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02/17 16:19
【野村の夕解説】円高と好業績がせめぎあい、日経平均株価は24円高(2/17)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は前週末比55円安の39,094円で取引を開始しました。寄り付き前に発表された2024年10ー12月のGDP(国内総生産)1次速報値が市場予想を上回りました。また、物価指標の1つであるGDPデフレーターが前年同期比+2.8%と加速したことを受け、日銀の追加利上げ観測が広がりました。これらを受け、日本の10年国債利回りは上昇し、前週末比0.035%高い1.385%と2010年4月以来、約15年ぶりの高水準をつけました。金利上昇により円高米ドル安が進行したことや、トランプ政権による関税政策への不透明感が指数を押し下げ、日経平均株価は寄り付き直後、前週末比128円安の39,021円まで下げ幅を広げました。一方、前週末でほぼ一巡した2024年4ー12月期決算発表は概ね良好と観測され、堅調な企業業績が下支えとなり、その後は持ち直す展開となりました。前日終値を挟んで一進一退となった日経平均株価は、材料難で方向感を見いだせないまま、前週末比24円高の39,174円と反発して取引を終了しました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 米国はワシントン生誕記念日で休場です。フィラデルフィア連銀ハーカー総裁やボウマンFRB理事の講演が予定されています。 (野村證券投資情報部 神谷 和男) ご投資にあたっての注意点
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02/17 08:25
【野村の朝解説】米小売統計が下振れ、利下げ観測高まる(2/17)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 14日の米国金融市場では1月の小売売上高が前月比-0.9%と、市場予想(同-0.2%)を大幅に下回り、約2年振りとなる低下幅を記録したことを受けて、利下げ観測が再燃し、9月までの利下げ実施が完全に織り込まれました。米10年国債利回りは再び4.5%を割り込み、米ドル円相場は一時152円前後まで円高が進行しました。S&P500は前日終値を挟んで一進一退となり、前日とほぼ変わらない水準で引けています。米国株にとって景気減速は決して良い材料ではありませんが、利下げ観測との間でバランスしたと見受けられます。業種別では、11業種中上昇したのはハイテク関連に加え金融、エネルギーの4業種にとどまるなど、広がりに欠ける結果でした。 相場の注目点 年明け以降の米国金融市場では、強弱錯綜する経済指標、FRBの利下げ姿勢の慎重化に加え、トランプ政権の繰り出す関税政策への警戒感から、国債市場を中心にボラティリティ(変動率)が高い展開が続いています。トランプ大統領は14日、4月2日前後に新たに自動車に関税を賦課する意向を示しました。トランプ大統領が米国を象徴する産業である自動車や鉄鋼に対して保護主義的な政策を打ち出すことに意外感はありません。ただし、自動車に関してはトランプ大統領が就任直後に発表した「米国第一の通商政策」と題する大統領覚書にも具体的な言及はなく、その意味で政策の予見可能性を低下させるものと言えます。関税は最終的には米国の消費者への負担となることから、景気の先行きに対する警戒感が高まりそうです。 本日のイベント 米国はワシントン生誕記念日で休場です。日本では24年10-12月期の実質GDP(速報)が発表されます。 (野村證券 投資情報部 尾畑 秀一) (注)データは日本時間2025年2月17日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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02/16 16:00
農業と福祉の連携が企業経営に与える示唆 - DEIの観点から-
執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネスビジネス・コンサルティング部 担当部長 西山 政治(2025年2月13日) はじめに 本稿では、筆者の最近の取組分野の一つである農業と福祉の連携、所謂「農福連携」と、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)との関連性、それが企業経営に与える示唆について考察をしたい。また、近年の障害者雇用促進法における法定雇用率の連続的な引上げに伴い、多くの企業で雇用した障がい者向け事業や特例子会社で農福連携が活用されている一方で、福祉関係者から「障がい者雇用代行ビジネス」「雇用率ビジネス」と称される、一部問題視されているビジネスが台頭している。何が問題視されているのか、障がい者雇用で農福連携に取り組む場合の留意点として提示したい。 1.DEIと農福連携 DEIとは、ダイバーシティ(Diversity:多様性)、エクイティ(Equity:公平性)、インクルージョン(Inclusion:受容・包括性)の頭文字をとった言葉である。2021年頃までは企業の持続可能性を高めるための取組みの一つとしてダイバーシティとインクルージョン、すなわち「多様な人材を受け入れ、それぞれの持つ個性や能力を発揮すること」を意味するD&Iが用いられてきた。そしてコロナ禍における働き方の見直し、SDGsの浸透とそのゴール8に含まれるディーセントワーク(Decent Work)[1]「働きがいのある人間らしい仕事、より具体的には、 自由、公平、安全と人間としての尊厳を条件とした、 全ての人のための生産的な仕事」の探求機運の高まりを受け、近年では図表1のようなエクイティ、すなわち「多様な個性や状況に合わせた機会を提供し、公平に活躍できる仕組みを作る」概念を加えたDEIを掲げるケースが増えている。では、この機会を与えるべき「多様な個性」の範囲はどこまでと考えるべきだろうか。 図表1 Equality(平等性)とEquity(機会の公平性) (出所)Shutterstock インターネットで「ダイバーシティとは」と検索すると、様々なサイトが示され、その提示する内容も多様性に富む。検索結果の単語に注目してみると「性別、人種、年齢、国籍、信仰、趣味趣向など」が共通して挙げられており、「障がい」を明示している数が明らかに少ない。勿論「など」に含まれているケースも多いと思うが、障がい者のポテンシャルを制限的に考えるバイアスも否めないのではないかと推察する。障がい者が「全ての人のため」を掲げるディーセントワークの概念に含まれることは論を待たないが、社会的に見ても障がい者の労働参加は不可欠になりつつある。 図表2は我が国における障がい者数の推移とその内訳である。近年においては精神障がいを中心に障がい者の数は増加している。その要因は高齢化や社会環境など構造的なものが複雑に絡み合っていると考えられ、簡単に改善できる性質のものではない。 また、図表3は義務教育年次における在籍児童数と、同じ義務教育年次で特別支援学校及び特別支援学級並びに通級(以下「特別支援学校等」)で教育を受けている児童数の2013年度と2023年度の比較である。特別支援学校等で学ぶ児童の割合は最近10年間で2倍以上に増加している。 こうした障がい者の数や割合の増加には、社会における障がいに対する認知度の高まりや受容性の拡大というポジティブな要因が反映されている面もあるが、社会における働き手やその準備期間にある児童に障がいをもつ人が増えているのも事実である。企業経営において障がい者活用の必要性は、より一層高まっていると言える。 図表2 障がい者数の推移(万人)[左] 図表3 義務教育年次で特別支援教育を受ける児童の割合(万人) [右] [図表2](出所)文部科学省「文部科学統計要覧」及び「特別支援教育資料」より野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成[図表3](出所)内閣府「障害者白書」からの厚生労働省作成資料及び厚生労働省「令和4年生活のしづらさなどに関する調査」の推計値より野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 働き手という観点では、農業における担い手不足は深刻である。図表4は我が国の基幹的農業従事者数の推移であり、1990年の293万人から2024年には111万人にまで減少している。こうした担い手不足に悩む農業の現場では、実際に障がい者が働いて農業生産に貢献してもらう「農福連携」という取組みが10年ほど前から本格的に始まっている。農福連携は文字通り農業と福祉の連携を意味し、農林水産省や日本農福連携協会の掲げる参加対象者は、農家をはじめ障がい者、高齢者、ひきこもり、生活困窮者、受刑者など広範囲に及ぶ。 図表4 基幹的農業従事者数の推移(万人) (出所)農林水産省「農林業センサス」「農業構造動態調査」より野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 本稿では農福連携の対象を障がい者に絞るが、元来は上記のように多様な労働参加者の顔ぶれである点はご承知いただきたい。興味のある方は「農福連携」と検索すると様々な事例が出てくるので参照されたい。なお、官庁がまとめた農福連携のパンフレット には、農林水産省、厚生労働省、文部科学省、法務省の名前が並び、様々な省が農福連携を推進していることがわかる。 ところで、農業の労働内容においては、畑作だけでも種蒔き、間引き、施肥施薬、剪定、収穫など多種多様な作業で構成されている。他の産業に比べて労働負荷も高く、主に農業機械の取り扱いが主因ではあるが、図表5のように労働災害も多く、死亡事故の発生率は建設業の3~4倍、全産業に対しては14~17倍で推移している。 次章では、作業種別が多く労働災害の発生割合の高い農業で、どのように障がい者の「ディーセントワーク」を実現しているのか、その事例と示唆を見てみたい 図表5 農業、建設業、全産業の死亡災害数と発生割合の推移推計 (出所)農林水産省「農作業死亡事故の概要」、総務省統計局「労働力調査」、厚生労働省「労働災害発生状況」より野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 2.農福連携の事例と得られる示唆 農福連携の分野では優れた実績を上げている事例が多く存在する。「ノウフク・アワード」などの表彰も行われており、優良事例は「農福連携」と検索すれば比較的容易に検索できる。本章では、筆者が実際に訪問した企業で、「ディーセントワーク」「エクイティ」という観点から印象に残っている2事例を紹介したい。その上で、障がい特性に基づく多様性が生む効用と、事例から得られる示唆についても記したい。 (1) 恋する豚研究所 千葉県香取市にある「株式会社恋する豚研究所」は、しゃぶしゃぶなどのレストランを運営すると同時に、ハムやソーセージの加工販売も営んでいる。香取市にある同じ敷地内には別会社と共に農場や木工所[2]を持ち、レストランと農場が一体感を持った景観でデザインされ、運営されている。使われている豚は香取郡の提携農場のもので、しゃぶしゃぶのたれに使われている醬油も香取市産と、地域産品を積極的に取り入れている。その食味に対するグルメサイト等の評価も高く、2024年12月22日に放映された日本テレビ「ザ!鉄腕!ダッシュ」で鍋の具材になる等、メディアにも度々取り上げられている。 筆者が特筆したいのは、恋する豚研究所の運営参加者の半数以上が障がい者である点である。実際にレストランを訪れても、ホームページを閲覧しても、スタイリッシュなデザインと軽やかな空気感、豚やハムへのこだわりを貫くメッセージが目立ち、障がい者や福祉を感じさせるものは見受けられない。 代表取締役社長の飯田大輔氏は、「障がい[3]のある方も地域の人々とふれあい、地域の風景の中に溶け込んで社会の一員となる」ことを目指して取り組んでおり、それが具現化されている。飯田氏は千葉市にある社会福祉法人「福祉楽団」の理事長でもあり、農食に限らず同様の姿勢に基づく様々な取組みをされており、興味のある方はホームページ[4]を参照願いたい。 図表6 恋する豚研究所における加工関連のマニュアル (出所)野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部撮影 レストランや加工品で高評価を得ている恋する豚研究所であるが、その現場では障がい者に誇りをもって働いてもらう機会を与えるための、様々な取組みが見られる。障がい者就労の現場で励行されているあいさつ、計量器具の色分け等による視認性確保、加工時の安全性確保などの施策は基本として導入されているが、特筆すべきは、精緻に定められたマニュアル(図表6)である。このマニュアルは、作業が細かく分解され、写真を多用しながら平易な言葉で文章内の漢字には全てルビを振り、わかり易く説明してある。清潔な控室には作業予定表が見易く掲示され、個人の障がい特性に合った作業分担が割り振られている。こうした数々の仕組みにより障がい者に配慮しつつも高品質な製品を作ることを目指した結果、労働参加者に対する分配、すなわち支払う賃金も、雇用契約の基づく就労が困難とされる就労継続支援B型[5]平均工賃の数倍は払われている。訓練を受けた職員による指導も当然必要であるが、障がい特性に合った作業を細かく割り振り、「言って聞かせ、やって見せる」ことに加えて、何度でも確認のため立ち戻れる原点を作って高いパフォーマンスを実現している点が注目される。 (2)Torch 島根県出雲市にある「合同会社Torch」は、椎茸栽培を主業としており、代表社員の松本頼明氏は、就労継続支援B型福祉事業所も運営している。椎茸栽培は「通年で収穫できるため収入が安定」「ハウス内の温度が通年で比較的安定しており作業者の負担が少ない」「作業が多岐にわたるが比較的軽めの単純労働(但し根気が必要)が多く、作業分解して業務分散することができる」といった特性を持つため、比較的障がい者向きの作業であると言える。一方で安定した品質を保つことは難しく、根気の必要な作業であることから、就労する障がい者の方にどれだけモチベーション高く安定的に働いてもらうかが重要となる。 図表7 Torchの外観(一部) (出所)会社より提示 Torchでは、あいさつや時間を守る生活リズムといった基本的な動作の励行に始まり、作業性を重視したレイアウトや場所の確保、音楽を流すなどの雰囲気づくりに加え、清潔で働きやすい休憩所の設置など、働きやすい工夫を随所に凝らしている。結果として障がい者一人当たりの月間就労回数が増加、継続的かつ安定的な就労関係を構築できている。 そして、最も特筆すべきは評価システムである。「軸切り」「計量」「袋詰め」などの時間当たりの作業量基準を設け、その達成毎に時間給を上げていく仕組みを設けており、その評価フィードバックは松本氏と一対一で、エビデンスを示しながら定期的に丁寧に為されている。この評価の仕組みを設けることで、働く障がい者のモチベーションも上がり、結果として高品質な椎茸の生産にもつながり、それが実績として就労継続支援B型平均工賃の数倍の工賃として返って来る仕組みである。目に見える労働成果と共に工賃が上がることで、本人の自尊心が満たされると共に家族が喜び、自分で稼得したお金を消費することで社会参加の機会も増える。 Torchがある島根県では農福連携が盛んにおこなわれている。繊細な扱いが要求され高級品であるシャインマスカットの農場での作業に障がい者が参加し、袋掛け、適粒、果穂整形(かすいせいけい)やジベレリン処理などの高度な作業を行いつつ、手掛けたシャインマスカットが県の品評会で県知事賞を受賞したこともある。島根県の農家や福祉関係者に理由を尋ねると、「人口減少と高齢化による農業の担い手不足が日本国内でいち早く課題となっているため、労働力確保の多様化に取り組んでいる」という回答をよく得るが、熱意と能力のあるファシリテーターの役割も見逃せない。島根県障がい者就労事業振興センターなどは、農福連携の積極的なマッチングに取組んでおり、地元福祉事業所や農家の協力を得ながら連携を推進している。当該センターの農福連携関係のホームぺージ[6]を閲覧すると、数々の実例掲示と共に実際の動画なども掲載してあるので、興味のある方は参照いただきたい。 (3) 障がい特性に基づく多様性が生む効用 農福連携の現場では、障がい特性と分解された作業特性のマッチングを上手く行うことによって、健常者に勝るとも劣らない、或いは支払い工賃に対して大きな超過付加価値を生んでいる事例が報告されている。例えば以下のようなケースがある。 コミュニケーションが苦手な反面、強いこだわりを持ち感覚が鋭敏になる自閉症スペクトラムの方の性質が、細密な再現を要する作業や検査に活かされてパフォーマンスをあげる事例常同行動[7]の傾向がある知的障がいを持つ方が、無農薬栽培農場の虫取りを丁寧に行い、健常者でも難しい虫害を根絶する事例 図表8 淡路式農作業分析表の一部分 (出所)兵庫県立大学大学院 緑環境景観マネジメント研究科/兵庫県立淡路景観園芸学校園芸療法課程 豊田正博著「2022年改訂版 農福連携 人と作業のマッチングハンドブック」より抜粋 上記のような農作業における作業分解と障がい特性のマッチングは学術的にも研究されている。兵庫県立大学大学院の豊田教授が開発した淡路式農作業分析表(図表8)は、農作業を「パターン化」「作業負担度」「巧緻性」「最多注意配分数」「危険度」「工程数」などに分け、各項目を評点化して分析を行う。さらに、「巧緻性」「最多注意配分数」の2項目から農作業難易度一覧表を作成して能力に応じた適切な作業割当てを行う。この手法は農林水産省主催の農福連携技術支援者育成研修でも教えられており、作業者の能力に応じた支援を行い、生産性向上と自己有用感向上を伴うマッチングの実用化は全国的に始まっている。こうした取組みは、多様な障害特性を高いパフォーマンスに結び付けるための重要な構成要素であると考えられる。 (4) 事例から得られる示唆 本章の事例から得られる、障がい特性という多様性を活用して、社会に関わる形で高いパフォーマンスを得るための示唆として、経営者側の以下の取組みの実践が挙げられる。 a. 挨拶の励行や生活リズムの観察を通じた、日常的なコミュニケーションと行動把握b. 上記aを通じた、障がい特性や環境への適合性に関するするアセスメントc. 従事する業務に対する、適切な作業分解とその多面的評価d. 分解した作業に対するわかり易い解説と指導、色分けや測定具を用いた作業し易い環境整備e. 実施した作業に対するわかり易く適切な評価と継続的なコミュニケーション そして上記a~eは、健常者を対象とした業務指示やチームビルディングに共通した内容と言える。つまり、多様性を活用して社会的にも付加価値の高いパフォーマンスを得るためには、コミュニケーションに基づく個性の把握、深い業務理解と業務内容の分解、環境整備、個性と業務内容の適合、適切かつ継続的な評価といった、基本的な事象を突き詰めることにあるのではないかと考える。 「多様性の尊重と活用」といったキーワードからは、「多様な人材でチームを構成し、自由な環境でフリーに働かせる」という方向性が想起される部分もあると考えられ、それはブレインストーミングなどでは有効な局面もあるであろう。一方で、コミュニケーションに基づく相互理解や、自分たちの拠って立つ業務に対する理解が無い状態で、単なる多様な個性から構成された人材グループが業務遂行を試みたり、プランを作るのは、多様性を謳いながらも閉鎖された、空虚なものになるのではないだろうか。すなわち、多様な個性や状況に合わせた機会を提供し、公平に活躍できる仕組みを作り、自由、公平、安全と人間としての尊厳を条件とした、 全ての人のための生産的な仕事(ディーセントワーク)を作っていくためには、基本的ではあるがより深い、相互理解や業務理解及び多様性に適合した環境整備が不可欠なのではないかと筆者は考える。 名言として伝わる「やってみせ 言って聞かせて させてみせ ほめてやらねば 人は動かじ」という旧帝国海軍司令官・山本五十六の言葉は、多様性の活用においても適用できるのであろう。 3.障がい者を雇用して農業に取り組む場合の留意点 本稿の最後に、障害者雇用促進法の法定雇用率を順守するための障がい者雇用或いは特例子会社で農業を営む場合の留意点について記したい。そもそも障害者雇用促進法で法定雇用率を定め、障がい者に対して所得の公平性を担保しようという取組みの存在は、障がい者の雇用率や平均賃金が未だ低い現状を意味している。雇用される障がい者が有意義に活躍できるようにサポートするビジネスも、勿論あって然るべきであると考える。 一方で、多くの福祉関係者が指摘する「雇用率ビジネス」として語られる典型的な障がい者雇用形態として、例えば以下のようなものがある。 企業が障がい者を雇用、同時に栽培ハウスの地代と建設資金を雇用率ビジネス事業者に支払う雇用率ビジネス事業者は、土地を購入してハウスを建て、監督者を置く。そのハウス内に、企業が雇用した障がい者を受け入れ、野菜の栽培をさせるハウス内の株間や畝幅も広く、ゆったりと栽培されるが収量は少なく安定しない収穫された野菜は、障がい者が持ち帰るか、社員食堂で「当社が雇用している障がい者の皆様が作りました」と提供されるが、残りは少量であったり収穫が安定しないため、販路が確定せず、廃棄される この形態では単純に障がい者を社会から隔離しているだけであり、前述の「エクイティ」や「ディーセントワーク」を重視した障がい者就労形態と比較すると、社会で活躍するための機会を与えられることも、生産的な活動に寄与することもない。であるならば、障がい者を雇用したり特例子会社を保有する企業が、SDGsの目標に沿った施策として掲げる一方でこうした雇用率ビジネスを利用することは、矛盾しないだろうか。 本稿ではどのような企業がこうしたビジネスに携わっているか、或いはその実態はどうか等の解明を目的としていない。但し、第210回臨時国会(2022年10月3日招集)で障害者雇用促進法が改正された際、衆参両院の厚生労働委員会の付帯決議で「単に雇用率の達成のみを目的として雇用主に代わって障害者に職場や業務を提供するいわゆる障がい者雇用代行ビジネスを利用することが無いよう、事業主への周知、指導等の措置を検討すること」と明記されており、そうしたビジネスの存在が前提とされている。「雇用率ビジネス」については、一般社団法人 日本農福連携協会[8]や日本財団助成事業[9]からも研究報告書が出ているので、興味のある方は一読されたい。 時代が進むにつれ、社会的な意識も高まり、以前であれば問題視されなかった事象が大きく問題視される状況は、一定以上の年齢の方なら覚えがあるはずである。障がい者雇用や特例子会社で農業に携わるならば、専門家と相談した上でのフレームワーク策定や意識の高い社会福祉法人等と連携することも一案であると考える。 [注釈] [1] ILO(国際労働機関)において、1999年に開催された第87回ILO総会で提出されたファン・ソマビア事務局長の報告で初めて用いられ、その中でILOの活動の主目標と位置づけられた。その後も戦略目標が設定される等、取組みが強化されている [2] 株式会社日本農林耕社などと共に開発、一体化した農地として機能している [3] 飯田氏が就労機会を与えて地域と一体化させたい対象として、高齢者、受刑者等も含まれ、実際に就労されていることも付記しておく [4] URL:https://www.gakudan.org/ [5] 障害者総合支援法における福祉サービスの区分で、継続雇用が困難であるため請負契約が主体となる。2022年の就労継続支援B型事業所における月額平均工賃(賃金)は、17,031円である(厚生労働省データ) [6] URL:https://shimane-noufuku.net/ [7] 常同行動:外から見ると意図がわからない、繰り返しおこなわれる行動 [8] 「農園型障害者雇用問題研究会報告書 2024年2月」日本農福連携協会/日本農福連携協会HP: https://noufuku.or.jp/chosakenkyu/ [9] 「2023年度 サテライト型(農園型含む)障害者雇用に関する調査研究 実施報告」事業実施団体:社会福祉法人 生活クラブ/掲載元:日本財団図書館(http://nippon.zaidan.info/index.html) ディスクレイマー 本資料は、ご参考のために野村證券株式会社が独自に作成したものです。本資料に関する事項について貴社が意思決定を行う場合には、事前に貴社の弁護士、会計士、税理士等にご確認いただきますようお願い申し上げます。本資料は、新聞その他の情報メディアによる報道、民間調査機関等による各種刊行物、インターネットホームページ、有価証券報告書及びプレスリリース等の情報に基づいて作成しておりますが、野村證券株式会社はそれらの情報を、独自の検証を行うことなく、そのまま利用しており、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。また、本資料のいかなる部分も一切の権利は野村證券株式会社に属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。 当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。 国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。 外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
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02/16 12:00
【注目トピック】米国株決算レビュー:先行きの見方には慎重さも窺えるが…
※画像はイメージです。 米国:2024年10-12月期決算レビュー 24年10-12月期は前年同期比+13.2% 2月7日までに、S&P 500 指数構成企業のうち308社が、2024年10-12月期決算を発表しました。LSEGの集計では、同期のEPS(1株当たり利益)は前年同期比+13.2%の64.71ドルと推定されています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)推定・予想は2025年2月7日時点のLSEG集計。[ ]内は2024年10-12月期決算発表が本格化する直前の2025年1月3日時点の集計。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 (注)推定・予想は2025年2月7日時点のLSEG集計。[ ]内は2024年10-12月期決算発表が本格化する直前の2025年1月3日時点の集計。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 今回の決算発表シーズンが始まる直前の1月3日時点の集計では、前年同期比+8.1%の61.78ドルと予想されていました。2024年10-12月期は、決算実績がアナリスト予想を上回る企業の比率(ポジティブサプライズ比率)が引き続き多数を占めており、実績は上振れています。 (注1)ポジティブサプライズ比率は、S&P 500 企業のうち決算実績がアナリスト予想平均を上回った企業の比率。2024年10-12月期には、2024年9-11月期決算、2024年11月-2025年1月期決算企業も含む。(注2)直近4四半期平均とは2023年10-12月期~2024年7-9月期の平均。長期平均とは、売上高は2002年以降、純利益は1994年以降の平均。(注3)LSEGによる2025年2月7日時点(売上高について307社、純利益について308社)の集計。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 一方で、2025年1-3月期の予想については、直近の集計では、1月3日時点よりも下方修正されています。 (注)S&P 500 指数構成企業のリビジョンインデックス。リビジョンインデックスは直近4週間にアナリストが業績予想を上方修正した銘柄数/下方修正した銘柄数で計算。指数が1を上回ると上方修正優位、1を下回ると下方修正優位と判断される。直近値は2025年2月5日時点。FY1は予想1期目(12月決算企業の場合、2024年12月期)、FY2は予想2期目(12月決算企業の場合、2025年12月期)。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 年度EPSは引き続き拡大傾向を予想 次に、年度ベースでのEPS予想について、1月3日時点の集計と比較すると、2024年度については上方修正されている一方、2025年度は下方修正され、2026年度も小幅に下方修正となっています。 トランプ政権による関税政策で、米国内におけるサプライチェーンに影響が及ぶ可能性があります。このような環境下、追加関税の全体像が見えるようになるまでは、米国内における事業環境に慎重な見方をする企業も相応におり、業種によっては業績予想を慎重に見直しているアナリストもいるとみられます。 (注)予想はLSEGによる2025年2月7日時点の集計。[ ]内は2024年10-12月期決算発表が本格化する直前の2025年1月3日時点の集計。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 今後の留意点 業績予想は下方修正されている一方で、2025年度以降も業績拡大が続く見通しについては、変わりありません。 要因の一つには、AIの社会実装があると推察されます。関連する分野で事業を展開する企業群は、提供する新製品やサービスが世の中に普及することで、景気変動の影響を乗り越えて、業績を拡大していくと予想されていると推察されます。加えて、AIを活用する企業は、業務効率化や業容の拡大が期待されます。 今後、2024年11月-2025年1月期を決算期とする小売企業や、ソフトウエアなどの情報技術企業の決算発表が本格化します。これらの決算が発表された際には、決算実績に加え、会社業績見通しや経営陣のコメントなどを通して、情報技術業界の状況や、企業業績の動向を把握していきたいと考えます。 (野村證券投資情報部 村山 誠) ご投資にあたっての注意点
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02/16 09:00
【動画 3分チャート塾】シーズンⅢ:第9回 チャート分析実践編(1) 上値のメドを考えよう
「動画 3分チャート塾」は、株価チャートの見方を学びたい初心者から中級者の方向けの動画シリーズです。 今回は、これまで学んだことの応用として、上値のメドをさまざまな計算の仕方を使いながら探っていきます。 シーズン I:意外と知らないローソク足(全8回)ローソク足の基本の読み方や中長期的な相場の捉え方などについてわかりやすく解説していきます。シーズンII:相場の見方の強い味方、移動平均線(全9回)移動平均線の基礎や活用法についてわかりやすく解説していきます。シーズンIII:上値、下値のメドを探ろう(全10回)上値、下値メドの探り方についてわかりやすく解説していきます。シーズンIV:相場の過熱感を測るには?(全9回)オシレーター系指標についてわかりやすく解説していきます。シーズンV:トレンドラインを引いてみよう(全9回)トレンドラインについてわかりやすく解説していきます。 ご投資にあたっての注意点
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02/15 19:00
【来週の米国株】CPI上振れにも動じぬ株価、エヌビディア含む決算期の内容がカギ(2/15)
※執筆時点 日本時間2月14日(金)12:00 ■今週:CPI上振れでも株価は上昇 ※2月8日(金)- 2月13日(木)4営業日 関税の影響が懸念される中、1月CPI(消費者物価指数)が市場予想を上回り米長期金利(10年国債利回り)が上昇、株式市場の重石となった一方、AIの収益貢献が期待される情報技術銘柄が上昇し、株式市場を支えました。 CPI上振れで金利上昇 12日(水)の米国金融市場では寄り前に発表された25年1月のCPIが前月比+0.5%、食品・エネルギーを除くコアCPIが同+0.4%と、それぞれ事前の市場予想を上回り、前月から加速したことを受けて市場の利下げ観測が後退、国債利回りが上昇し、同日のS&P500指数とNYダウ指数は下落しました。 株価は安定感を強めている 強い雇用統計と穏当なCPIの組み合わせとなった今年1月からは一転し、2月は弱めの雇用統計と強いCPIの組み合わせとなりました。景気下振れとインフレ高止まりが示唆される中、先物市場が織り込む2025年中の利下げ観測は1回程度まで後退しましたが、主要株価指数は底堅さを見せ、CPI発表当日中に株式市場が織り込む変動率を示すVIX指数が小幅低下して引けるなど、米国株は安定感を高めている様子がうかがえます。 再「利上げ」はあるか? とはいえ、金利上昇が続けば株価には向かい風です。FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長は下院金融委員会の公聴会で、「当面は景気抑制的な政策を維持したい」と前日に続き予見可能な将来において高水準の金利が続くことを示唆しました。3月FOMC(米連邦公開市場委員会)では、ドッツ(政策金利見通し)が12月会合からさらに上方修正され、市場と同様の1回以下へと修正される可能性が高まっていると言えます。 「20万人」「0.3%」がカギ 現時点では再度利上げに転じるケースはあくまでもリスクシナリオの位置づけですが、もし4-6月期以降も雇用統計の非農業部門雇用者数が前月差+20万人前後の高い伸びを続け、コアCPIが前月比+0.3%以上の高水準を示し続けているようなら、市場が利上げを意識する展開も想定されます。その場合には、米長期金利が5%を上回り、株価には下押し材料となるでしょう。 ハイテクのムードは明るい 半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC、ADRのティッカーはTSM)が10日(月)に発表した2025年1月の売上高(速報値)は、前年同月比+35.9%の2932億台湾ドルと1月の過去最高を更新しました。また、メタ・プラットフォームズ(META)が29日(水)の決算発表を挟んで19連騰中(2月13日現在)であるなど、ポジティブなニュースフローが相次ぎました。ディープシークショックも一巡し、IT大手はトランプ大統領が提案する相互関税の影響を受けづらいとの見方もあり、上昇しやすい環境が整っています。 ■来週①「相互関税」の行方 13日(木)に、トランプ大統領が相互貿易と相互関税に関する調査を指示する覚書に署名するなど、矢継ぎ早に政策を繰り出すトランプ大統領の一挙手一投足に対して市場の感応度が高い状態が続いています。相互関税の概念は、輸入相手国・地域の米国製品に対する関税率が米国の課す関税率より高い場合、米国が関税率を同率まで引き上げるか、輸入相手国・地域が、米国と同率まで引き下げることを求める政策方針です。商務長官候補のラトニック氏は、米国の貿易赤字が大きい順に、各国に個別に対応するとしており、4月1日を目途に調査を完了する方針を示しました。 EUやメキシコ、ベトナム等から開始か 覚書では、関税だけではなく、貿易相手国のその他の税制(付加価値税を含む)、非関税障壁・非関税措置、為替操作、その他の不公正な規制や貿易慣行も対象となり、最終的に互恵関税に相当する額を決定するとしています。調査結果次第ですが、少なくとも米国の貿易赤字が大きく、平均最恵国関税率が米国(3.3%)よりも1%以上高い、中国、EU(欧州連合)、メキシコ、ベトナム、台湾、韓国、インドについては、米国側が問題を指摘すると見込まれます。 実際の関税発動までには時間 今後、トランプ政権が実際に制裁関税を発動するまでには時間を要すると見られます。4月1日を目途に相互貿易と相互関税に関する調査が終了した後、改めて、既存の法制を用いて制裁措置を検討するための調査に入ると覚書には記されており、これらの調査を踏まえると、発動時期は2026年以降になると考えられます。また、そうした時間的な猶予の間に、貿易相手国との協議、交渉が始まることも考えられます。 一喜一憂せずに長期保有を 関税リスクは1週間単位の株価の変動要因として理解しておく必要がありますが、関税発動の難易度や各国との交渉に左右されるとみられることから、長期投資の目線では企業業績を判断基準とした投資判断を変更する必要はないと考えます。 ■来週②20日のウォルマートなど小売決算 今週からは、20日(木)のウォルマート(WMT)など、 2024年11月-2025年1月期決算の小売企業の決算発表が始まります。消費者の行動や、関税による業績・業績予想への影響について、他企業やマクロ経済への示唆が得られないか、確認したいと考えます。 なお、再来週には同四半期の決算発表が本格化し、26日(水)にはエヌビディア(NVDA)やセールスフォース(CRM)の決算を迎えます。来週以降、情報技術銘柄に関する業績予想やニュースフローが増え、株価の変動要因となるため注視したいと考えます。 (投資情報部 デジタル・コンテンツ課) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール
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02/15 16:00
日本産アルコール飲料の輸出促進に向けた課題と施策
執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネスビジネス・コンサルティング部 シニア・アソシエイト 鈴木 拓実(2025年2月13日) はじめに 2013年、農林水産省は「農林水産物・食品の国別・品目別輸出戦略」において、農林水産物・食品の輸出金額を2020年に1兆円規模に拡大する目標を定めた。この目標に基づき、2021年には初めて輸出金額が1兆円を超えたが、その主因の一つに、アルコール飲料の輸出額増加が挙げられる。 現在、国はさらなる輸出拡大を目指し、農林水産物・食品の輸出金額を2025年までに2兆円、2030年までに5兆円にそれぞれ拡大する目標を掲げている。筆者は、引き続き、アルコール飲料がこれらの目標達成に大きく寄与するものと予想している。 本レビューでは、日本産アルコール飲料の中でも輸出金額が大きいウイスキー、清酒、ビールに絞り、国内需要および輸出状況を確認し、今後のさらなる輸出拡大に向けた主な課題と必要な施策について論じる。 1. アルコール飲料の国内消費数量および輸出動向 (1) アルコール飲料の国内消費量 アルコール飲料の国内消費量は、戦後の経済発展に伴い、1990年代後半まで拡大を続けた。しかし、近年では高齢化の進展や若者のアルコール離れの影響により、減少傾向が顕著となっている。消費量は1996年の9,657千キロリットル(以下、「KL」と記載)をピークとして、2022年には7,828千KLまで下落した。また、成人一人あたりの年間アルコール消費量も1996年の98.6Lから2022年には74.6Lに減少している。今後も、国内市場は断続的な縮小が予測される。 国内消費量の内訳を見てみると、清酒、ビール、発泡酒の消費量が著しく減少している一方で、リキュール類の消費量は増加している。かつては酒税が低い発泡酒の消費量が増加したが、その後、酒税がさらに低い「第三のビール(ビール、発泡酒とは別の原料・製法で作られたビール風味の発砲アルコール飲料の名称)」が台頭していることが伺える。アルコール飲料の課税額は1996年には約2兆円であったが、2022年には1.1兆円に減少しており、消費量が約2割減少したにもかかわらず、課税金額は半減している。このことから、より酒税の低いアルコール飲料が日本国内で消費されていることがわかる。 一方で、2017年の酒税法改正を受けて、ビール、発泡酒、第三のビールの税率は段階的に変更され、2026年10月にはビールの税率が下がり、発泡酒や第三のビールの税率が上がり、税率が一本化されることが予定されている。消費する酒類の種別が変動することが予想されるが、アルコール飲料の消費量が大きく増加するわけではなく、今後の環境は依然厳しいと言わざるを得ない。 図表1 国内アルコールの飲料消費量 (出所)国税庁HP「統計情報」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 (2) アルコール飲料が輸出全体に占める割合 日本のアルコール飲料は海外で高い注目を集めており、輸出金額は年々増加傾向にある。2013年に251億円であった輸出金額は、2023年には1,343億円に達し、10年で5.3倍に増加した。特に2020年から2021年にかけては、前年比61.4%(436億円)増という顕著な伸びを記録した。この時期はコロナ禍の影響もあり、在宅環境を充実させるための巣ごもり需要が活発化していた。国際的なコンクールにおける高い評価や、インバウンドによって日本のアルコール飲料の質の高さが認識されたこと等が要因となり、海外における「家飲み」需要を取り組むことができたのだと推測される。次章では、個別のアルコール類に分類した上で、現在の輸出動向について考察する。 図表2 アルコール飲料の輸出金額と全体(農林水産物・食品の輸出額)に占める割合 (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 2.ウイスキー、清酒、ビールの輸出動向 前章の通り、2023年のアルコール飲料の輸出金額は1,343億円であるが、輸出金額の上位はウイスキー497億円、清酒410億円、ビール179億円となっている。本章では輸出金額が大きいウイスキー、日本酒、ビールについての輸出動向を確認していきたい。 (1) ウイスキー 日本産アルコール飲料の輸出金額が大幅に増加した要因の一つとして、日本産ウイスキーの輸出の躍進が重要な役割を果たしたことは疑いの余地がない。2020年から2021年にかけて、日本産アルコール飲料の輸出金額は436億円増加したが、そのうち、ウイスキー単体の輸出金額は2020年の270億円から2021年には460億円に達し、わずか1年で190億円の大幅な伸びを記録した。この間の日本産アルコール飲料輸出金額の増加分の4割強は、ウイスキーの輸出金額の増加によるものである。 さらに、2023年時点におけるアルコール飲料全体に占めるウイスキーの輸出割合は26.3%に達しており、2013年の15.8%から伸長している。このように、日本産ウイスキーはその存在感を一層強めており、今後も日本の主力農林水産物・食品の一つとして重要な役割を果たすことが期待される。 図表3 ウイスキーの輸出金額・数量 (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 まず、過去5年におけるウイスキー輸出の国ごとの実績を見比べてみる。比較対象として、2023年時点における輸出金額が多い上位5か国を挙げる。2023年時点で最も存在感が強いのは中国市場であり、輸出金額、輸出量、輸出単価のすべてにおいて上位5か国中最大である。中国向けの輸出が最初から最大市場であったわけではなく、2019年時点では輸出金額、輸出量、輸出単価はいずれも2023年時点と比較するとそれほどの存在感は示していなかった。ここまでの存在感を発揮したのは2020年から2021年にかけてのことであり、第1章でも述べた通り、コロナ禍において大きな躍進を遂げた。これは中国に限ったことではなく、米国、オランダ、フランスでも同様の現象が見られた。ただし、オランダはEU向け輸出の中継貿易の側面があるため、厳密な測定は困難である。 また、ウイスキーの中国輸出において、筆者が特に着目している点は「輸出単価」である。2019年時点での中国向けウイスキー単価は3,157円/Lであり、他の国と比較しても特に高い水準ではなかった。しかし、2021年から2023年にかけては8,500~9,000円/Lで推移しており、他の国と比較してもよりプレミアムな価格帯のウイスキーが中国で人気を博している。一方、2013年におけるフランス向けのウイスキー輸出単価は約2,007円/Lであり、現在の水準とほぼ変わっていない。この背景には、フランス国内でジャパニーズウイスキーが高級品として位置付けられるよりも、普段飲み用のウイスキーとしての考え方が多いことが考えられる。 2023年のウイスキーの輸出額は、世界的なインフレ圧力や中国国内の景気後退を背景に下落している。特に、中国向けの輸出は金額および数量ともに大きく減少した。これに対し、2023年のオランダおよびシンガポール向けの輸出額は増加しているものの、輸出量自体は減少している。このことから、プレミアムな価格帯の需要が下支えしていたと考えられる。また、フランス国内においては、普段飲み用としての利用が主流であると推測されるため、輸出金額および数量を大きく下げる結果となった。 この10年でみると、ウイスキーの輸出市場は急速に拡大している。ウイスキーのように熟成が必要な酒類にとって、このような急速な市場拡大に対して、売れる製品がないという原酒不足は非常に深刻な問題である。国内外問わず、多くの銘柄が終売や休売といった状況に追い込まれており、生産規模の拡大がウイスキー業界にとっての急務であると言えよう。 図表4 ウイスキーの輸出金額・数量・単価(上位5か国) (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 (2) 清酒 清酒は諸説あるものの、日本を起源とし、発展し続けた伝統的なアルコール飲料である。2020年にはウイスキーに抜かれるまで、日本産アルコール飲料の中で最も輸出金額が大きく、長年にわたり日本産アルコール飲料の輸出において存在感を示していた。2013年の清酒の輸出金額は104億円であり、同年のアルコール飲料全体の輸出金額の41.8%を占めている。2023年にはその割合が30.6%に減少したものの、2013年から2023年にかけて清酒の輸出金額はおよそ4倍の増加を見せている。ウイスキーの13倍の増加には及ばないものの、清酒も輸出増加に一役を買っている。 図表5 清酒の輸出金額・数量 (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 清酒の輸出金額は2013年から概ね右肩上がりを続けてきたが、輸出数量は2019年と2020年に減少する結果となった。この減少の要因を2023年時点における清酒の輸出金額が多い上位5か国で比較すると、特に韓国向けの輸出数量の減少が顕著である。具体的には、2018年には5,350KLであった韓国向けの輸出数量は、2019年には2,912KL、2020年には1,535KLと大幅に減少した。この背景には、日韓関係の悪化があると考えられる。また、アメリカや中国においても輸出数量は減少している。 図表6 清酒の輸出金額・数量・単価(上位5か国) (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 一つの仮説として、日本酒の利用シーンが家庭等の日常的な飲用ではなく、日本食レストラン等で利用されることが多く、結果として2020年のコロナ禍においてロックダウン(都市封鎖)が実施されたことにより、飲食店の営業が制限され、大きな影響を受けたのではないかと考えられる。 (3) ビール 2023年におけるアルコール輸出量の内、ビールはウイスキー、清酒に次ぐ3番目の金額を占めている。輸出量で比較すると、ウイスキーは12,506KL、清酒が29,184KLに対し、ビールの輸出数量は137,882KLと数量だけでは最大のアルコール輸出である。一方で輸出金額自体は両者より低く、ビールは輸出においても安価なアルコール飲料である。2018年までは順調に輸出金額・数量が成長を遂げていたが、2019年から2022年にかけては大幅に下落している。これも、日韓関係の悪化が影響していると考えられる。 図表7 ビールの輸出金額・数量 (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 図表8 ビール輸出金額・数量・単価(上位5か国) (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 実際、ビールの最大の輸出先は韓国である。2023年の韓国向けの輸出金額は83億円でビール輸出金額の約46.3%を、輸出数量は79,545KLでビール輸出量の57.7%をそれぞれ占める。一方、輸出単価を比較してみると、韓国は104円/Lと上位5か国で最も低い。これは、輸送距離が短く輸送コストが比較的少額で済むため、国内と同程度の単価で輸出が可能な背景が考えられる。 3.アルコール飲料の輸出増加に向けた主な課題と施策 ここまで、ウイスキー、清酒、ビールの輸出動向を分析してきたが、本章では、各業界が輸出増加において直面している主な課題を明らかにするとともに、これらの課題に対する施策を考えていく。日本の伝統的な酒文化を世界に広めるためには、戦略的なアプローチとともに、国内産業の持続可能な発展を促進することが急務である。これにより、さらに多くの国々で日本の酒類が愛されることを目指すものである。 (1) ウイスキー 近年、日本産のウイスキーは急速に輸出市場が拡大しており、売りたくても原酒が不足する問題が生じている。ウイスキーは長期間の熟成が必須であり、将来の需要を見込んで生産量を一朝一夕に増加させることは困難である。 このような中、全国規模で小規模の蒸留所が相次いで開設されている。ウイスキーの蒸留所を開設するためには免許が必要である。2014年には年間1件の法人がこの免許を取得していたのに対し、コロナ禍以降の2021年は年間34件と大幅に増加している。免許取得者数が新規参入者の数と必ずしも一致しないものの、ウイスキー業界に注目を寄せる企業が増えていることは明らかである。また、筆者が2024年7月時点で確認できた蒸留所の数は92件あり、2010年代が10数件の蒸留所しかなかった点を踏まえると、ウイスキー業界が急速に発展していることは疑いがない。 新規参入者の増加は歓迎されるが、一方でいくつかの弊害も生じている。その一つが樽価格の上昇である。世界的なウイスキー需要の高まりと国内の新規参入者の増加により、樽価格はわずか数年で2~3倍に上昇している。ウイスキー事業は初期コストが高く、資金の回収にも時間がかかるため、こうした初期コストが増加する問題は、新規に参入した事業者および既存の事業者にとって重い課題である。 図表9 酒類等製造免許の新規免許取得件数 (出所)国税庁HP「酒類等製造免許の新規取得者名等一覧」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 さらに、急激に新規参入者が増加したことにより、国内向けのウイスキー市場は競争がより激化し、当初計画していた事業計画の実現が難しくなる可能性も挙げられる。新規免許取得状況を確認すると、2021年ごろに取得した事業者の多くが2024年ごろに3年熟成の商品を上市させることが予想される。 また、ブランド管理の観点から、日本で製造・熟成されたウイスキー「ジャパニーズウイスキー」の定義は急務だ。現状の酒税法では、ウイスキーの定義は定まっているものの、ジャパニーズウイスキーに関する定義は定まっていない。酒税法では、スピリッツ等が最大90%加えられて出来上がった代物でも「ウイスキー」を名乗ることが可能である。また、海外から輸入してきたウイスキー樽を国内で瓶詰めした商品を『ジャパニーズウイスキー』と名乗ることに対して、酒税法では罰則を設けていない。ジャパニーズウイスキーが国際的に注目を集めている中、法制度の隙間を悪用する事業者が出てくる可能性は高い。 現状のジャパニーズウイスキーの評判は、先人たちの努力によって築かれたものであり、法制度の抜け穴を活用し、こうした評判を悪用する事業者は排除しなければならない。特に、ウイスキーは欧州をはじめ世界各国で愛飲されている酒であり、清酒と違って新たに市場を開拓するための啓蒙活動が不要である点を考慮すると、「ジャパニーズウイスキー」という名前だけで市場に受け入れらやすい側面がある。このような状況を踏まえると、法的な枠組みをもってジャパニーズウイスキーを明確に定義する必要性が高まっていると筆者は考えている。 実際、日本を除く5大ウイスキーの生産国である、スコットランド、アイルランド、アメリカ合衆国、カナダでは品質を担保させるためウイスキーの定義を確りと法律で定められている。例えば、スコットランドのウイスキーの定義は、「国内で3年以上樽熟成されている」、「水とカラメル色素以外は足されていない」こと等が定義づけされている。また、アメリカ合衆国のウイスキーは、バーボンやコーンウイスキー、テネシーウイスキー等、それぞれ別の法律で定められている。 日本の自主規制機関における規制も、こうした法律を参考にして策定されていると考えられ、国がウイスキーを日本の基幹的な輸出産業として認識しているならば、悪質な事業者がジャパニーズウイスキーの評判を落とす前に法整備を進め、海外輸出を促進していく必要がある。また、地理的表示(GI)としてジャパニーズウイスキーを設定することも一つの手段だと考えている。すでに日本酒がGI登録されているため、ジャパニーズウイスキーも同様に登録が可能であると考えられる。 (2) 清酒 弊部では、中国の伝統料理である火鍋と清酒のペアリングを促進する取り組みを行った実績がある。この取り組みは、清酒と現地料理のペアリングを図り、輸出増加を目指すための良い参考になると考えている。 この取り組みは、具体的には、県内の一部酒蔵を取りまとめて、火鍋と清酒のペアリングの作成、プロモーション活動、現地バイヤーとの試飲会・商談会等の実施である。火鍋は中華料理であり、清酒は中華圏からみると異文化そのものあるため、その魅力を消費者に伝えることが重要である。そのため、弊部の取り組みでは、火鍋の多様な具材やスパイシーな味付けに合う清酒を選定し、消費者やバイヤーにその相性の良さを体験してもらう機会を提供した。 今後の課題として、火鍋と清酒の文化を定着させるために、教育やプロモーションの取り組みを強化することが重要である。定期的に火鍋とのペアリングイベントを開催し、消費者に直接その魅力を体験してもらうことができる。特に、高級レストランや専門店と提携し、火鍋と清酒のペアリングをテーマにした特別なイベントを実施することで、清酒への理解を深める機会を提供できる。また、現地の飲食業界のプロフェッショナル向けに、清酒の特性や火鍋との組み合わせについての研修を行うことで、専門知識を深めることも重要である。 さらに、マーケティング戦略の見直しも必要である。特に若年層や健康志向の消費者をターゲットにした広告展開を行い、清酒の健康効果や低アルコールの特性を強調することで、より多くの人々にアプローチできる。SNSを活用し、火鍋とのペアリングを紹介するコンテンツを作成し、InstagramやTikTok等で拡散することが効果的である。最後に、物流と供給チェーンの強化が求められる。輸送コストを見直し、現地での価格競争力を向上させることで、清酒のアクセスを容易にする。また、現地の流通業者による適切な清酒の管理も求められてくるため、現地業者への啓蒙活動が必須となってくる。 これらの取り組みを通じて、日本の清酒が火鍋をはじめとする現地料理とペアリングしやすくなり、輸出が増加する可能性が高まる。清酒と現地料理の文化を定着させる試みは一朝一夕には実現しないが、今後清酒の輸出量を一段階上に引き上げるためには、従来の日本料理との提案だけでなく、新たなアプローチが求められる。こうした現地料理との相互理解と協力を基にしたアプローチが、清酒の国際的な普及に寄与するであろう。 (3) ビール 日本のビール産業は、その優れた品質から国際的に高い評価を受けているが、輸出量の増加にはさまざまな課題が存在している。特に、輸送コストが販売価格に影響を及ぼし、現地のビールメーカーとの価格競争が難しくなることが大きなネックである。ビールは鮮度が重要な商品であるため、島国である日本からの長距離輸送による品質の劣化が懸念される。そのため、輸出の切り口ではなく現地生産や地場のビールメーカーを買収するケースが目立つ。このような状況では、一般的なビールの輸出だけでは限界があり、より革新的なアプローチが求められる。 その一つの施策は、独自商品の開発・展開である。近年では、「職人技のビール「手作りのビール」といわれるクラフトビールや、アサヒビールが展開する「生ジョッキ缶」等、ユニークな商品が注目を集めている。クラフトビールは特に海外の若年層に人気があり、日本の多様な地元産の素材を使った新しいビールのプロモーションを強化することで、輸出を促進することができる。また、「生ジョッキ缶」のような革新的な商品は、手軽に日本のビールを楽しむ方法として海外市場でのニーズに応えることが期待される。 このような商品で新たな市場を開拓するためには、当然、現地パートナーとの協力が不可欠である。現地のディストリビューターや小売業者との連携を強化し、販売チャネルを拡大することが求められる。また、現地の市場ニーズに応じたマーケティング戦略を共同で策定することも重要である。 結論として、日本のビール輸出を増加させるためには、輸送コストや価格競争を克服しながら、品質の高さを活かし、独自の商品展開を進めていくことが求められる。クラフトビールや「生ジョッキ缶」等の革新的な商品を通じて、海外市場での競争力を高め、持続可能な成長を目指す必要がある。もしくは早期に一定以上の規模獲得とそれに伴う現地生産(OEMを含む)の開始が必要であると考えられる。量当たりの単価が、今回紹介した清酒やウイスキーと比較すると安価であるため、輸出だけで量を増やすと物流コストが合わないことを念頭に戦略的な取り組みが求められている。 おわりに 本レポートでは、ウイスキー、清酒、ビールの輸出動向を中心に考察し、現状の主な課題と施策を明らかにした。しかし、輸出の現状だけでは捉えきれない複雑な課題も存在している。たとえば、国内外の消費者行動の変化や、環境への配慮、労働力の確保といった側面も考慮する必要がある。また、国際市場での競争が激化する中、他国の醸造技術やマーケティング戦略との比較も重要な視点となるだろう。 特に、個別企業の努力だけでは解決しきれない課題も多く存在する。市場の開拓や国際的なブランド力の向上には、業界全体の協力が不可欠である。これを実現するためには、国を挙げての体制整備が求められる。政府や関連機関が一丸となり、輸出促進のための政策や支援体制を整えることが、持続可能な成長を達成するための鍵となるだろう。 現在、順調に成長を遂げている日本のアルコール飲料の輸出であるが、ウイスキーに関して考えると、本場イギリスの輸出金額は2023年には56億ポンド(約1兆800億円、スコッチウイスキー協会調査)に達しており、イギリスのウイスキー単体で日本の農林水産物・食品の輸出金額に匹敵する金額となっている。 また、日本で清酒を「ソウルドリンク」とするならば、イタリアではワインがその地位を占めており、2022年の時点でワインの輸出金額は82億USドル(約1兆1,800億円)に達している。 このように、順調に成長を続けているアルコール飲料業界であるが、グローバルな視点から見ると、まだまだ規模が1周りどころか2周りも違うことを意識しなければならない。例えば、最も世界で飲まれているウイスキーブランドの「ジョニーウォーカー」のようにグローバルブランドの世界で定着している長い歴史と比べると、日本産アルコール飲料の輸出の「伸びしろ」は大きい。今後、さらなる成長を目指すためには、国際市場において競争力を高めるための戦略的な取り組みが求められる。 当然、アルコール飲料の輸出強化を考えた際には、本レポートの範囲を超えた詳細な検討が必要である。次回以降のレビューにおいては、これらの課題を深掘りし、具体的な解決策や戦略を提示していく予定である。業界全体の成長のためには、包括的な視点からのアプローチが求められることを再確認し、今後の取り組みに期待を寄せている。 ディスクレイマー 本資料は、ご参考のために野村證券株式会社が独自に作成したものです。本資料に関する事項について貴社が意思決定を行う場合には、事前に貴社の弁護士、会計士、税理士等にご確認いただきますようお願い申し上げます。本資料は、新聞その他の情報メディアによる報道、民間調査機関等による各種刊行物、インターネットホームページ、有価証券報告書及びプレスリリース等の情報に基づいて作成しておりますが、野村證券株式会社はそれらの情報を、独自の検証を行うことなく、そのまま利用しており、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。また、本資料のいかなる部分も一切の権利は野村證券株式会社に属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。 当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。 国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。 外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
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02/15 09:00
【オピニオン】長期金利が本格上昇、節目の2%越えを目指すか
※画像はイメージです。 日銀は2025年1月23~24日開催の金融政策決定会合で、事前の市場予想通り政策金利の引き上げを決定しました。24年3月に17年ぶりの利上げに踏み切って以降、24年7月会合に続き今回で3回目の利上げ決定となります。政策金利の引き上げとともに長期金利(10年国債利回り)も上昇基調を続けており、足元では1.3%台半ばまで上昇ピッチが加速しています(2月12日時点)。市場参加者の一部では、長期金利の1.2%超えは株価上昇の重石、と警戒する声も散見されます。チャート面から今後の長期金利の動向について考えてみましょう。 下図は2004年1月以降の日本の10年国債利回りの月足チャートです。10年国債利回りは、16年7月ボトム(-0.300%)と19年8月ボトム(-0.290%)によるダブルボトムを形成し、その後は本格的な利回り上昇トレンドに入りました。22年以降は12ヶ月移動平均線(2月12日:1.012%)を下支えとする上昇となっているのがわかります。24年夏場に株価が急落し利回りが急低下した際でも概ね12ヶ月移動平均線が下支えとなっており、日銀が追加利上げを模索するスタンスを崩さない以上、今後も同線を下支えとしながらの上昇基調が継続すると考えられます。 (注1)直近値は2025年2月12日。チャートは新発10年国債利回りの単利・日次終値を基に月足に変換している。新発10年国債利回りは日本相互証券公表の引値で、毎月、新発国債の入札日に銘柄の入れ替えを行っている。(注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(注3)日柄は両端を含む。(出所)日本相互証券より野村證券投資情報部作成 中長期的な観点からは、2025年1月に06年5月ピーク(1.990%)から16年7月ボトム(-0.300%)までの利回り低下幅の2/3戻し(1.226%)水準を突破した点も重要です。チャート上の次の大きな節目は、同全値戻し(1.990%)を含む06~08年につけた複数のピークや心理的フシがある1.9~2.0%水準まで見当たりません。今回の19年8月以降の利回り上昇ペース(約5年半で1.630%ポイント)をベースにすれば、今後12ヶ月移動平均線を意識する一時的な利回り低下をこなしつつ、先行き2~3年かけて2%超えを視野に入れる利回り上昇となる可能性も十分考えられます。 テクニカル分析は過去の株価・為替等の値動きを分析・表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。また、記載されている内容は一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。 ご投資にあたっての注意点
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02/15 07:00
【来週の予定】ドイツ総選挙へ、極右勢力台頭の可能性
来週の注目点:トランプ政権の関税政策、ウクライナ情勢、ドイツ総選挙 引き続き、米国トランプ政権の動向が市場のボラティリティー(変動性)の大きな要因になっています。2月初旬に155円付近にあった円の対米ドルレートは、2月7日には一時150円台まで円高が進行しましたが、その後、154円台まで揺り戻しました(2月13日時点)。トランプ関税による日本経済への悪影響が相対的に小さくなるとの思惑や、日銀の利上げ継続期待が円高要因です。しかし、足元では、ウクライナ紛争の停戦・終結への期待が高まったことや、1月の米国の消費者物価指数(CPI)の伸び率が市場予想を上回り、インフレ懸念と米金利の先高観が強まったことを受けて、米ドルやユーロに対して円は弱含んでいます。 米国では、19日(水)に1月FOMC議事要旨が発表されます。政策金利とインフレ見通しに加えて、トランプ政権の政策に対する議論が注目されます。経済指標では、18日(火)発表の2月NY連銀製造業景気指数、20日(木)の2月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、21日(金)発表の2月PMI速報値など、景気指数の発表が続きます。 日本では、17日(月)に10-12月期実質GDP(1次速報値)が発表されます。野村では、前期比+0.8%(年率+3.2%)と大幅なプラス成長になったと予想します。ただし、輸入の減少が主因で、内需はやや伸び悩んだとみています。19日(水)には12月機械受注と1-3月期の受注見通し、21日(金)には1月全国CPI、2月PMI速報値が発表されます。1月全国コアCPIは前年同月比+3.2%と、12月(同+3.0%)から伸び率が加速したと野村では、予想します。こちらは日銀の政策判断にも影響するため、重要です。 ユーロ圏では、18日(火)にドイツの2月ZEW景況感調査、21日(金)には2月PMI速報値と、景気指数の発表が続きます。また、23日(日)にはドイツで総選挙が実施されます。連立政権の組み方によって、政策の方向性が大きく変わる可能性があるだけに、注目です。 (野村證券投資情報部 坪川 一浩) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2025年2月14日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点