野村のオピニオン
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昨日 13:00
【野村の解説】日本企業決算分析(後編):会社・野村予想の動向
順調に進む会社側見通しの変更 今回の2023年7-9月期の決算発表時には、会社側の通期業績見通しの動向にも注目が集まりました。例年、4-6月期の決算発表が行われる7月~8月にかけては、会社側の見通しの変更は少数にとどまりますが、年度の半分が経過した7-9月期の決算発表が行われる10月~11月には一気に会社側の見通しの修正件数が増加する、という季節性が存在します。今年も57.3%とほぼ例年並みの企業がこれまでに通期業績見通しを修正しています。なお修正した企業のうち、3社に2社は上方修正となっており、個別企業の景況感は良好です。 この結果ラッセル野村ラージキャップ(除く金融)の、2023年度通期会社側予想経常増益率は、9月月初時には前年同期比1.6%の減益でしたが、11月14日時点では4.9%増益に上方修正されています。 現在の会社側通期経常利益見通しに対する、第1と第2四半期の累計利益の比率、いわゆる進捗率は54.2%となっており、過去10年間の平均とほぼ同じ水準です。この進捗率には、グレーの線であらわされている第2四半期の決算が発表された時点の予想利益に対する進捗率と、赤い線であらわされている通期業績が確定した後に事後的に計算される進捗率の2種類が存在します。 グラフを見ると、人民元ショックのあった2015年度や、コロナ禍が直撃した2019年度など事前に予想が難しい事態が起きない限り、赤い線、即ち事後的に計算される進捗率のほうが低くなっています。これは、各年度の下期のどこかで再度会社側が利益見通しを上方修正したことを示しています。会社側の利益見通しは、株価へのインパクトが強いことが知られており、今後の会社の利益見通しの方向性に注目が集まります。 アナリスト予想の修正も進む 2023年7-9月期決算が出そろい、併せてアナリストによる通期業績予想の修正も進んでいます。ラッセル野村ラージキャップ(除く金融)の2023年度予想経常利益は、11月14日時点で前年同期比9.2%増益と、9月月初時点の予想にくらべて2.3%ポイントの上方修正となっています。アナリストによる予想経常利益の上方修正は、2023年9月月初に続き2四半期連続となります。 今回の通期業績の上方修正の要因を、2023年7-9月期の業績動向から探ってみることにしましょう。まず業績を取り巻く環境から整理しておくと、7-9月期は米ドル円レートが前年同期比6円の米ドル円安、鉱工業生産は前年同期比3.5%の減少でした。体感的には、円安が進んだ印象ですが、実際には前年同期も円安が進行していたことから利益の押上効果は僅かでした。また、生産も自動車などで挽回生産が本格化したものの、中国の不振により電子材料や電子部品、資本財などが苦戦し、利益の押し下げ要因となりました。その結果、7-9月期決算では、為替および生産以外の、『その他要因』が業績を大きく押し上げる形となりました。その他要因の中身は局面ごとで異なりますが、今回の場合は、昨年来企業が推し進めている、コスト増加分の価格転嫁が顕在化したものと考えられます。事実、7-9月期のラッセル野村ラージキャップ(除く金融)の営業利益率は8.5%と過去最高でした。こうした価格転嫁の進展は今後も続くと、多くのアナリストが考えており、通期業績予想の上方修正につながりました。 (野村證券投資情報部 伊藤 高志、澤田 麻希) (注)画像はイメージ。 ご投資にあたっての注意点
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昨日 07:00
【野村の解説】日本企業決算分析(前編):7-9月期実績の動向
60%以上の企業が事前予想を上振れて着地 11月14日時点で、ラッセル野村ラージキャップ(除く金融)の2023年7-9月期決算は、前年同期比2.2%増収、同19.3%営業増益となった模様です。今回の決算シーズンでは、事前の市場コンセンサスに対して60%を超える企業が上振れて着地しています。通常であればこの比率は50%台半ばなので、今回の決算では事前予想に対して上振れて着地する会社の比率がかなり高かったといえるでしょう。 また増益率の水準も、コロナ禍からのV字回復が一巡し、インフレ圧力が高まった2021年から2022年にかけては増益率が一時、一桁台にまで落ち込んだことに比べると、今回の決算では営業増益率はかなり高い水準を達成しています。 ラッセル野村ラージキャップの営業利益実額は、2022年度第2四半期に12.2兆円でしたが、今回の2023年度第2四半期には14.4兆円と、前年同期と比べて2.2兆円の増益となっています。業種ごとに増減益寄与額をみてゆくと、化学、鉄鋼・非鉄、機械、電機・精密などが前年同期比で減益となっています。これらの業種では、長引く中国経済の低迷により、電子材料や電子部品などの生産財、工作機械などの資本財が不振で直撃を受けた格好です。ただ、中国でも生産財を中心に在庫調整が進み始めたことが決算発表時に確認されており、業績の最悪期を脱しつつあるとみられています。 逆に、挽回生産が本格化している自動車、コスト増の価格転嫁が順調に進んでいる食品、小売、公益など幅広い業種が増益となっています。また、人流の回復により運輸、サービスなどの業種も増益寄与となりました。 (野村證券投資情報部 伊藤 高志、澤田 麻希) (注)画像はイメージ。 ご投資にあたっての注意点
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12/02 19:00
【オピニオン】業績好調なのは円安のおかげ?
2023年夏場以降、米国の早期利下げ局面入り観測の後退を背景に円安が急速に進みました。10月下旬には2022年10月以来となる150円/米ドルに到達し、介入に対する警戒感も高まりました。円高/株安の日には、各種報道で「介入に対する警戒感から円高が進み、(輸出企業の)業績懸念から株価が下落~」というフレーズを頻繁に目にします。 ただ、実際には米ドル円レートと日経平均株価の相関係数は足元でほぼゼロで、『円高=株安』という関係は(現時点では)成り立っていません。では、『円高で業績懸念』はどうでしょうか?本稿では為替と企業業績の最新の関係を確認してゆくことにしましょう。 【図表1 為替前提】実質的な期初にあたる5月30日時点で会社側の為替前提は130円/米ドルが圧倒的多数でした。その後の円安進展に対応して、7-9月期の決算発表時には多くの企業が為替前提を140~145円/米ドルに変更しています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)図表1は、会社側の2023年度米ドル円レート前提の分布(対象は全上場企業)。グレーが2023年5月30日、赤が同年11月16日時点の分布。(出所)野村證券投資情報部作成 【図表2 予想利益の修正】その際、同時に会社側の2023年度通期業績見通しの上方修正も相次ぎました。ラッセル野村Large Cap(除く金融)の2023年度予想経常利益は、期初時点では野村予想と会社見通しの間に3兆円程度の乖離がありましたが、その差はかなり縮まりました。 (注2)図表2はラッセル野村Large Cap(除く金融)の2023年度予想経常利益の3ヶ月毎の推移。(出所)野村證券投資情報部作成 【図表3 為替レートの推移】会社側の見通し上方修正を巡っても、一部で「現在の業績はもっぱら円安に支えられたもので、中国などの実体経済減速のリスクは残る」との指摘があるようです。2023年度の業績は円安頼みなのでしょうか?実は、前年同期比でみた2023年度の米ドル円レートは、(2022年度にくらべ)はるかに軽微な円安で推移しています。期初の業績見通しを上方修正する要因にはなっても、2023年度業績そのものを大きく増益方向へ動かす力は(今の)米ドル円レートにはない、と考えられます。 (注3)図表3は、四半期毎の米ドル円レート(赤)と、前年同期比(グレー)の推移。2023年10-12月期以降は2023年11月27日時点の業績予想前提である145円/米ドルで固定している。(出所)野村證券投資情報部作成 【図表4 増減益の要因分解】2023年第1~2四半期の増減益を要因分解すると、増益ドライバーは為替や鉱工業生産ではなく、『その他』要因となっています。『その他』が何によるものなのかは局面により様々ですが、今回の場合は投入価格の上昇分が順調に価格転嫁されていることによる、と考えられます。 (注4)図表4はラッセル野村Large Cap(除く金融)の営業増益率の推移。2023年7-9月期は2023年11月15日時点で、決算発表を終えた企業を集計対象にしている。積み上げグラフは、営業増益率を、生産要因、為替要因、残差(その他)に分解したもの。1%の生産増加で4%、1円/米ドルの円安で0.4%、営業利益が増加するとしている。残差(その他)には、マージンの改善、イレギュラーなコストの発生に伴う利益変動、などの要因が含まれる。(出所)野村證券投資情報部作成 以上より為替は、①業績予想の微小な変更の理由にはなりうるが、②2023年度業績の方向性を大きく変える可能性は低い、と言えるでしょう。 ご投資にあたっての注意点
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12/02 13:00
【注目トピック】生成AIがけん引し、半導体市場は2024年に過去最高を更新へ
WSTSの2023年秋季世界半導体市場予測 2023年・2024年ともに上方修正 米国時間11月28日に、世界の主要半導体メーカー43社で構成される業界団体、WSTS(世界半導体市場統計)が、2023年秋季の半導体市場の見通しを発表しました。今回の予測は、2023年9月までの実績値を基に作成されています。 半導体市場全体は、2023年と2024年の予測が、前回発表時点(2023年6月)よりも上方修正されています。2023年は前年比-9.4%の5,201億ドルと、引き続き前年比縮小が予想されていますが、2024年については拡大に転じ、これまでの過去最高だった2022年の5,741億ドルを超えるという見通しとなっています。 生成AIがけん引、メモリーも回復へ 発表資料の中でWSTSは、2022年について、世界的なインフレやそれに伴う利上げ、地政学的リスクの高まりなどが個人消費や企業の設備投資等に影響し、半導体市況は年途中からメモリーを筆頭に多くの用途・製品で悪化したとコメントしています。 2023年については、2022年途中から続く下押し要因により、メモリーを始めほとんどの製品で年前半はマイナス成長であった一方、利用が急拡大している生成AIの恩恵を受け易いロジックの急増を始め、メモリーやマイクロなどの需要も改善して年後半に向けて市場は回復に転じており、通年では前年比一桁のマイナスに留まると予測されています。なお、省エネ・高効率化に必須のパワーディスクリートは年間を通して安定成長となる見通しとなっています。 2024年については、生成AI関連やパワーディスクリートの需要が引き続き成長することに加え、年後半からの景気回復期待を念頭に、電子機器全般の需要が拡大するとの想定が織り込まれたとコメントしています (下図表参照) 。 前年比伸び率を製品別についてみると、2023年はディスクリート(一素子一機能の単一機能製品)以外の製品は前年比マイナス成長となっています。ただし、WSTSが、生成AIの恩恵を受け易いとしているロジック製品については同-0.9%とマイナス幅が小幅で、2024年にかけては同+9.6%へと拡大が予想されています。 ディスクリートは、2023年、2024年にかけて、パワー半導体への需要がけん引するとみられ、前年比プラス成長が予想されています。なお、集積回路(IC)は電気を情報として扱いますが、パワー半導体は電気をモーターを動かすなどの動力源に用いる半導体です。 メモリーは2022年に前年比-15.6%、2023年は同-31.0%と最も足を引っ張っていますが、2024年には同+44.8%と回復が予想されています(下図表参照) 。 6月時点の予測と比較すると 2023年6月時点の予測と比較すると、地域別では日本が、製品別ではオプトエレクトロニクスやアナログなどが比較的大きく下方修正されています。オプトエレクトロニクスやアナログは日本のメーカーが競争力を発揮している分野です。 製品別では、マイクロやロジックが上方修正されていますが、生成AI普及に伴う需要の拡大が反映されていると推察されます。メモリーは、2023年に大きく落ち込み、2024年に回復するという方向に変化はありませんが、6月時点の予想よりは、上方修正されています。 半導体市場の回復がより鮮明に 今回発表されたWSTSの予測は、2023年と2024年の予測が前回発表時点よりも上方修正されています。加えて、生成AI関連や、省エネ・高効率化に必須のパワーディスクリートの需要が半導体需要をけん引するとコメントしています。 米国の証券取引所に上場する主要な半導体関連30銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数の推移をみると、直近は株式市場全体を上回るパフォーマンスを示しており、株式市場でも半導体市場の回復を織り込み始めていると推察されます。 (野村證券投資情報部 村山 誠) ご投資にあたっての注意点
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12/01 12:00
【今週のチャート分析】日経平均は11月に大幅上昇、約3年ぶりの上昇幅に(12/1)
※2023年11月30日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 トレンド上限突破となれば35,000円処が次の上値メド 今週の日経平均株価は、米長期金利の低下を背景として円高・ドル安が進行したことから、上値が重い動きとなりました。 日経平均株価のこれまでの動きを振り返ってみましょう。日経平均株価は、11月に75日移動平均線(30日:32,274円)を上抜けし、さらに10月4日・30日安値でのダブルボトムが完成したことから、中長期上昇局面に回帰した可能性が高まったと考えられます(図1)。20日にはザラバベースで6月19日高値(33,772円)を一時上回り年初来高値を更新しました。その後は上値の重い動きとなっていますが、それら押しをこなしつつ、11月20日高値(33,853円)を超え中段保ち合いを完全に上放れできるか注目されます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2023年11月30日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 今回の中段保ち合い上限への接近は、下落率や調整期間の点で2020年6月~10月末の中段保ち合い時と比較して調整十分となった後の上限接近です(図2)。上限突破となる可能性が高いと考えられ、次の上値メドとして心理的フシの35,000円の水準が挙げられます。 (注1)直近値は2023年11月30日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 一方で、11月の前月末比上昇幅(2,628円)は約3年ぶりの大きさになっており、急騰の反動から調整を入れる動きとなった場合は、11月14日~15日のマド埋め水準(32,836円)や、明確に上向きとなっている25日線(30日:32,545円)が下支えとなると考えられます(図1)。 米国10年債利回り、2023年の振り返りと24年の見通し 米国10年債利回りは、今年3月の米中堅地方銀行破綻をきっかけに金融不安が広がり、4月にボトムの3.247%をつけました。ただ、当局の迅速な対応で市場は落ち着きを取り戻し、その後は高止まりするインフレに注目が集まり、金融引き締め長期化懸念から大幅な利回り上昇となりました。10月には一時5%と約16年ぶり水準まで上昇しました。では、2024年はどのような動きがみられるのでしょうか。 チャート面でみると、2024年は利回り低下トレンドに入る可能性が高いと考えられます。今年10月ピーク形成後、11月にこれまで下支えとなってきた今年7月以降の上昇トレンドラインを割り込んでおり、当面の天井をつけた可能性が高まったと考えられます(図3)。 (注1)直近値は2023年11月28日。 (注2)トレンドラインには主観が含まれておりますのでご留意ください。(注3)日柄は両端を含む。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 この先、10月ピークまでの利回り上昇局面で下支えとなってきた12ヶ月移動平均線(11月28日:3.963%)を下放れとなれば、年単位の利回り低下トレンド入りすると考えられます。今年10月ピークまでの利回り上昇期間は、過去の利回り上昇期間を大幅に上回っており、今年10月ピークで中長期トレンド上の天井をつけた可能性も十分考えられます。先行き12ヶ月線を割り込んだ場合、2020年3月ボトムから2023年10月ピークまでの上昇幅に対する1/3押し(3.449%)の水準がメドとして挙げられます。 (投資情報部 岩本 竜太郎) ※画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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12/01 09:30
【業界展望】小売業界では消費の二極化の影響が続こう
消費の二極化は今後も続こう 直近の小売各社の販売動向では、引き続き経済活動活発化の恩恵が見てとれている。ドラッグストアでの化粧品需要の増加、コンビニエンスストアへの立ち寄り需要の回復などが続いている。アパレル関連では、高気温の影響が秋冬物の販売に向かい風となっているが、外出需要が販売を下支えしている状況も見て取れる。百貨店各社についても、免税売上高の拡大も含めて追い風を引き続き受けていると言えよう。 一方、食品関連などで単価上昇が続いており、インフレ環境下における消費者の消費行動は選別的になってきている。家電など耐久消費財の需要が弱めである点に大きな変化はなく、インフレを背景に消費者が家電の購入を控える動きが続いていると想定される。また、生活必需品関連では節約志向の影響も見えており、ディスカウントストア等の販売は順調に推移している。 インフレ環境が続く点に鑑みれば、消費の二極化が続くと予想される点を念頭においた投資戦略が重要となってこよう。同じ業界内でも消費者の支持を得られるかによって、企業間の格差がさらに広がる可能性もあると考える。消費の二極化の観点では、高付加価値な商品やサービスで消費者需要を捉えられる企業の業況にまず注目できると考える。低価格に強みを持ち、節約志向の受け皿となる企業や、独自の要因により業績回復や業績成長が見込まれる企業の業況にも注目したい。 免税売上の貢献に加え、高額品販売の順調な販売が続く点に鑑みると、百貨店の業況は2024年にかけても良好だろう。百貨店の中では、経費抑制やCRM(顧客関係管理)戦略の強化など独自の取り組みを評価できる三越伊勢丹ホールディングスの事業動向に注目している。また、統合シナジーの発現が続く中、化粧品の需要回復、免税売上の貢献が予想されるマツキヨココカラ&カンパニーの業況にも注目している。節約志向の受け皿の観点では、消費者への価格面でのアピールが継続的な客数改善につながっているコスモス薬品の良好な販売は今後も続こう。独自要因の観点では、良品計画において新商品の取り組みが一定の成果につながる中、日本での売上・収益性の改善が見込まれる。 消費構造変化が百貨店への追い風に 消費の構造的な変化にも注目をしたい。日本では富裕層の世帯数や保有資産の増大、パワーカップル(高収入同士の夫婦)の増加などが進んできた。このような流れは百貨店など高額消費への追い風につながっていると野村では考えている。富裕層の増加等を背景に百貨店の高額品の販売は好調に推移している。美術・宝飾・貴金属の売上高ではコロナ前を上回る水準が続いているほか、ラグジュアリーブランドの婦人服などの販売も順調であると見られる。 若年新規顧客の取り込みも百貨店で進んでいる。例えば、大丸松坂屋百貨店の外商顧客の年齢階層別のシェアでは、20~40代の構成比が高まっている。パワーカップルの増加、企業経営者など若年富裕層の増加といった社会構造の変化そのものが百貨店での若年層顧客の増加につながっているとも言えるだろう。一方、若年層顧客をターゲットとしたブランドの展開、若年富裕層と相性の良いアートの強化、デジタルを活用したCRM など、若年層顧客を取り込むための各種施策も奏功していると野村では考えている。 富裕層の保有資産の状況については株式市場の動向等に依存すると言えるものの、富裕層の裾野の拡大、若年層の購買力の上昇といった点には継続性があると言えるだろう。百貨店各社は新たな顧客層を取り込むための施策を展開できており、新たな顧客層を今後も継続的に捉えていくことができるだろう。百貨店各社は中心顧客の高齢化という積年の課題から徐々に脱しつつあると言えるだろう。 パワーカップル化の進展と、保有資産額の多い富裕層の増加は、東京都を中心とした首都圏で特に顕著となっている。経済活動の東京一極集中の状況に大きな変化はないと想定されるため、賃上げによる高額消費の増加、資産効果による富裕層の消費刺激などは、特に東京都市圏で影響が出やすいことが予想される。東京での百貨店売上高は全国の販売動向と比べて継続的に良好に推移するなど、東京エリアの優位性は既に顕在化している。高額品や高品質商品の購買場所として、百貨店全般に優位性はあると野村では考える。ただし、東京エリアでプレゼンスを発揮できていれば、継続的な販売増を実現できる可能性が高いと言えるだろう。百貨店の中では、伊勢丹新宿本店を中心に高いブランド力を持ち、東京の販売構成比が大きい三越伊勢丹ホールディングスのポジショニングが良いと野村では考えている。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 山岡 久紘) ※野村週報 2023年11月27日号「産業界」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/30 09:30
【野村の投資判断】米国株式市場では「年末ラリー」に注目
マクロ系ヘッジファンドが「年末ラリー」にベットする可能性 米国株式市場において、(経済情勢に基づいて売買する)マクロ系ヘッジファンドは様子見姿勢を続けていますが、年末に向けてリスクテイクに動く可能性があります。 例えば今年のように株価のパフォーマンスが良い年では、マクロ系ヘッジファンドは年末ラリーを見込んで株式への投資を増やす傾向にあります。特に、11月下旬の時点で年初からの株価リターンがプラスである年は、投資ポジションがまだ小幅なロングポジション(買い持ち)に留まっている場合、その後のロングポジションの拡大が顕著でした。 年末ラリーは単なるアノマリーに留まりません。米国株の季節性を見ると、年初から第3四半期までの株価が上昇または下落した年は、第4四半期のパフォーマンスがそれに応じて好調または低調になる傾向があります。 これは、第4四半期のヘッジファンドを巡る資金の流れである程度説明できます。一部を除いて株式ヘッジファンドのパフォーマンスは株価と強く連動しており、年初からのパフォーマンスが良好または不振な時ほど資金の流入または流出が発生しやすくなります。さらに、第4四半期に資金が流入するか流出するかによって、株価のパフォーマンスの好不調が明確に分かれます。今年は年初からのパフォーマンスが約5%であり、少なからず資金流入が期待できる状況です。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) 要約編集元アナリストレポート「野村クオンツ・インサイト – マクロヘッジファンドと「年末ラリー」(2023年11月27日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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11/29 19:00
【野村の投資判断】米金利低下による円高局面、半導体製造装置セクターに魅力
為替変動への耐性が高いことに加えて、米金利低下の恩恵も受けやすい 10月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが市場予想を下回ったことから、米連邦準備制度理事会(FRB)による追加の利上げの必要性が低下しています。ドル円相場に影響を与える米5年国債利回りがピークアウトする可能性が高まっており、金利差の観点からはドル円相場の上昇にも歯止めがかかりそうです。野村證券は2024年末のドル円相場を1ドル=135円と予想しており、このような市場環境下での適切な銘柄選択が問われています。 野村證券ではセクターとしては、システム・アプリケーション、不動産、食品、半導体製造装置に注目しています。今回は半導体製造装置について詳しく見てみます。半導体製造装置は輸出業種の中でも、グローバルな景気循環や為替変動に対する耐性が高いと評価しています。さらに、米国の金利低下に伴う円高の際には、金利低下によるバリュエーション上昇の効果を通じて株価が上昇しやすいグロース株の特性を持つ点も魅力です。実際にTOPIX17業種を比較すると、半導体製造装置を含む電機・精密業種は、円高耐性と金利低下メリットの観点で機械や自動車業種より優位にあります。 半導体製造装置の2023年7-9月期決算では、業績底打ちが確認されましたが、その後の回復は緩やかとなり、本格的な回復は2024年下半期以降と予想しています。しかし、各社の決算で業績底打ちが確認されたことから、株式市場では市場回復への期待がこれまでよりも高まりやすくなったと考えます。 野村證券がカバーしている半導体製造装置企業の決算動向ですが、東京エレクトロン(8035)とSCREENホールディングス(7735)は通期の会社計画を上方修正しました。また、東京精密(7729)の受注は野村予想を上回る結果となりました。ディスコ(6146)は為替の影響を除けば、出荷、売上高、営業利益が野村予想を上回りました。一方で、アドバンテスト(6857)は通期の会社計画を下方修正しました。 (FINTOS!編集部) (注)2023年11月21日時点での野村證券各種見通しに基づき作成。(出所)野村證券市場戦略リサーチ部、エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成 参考アナリストレポート 日本株ストラテジー – 注目点とトピック(2023年11月16日配信)日本SPE:23年7~9月期決算振返り – SPE市場底打ちで回復がより意識されよう(2023年11月20日配信)国際金融為替フラッシュ – ドル円:24年に向けた見通しを修正(2023年11月20日配信) 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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11/29 09:30
【野村の投資判断】12月中旬まで「モメンタム」ファクターは調整か
モメンタムは追加で2~3%程度の調整が生じる可能性 日本株の株価反発を主導してきた海外の先物投資家については、足元で減速感が強まっているものの、目先は再び株高に作用する可能性が高いでしょう。「順張り」のCTA(商品投資顧問)は、ロングポジション(買い持ち)の拡大傾向を維持しています。株価が34,000円を上抜けると、買い越しペースが徐々に加速し始めると見込まれます。 経済情勢などに基づいて売買するマクロ系ヘッジファンドも、ロングポジションの拡大が期待されます。米金利上昇への懸念が高止まりする中、米国株よりも日本株を選好する姿勢は維持される可能性が大きいと見ます。 ヘッジファンド動向については、「(買い持ちと売り持ちを同額にする)マーケットニュートラル」でのリデンプション(償還)にも注目します。今年の相対パフォーマンスの低迷を踏まえると、第4四半期から資金流出が見込まれます。ポジション(持ち高)の解消に伴い、ファクター(要因)別では「モメンタム(相場の勢い)」が調整しやすい状況になるでしょう。 11月に入ってからのモメンタムファクターは既に約4%調整していますが、過去の傾向に従えば、リデンプション対応が一段落すると見られる12月中旬までに、追加で2~3%程度の調整が生じる可能性があるでしょう。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) 要約編集元アナリストレポート「野村クオンツ・インサイト – マクロヘッジファンドと「年末ラリー」(2023年11月27日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点