野村のオピニオン
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2023/12/22 12:00
【今週のチャート分析】日経平均、75日線を下支えに再び半年続く保ち合いの上限へ(12/22)
※2023年12月21日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 調整一巡後は保ち合い上放れへ向けた動きが期待 今週の日本株は、週半ばにかけては堅調な動きとなったものの、20日の米国株が大幅安となったことを受けて、21日は調整となりました。 日経平均株価のこれまでの動きを振り返ってみましょう。日経平均株価は、12月8日安値(32,205円)にかけての下落でこれまで何度かフシとして機能してきた75日移動平均線(21日:32,467円)の水準まで下落しました(図1)。その後75日線と25日線(同:33,182円)の間で横ばいとなっていましたが、19日の日銀金融政策決定会合を無難に通過したことで25日線を超え、20日には一時33,800円台まで上昇しました。 21日は米国株安を受けて反落となっていますが、6月に上値を抑えられてから既に約半年が経過しており、調整一巡後は11月20日高値(33,853円)を超え、保ち合い上放れへ向けた動きとなることが期待されます。一方で調整が続く場合は、8日に下支えとなった75日移動平均線(同:32,467円)の水準を維持できるか注目されます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2023年12月21日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 次に中長期的な動きを確認すると、初夏に33,000円台後半で上値を抑えられた後は、大きな上昇局面内の一旦の調整である「中段保ち合い」に移行したと考えられます(図2)。これまでの調整を経て、期間に加え下落率(10月安値時点)の点でも2020年6月~10月末の中段保ち合い時と比較して、調整が十分となっていると捉えられます。目先の調整一巡後は、再度中段保ち合いの上限突破を目指す動きとなることが期待されます。 (注1)直近値は2023年12月21日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 年末特集:NYダウ 2024年の見通し 2023年のNYダウは、欧米の金融不安等による3月にかけての調整や、米国長期金利上昇を嫌気した10月にかけての調整をこなし、12月に史上最高値を更新しました。2024年は、これまでの流れを引き継ぎ、中長期上昇トレンドが続くと考えられます。 まず週足チャートをみると、2023年3月や10月にかけての2度の調整は、2020年3月安値から2022年1月高値にかけての中長期上昇トレンドの中盤にかけて見られた2度の一時的調整局面(22年6月と10月)と、下落率等の点で類似しています(図3)。 前回は2度の調整をこなした後、1年強で1万ドルを超える上昇となっており、今回も同様の動きとなるか注目されます。 (注1)直近値は2023年12月20日。 (注2)日柄は両端を含む。(注3)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)S&P ダウジョーンズ・インデックス社データより野村證券投資情報部作成 次に月足チャートをみてみましょう(図4)。2009年以降、中長期上昇局面は前回(図中:⑤)を含め、5回(同:①~⑤)ありました。それら5回のうち、コロナショックで天井形成となった局面(④)を除けば、上昇期間は約2~3年半となり、また上昇倍率は1.7~2.0倍となっています。 仮に上昇倍率1.7倍を2022年9月安値に当てはめて試算すると、48,832ドルと試算されます。この先13週移動平均線や26週線を下支えとしながら、まずは4万ドル台へ向けた動きとなると考えられます。 (注1)直近値は2023年12月20日。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。 (注3)日柄は両端を含む。(出所)S&P ダウジョーンズ・インデックス社データより野村證券投資情報部作成 (投資情報部 岩本 竜太郎) ※画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2023/12/22 09:30
【野村の投資判断】2024年の「ブラックスワン」と「灰色のサイ」
「ブラックスワン」とは、発生確率が低いものの、起こった場合には極端な影響を及ぼすリスク事象を指します。「灰色のサイ」は、発生確率が高いものの、いつ起こるかが予測困難であるため見過ごされがちなリスク事象を指します。以下に、2024年に考えられる10個の「(確率は低いが発生すると影響が大きい)テールリスク」を示します。 【米国大統領選挙の二極化】 現状では、トランプ氏が勝利する可能性は十分に考えられます。もし彼が勝利し、米国が孤立主義に向かうと、貿易保護主義が台頭し、地球温暖化対策も後退するかもしれません。また、トランプ氏が政敵への報復を追求することで、米国の社会や政治体制が一段と二極化する可能性もあります。トランプ氏が計画する減税についても、投資家が財政赤字を懸念して米国債を売却する可能性があります。 【世界的な供給力の急増】 リモートワークや(在宅・出社勤務を組み合わせた)ハイブリッドワークが浸透することで、労働力の供給が増大する可能性があります。さらに、生成AIの導入が加速すると、生産性の向上も見込まれます。これらの要素がインフレ問題の解消につながる可能性もあります。 【AIによるサイバー攻撃】 AIの規制は遅れがちで、AIがテロリストなどに利用されてサイバー空間や物理空間が攻撃されるリスクが存在します。 【より頻繁な気象災害】 気候変動が進むと、気象災害が頻繁に起こる可能性が高まります。それが食料価格の上昇や財政負担の増大を引き起こし、社会的な不安を引き起こす恐れがあります。 【中印が主導する世界経済の回復】 中国はデフレの危機に直面しており、景気刺激策を打ち出す可能性があります。一方で、インド経済は新興国発展の主軸として成長を続けていく可能性があります。これら2ヶ国は既に世界の商品需要を支配し、世界経済の成長を牽引しています。 【2つの地政学リスクの緊迫化】 イスラエルとハマス、ロシアとウクライナの紛争の緊張が高まる可能性があり、これが2つ同時に進行すると大きなリスクとなります。NATO(北大西洋条約機構)からウクライナへの資金援助が減少すれば、プーチン氏による大規模攻勢が起こるかもしれません。さらに、もしトランプ氏が再び大統領になった場合、状況は深刻化する恐れがあります。 【台湾情勢】 2024年の台湾総統選後の新たな指導者のもとで、台湾が中国政府のレッドライン(越えてはならない一線)を越える可能性があり、初期の報復反応を誤ると、制御不可能な状況に陥るかもしれません。 【2024年のデフレ】 中央銀行は、インフレ目標達成の最終段階が最も難しいことを市場に伝えています。しかし、もし中央銀行の判断が間違っていたとしたらどうなるのでしょうか。経済成長が停滞すれば、労働者の賃金交渉力や企業の価格決定力が急激に失われる可能性があります。同時に、全世界の供給能力の急速な増大や、商品価格の低下が発生する可能性もあります。 【債券市場が財政拡張に警鐘】 先進国と新興国の公的債務が過去最高水準に達しているため、債券市場が警鐘を鳴らすかもしれません。一方で、経済成長の鈍化や貧富の格差拡大、そして大規模な選挙を控えている一部の政府が、債券市場に対抗して、財政拡張を推進する可能性もあります。 【BRICSの拡大】 BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)にアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、UAEを加えた11ヶ国が新たな世界秩序を形成するという観点があります。特に、次回のサミットでは、BRICSのデジタル通貨や新決済システムが登場し、サプライズをもたらす可能性があります。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) 要約編集元アナリストレポート 「2024年世界経済見通し – 新たな道を切り開く(要約版)(2023年12月12日配信)」 (注)要約編集元アナリストレポートの発行日は2023年12月12日。画像はイメージ。(出所)野村證券経済調査部などより野村證券投資情報部作成 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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2023/12/18 20:00
【今週の米国株】マイクロン&ナイキ決算で見通す24年、クリスマス休暇前最後の点検(12/18)
先週:FOMC無事通過で7週連騰の米国株 FOMCと株式市場の反応 先週は、12月FOMC(米連邦公開市場委員会)を無事通過したことで、S&P500指数とナスダック総合指数は年初来高値を更新し、ダウ指数は史上最高値を更新しました。 12月FOMCで示された今後の政策金利見通し(中央値)では、1回あたりの変更幅を0.25%ポイントとした場合、2024年末までに3回の利下げ見通しが示されました。市場では2024年末までに4~5回の利下げを織り込んでいたため、この点だけをみると、株式市場はネガティブに反応してもおかしくはありませんでしたが、今回のFOMCでは2024年中に利下げに転じる方向性が明確に示されたことで、政策金利が当面高い水準で維持されることへの警戒感が緩和され、株式市場はポジティブに反応していると推察されます。 なぜFOMCは利下げを明確化したか 12月FOMCでFRBが発表した経済予測では、実質GDP成長率や失業率の見通しは前回発表の9月時点から大きく変わってはいませんでした。一方、インフレについては、FRB(米連邦準備理事会)が目標とする2.0%を上回る状態が2025年まで続くとみているものの、9月時点の見通しよりは、2023年から2025年にかけて水準を引き下げました。FRBでは、インフレ鎮静化と景気のソフトランディング(軟着陸)を同時に達成する確度が増していると判断したと推察されます。 Point1:23年最終、消費・インフレを確認 FRBと市場が見込んでいるインフレ鈍化のシナリオが正当化されるためには、消費や期待インフレの鈍化が条件となります。今週は住宅関連統計に加えて、20日(水)に12月消費者信頼感指数(コンファレンスボード)、22日(金)に12月ミシガン大学消費者マインド(確報値)、11月個人消費支出・所得統計(中でも、PCE(個人消費支出)デフレーターと呼ばれるインフレ指標)と、いずれも今後の消費、インフレ動向を予想するうえで注目度の高い指標が発表されます。これらの指標が消費減速やインフレ鈍化を示唆し、市場の利下げ観測を促す結果となれば、長期金利の低下、株高につながる可能性があります。 Point2:薄商いとなる中での要人発言には注意 クリスマス休暇が近づく中、週後半に向けて市場は薄商いとなることが予想されます。流動性が低下する可能性もあり、何かサプライズがあった場合にはボラティリティの高い展開となるリスクには警戒が必要です。現時点では19日(火)にアトランタ連銀ボスティック総裁の発言機会が予定されているだけですが、メディアインタビューを含め、FRB高官からの市場の利下げ観測をけん制する発言が見られるかも注目されます。 Point3:マイクロン、ナイキ…実は重要な9-11月期決算発表 米国は9-11月期決算発表が本格化しています。9-11月期決算企業数はS&P500企業ベースで全体の4%にすぎませんが、最も企業決算が集中する10-12月期決算(全体の89%)と2か月分の重なりがあることから、米国株を見通す先行指標として重要な決算期となります。 先週決算を発表した、オラクル(ORCL)とアドビ(ADBE)はいずれも9-11月期の一株当たり利益は市場予想を上回りました。しかし、オラクルは9-11月期の売上高(特にクラウド部門の売上高)が、アドビは12月-2月期の売上高見通しが、それぞれ市場予想を下回ったことで、発表翌日の両社の株価は下落しています。こうした状況から考えると、10-12月期に控えるソフトウェアセクターも好決算一色というわけにはいかなさそうです。米金利低下の恩恵を受けられるグロース銘柄を軸にしつつも、あくまでファンダメンタルズ(基礎的条件)に基づいた選別投資を進めていく局面でしょう。 今週は、2023年の相場をけん引した半導体関連株の先行きを見る上で20日(水)のマイクロン・テクノロジー(以下マイクロン)の決算を、グローバルな消費動向を見る上で21日(木)のナイキの決算に注目したいと考えます。特にマイクロンの決算は業界を見通すうえで示唆の多いものとなりそうです。 マイクロンが生産するメモリー半導体は、2024年の半導体市場の牽引役(WSTS予測によれば、前年比+44.8%)と予測されており、同カテゴリの成長が半導体市場全体の成長にとってもカギとなります。メモリーは足元で生成AI関連でデータセンター向けの需要が旺盛なDRAMに加えて、PCやスマホに多く搭載されるNANDの単価が減産効果と相まって上昇傾向にあるため、市場の関心が高まっています。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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2023/12/17 13:00
【業界展望】拡大するトレーディングカード市場
トレカ市場は急拡大 トレーディングカード(以下トレカ)市場は近年急拡大している。2020年頃から多くのYouTuber がポケモンカードを中心にトレカのパック開封動画を投稿するようになったことが一因と見られる。加えて、かつて幼少期にトレカで遊んでいた世代が経済力を有する大人になり、購買単価が上昇したことも背景にあると考える。市場シェアは概ねポケモンカードが4~5割程度、遊戯王カードが2~3割程度、ワンピースカードゲーム、デュエルマスターズがそれぞれ1割程度と推察する。 トレカは価格変動が激しい トレカの二次流通価格は新パック発売やルール変更等に伴う需給動向に左右されやすい。新パック発売直後はカードの供給が少ないため価格が高騰しやすいが、数日で下落し落ち着く傾向がある。その後は新たなパック発売と共に旧パックの流通量が減少するため、徐々に価格が上昇し、販売終了後には高騰しやすくなる。23年に入ってからはポケモンカードの価格高騰が目立つが、1月にルール変更を実施しており、再販が見込まれないカードが増加したことが一因と推察する。 ルール変更の影響も大きい 遊戯王カードでは17年3月に大規模なルール変更を実施し、需要が大きく減少する局面もあった。当時のルール変更では過去のカードの使い勝手が大きく悪化し、プレイユーザーの引退や中古価格暴落に繋がった。新品・中古トレカを扱うテイツーでは関連商材の売上高が18.2期に大きく減少しており、ルール変更の影響が垣間見える。20年4月には再び遊戯王カードのルールが変更されたが、過去のカードの使い勝手が改善したことからユーザーの需要は再拡大している。なお、ポケモンカードでも23年1月にルールが変更されたが、変更が軽微であったことからユーザーに受け入れられたと考えられる。 遊戯王カードは25周年 遊戯王カードでは24年2月に25周年を迎えるにあたり、商品展開が拡大している。記念パックやフィギュア等の発売が複数予定されており、24.3期のコナミグループの売上高拡大に寄与すると野村では予想する。11月には海外で人気商品「RarityCollection」が発売され、国内でも人気の高い高単価パックの発売を24年2、3月に計2種類予定しており(例年は1種類)、ラインナップは充実している。25.3期は周年後の反動減がリスクであるが、24.3期上期決算説明会ではデジタル等の新しい展開やイベント開催等で今の流れを継続したいとのコメントがあり、更なる売上拡大に繋がるか注目したい。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 三木 成人) ※野村週報 2023年12月11日号「産業界」より <お知らせ>「野村週報」は、2023年12月18日号(15日発行)より「週間 野村市場展望」と統合し、新たな「野村週報」としてリニューアルされます。今後ともご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/17 09:00
【市場展望】ユーロ下落リスクは低下か
ユーロ円は一時160円台に上昇 ユーロドルは11月末に一時1.10ドル台と8月以来の水準を回復、ユーロ円も10月末以降は概ね160円超の歴史的高水準での推移を続けてきた。 野村では、①世界の景気減速懸念を受けた市場心理の悪化、②ユーロ圏の景気減速による対内証券投資の減少、③原油価格上昇に起因する交易条件の悪化、の要因から、ユーロは年末にかけて対ドルで1.02ドル程度まで下落すると想定していた。10月上旬には1.05ドル割れと概ねシナリオに沿って推移してきたが、足下のユーロは想定以上の底堅さを見せていると言えよう。 最近のユーロ反発の背景には、①米金利のピークアウトを受けた独-米金利差のマイナス幅縮小や②米国経済のソフトランディング期待に起因する市場心理の改善、があろう。11月に入り公表された10月分の米雇用統計やCPI(消費者物価指数)はともに市場予想を下振れ、市場はFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ局面は終了との見方を強めた。加えて、FRBウォラー理事が11月28日にあと数カ月インフレ率が低下し続ければインフレ低下に対応した利下げを開始できると言及、市場はFRBが2024年前半にも利下げを開始するとの期待を強めている。為替市場でもドルピークアウトとの見方が広がり、米金利低下や欧米株高がユーロ高材料となっている。 加えて、③イタリア国債の格下げ・格付け見通し変更の回避、④スペインの政治リスク低下、⑤ LNG(液化天然ガス)価格の低位安定が原油価格上昇による交易条件の悪化を抑制したこと、⑥投機筋のポジション整理が進みユーロ買い・ドル売りポジションを構築しやすくなったこと、の要因もユーロ高材料となっている。ユーロ安リスクは低下していると判断されよう。 対ドルでは一段のユーロ高も 24年入り後のユーロドルは、①市場がFRBへの利下げ期待をやや高めすぎていること、②米欧の景況感の違いからFRBよりECB(欧州中央銀行)への利下げ期待が先行しやすいことなどにより、米欧金利差が上値を抑え、上昇は一服すると見込んでいる。 野村の経済見通しでは、米国は24年後半までマイナス成長を回避する一方、ユーロ圏は23年7~9月期から3四半期連続でマイナス成長に陥ると予測している。こうした米欧の景況感の差を反映し、24年初めにかけてはECB の利下げの織り込みがFRBに対するそれより先行しやすいであろう。24年前半のユーロドルは1.10ドル前後での推移が続きそうだ。 24年半ば以降は、ユーロは対ドルで再び上昇に転じ、24年末には1.14ドル程度まで達すると想定している。24年央に入ると、米国のマイナス成長入りが現実味を帯び、市場のFRBの利下げ織り込みが本格化する一方、ユーロ圏では景気が持ち直しに転じる公算が大きい。したがって、24年末にかけては、米欧の景況感が逆転し、米欧金利差に支えられる形でユーロは対ドルで堅調に推移すると考えられる。 対円でのユーロの値動きを展望すると、23年末にかけては、ユーロドルの堅調が見込まれるもと、リスク心理が改善する中でキャリー需要による円安圧力が根強いこともあり、ユーロ円は160円台後半まで上昇するリスクも否定できない。 もっとも、24年入り後のユーロ円は春頃から下落傾向が明確になり、24年末時点で154円程度まで円高が進行すると予想する。年明け以降は、米国経済および世界経済の減速感が徐々に強まっていき、市場心理の悪化がユーロ安円高圧力として作用しよう。加えて、野村では、日銀は24年4~6月期にイールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)を撤廃、7~9月期にもマイナス金利解除を決定することをメインシナリオとして想定している。ECBが利下げ開始に差し掛かるタイミングでの日銀政策正常化の進展は、日欧金利差を大きく縮小させる公算が大きく、ユーロ円の下押し材料となろう。 ユーロ円は既に08年以来の高水準まで上昇している。短期的にはユーロ円に上昇余地が残るものの、160円台での推移は定着しない見込みだ。ユーロ円については、ECBへの利下げ織り込み本格化が見込まれる24年央に向けては下値リスクを警戒すべきだろう。 (野村證券市場戦略リサーチ部 後藤 祐二朗、茂木 仁) ※野村週報 2023年12月11日号「焦点」より <お知らせ>「野村週報」は、2023年12月18日号(15日発行)より「週間 野村市場展望」と統合し、新たな「野村週報」としてリニューアルされます。今後ともご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/16 13:00
【オピニオン】FOMCは利下げ議論を開始、NYダウ史上最高値
2023年12月12日~13日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)は政策金利であるFFレートの誘導目標を5.25~5.50%で据え置くことを決定しました。政策金利の据え置きは3会合連続となります。 声明文では、引き締めバイアスを示す「追加的な引き締めの度合いを決定するうえで」が、「追加的な引き締めの度合いを決定する場合には」へと修正され、利上げがほぼ終了との見立てを示唆しました。 FOMC後の記者会見でパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長は「追加利上げの可能性を排除したくないが、もはやFRBの基本シナリオではない」と述べました。加えて、「政策金利が引き締めサイクルのピークに達したか、その近くにあると考えている。利下げの時期が次の問題であり、それを検討し議論している」と述べ、利下げのタイミングが今後のポイントであることを示しました。 公表された経済見通しの中では、前回2023年9月時点と比較し、2023年実質GDP成長率が上方修正され、インフレ関連指標は下方修正されました。2024年以降の見通しに大きな変更は見られません。 注目の参加者メンバーの政策金利見通し、いわゆる「ドッツ」は、2024年末は前回2023年9月時点から0.5%ポイント下方修正され、24年中に0.75%ポイントの利下げが想定されています。インフレがピークアウトしたとはいえ、ターゲットである2.0%まで未だ相当な距離感があるため、前倒しで利下げを実施するとは想定し難いと言えます。四半期に1回0.25%ポイントの利下げを前提とすれば、24年前半に利下げが開始されると思われます。 FOMCを受けたFF金利先物市場では、24年6月までに0.63%ポイントの利下げを織り込んでいます(23年12月13日時点)ので、やや期待先行の印象を受けます。12月13日の米国市場ではFOMC結果発表後に米国10年国債利回りが一時、4.022%へ低下し、NYダウは史上初の37,000ドル台へ上昇しました。一方、米ドルは対円で142円台へ下落しました。 S&P500指数構成企業のEPS(1株当たり利益)は、2023年4-6月期を減益の底として、同年7-9月期以降、増益が予想されています。ここでは、米国経済は大幅に悪化することは想定されていない模様です。2023年11月のISM製造業景気指数は46.7と、拡大・縮小の分岐点となる50を13ヶ月連続で下回りました。2000年8月~2002年1月以来の最長を記録しています。ISMによれば、一般的に製造業PMIが48.7を下回ると経済全体の縮小を示すとされています。2024年の米国株式市場は、米長期金利がどこまで低下するのか、経済成長鈍化に対して、特にグロース企業の抵抗力がどの程度なのか、が焦点となりそうです。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)FOMC(米連邦公開市場委員会)は2023年12月12-13日に開催。予想の中央値。実質GDP成長率及び2つの物価指標は各年10-12月期の前年同期比。失業率は民間部門の各年10-12月期平均の失業率。コアPCEデフレーターは価格変動の激しい食品とエネルギーを省いたもの。政策金利はFFレート(フェデラル・ファンドレート)のレンジの中央値で、各年末値。(出所)FRB(米連邦準備理事会)より野村證券投資情報部作成 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/15 12:00
【今週のチャート分析】日経平均は12月に入り不安定な動き、75日線が下支えなるか(12/15)
※2023年12月14日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 上値は25日線、下値は75日線に注目 今週の日経平均株価は、米国株が堅調に推移したものの、円高進行が逆風となり、上値の重い展開となりました。 日経平均株価のこれまでの動きを振り返ってみましょう。日経平均株価は、11月20日高値形成後に調整となり、12月8日にこれまで何度かフシとして機能してきた75日移動平均線(14日:32,418円)の水準まで下落しました(図1)。その後は反発に転じましたが、25日線(同:33,112円)に上値を抑えられており、同線を回復できるか注目されます。 回復となれば、11月20日高値(33,853円)超えが視野に入り、6月以降の保ち合い上放れへ向けた動きとなることが期待されます。一方で上値が重く再び調整となった場合は、8日に下支えとなった75日移動平均線(14日:32,418円)の水準を維持できるか注目されます。 仮に同線を下放れた場合は、11月1日~2日のマド埋め(31,601円)や、200日線(同:31,221円)の水準が下値のメドとして挙げられます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2023年12月14日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 次に中長期的な動きを確認すると、初夏に33,000円台後半で上値を抑えられた後は、大きな上昇局面内の一旦の調整である「中段保ち合い」に移行したと考えられます(図2)。これまでの調整を経て、下落率や調整期間の点で2020年6月~10月末の中段保ち合い時と比較して、既に調整十分となっていると捉えられます。 12月に入り不安定な展開となっていますが、目先の調整一巡後は、再度中段保ち合いの上限突破を目指す動きとなることが期待されます。 (注1)直近値は2023年12月14日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 年末特集:ドル円相場 2024年の見通し 2023年のドル円相場は、米10年債利回りが10月に約16年ぶりとなる5%台まで上昇し、日米金利差が再び拡大する中で、概ね円安・ドル高方向への動きとなりました。ドルは対円で、2023年1月に一時127.22円をつけた後は上昇傾向となり、2023年10月には2022年につけた150円台に回帰しました。 ただ、12月に入り一時140円台前半まで下落するなど不安定な動きとなり年末を迎えています(図3)。 (注1)直近値は2023年12月13日。 数値は日銀公表値で東京市場、取引時間中ベース。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本銀行、各種資料より野村證券投資情報部作成 2024年は、円高・ドル安トレンド入りの可能性に留意が必要だと考えられます。ドルは対円で1975年高値から約8年のサイクルで高値をつけています(図4)。2023年12月時点で2015年6月につけた前回のサイクル高値から既に8年半が経過しており、既に8年サイクル高値をつけたか、近い将来につける可能性が高いと考えられます。 (注1)直近値は2023年12月13日。 数値は日銀公表値で東京市場、取引時間中ベース。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。 (注3)日柄は両端含み。(出所)日本銀行、日本相互証券、FRB、Wall Street Journalより野村證券投資情報部作成 12月に入り、前回の中長期上昇局面(21/1安値~22/10高値)で下支えとなってきた26週移動平均線(13日:146.31円)を割り込み、不安定な動きとなっています。年末にかけて26週線割れが定着した場合、2023年11月高値(151.80円)で天井を形成した可能性が高まったと捉えられます(図3)。 過去の動きをみると8年サイクル高値形成後は、年単位の下落トレンドがみられています。そのような動きとなった場合、まずは2023年1月安値(127.22円)や、2022年1月安値~2023年11月高値上昇幅の50%押し(127.20円)の水準が下値メドとして挙げられます(図4)。 (投資情報部 岩本 竜太郎) ※画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2023/12/14 12:00
【銘柄特集】PBRが低位かつ、業績と流動性の不安が少ない銘柄(12/14)
今期中に自己資本が毀損するリスクの低い低PBR銘柄をスクリーニング PBR(株価純資産倍率)は、株価をBPS(1株当たり純資産)で割ったもので、現在の企業価値が手持ちの資産の何倍に評価されているかを示す指標です。PER(株価収益率)と同様に、株価が割安か割高かを判断するための代表的な指標となっています。 PBRの高い銘柄は割高に見えますが、業績の安定性、利益成長への期待の高さを反映しているとも言えます。言い換えると、PBRの低い銘柄、とりわけ帳簿上の解散価値と同義である1倍を大きく割れている銘柄は、将来的に自己資本が毀損するリスクがあると市場から評価されていることになります。 以下の表では、2023年12月1日の株価・データをもとに、業績や流動性の面で不安が少ないと考えられる銘柄(少なくとも今期自己資本が毀損するリスクの低い銘柄)の中から、PBRの低い銘柄を抽出しています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (野村證券投資情報部 エクイティ・コンテンツ課) (注)画像はイメージ。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/14 10:00
【速報・解説】FRB、2024年は3回の利下げを想定
FRBは3会合連続で利上げを見送る FRB(米連邦準備理事会)は13日、大方の事前予想通り政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を5.25-5.50%に据え置くことを決定しました。政策金利の据え置きは3会合連続です。 同時に発表された政策金利見通し(中央値)では、1回あたりの政策金利の変更幅を0.25%ポイントとした場合、2024年中に3回、25年中に4回の利下げ見通しが示されました。市場ではFOMC直前まで24年末までに4~5回の利下げを織り込んでいましたが、FRBの政策姿勢が緩和方向へ転換したこと、会合後の記者会見でパウエル議長から市場の早期利下げ期待をけん制するような発言は見受けられなかったことから、米国株式市場では主要3指数が続伸し、NYダウは史上最高値を更新しました。米国債市場では利回り曲線全域にわたって金利が低下、為替市場ではドル全面安の展開となりました。ドル円も1ドル=142円台後半とFOMC直前の145円前後の水準から2円以上円高が進行しました。 FRBは2022年3月以降、急速なペースで利上げを続けてきましたが想定以上に景気は堅調に推移してきたことから、景気にとって緩和的でも引き締め的でもない中立金利が上昇しており、利上げによる引き締めが効果を発揮し難くなっているのではないか、との見方も高まっています。その場合には、これまでの想定以上に政策金利が引き上げられる、あるいは長期間にわたって高止まりすることが予想されます。今回はFRBが想定している中立金利の代理変数である長期政策金利見通し(Longer run)が2.5%で据え置かれたことも、長期金利の低下、株高に寄与した可能性があります。 FRBが利上げから利下げへと転換した後は、景気や金融市場動向を睨みながら、一定のペースで利下げを行うと予想されます。24年中に3回の利下げを想定した場合、早ければ6月から、遅くとも9月から利下げを開始すると予想されます。野村證券では24年6月に予防的に利下げを実施した後、同年9月以降、25年末まで各会合で0.25%ポイントの利下げ実施を予想しています。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) ご投資にあたっての注意点