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01/08 08:27
【野村の朝解説】金利上昇を嫌気し、米国株下落(1/8)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 7日の米国株式市場では、主要3指数が揃って下落しました。11月のJOLTS求人件数が市場予想を上回ったことに加え、12月のISMサービス業景気指数が市場予想を上回り、前月から回復しました。これら経済指標の結果を受け、インフレの再燃が懸念される中、米国金利の上昇が株価を押し下げました。 相場の注目点 1月中旬から、S&P500指数構成企業の2024年10-12月期の決算発表が本格化します。2025年1月3日時点の調査会社LSEG集計による市場予想平均では、同期の四半期EPS(一株当たり利益)は前年同期比+8.1%と推定されており、2024年7-9月期の同+8.4%と比べ、増益率が若干鈍化する見込みとなっています。しかし、2024年7-9月期を振り返ると、同期の決算発表が本格化する直前の2024年10月4日時点の集計では同+4.1%と予想されていましたが、純利益の決算実績が事前のアナリスト予想平均を上回るポジティブサプライズの比率が76.0%と高くなったことで、実際には同+8.4%まで拡大しました。既に決算発表が始まっている2024年9-11月期を決算期とする企業については、発表を終えた19社について、純利益のポジティブサプライズ比率は78.9%となっています。2024年10-12月期についても同様の傾向が続けば、現時点での推定である前年同期比+8.1%よりは高い増益率となり、2024年7-9月期の同+8.4%を上回る可能性も考えられます。 本日のイベント 本日の注目イベントは米国の12月FOMC議事要旨と12月ADP全米雇用レポートです。これらを受け、米国長期金利がさらに上昇するかが注目されます。 (野村證券 投資情報部 寺田 絢子) (注)データは日本時間2025年1月8日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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01/07 16:42
【野村の夕解説】米テクノロジー株高と円安進行で、日経平均は776円高(1/7)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 日本時間の7日、米国のラスベガスで開催中のテクノロジー見本市「CES」で、エヌビディアのジェンスン・ファンCEOが基調講演を行い、生成AI用GPUがフル生産であることや、新たなゲーム用PC向けGPU製品の発表、自動車などを成長分野としてとらえていることなどを明らかにしました。また、東京為替市場では一時1米ドル=158.4円台となり、2024年7月以来、およそ半年ぶりの円安水準となりました。前日に、FRBのクック理事が追加利下げに慎重な姿勢を示したことで米国長期金利が上昇したことで、円安米ドル高が進んだとみられます。前日の米国株高と円安進行を受けて、本日の日経平均株価は、半導体関連を中心に輸出関連株がけん引役となり、大幅上昇しました。前日比277円高の39,584円で寄り付いた後、急速に上げ幅を拡大し、10時過ぎには40,000円を上回りました。その後も引けにかけて40,000円台で推移し、大引けは前日比776円高の40,083円となりました。個別銘柄では、米テクノロジー株高を受けて東京エレクトロンが前日比+11.24%と大幅高となり、1銘柄で日経平均株価を270円押し上げました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時45分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日、米国では12月のISMサービス業景気指数が発表されます。底堅い米国景気を支えるサービス業が好調を維持するか注目されます。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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01/07 08:26
【野村の朝解説】米国株市場はテクノロジー株主導で上昇(1/7)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り トランプ次期大統領は米国向けの輸入品に対する一律関税の対象範囲を、一部の重要品目に限るとの報道がありました。しかし、トランプ氏自身がその報道は間違いと否定したことで、改めて米国による輸入関税の引き上げが意識されました。また、FRBのクック理事は、インフレが根強いことから追加利下げを慎重に行うべきとの見方を示し、米国長期金利の上昇もあって、NYダウは反落となりました。また、米国防総省が中国のテンセントHDなど複数の企業を、中国人民解放軍に協力していると発表したことで、関連する企業のADR(米国預託証券)が大きく下落しました。一方、5日に公表された鴻海精密工業の2024年10-12月期の売上高とその後の業績見通しが良好だったことから、6日の米国株式市場では、ASML HDが前営業日比+7.58%、アプライドマテリアルズは同+4.36%、エヌビディアは同+3.43%など半導体関連を中心にテクノロジー株が上昇し、S&P500指数とナスダック総合指数は続伸となりました。 相場の注目点 米国ラスベガスで開催される世界最大のテクノロジー見本市「CES2025」が7日に一般公開されますが、それに先立つ6日18時20分(日本時間7日11時20分)に、エヌビディアのジェンスン・ファンCEOが基調講演を行います。同公演の内容によっては、日本の半導体関連銘柄の株価が影響を受ける可能性があります。他方、日本製鉄がバイデン大統領によるUSスチール買収禁止命令が出たことを受け、7日に日本製鉄は記者会見を開く予定です。 本日のイベント 7日に米国で発表される経済統計では、11月の貿易統計と12月のISMサービス業景気指数があります。 (野村證券 投資情報部 小髙 貴久) (注)データは日本時間2025年1月7日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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01/06 18:00
【週間ランキング】日本株の値上がり/値下がり銘柄は?(12月第5週)
※画像はイメージです。 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(上位) 2024年12月第5週(2024年12月27日~12月30日) 2024年12月月間(2024年11月29日~12月30日) 2024年年間(2023年12月29日~2024年12月30日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2024年12月30日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(下位) 2024年12月第5週(2024年12月27日~12月30日) 2024年12月月間(2024年11月29日~12月30日) 2024年年間(2023年12月29日~2024年12月30日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2024年12月30日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 <参考>今週の日本株式市場パフォーマンス 主要指数 TOPIX: 東証33業種 (注)業種分類は東証33業種ベース。直近値は2024年12月30日時点。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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01/06 16:23
【野村の夕解説】大発会の日経平均株価は続落 587円安(1/6)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 東京市場が休場の間の年末年始の米国市場では、主要3指数がやや軟調に推移しました。2025年大発会の日経平均株価は、昨年末比50円高の39,945円で始まったものの、米国株安の流れを受け寄り付き後まもなく下げに転じました。日経平均株価への寄与度が高い値がさ株の下落が重石となり一時前日比661円安となり、その後も上昇に転じる材料に欠け、終値は昨年末比587円安の39,307円となりました。 個別企業では、大手海運企業の一角が上昇しました。一部報道機関により、日本の海運大手3社は2030年度までにLNG(液化天然ガス)運搬船を合計で4割超増やすと報じられました。トランプ新大統領は石油や天然ガスの生産・開発を拡大する方針を掲げており、今後LNG生産が拡大すれば、海運企業への収益に貢献するとの見方が広がりました。日本郵船は昨年末比1.27%高、商船三井は同2.45%高、川崎汽船は同1.64%高となりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時45分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 米国では、7日(火)に12月ISM非製造業景気指数、8日(水)に12月ADP全米雇用レポート、10日(金)に12月米雇用統計が発表されます。また、8日(水)に12月FOMC議事要旨が発表され、インフレ・景気に関する議論に注目が集まります。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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01/06 09:30
【新春特集】不都合な真実に立ち向かう 世界経済・金融(Nomura 21Global SPECIAL EDITION)
トランプ政権の政策を「不確実」だけで片付けてはいけない日本は近年では未知の領域となる「金利ある世界」へ日本企業の「資本コストや株価を意識」した取り組み余地は大きい コロナ禍を経て、政治経済は平時に戻ると期待されていました。しかし、インフレや地政学リスク、権威主義など、新たな問題が台頭しています。国際協調による平和の配当は剥落し、政治や企業はプラグマティズム(注)に基づく判断を求められるでしょう。 (注)プラグマティズムとは、物事の心理を「理論や信念」ではなく、「行動や成果」により判断する考え方。 我々が株式市場を見る上で基軸とすべきは、いずれの時も企業業績です。ここ20年は、2008年の米国発の金融危機や、2020年のコロナ禍のような、景気悪化に陥る場合、企業業績は大きく落ち込みますが、その他の期間は、日米ともに概ね企業業績は拡大が続いています。 図表1: 日経平均株価と経常利益の水準 (注)日経平均株価は日次で暦年に対応しており、直近の値は2024年12月12日。経常利益は年度で、ラッセル野村Large Capの経常利益。2007年度の経常利益水準を100としている。2024年度以降は、野村證券市場戦略リサーチ部による予想(2024年12月9日時点)。構成銘柄は各年度ごとで異なる。(出所)日本経済新聞社、野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成 2025年は第2次トランプ政権が発足します。従前の発言からは、中国を中心に関税率の引き上げなど、様々な政策が懸念とされています。一方、2017年に発足した第1次トランプ政権時は、前半に先行した減税が、企業業績を押し上げました。 米国の対外的な関税率、特に中国に対する引き上げの過去を振り返ると、第1次トランプ政権時は、第4弾まで分割した上、品目によっては適用除外も設定されるなど、配慮された対応となりました。また、米国の財・サービス収支の赤字は、2023年時点で第1位が中国となり、日本はメキシコ、ベトナム、ドイツに次ぐ5位と、赤字解消の交渉相手としては、優先順位が下がります。 第1次トランプ政権下で米国株式市場が大きく下落した局面は、2018年終盤の政府閉鎖と2020年のコロナ禍でした。政府閉鎖を誘発するような政治の混乱には注意が必要ですが、個別の政策が企業業績や株価上昇を制約する場合、トランプ政権は米国第一主義の下で、米国企業への代替的な支援策を講じるとみます。 図表2: 米国S&P500指数とEPS(1株当たり利益) (注)S&P500指数EPSは年次で、2024年以降はLSEGによる市場予想(2024年12月12日時点)。S&P500指数は日次で、直近の値は2024年12月12日。(出所)LSEG、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 日本については、利上げの大きな転換点にいます。デフレやゼロ/マイナス金利に慣れた状態から、金利ある世界へと踏み出しつつあります。背景には、賃金上昇による経済と物価の安定が視野に入りつつあることが挙げられます。 企業が連続最高益を更新する中で、賃金や成長投資、資本政策などに、自信をもって安定的に資金を振り向けることができるようになりつつあります。金利上昇はこのような賃金、物価、経済の改善を反映しているとみられます。 国内銀行の貸出金利も上昇しています。ただし、その動きは緩やかです。市場金利の上昇が急激に進む場合、貸出しとのトレードオフの関係から、貸出しの抑制につながり得るため、ある時点で、長期金利は上昇しにくくなるとみられます。 図表3: 日本銀行政策金利・10年国債利回りと銀行貸出金利 (注)データは月次で、直近値は国内銀行の貸出約定平均金利が2024年10月で、約定期間が1年以上のもの。政策金利と10年国債利回りは月間平均値で、直近の2024年12月は12日までの値。政策金利は、無担保コール翌日物の金利を対象としており、2013年4月4日以降は操作目標がマネタリーベースに変更されているが、横ばいとしている。2016年1月29日以降は政策金利残高に適用される金利。2023年3月19日以降は再び無担保コール翌日物の金利。(出所)日本銀行、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 金利上昇は日本経済にとって、近年では未知の領域となります。良い金利上昇、悪い金利上昇、その時々によって、様々な評価がなされるでしょうが、大きな関心を持ってみていく必要があるでしょう。 最後に、企業価値向上についての取り組みを検証します。2023年に東京証券取引所が、上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を公表しました。資本収益性や成長性などを経営陣が自ら主体的に分析した上で、企業価値向上に取り組むことが求められています。 しかし、いまだに不十分な情報開示や、投資家との目線のギャップは数多くみられ、収益性の向上余地も大きい状況です。 上場企業の自社株買い設定額は、2024年度は11月時点で13.7兆円と、2023年度の9.9兆円を大きく上回っています。しかし、日本企業の総還元性向(税引き後利益に対する自社株買いと配当が占める比率)は、2023年度の50%に対して、2024年度は60%に留まるとみられます。 日本の主要企業におけるPBR(株価純資産倍率)は、欧米と比べて1倍未満が多く、市場からの評価は見劣りする状況が続いています。政治・経済の様々なリスクを乗り越え、成長に向けて新たなビジネスを開拓し、市場から評価される企業経営が、求め続けられています。 図表4: 日本・米国・欧州上場企業のPBR (注)直近は2024年12月13日時点。日本はTOPIX500、米国はS&P500指数、欧州はストックス欧州600指数に2024年11月末時点で組入れられている銘柄。PBRが0倍未満の銘柄や財務データが取得できないものは除いている。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 小髙 貴久) ※野村週報 2025年新春特別号「Nomura 21Global SPECIAL EDITION」より ※こちらの記事は「野村週報 2025年新春特別号」発行時点の情報に基づいております。※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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01/06 08:43
【野村の朝解説】日本休場中の米国株式市場は小幅に下落(1/6)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 先週の米国株式市場(2024年12月30日~2025年1月3日)の株価騰落率は、NYダウが1週間で-0.60%(-260.08ドル)の42,732.13ドルとなり、S&P500は同-0.48%、ナスダック総合は同-0.51%と、小幅に下落しました。騰落は、主要3指数ともに12月30日~1月2日にかけて下げた後、1月3日は反発となりました。米ドル円相場は1ドル=157円20銭台(日本時間6日7時時点)と、2024年12月30日の15:30時点の157円90銭台からはわずかに円高です。1月3日の日経平均先物CME終値は39,595円となりました。日経平均株価の年末の終値(39,894円)を約300円下回る水準です。 相場の注目点 東京市場が年末年始の休場の間、NYダウなど米国株下落の影響を織り込み、大発会は下落しての取引開始が見込まれます。その後は特段の材料も見当たらず方向感に欠く展開を想定しますが、値ごろ感に着目した買いに支えられ、底堅い展開となるか、2025年最初の市場動向が注目されます。 本日のイベント 本日米国では、11月製造業受注が発表されます。また、世界最大の家電見本市「CES 2025」がラスベガスにて、7日(火)開催されます。6日に行われる前夜祭でのエヌビディアCEOジェンスン・ファンの基調講演に注目が集まります。 (野村證券 投資情報部 神谷 和男) (注)データは日本時間2025年1月6日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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01/05 18:00
【新春特集】2025年は期待リターン並みの株高を文字通り期待(日本株式市場)
内外政治は不透明だが、「値上げ×数量×市場規律」効果で増益・株高を展望2025年末のTOPIXは3,000、日経平均は4万2,000円と予想中長期投資の視点でも日本株の期待リターンは年+6~7%でインフレを上回る 野村證券では、2025年の日本株を考える上での論点として、以下5つを考えています。 (1)政治に関する予想は困難で市場反応も想定外が多いため、政治予想はほどほどに。景気・業績が重要 (2)日米とも「名目GDP成長率-名目長期金利」(G-R)は当面プラスで株式が債券よりも優位 (3)日本の企業業績は数量増と値上げで増益が継続。米景気が堅調な際の円高のマイナス効果は限定的 (4)日銀追加利上げに伴って多少の円高も見込まれるが、財政政策の緊縮は当面回避 (5)日本企業のガバナンス改革は継続し、高水準の自社株買いが継続。東証要請や物言う株主の存在感の高まりとともに割安企業の底上げが続く可能性が高い 24年11月の米大統領選でのトランプ氏勝利に、米金融市場は11月前半は株高・金利上昇で反応し、高リスク・高リターン型のリスクオン・イベントとして消化しました。11月後半以降は米長期金利上昇も一服し、極端なマクロ政策の変更はないとの見方も台頭しています。 当面は米国トランプ次期政権を見定めする局面ですが、関税等の影響に関しては様々なシナリオがあり、幅をもって見る必要があります。関税対象が絞られるのであれば、減税・規制緩和メリットが意識されやすいと考えられます。2017~19年の関税発動は日本の経済や業績に特段大きな影響を与えるものではなかったと言えます(図表1)。米国トランプ次期政権のもとでは、米国の同盟国を中心に先進国株が新興国株よりも優位との見方が共有されやすい可能性があります。 図表1: 第1次トランプ政権時の関税発動イベントにおける主要国株価指数の傾向 (注)関税イベントであった2017/8/14、2018/3/22、2018/4/3、2018/7/10、2018/12/1、2019/5/3、2019/8/1を基点に前後のS&P500、TOPIXの平均的な動きを算出。(出所)S&P、STOXX、MSCI、JPX総研より野村證券市場戦略リサーチ部作成 日米ともに「名目GDP成長率>名目金利」が当面予想され、こうした局面では株式が債券よりも優位と意識されやすいでしょう。今後のFRBによる利下げの休止に伴う緩和期待の剥落の懸念、日銀による追加利上げに伴う円高進展懸念などはありますが、米日中銀がよほどの悪手を打たない限り、影響は限定的と考えられます。日本では、政策不確実性の低さが米欧や中国と比べると際立ち、金融環境は依然緩和的です。 日本株の需給環境については、2025年も自社株買いが持ち合い解消の売りを上回り、事業法人が日本株の最大の買い手となる見込みです。個人のNISA等を通じた押し目買い意欲も注目できます。24年は海外勢が売り越しでも日本株は上昇しましたが、海外勢が売り越さなくなるだけでも需給環境は改善すると言えます。 企業業績では、25年度にかけては値上げ効果に加えて、数量効果が円高に伴う収益押し下げ効果を相殺する形で増益が達成可能と予想しています。24年は日本の鉱工業生産が自然災害や自動車の不正問題で低迷しましたが、25年は正常化するだけで高い伸び率となると試算されます。自社株買いに伴うEPS(1株当たり利益)押し上げも継続する見込みです。 TOPIXのEPSは24年度+9.5%、25年度+7.9%の増益を見込んでおり、25年中にもTOPIXの12ヶ月先EPSは200に達しそうです。TOPIXのPERは現状並みの15倍前後が妥当と考えていますが、EPS拡大を主因にTOPIXは25年末に3,000に達すると予想しています(日経平均は25年末に42,000円と予想)。これは期待リターン(=資本コスト、配当込みで+6~7%、指数では4~5%)と整合的です。日本株に過度な期待も悲観もせずに臨むことが中長期投資にとっては重要で、この期待リターンがインフレを十分に上回ると考えています。中長期投資家の投資レーダーの中に日本株が入る可能性が高いでしょう。 図表2: 国内株式の4局面とTOPIXのEPS (1株当たり利益) (注)TOPIXを12ヶ月先予想PERとEPSに分解して、PER主導で株価が上昇した局面を「流動性相場」、EPS主導で株価が上昇した局面を「業績相場」、PER主導で株価が下落した局面を「逆流動性相場」、EPS主導で株価が下落した局面を「逆業績相場」と4局面に分類。12ヶ月先予想PERとEPSはブルームバーグコンセンサス。2024年12月以降は、野村のトップダウン予想を基にした各月時点のTOPIX 12ヶ月先予想EPS(2024年度178、2025年度193、2026年度204)。(出所)JPX総研より野村證券市場戦略リサーチ部作成 25年度の期初計画段階(4~5月時点)では、会社予想は例年通り保守的なものが見込まれます。その後、四半期決算で期を追うごとに1桁台後半の増益への確信度が高まる展開を想定し、年後半の株高を見込んでいます。また、25年前半はトランプ米次期政権による関税発動やFRBの利下げ停止が懸念を誘う場面が多い一方、年後半に法人減税の確度が高まるとともに楽観論が優勢になるというシナリオも念頭に置いています。25年12月末までの予想レンジはTOPIXが2,650~3,200、日経平均が37,750~45,000円です。 セクター判断については、外需では25年度も2桁増益予想の電機・精密、機械を選好し、成長期待が乏しい自動車を回避し、内需では25年度の増益の確度が高い銀行と情報通信・サービス、建設・資材を選好し、食品、小売を回避します。ファクターでは、緩やかな金利上昇が見込まれる点、東証要請が引き続き割安企業の底上げに主眼を置く点、物言う株主の存在感の高まりなどからもバリュー株に注目しています。 (野村證券市場戦略リサーチ部 北岡 智哉) ※野村週報 2025年新春特別号「日本株式市場」より ※こちらの記事は「野村週報 2025年新春特別号」発行時点の情報に基づいております。※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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01/05 12:00
【新春特集】円の復権はなるか(外国為替市場)
2024年の為替市場を席巻した円キャリー取引は25年は盛り上がらず海外中銀利下げの中での逆行的な日銀利上げ、需給改善が円相場の支えにトランプ政権2.0の経済政策はドル高に作用、ただし対円でのドル高は限定的に 2024年の為替市場は、米景気軟着陸期待から年前半はキャリー取引が席巻、夏場にかけて米景気への警戒からキャリー取引が巻き戻される展開となりました。低金利通貨である円は年前半に最弱通貨となった後、年後半は買い戻されています。24年後半に見られた円高はポジション調整による色彩が強いと言えますが、この間に生じたファンダメンタルズ面での変化、1)海外主要中銀が利下げに踏み切る中での逆行的な日銀利上げ、2)円需給の緩やかな改善、も重要です。 図表1: 主要通貨の対米ドル騰落率 (24年下期) (注) 6月末から12月11日まで。(出所)ブルームバーグ等より野村證券市場戦略リサーチ部作成 FRBは24年9月に50bp利下げを実施、ECBは6月に25bp利下げを開始とそれぞれ利下げサイクル入りしています。米大統領選でのトランプ前大統領の勝利を受け、インフレ懸念を背景に25年中の米利下げは緩やかなものとなりそうです。野村證券では25年3月に25bpの利下げを予想しています。 一方、日本では24年3月にマイナス金利が解除され、7月には0.25%まで政策金利が引き上げられています。日銀は「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」との基本姿勢を維持しており、25年に向けて利上げ継続がメインシナリオと言えそうです。米日5年金利差は徐々に縮小していく公算が大きく、緩やかな円高ドル安が予想されます。 図表2: 米日5年金利差とドル円相場 (出所)ブルームバーグ等より野村證券市場戦略リサーチ部作成 日銀はリスク材料として、米経済や金融市場の動向を重視しており、米指標の上振れ時や円安圧力台頭時には利上げを前倒しする可能性も高そうです。結果的に、24年前半のような大幅な円売りポジションの蓄積の可能性は低下し、円安の行き過ぎには歯止めが掛かると見ています。 需給の観点では、海外との政策金利差の縮小により、本邦投資家にとっての為替ヘッジコストが低下に転じたことが重要です。24年9月末時点の主要生保9社の為替ヘッジ比率は小幅ながら約3年ぶりに上昇に転じており、25年に向けて円相場の支えになりそうです。貿易収支の緩やかな改善傾向も続くと予想され、経常収支と直接投資収支を通じた基調的な円安圧力緩和につながると考えられます。 図表3: 基礎的収支に基づく円需給推計とドル円 (注) 24-26年の経常収支は野村見通しに基づく。直接投資収支は横ばいと仮定。所得収支及び直接投資収支の為替インパクトは実際の収支の50%と仮定。(出所)財務省、ブルームバーグ等より野村證券市場戦略リサーチ部作成 25年を展望する上では、1月20日発足の米国トランプ新政権の政策が為替市場に及ぼす影響を考えることも重要となります。トランプ前大統領が選挙戦を通じて主張してきた政策姿勢については、ドル高的な要素とドル安的な要素が混在していますが、政策の優先順位や実現可能性などを考慮すれば、市場ではインフレ懸念が先行しやすく、25年前半にかけて米金利上昇圧力に伴うドル高圧力が顕在化しそうです。実際、大統領選でのトランプ候補勝利を受けて、為替市場ではドル全面高が進みました。 もっとも、対円でのドル高の勢いは16年のトランプ候補勝利時と比較してかなり弱いことが特徴的です。16年当時と比較し、1)グローバルなリフレ期待上昇が限られること、2)米ターミナルレート(利下げの最終到達点)の変化が限定的なこと、3)日本当局の政策姿勢が異なること、などが円安圧力を限定していると考えられます。また、トランプ政権1.0対比で早いタイミングで関税発動に向かう可能性が高いと見ていますが、18-19年に米中貿易戦争が激化した際には、元安が進む中で円は逆行的に上昇しています。対中関税が早期発動に向かうと見られる25年前半には、対人民元や対ユーロなどでの円高材料となりそうです。 図表4: 2016年と2024年の米大統領選前後のドル指数とドル円 (注)投開票日を基準とした変化率。(出所)ブルームバーグ等より野村證券市場戦略リサーチ部作成 総じて、25年のドル円相場は、トランプ関税2.0の影響に注目が集まる1-3月期にかけては1ドル=150円前後での高止まりが続くと予想されます。その後、海外中銀の利下げに逆行した日銀の利上げにより、140円台前半に向けて緩やかな円高ドル安が進みそうです。年前半には対ユーロや対人民元などのクロス円での円高圧力が強まりやすく、ユーロ円は1ユーロ=150円割れ、人民元円は1人民元=20円割れに向けて調整すると予想しますが、年後半にはドル円などで押し目買いの機会がありそうです。 (野村證券市場戦略リサーチ部 後藤 祐二朗) ※野村週報 2025年新春特別号「外国為替市場」より ※こちらの記事は「野村週報 2025年新春特別号」発行時点の情報に基づいております。※画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点