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06/16 19:00
【特集】1年で株価が2倍の「バガー銘柄」その傾向とは 実際に2倍になった銘柄を分析
大きく値上がりしそうな銘柄を探して投資できるのも株式の魅力の一つです。しかし、実際に探すとなると難しいものです。1年間で株価が2倍以上になった「バガー銘柄」にはどんな傾向があるのでしょうか。野村證券投資情報部の大坂隼矢が過去の事例に照らし、銘柄探しのヒントについて解説します。 2023年は生成AIや半導体工場誘致が投資のテーマに ――昨年1年間で2倍以上になった「バガー銘柄」には、どんなものがありましたか。 大坂隼矢(以下、同)日本の株式市場に上場している4,000を超える銘柄のうち、2023年に2倍以上に値上がりしたのは計127銘柄でした。 (注)前年末から各年末までの年間騰落率が100%(2倍)以上となった銘柄数を算出。前年末の時価総額で算出。母集団は現在の全上場企業であり、上場廃止になった銘柄は含まない。(出所)東京証券取引所などより野村證券投資情報部作成 2023年は生成AIが市場の注目テーマとなりました。生成AI向けクラウドサービスを展開するさくらインターネット(3778)や、生成AI向け半導体の生産に用いられる独自の製造装置が注目されたTOWA(6315)などの株価が1年間で4倍以上の上昇となりました。 また、TSMCの熊本工場新設などを受け、国内の半導体関連企業にも注目が集まり、半導体製造に必要な「超純水」を展開する野村マイクロ・サイエンス(6254)や半導体テストの受託事業を展開するテラプローブ(6627)なども株価を3倍以上に伸ばしました。 1年間で株価が2倍になるバガー銘柄は、時価総額の小さな小型株に多く見られます。しかし、時価総額が比較的大きな企業でも株価が2倍になる銘柄は存在します。2023年の年初時点で時価総額が1,000億円を超えていた銘柄で、2023年の1年間で2倍以上になった銘柄は計15銘柄ありました。「生成AI」や「半導体工場誘致」が投資のテーマとなったこともあり、半導体関連企業が過半数を占めています。 また、神戸製鋼所(5406)や山崎製パン(2212)など、かつてPBRが1倍を大きく割れるほど市場の評価が低かった銘柄が、業績の大幅な改善をきっかけとして、評価が「一変」するといったケースもありました。 2023年に株価が2倍以上になった銘柄(2022年末時点の時価総額1,000億円以上の銘柄) (注)2022年末から2023年末までの年間騰落率が100%(2倍)以上となった銘柄のうち、2022年末時点で時価総額1000億円以上の銘柄を掲載している。母集団は現在の全上場企業であり、上場廃止になった銘柄は含まない。(出所)東京証券取引所などより野村證券投資情報部作成 ――過去にはどういった銘柄の株価が大きく上昇したのでしょうか。 2023年に半導体が投資のテーマとなったように、時代の変化によって、注目される銘柄も移り変わっています。 例えば、新型コロナウイルスの感染が拡大していた2020年は「医療のデジタル化」がテーマとなり、医療従事者向けプラットフォームを展開するエムスリー(2413)や医療データを提供するJMDC(4483)が2倍を超える上昇率を記録しました。 また、コロナ禍での「巣ごもり需要」もテーマとなり、コーエーテクモホールディングス(3635)やネクソン(3659)、カプコン(9697)といったゲーム関連株も大きく上昇しました。 (注)業種は東証33業種分類。(出所)東京証券取引所などより野村證券投資情報部作成 ――2倍以上に上昇する銘柄は将来的な成長が期待されている銘柄ですので、事業への先行投資などによって赤字になっている企業も多いようなイメージがあります。 1年で株価が2倍になった銘柄を業種別に分けると、「情報通信」や「サービス業」の比率が相対的に高い年が多いです。これらの業種は比較的、新しい企業が生まれやすいとされる業種です。 確かに、新興企業の中には、将来の成長のために積極的な投資を行っているため経常赤字を計上している企業もあり、バガー銘柄の中にも、経常赤字の企業は一定程度存在します。 ただし、その比率は決して高くありません。投資家にとっては、将来の成長を期待できる経常赤字の企業に投資するより、成長も期待でき、なおかつ現状も経常黒字となっている企業に投資をした方が投資リスクを抑えるといった点では有効だからではないでしょうか。 ――バガー銘柄を探すためのポイントを教えてください。 月並みではありますが、社会の動きを読むことが大切だと思います。株式市場は人気投票の場です。生成AIやコロナ禍など、時勢やトレンドを踏まえ、資金が集まりそうなセクターや企業を探してみましょう。 そして、自分なりに見つけ出した企業の売上高や利益が、足元で着実に伸びているかどうかを企業のIR情報などで確認してから投資をするかどうかを決めるのがよいと思います。 ご投資にあたっての注意点
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06/16 12:00
【特集】TOPIX Core30採用銘柄の変遷からみる、日本の株式市場の変化
「TOPIX Core30(以下、Core30)」をご存じでしょうか。東京証券取引所(東証)が算出・公表している、日本の上場企業のうち時価総額と流動性がともに高い30銘柄で構成される株価指数です。1998年に設けられた「日本の代表的企業群」ともいえます。過去から現在までの値動きと採用銘柄の変遷について、投資情報部で株価チャートなどの分析を担当している野村證券投資情報部の岩本竜太郎が解説します。 日本を代表する「超大型株」30銘柄 ――Core30は一般的にあまりなじみのない指数ですが、具体的にどういったものなのでしょうか。 岩本竜太郎(以下、同)東証は上場企業のうち、時価総額100位に入るものを「大型株」としていますが、TOPIX Core30(以下、Core30)は、時価総額が数兆円超の日本を代表する「超大型株」30銘柄で構成される株価指数です。 TOPIXと同じく、東証が算出・公表している株価指数「TOPIXニューインデックスシリーズ」の一つです。東証が毎年8月末時点の株価などを基に、10月末に銘柄の入れ替えを実施します。 銘柄選定の方法ですが、まず、TOPIXを構成する2,100を超える銘柄のうち、その時点での直近の3年間の売買代金の合計額が90位以上の銘柄の中から、さらに時価総額が大きい順に15銘柄を選定します。 このほかの15銘柄は、すでにCore30に入っている銘柄のうち、基準日までの直近3年間の売買代金合計額の順位が90位以上で、さらに時価総額が40位までに入っているものの中から、時価総額が大きい順に15銘柄まで選んでいきます。 しかし、すでに指数に組み入れられている銘柄だけでは、基準日時点の時価総額が40位までに入っている銘柄が15銘柄に達していない場合もあります。その場合は再び売買代金合計額90位以上の銘柄から、上位の銘柄を選定します。売買代金上位の銘柄に絞っているため、たんに時価総額が大きいというだけではなく、流動性も高いのが特徴です。 東証はCore30の公表を始めた1998年4月1日時点を1,000ポイントとして指数を算出しています。2000年代前半のITバブルの時には、当時組み入れられていた日本電気(NEC、6701)や富士通(6702)など、コンピューターなどの製造・販売を手掛けていた「IT企業」の株価が高騰、最高値の1644をつけました。当時の値動きはTOPIXや日経平均株価を相対的に大きくアウトパフォームしていました。 その後乱高下し、リーマンショックを契機とした世界金融危機や、東日本大震災などで日本経済が低迷していた2011年11月に357と底値を付けました。以降、TOPIXや日経平均株価に近い動きとなり、直近では2月22日に1,400台に乗せて以降、おおむね同水準で推移しています。 大型で流動性も高い銘柄群ですので、経営破たんするリスクも相対的に小さく、株式の需給悪化などにより売買しにくくなることもほぼありません。このため、個人投資家の長期投資に向いている、といえそうです。ただし、銘柄は毎年入れ替わっている点には注意が必要です。 (注1)各指数は月次、高値・安値は日次終値ベース。直近値は2024年5月26日。トレンドラインには主観が含まれておりますのでご留意ください。出来事などはすべて網羅しているわけではありません。(注2)相対的なパフォーマンスの差を示すため、目盛りの上限値をTOPIX Core30(左軸)は1800、TOPIXは4000としました。(出所)JPX総研より野村證券投資情報部作成 26年間で過半の銘柄が入れ替わった ――銘柄が毎年入れ替わった結果、構成銘柄も大きく様変わりした印象です。これまでどのように変化してきたのでしょうか。 1998年時点と比較すると、過半の18銘柄が入れ替わっていますね。 とりわけ大きな変化としては、1998年の時点で日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ(8411))や住友銀行(現三井住友フィナンシャルグループ(8316))、東京三菱銀行(現三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306))など銀行が7行も入っていました。金融危機をきっかけに統廃合が進み、現在はメガバンク3行のみが残っています。 また、大手電機メーカーの多くも抜けてしまいました。1998年の時点では組み入れられていた松下電器産業(現パナソニック ホールディングス(6752))や東芝(上場廃止)のほか、先ほどお話ししたIT大手、NECや富士通も除外されてしまいました。現在残っている電機メーカーと言えば、日立製作所(6501)とソニーグループ(6758)ぐらいになってしまいました。 (注)黒色の太字は、1998年4月、2024年3月時点で共にTOPIX Core30に組み入れられている銘柄。赤字は1998年4月には組み入れられていなかった銘柄。セブン&アイ・ホールディングスはセブンイレブン、イトーヨーカ堂、デニーズが統合し誕生した。三菱UFJフィナンシャル・グループは東京三菱銀行、三菱信託銀行等による三菱東京フィナンシャル・グループと、三和銀行や東海銀行の合併によって誕生したUFJ銀行等を含むUFJホールディングスの経営統合により誕生。三井住友フィナンシャルグループはさくら銀行、住友銀行の合併によって誕生した三井住友銀行等を含む金融持ち株会社。みずほフィナンシャルグループは日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行等が経営統合し設立されたみずほホールディングスが、その後社名変更した。東京海上ホールディングスは東京海上火災保険と日動火災保険等の経営統合によりミレアホールディングスとなり、その後社名変更した。富士写真フイルムは現・富士フイルムホールディングス。松下電器産業は現・パナソニック ホールディングス。ソニーは現・ソニーグループ。野村證券は現・野村ホールディングス。(出所)JPX総研、各種データより野村證券投資情報部作成 今では日立の主軸はデジタル関連のサービスや再生可能エネルギー関連です。一方、ソニーの主軸はゲームや音楽、映画などのエンターテインメント、そして金融などのサービスです。スマホのカメラなどに使われるイメージセンサーでも世界シェアナンバー1です。 銀行や電機メーカーが抜けた分の枠には、三菱商事(8058)や三井物産(8031)などの大手商社や、東京エレクトロン(8035)や信越化学工業(4063)、HOYA(7741)など半導体の製造装置や材料を手掛ける企業、キーエンス(6861)やファナック(6954)、ニデック(6594)、村田製作所(6981)といった機械・電子部品メーカーなどが入っています。また、情報サービスを幅広く手掛けるリクルートホールディングス(6098)が入っているのも印象的です。 総じて、時代に合わせて柔軟に業態を転換することに成功した企業は残り、時代に合った新しい産業を展開する企業が入ってきました。 しかし、足元の生成AI関連に代表されるデジタル関連の需要増で、富士通やNECも業績を盛り返してきており、実際に富士通の時価総額は上場企業のうち40位前後に入っています。これらの企業がCore30に再び姿を現す日も来るかもしれませんし、あるいは、新たな成長企業が入ってくるのかもしれません。 ――米国の「ダウ平均株価」もいわゆる超大型株30銘柄で構成されています。銘柄数は同じですので「日本のダウ」と言ってもよいのでしょうか。 「それぞれの国を代表する30社」で構成されているという点では同じと言っていいかもしれません。ただ、共通するのはその点だけのような気がします。 まず、算出方法が異なります。ダウ平均株価は日経平均株価と同じく「株価平均型」です。これは構成銘柄の株価の合計を発行済み株式総数など特定の値で割って算出する方法です。一方、TOPIXやCore30は「時価総額加重平均型」で、構成銘柄の時価総額の合計を、ある時点の時価総額で割って算出する方法です。 また、銘柄選定の方法も異なります。ダウの構成銘柄は数値条件などが厳密に定められていません。成長性や投資家の関心度などから総合的に判断されています。ダウは基準が明確ではないのに対して、TOPIXは基準が明確です。ただ、結果的に国を代表する30銘柄が選ばれており、比べてもさほど違和感はありません。 そして、残念ながら米国のダウ平均株価の構成銘柄と、日本のCore30構成銘柄では世界的な知名度で格段の差があります。トヨタ自動車(7203)やソニーグループ、任天堂(7974)など現在でも世界的な知名度を持つ企業も含まれてはいますが、今後、Core30の中からさらに世界的な存在感を示す企業が現れることに期待したいですね。 ご投資にあたっての注意点
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06/16 09:00
【注目トピック】生成AIがけん引、2025年も拡大続く世界半導体市場
※画像はイメージです。 WSTSの2024年春季世界半導体市場予測 2023年・2024年ともに上方修正 米国時間6月4日に、主要半導体メーカー48社で構成される業界団体、WSTS(世界半導体市場統計)が、2024年春季の半導体市場の見通しを発表しました。今回の予測は、2024年3月までの実績値を基に作成したとのことです。 半導体市場全体は、2023年実績と2024年予想が、前回発表時点(2023年11月)よりも上方修正となっています。2023年は前年比縮小しましたが、2024年については拡大に転じ、これまでの過去最高だった2022年の5,741億米ドルを超えるという方向に変わりはありません。そして、今回新たに示された2025年は、さらに拡大が続くと予想されています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)灰色は実績、薄い赤色は2023年11月時点、赤色は2024年6月時点のWSTS(世界半導体市場統計)による予測。(出所)WSTS、LSEGより野村證券投資情報部作成 生成AIがけん引、メモリーも回復へ 発表資料の中でWSTSは、2023年について、「世界的なインフレやそれに伴う利上げ、地政学リスクの高まりなどが個人消費や企業の設備投資等に影響し、AI関連・自動車用途を除き半導体需要は低調であった」としています。 2024年については、「前年比+16.0%と 再拡大を予測した。引き続き世界的に旺盛なAI関連投資を背景にメモリーや一部ロジック製品の需要が急拡大しており、これが牽引するものとみられる。一方AI関連を除くと上述のマイナス要因が継続し、現在に至るまで半導体需要は低調に推移している。このため今回の会議では年後半の急回復を想定し難く、通年では多くの製品で前年比マイナス成長を予測した」としています。 2025年については、「前年比+12.5%と更なる市場拡大を予測した。AI関連の需要に加え、環境対応や自動化等の成長領域を念頭に、半導体市場の継続的な成長を期待した」としています。 前年比伸び率を製品別についてみると、メモリーは2023年に前年比-28.9%と最も足を引っ張っていましたが、2024年には同+76.8%と急回復が予想されています。 なお、WSTSは、2024通年では多くの製品で前年比マイナス成長を予測したとしていますが、ディスクリート(一素子一機能の単一機能製品)、オプトエレクトロニクス、センサー、アナログなどでマイナス成長が予想されています。 一方、WSTSが生成AIの恩恵を受け易いとコメントしているロジック製品は、前年比+10.7%と予想されています。 (注)世界半導体市場の地域別・製品別内訳。2024年、2025年は2024年6月時点のWSTS(世界半導体市場統計)による予測。(出所)WSTS、LSEGより野村證券投資情報部作成 地域別の動向をみると 地域別では、2024年は米州、アジア太平洋が前年のマイナス成長から大きく反発する予想となっています。一方、欧州・中東・アフリカは前年比微増、日本は若干のマイナスが継続する予想となっています。 2023年11月時点の予測と比較すると、米州、アジア太平洋が2023年、2024年共に上方修正されている一方、日本と欧州・中東・アフリカは下方修正となっています。 このような地域別の動向は、メモリーやロジック製品は米州、アジア太平洋の半導体メーカーが多い一方、ディスクリート、オプトエレクトロニクス、センサー、アナログなどは、欧州や日本の企業が多いことがあると推察されます。 (注)2023年、2024年予は2024年6月時点のWSTS(世界半導体市場統計)による実績集計及び予想。修正額及び修正率は、2023年11月時点の予測金額からの修正動向。(出所)WSTSより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 今回発表されたWSTSの予測は、2024年の予測が前回発表よりも上方修正され、今回新たに示された2025年はさらに拡大が継続する予想となっています。 生成AIが牽引し、メモリーやロジック製品の需要が拡大していることが、半導体市場全体を押し上げている一方、ディスクリートやオプトエレクトロニクス、センサー、アナログなど、一般産業向けが多い製品群では2024年も引き続きマイナスが予想されるなど、懸念される部分もあります。 今後、各半導体メーカーの四半期決算や、業界に関する各種報道などを通じ、半導体市場全体の状況や、製品別の動向を把握していきたいと考えます。 (注)2022年末=100とする指数。直近値は2024年6月12日。フィラデルフィア半導体株指数は、米国の証券取引所に上場する主要な半導体関連30銘柄で構成される株価指数。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 村山 誠) ご投資にあたっての注意点
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06/15 19:00
【来週の米国株】アドビとオラクルの株価が2桁上昇、金利上昇の逆風を強い景気・業績が打ち消すか?(6/15)
※執筆時点 日本時間14日(金)12:00 今週:FOMCを無事通過、情報技術セクターに期待 ※6月7日(金)-6月13日(木)4営業日の騰落 アップル(AAPL)の開発者会議やアドビ(ADBE)、オラクル(ORCL)の3-5月期決算が堅調だったことを受けて、情報技術関連銘柄が主導し、S&P500 とナスダック総合は史上最高値更新を続けました。 アップルは上場来高値を更新 米国時間11日(火)にアップルの株価は前日比+7.26%の207.15ドルで引け、上場来高値を更新しました。前日10日(月)には、同日に開催した年次開発者会議、WWDC(Worldwide Developers Conference)を受けて、アップルの株価は前日比-1.91%の193.12ドルで取引を終了していました。しかし11日は、一転して上昇し、上場来高値更新となりました。 今回のWWDCでアップルから独自の大規模言語モデルの発表がなかった点を捉えて、マイクロソフト(MSFT)やアルファベット(GOOGL)傘下のグーグル、アマゾン・ドットコム(AMZN)など、独自の大規模言語モデルを展開する企業と比べて、アップルのAI戦略が見劣りするという論調も散見されます。他方、アップル製品のユーザーにはiPhone等でできることには関心はあるものの、技術自体にはそれ程関心がない方も多いと推測されます。あまり技術的な側面に重きを置きすぎずに、ユーザーの視点で判断をしていくべき局面とも考えられます。 今後は、8月初旬に予定される当社の4-6月期決算発表や、例年9月に予定される新製品の発表に注目が集まります。 アドビ、オラクルは決算発表後に株価上昇 今週はソフトウェアセクターの3-5月期決算も好調なものが目立ちました。オラクルは11日(火)引け後に決算を発表し、翌日12日(水)には前日比+13.3%と上昇しました。アドビは13日(木)の引け後に決算を発表し、時間外取引で同日終値比+14.75%上昇しました。オラクルはクラウドインフラ部門の売上高が市場予想を上回ったことやオープンAIやグーグルとの提携を発表したことなどが、アドビは売上高と1株当たり利益の通期予想を引き上げ、市場予想を上回ったことなどがそれぞれ市場に好感されたと考えられます。 これまでの生成AIは設備投資やハードを準備する段階であり、情報技術の中でも半導体が特に注目されていましたが、今後生成AIや半導体を利用してサービスを提供する側のソフトウェアにも市場の注目が集まるシナリオも想定されます。 FOMCは無事通過、金利は上方修正 FRB(米連邦準備理事会)が11-12日に開催したFOMC(米連邦公開市場委員会)では、大方の事前予想通り政策金利の据え置きを決定しました。注目された政策金利見通し(中央値)は、1回当たりの政策金利の変更幅を0.25%ポイントとした場合、24年中の利下げ回数は前回(24年3月)時点の3回から1回へ変更されました。また長期の政策金利見通しも2.75%へと3月FOMC時点の2.6%から引き上げられました。 全体として、FOMCで発されたメッセージからは金利低下が株価の追い風になるという展開は期待しづらい内容だったと言えます。一方、経済指標に目を向けると、5月CPI(消費者物価指数)が市場予想を下回るなどインフレ鈍化を示唆するものも増えています。 来週のポイントは”ハードデータ” 18日(火)に5月小売売上高、5月鉱工業生産、20日(木)に5月住宅着工・建設許可件数、21日(金)に5月中古住宅販売件数と注目度の高いハードデータ(実際の経済活動を表すデータ)の発表が予定されています。米国では2024年に入って、特に個人消費関連で利上げの影響を示す経済指標が散見され始めました。この点では、住宅関連統計の結果が注目されます。また、目先の景気動向を見極めるうえでは、6月のNY連銀(17日(月))やフィラデルフィア連銀(20日(木))の製造業景気指数、21日(金)発表の米国を含む、主要国の6月PMI速報値が市場の関心を集めると見られます。 当面は、経済指標やFRB幹部の発言等を通して、FRBの経済の現状認識と金融政策のスタンスを確認し、利下げ開始時期を見極めていきたいと考えます。 (編集:野村證券投資情報部 小野崎 通昭) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール
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06/15 12:00
「行動ファイナンス」で疑問を解決!第1回「買ったばかりの株が急落…」
※画像はイメージです。 野村證券金融工学研究センターの大庭昭彦が、皆さまの投資に関するお悩みを行動ファイナンスの観点から分析、解決法を探っていきます。第1回では、保有株の株価急落を心配する投資家の方の悩みにお答えします。 お悩み数年後の成長を見据えてある企業の株を買い付けましたが、買った途端に経営者が保有株を売却したことに市場が反応して株価が急落してしまいました。経営の中身では特に新しい情報はないので証券会社などのアナリストらの予想は強気のままなのですが、「何かあるのでは」と気になってしまって夜も眠れません。どうすればよいでしょうか。(Aさん、40代、会社員) 回答:「投げ売り」に気を付けて まず、せっかく考え抜いて投資した銘柄の株価が買ったとたんに急落してしまい、大変不安なことと思います。 こうした時に「普通の人」が反射的にやってしまいがちなのは、投げ売りしてしまうことです。不安の元が投資していることだとすれば、投資をやめれば不安もなくなるかもしれません。でも本当に「下落したから」という理由で売ってしまって良いのでしょうか。 ここでイメージすべきなのは、よくメディアで紹介されるような「投資で失敗した人」です。さまざまな失敗例がありますが、典型的なのは「将来のためを考えて投資を始めたのに、急落したので投げ売りした。投資しなければ良かった」と言う人です。 この例を冷静に見直せばわかるように、失敗は「投資したこと」ではなく「投げ売りしたこと」です。合理的に考えれば、長期保有を想定していて、その想定は全く変わっていないのに、相場の短期的な変化に反応して売却することは間違っています。逆に「投資で成功している人」は投げ売りしなかった人に限られますね。 しかし、雑誌やネットのメディアで「投資で失敗した人」が取り上げられる時には「投げ売りが失敗だった」というストーリーではなく、「投資そのものが失敗だった」というストーリーになっていることが大半です。また、投げ売りした人たち自身も「売却が失敗だった」とはあまり言わないようです。これには理由がありそうです。 人は何らかの行動をした後で「この行動は失敗だった」と認めることはとても嫌なものです。これを行動ファイナンスでは「認知的不協和」の状態にあるといいます。そして、その不協和を解消するために、行動を見直すのではなく、行動の前提を変えようとしがちです。具体的には、売却が間違いではないという「根拠」を探して回るか、それが難しければ、投資したこと自体を忘れたい気持ちになることが多いようです。(参考:基礎から学べる行動ファイナンス 第5回「すっぱいブドウのバイアス」) 焦る気持ちを抑えましょう Aさんにとって良かったことの一つは、すぐに投げ売りをしていないことです。下落からある程度時間が経過していることも良いですね。そもそも脳の判断についての「2重過程モデル」では、人はすぐに働く「直感脳」とゆっくりと働く「熟慮脳」の2種類の脳で別々の判断をしている、と説明されます。そして、判断のタイミングや状況に応じて、総合的に1つの判断を採用しているようです。 投げ売りは直感脳により間を置かずにやってしまいがちな行動です。投げ売りを抑制でき、時間が経過して熟慮脳に判断が移れば、考えは変わります。 熟慮脳によって、そもそも数年後の成長を見据えていたこと、経営者の行動は特に企業の成長性の判断と関係がないこと、短期的な下落は想定内だったことなどを思い起こせば「下落したことだけを理由にして売るべきではない」という理性的な判断ができるかもしれません。 「何かあるのでは」と気になってしまうとのことですが、実際に「何かあったのに情報公開前に経営者が株式を売却すること」はインサイダー取引として刑事罰の対象となるほど重大な「事件」であり、めったに起こりません。これが、たまたま自分が買った銘柄で、買ったばかりのタイミングで起こる確率はかなり低いことを思い起こすのも有用かもしれません。(参考:基礎から学べる行動ファイナンス 第7回「『思い込み』の問題」) 自力で直感脳を抑制できる方は問題ありません。しかし、自力で抑制するのは難しいという方も多いのではないでしょうか。この場合は事前に自分の将来の行動に制約をかける「コミットメント」ができるよう工夫することや、必要に応じてご家族や信頼できる知人などの力を借りることが、「投資で失敗した人」にならないために役立つでしょう。(参考:基礎から学べる行動ファイナンス 第9回 「自分の未来にも約束させる」) 大庭 昭彦野村證券株式会社金融工学研究センター エグゼクティブディレクター、CMA、証券アナリストジャーナル編集委員、慶應義塾大学客員研究員、投資信託協会研究会客員。東京大学計数工学科にて、脳の数理理論「ニューラルネットワーク」研究の世界的権威である甘利俊一教授に師事し、修士課程では「ネットワーク理論」を研究。大学卒業後、1991年に株式会社野村総合研究所へ入社。米国サンフランシスコの投資工学研究所などを経て、1998年に野村證券株式会社金融経済研究所に転籍、現在に至るまで、主にファイナンスに関わる著作を継続して執筆している。2000年、証券アナリストジャーナル賞受賞。 ご投資にあたっての注意点
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06/15 09:00
【オピニオン】米国政策金利の着地点(ターミナルレート)は?
※画像はイメージです。 FRB(米連邦準備理事会)は2024年6月11-12日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、大方の事前予想通り政策金利の据え置きを決定しました。注目された政策金利見通し(中央値)は、1回当たりの政策金利の変更幅を0.25%ポイントとした場合、24年中の利下げ回数は前回(24年3月)時点の3回から1回へ減少した一方、25年に関しては前回の3回から4回へ増加する見通しが示されました。直前のブルームバーグの調査では、24年中の利下げ回数見通しは「2回」と「1回あるいは利下げなし」との見方に2分されていたことから、市場にとって大きなサプライズではなかったと見られます。 声明文ではインフレに関する文言が、「(ここ数ヶ月に)委員会が目指す2%のインフレ目標に向けては緩慢なる一段の進展が見られた」と、利下げに向けて判断が一歩前進したことを示しました。また、会合後の記者会見でパウエル議長は「インフレ率が持続的に2%に向かっているという確信を強めるには、良好なデータをさらに目にする必要がある」と従来と同様、利下げに向け慎重に判断する姿勢を改めて示しました。 26年末の政策金利見通しを見ると、ほとんどのFOMCメンバーが26年中も利下げを継続する意向であること、過半のメンバーは3.0%前後への利下げを想定していることが確認できます。では、今回の利下げ局面における政策金利の着地点(ターミナルレート)はどの辺りが目安となるのでしょうか。 FRBが米国経済のソフトランディング(軟着陸)を予想する中で、景気にとって緩和的でも引き締め的でもない中立金利まで政策金利を引き下げることを想定しているとした場合、目安となるのは「長期(Longer run)」です。 FRBの「長期」政策金利(中央値)は、19年6月会合以降2.5%以下と見られてきましたが、前回は2.5-2.625%、今回は2.75%へ上方シフトしました。背景には5%超の水準まで急速に利上げしてきたにもかかわらず、想定以上に米国景気が堅調に推移していることから、中立金利がコロナ禍以前よりも上昇しているのではないかとの見方が高まっていることがあります。 理論的な中立金利の目安は、実質金利(≒潜在成長率(1.8%程度))とインフレ期待(インフレ目標の2.0%)を足し合わせた3.8%程度です。このため今後も米国景気が堅調に推移する場合は、「長期」政策金利が上方修正される余地があると言えます。 ご投資にあたっての注意点
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06/15 07:00
【来週の予定】注目度の高い米住宅関連統計で、利上げの影響を確認
来週の注目点:主要国の6月PMI速報値と日米中のハードデータ 6月に入って続いてきた主要中央銀行の金融政策決定会合もようやく一山超えました。ECB(欧州中央銀行)、BOC(カナダ中央銀行)は利下げを実施した一方、FRB(米連邦準備理事会)、日本銀行は政策金利を据え置きました。注目されていたFRBの政策金利見通し(中央値)は、24年中の利下げが前回3月時点の3回から1回へ修正されました。市場ではFRBの見通し変更に大きなサプライズはなく、同日公表された5月コア消費者物価指数(CPI)の減速が好感され、株高、金利低下、ドル安で反応しました。 今週、米国では18日(火)に5月小売売上高、5月鉱工業生産、20日(木)に5月住宅着工・建設許可件数、21日(金)に5月中古住宅販売件数と注目度の高いハードデータ(実際の経済活動を表すデータ)の発表が予定されています。米国では24年に入って、特に個人消費関連で利上げの影響を示す経済指標が散見され始めました。この点では、住宅関連統計の結果が注目されます。また、目先の景気動向を見極めるうえでは、6月のNY連銀(17日(月))やフィラデルフィア連銀(20日(木))の製造業景気指数、21日(金)発表の米国を含む、主要国の6月PMI速報値が市場の関心を集めると見られます。 日本では17日(月)の4月機械受注、19日(水)の5月訪日外国人客数、21日(金)の5月全国消費者物価指数が注目度の高い指標として挙げられます。19日(水)の4月日銀金融政策決定会合議事要旨では、円安への懸念や利上げ以外の政策オプションに対する議論の状況が注目点として挙げられます。 中国では17日(月)に5月小売売上高、鉱工業生産、1-5月固定資産投資・不動産投資と、重要なハードデータの発表が予定されています。中国経済の本格的な復調には不動産市況の改善が必要条件だと見られるため、最も市場の関心を集めるのは不動産投資の行方だと思われます。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2024年6月14日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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06/14 16:23
【速報・解説】日銀、国債購入の減額方針を決定
日銀は金融政策を据え置き、国債購入の減額方針決定も具体策は次回会合 日本銀行は2024年6月13-14日に金融政策決定会合を開催し、事前予想通り政策金利の据え置きを決定しました。注目された長期国債の購入額は、月間6兆円程度のペースを維持することを決定しました。その上で、「長期金利がより自由な形で形成されるよう」、市場参加者の意見を確認したうえで、次回の決定会合で今後1~2年程度の具体的な減額計画を決定することを明らかにしました。市場では長期国債買い入れ額の減額予想が高まる一方で、具体的な枠組みが見えないことが嫌気され、米10年国債利回りが低下する中でも、日本の長期国債利回りは上昇(価格は下落)基調にありました。日銀が、①事前に債券市場参加者の意見を聴取すること、②最低でも1~2年の時間をかけて減額する意向であること、➂次回会合で計画を明らかにすること、を示したことで、国債市場における不透明感が後退することが期待されます。 日銀の発表を受けて10年国債利回りは0.94%、同じく20年国債利回りも1.71%程度と、発表前と比べて約0.3~0.4%ポイント低下、日経平均は前場引け値から190円程度上昇して後場の取引が開始されています。一方、ドル円レートは1ドル=157円20銭前後から158円目前までドル高円安が進行しました。 現在、日銀の金融政策ツールは無担保コール翌日物金利であり、長期国債の買い入れは政策ツールではありません。市場では次回7月会合での利上げ予想が高まっていますが、声明文から日銀が利上げに対して更に前向きになっている様子は確認できません。ただし、今後更に円安が加速する事態になれば、早期利上げ観測が高まることが予想されます。一方、長期国債購入額に関しては、為替動向と絡めた市場の思惑は鎮静化することが想定されます。日銀の国債保有額は約598兆円(6月10日時点)と、国債発行残高の半分弱を占めています。国債市場への無用なストレスを回避するため、日銀が国債購入額の減額に関して柔軟な枠組みを設定した場合、実際の運営に関して不透明感を残す結果となる点には注意が必要です。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)データは日次で、直近値は2024年6月13日。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) ご投資にあたっての注意点
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06/14 15:59
【野村の夕解説】日経平均株価94円高、日銀会合の結果を受け反発(6/14)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は前日比132円安の38,587円で取引を開始しました。その後前日の終値を挟んで一進一退の動きが続きました。注目されていた日銀の金融決定会合の結果は後場寄り付き前に発表されました。今回の会合では追加利上げを見送った一方、当面の長期国債買い入れを減額していく方針としました。新発10年物国債の利回りは、12時台に前日比0.03%ポイント低下(価格は上昇)の0.915%を付けました。外国為替市場では、国債減額の計画について具体的な発表がなかったことなどから日米で金利差が拡大した状況はしばらく続くとの見方が進み、一時1米ドル=158.10円台とおよそ1か月半ぶりの円安水準となりました。日経平均株価は金利低下と円安を背景に後場から上昇に転じ、一時前日比305円高となりました。その後、心理的節目である39,000円台に乗せると利益確定の売りのような動きも見られ、また大引け後の日銀の植田総裁の記者会見を見極めたい思惑もあり上げ幅を縮小させました。大引けは前日比94円高の38,814円となり、3日ぶりに反発し本日の取引を終えました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 日本では、本日引け後に行われる植田日銀総裁の記者会見に注目が集まります。また、米国では14日(金)に6月ミシガン大学消費者マインド調査速報値が発表されます。 ご投資にあたっての注意点