900ポイントという予想は妥当性があると考えます。 利下げも追い風 また、上の図の通り、2023年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では2024年の利下げ方針が明確に示されました。一度の会合での利下げ幅を0.25%ポイントと想定すると、2024年中に3度の利下げが予想されています。政策金利が利下げへ転換されれば米国の市場金利全体も低下することが想定されます。金利が低下する局面ではPERは高値圏で推移しやすくなることから、金利環境も2024年における株価上昇の追い風となることが期待されます。 大きなリスクは 大きなリスクは2つ挙げられます。1つ目は、インフレが予想以上に長期化することです。米国のインフレは足元で鎮静化しつつありますが、一段の鎮静化に予想以上の時間がかかると、利下げが遅れ、米長期金利が影響を受ける可能性があります。2つ目は、2024年11月に行われる大統領・議会選挙後の議会の状況です。米議会は既に上院と下院で多数派政党が異なる「ねじれ状態」であるため、選挙後もこの状況が変わらなければ民主党・共和党いずれの大統領が当選しても、政策遂行が滞りがちな今の状況に大きな変化はないと考えられます。しかし、今以上に政治が混乱した場合には、政府機関の閉鎖による米国全体の信任低下や、重要政策の成立遅延が株価にマイナスの影響を及ぼしかねず、注視が必要です。 米国はこうしたリスクをうまく対処すると期待されますが、ここ数年は世界が想定していなかった新しいリスク、あるいは隠れたリスクが相次ぎ顕在化しました。引き続き、ニュースや信頼できる投資情報によく目配りをして2024年の米国株投資に活かしていただければ幸いです。 年明けのポイント:ISMや雇用統計…重要指標が目白押し 米国では、今週はクリスマス休暇の週で取引が閑散となる一方で、年明け1月2日(火)から取引はスタートします。3日(水)の12月ISM製造業景気指数、4日(木)の12月ADP全米雇用レポート、5日(金)の12月ISMサービス業景気指数、そして12月雇用統計と重要指標が発表されます。 2023年12月に発表された経済指標は、インフレの鈍化、(インフレを助長しない程度に)強い実体経済、雇用環境の緩やかな悪化と市場の利下げ期待をサポートする内容が相次ぎました。年明けの重要指標で「予想外」がないかは、2024年の米国株にとって初めのチェックポイントとなるでしょう。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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2023/12/25 16:14
【イブニングFINTOS!】日経平均株価、続伸 クリスマスで売買代金は低調(12/25)
本日の株式市場 本日の日経平均株価は、前週末の米国株式市場で主要3指数がまちまちな結果となりましたが、前週末比245円高の33,414円で取引を開始しました。上昇して始まったものの、勢いは弱く、寄付きを高値に徐々に上げ幅を縮小する展開となり、33,300円を挟んでもみ合いとなりました。後場に入り、新たな材料がない中でやや水準を切り下げ、上げ幅を一時前週末比52円高まで縮小させる場面がありましたが、引けにかけてやや切り返し、前週末比84円高の33,254円でこの日の取引を終えました。本日はクリスマスで欧米市場が休場となる中、市場参加者も少なく、売買代金は約8ヶ月ぶりの低水準となりました。 個別では、前週末に大きく下げたネクソンが前週末比+5.42%と反発した一方で、川崎汽船、日本郵船、商船三井といった海運大手3社が大きく下落しました。海運大手3社は中東情勢の緊迫化から、海運運賃が上昇し、業績に寄与するとの思惑から足元で大きく上昇しており、短期的な過熱感が重石となりました。 本日発表予定の海外経済指標等 特にありません。 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点