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5分前

【オピニオン】日本の長期金利上昇の裏側

※画像はイメージです。 日本銀行は2025年12月18~19日に金融政策決定会合を開催し、事前の市場予想通り、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.50%程度から0.75%程度へ引き上げることを決定しました。日銀の利上げは同年1月以来、約1年ぶり、0.5%を上回る政策金利水準は1995年以来、約30年ぶりとなります。日銀の利上げ決定後、日本の10年国債利回りは上昇ペースを速め、12月22日には一時2.104%と1999年2月以来、約26年ぶりとなる水準まで上昇しました。 日本の長期金利が上昇を続けている背景として第1に、日銀に対する利上げ期待があると推察されます。日銀を始め、主要な中央銀行、エコノミストの予想期間は通常2年程度です。このため、市場が織り込む政策金利の着地点(ターミナルレート)の代理変数として円スワップ2年先1ヶ月物先物金利に注目すると、12月22日には1.54%まで上昇しました。1回当たりの利上げ幅を0.25%ポイントと仮定すると、市場では今後2年の間に、追加3回の利上げが織り込まれており、この利上げ観測に平仄を合わせる形で10年国債利回りが2.1%台へ上昇したことがわかります。 日本の長期金利上昇の背景として第2に、財政悪化への懸念、あるいは国債増発による需給悪化懸念が挙げられます。2024年3月に日銀が金融政策の正常化に踏み出して以降、市場では日本の超長期金利の上昇と円安が同時進行してきたことが、このような懸念の背景にあります。 日本は黒田日銀総裁(当時)のもと、YCC(長短金利操作)など異例の金融緩和策を講じてきた結果、一時は国債発行残高の約半分を日銀が保有する事態となりました。2022年度には国債発行額の9割超を日銀が買い入れていましたが、日銀は24年7月会合での決定を契機に長期国債の買い入れ額を減額していることから、市場では20年超の超長期国債を中心に、需給悪化懸念が高まっていました。 このような状況下で、「責任ある積極財政」を掲げる高市政権が発足したこと、予算案の可決には野党の協力が必要なため、財政規模は拡大しやすいこと等が、市場の懸念に拍車を掛けているようです。   日銀が半年に1度のペースで利上げを継続できるかは不確実性が高いこと、仮に財政赤字が拡大しても、前倒し国債の発行額などの調整により、国債発行額の平準化が図られることから、一本調子の金利上昇が続く可能性は低いとみられます。一方で、長期金利の動きは、金融政策や財政面で日本経済が重要な転換点に差し掛かっていることを示唆しているとの見方もできます。 日本の政策金利・10年国債利回りと米ドル円相場の推移 (注)データは月次で、 直近値は2025年12月22日。政策金利は1998年まで公定歩合、それ以降は無担保コール翌日物レート(ただし、2016年1月~2024年3月の期間は日本銀行当座預金のうち政策金利残高への付利)。 (出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点