野村のオピニオン
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11/22 09:30
【野村の投資判断】中国関連銘柄の持ち直しと欧州関連銘柄の低迷
欧州関連銘柄のレーティングの引き下げリスクに注意 日本の株式市場が持ち直しています。ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)から見ると、世界的な金利上昇の圧力が緩和されたことや、第2四半期の決算で利益率が拡大したことが好材料とみなされた模様です。 需給面では、海外の先物投資家の影響が大きいと見られます。具体的には、CTA(商品投資顧問)によるロングポジション(買い持ち)の拡大が目立っています。現在のロングポジションは約8,000億円にまで増加しており、今年6月には約2.5兆円に達したことを考えると、まだ拡大の余地があると言えます。 個別銘柄の物色動向については、中国関連銘柄の反発が目立っています。景気指標と比べて売られ過ぎだった状態から、景気指標とおおむね整合的な水準にまで持ち直しています。中国関連銘柄は、グロース株の色彩が強いため金利低下が好感されたほか、中国景気が緩やかに回復していることも追い風となった可能性があります。 一方で、欧州関連銘柄は低迷を続けています。日本だけでなく、米国の株式市場でも、欧州関連銘柄はパフォーマンスが低迷しており、欧州景気の弱さが影響していると考えられます。しかし、アナリストは欧州関連銘柄に対して総じて強気の見方を続けており、現在の景気低迷が完全に反映されているとは言い難い状況です。決算シーズンの直後であるため、レーティングの引き下げリスクに注意が必要です。ただし、アナリスト予想の下方修正がセリング・クライマックス(売りの最終局面)と見なされる可能性も否定できません。 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「野村クオンツ・インサイト – CTAの日本株ロング拡大とドル円ロング縮小リスク(2023年11月20日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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11/21 09:30
【野村の投資判断】半導体製造装置を推奨セクターに追加
円高耐性、金利低下メリットに優れる半導体製造装置 2024年に向けたマクロ経済環境の想定としては、海外ではインフレの鎮静化が見込まれる一方で、日本国内ではデフレ脱却の動きが続くと見ています。一見矛盾しているように思えるこの想定ですが、輸入物価がピークアウトしても国内企業物価が上昇し続けるという異例の「ワニの口」現象が実際に発生しています。 この環境下で優先すべきファクター(要因)として、バリュー株よりもグロース株、景気敏感株よりもディフェンシブ株を重視しています。今回セクター推奨として、半導体製造装置を追加しました。 半導体製造装置は、輸出業種の中でもグローバルな景気循環や為替変動に対する耐性が高い点を評価しています。加えて、米国の金利低下によるドル安・円高の際には、金利低下によるバリュエーション上昇の効果を通じて株価が上昇しやすいグロース株の特性を持つ点も魅力的です。TOPIX17業種を比較した際、半導体製造装置を含む電機・精密業種は、円高耐性と金利低下メリットの観点で機械や自動車業種より優位にあります。加えて、電子部品・デバイスの在庫水準が2017年の底付近まで低下していることも、半導体関連の回復シナリオを支えています。 その他の推奨セクターとしては、値上げ効果が顕在化するシステム・アプリケーション、デフレ脱却によるメリットがある不動産、長期的な値上げポテンシャルがある食品を継続して推奨します。 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 注目点とトピック(2023年11月16日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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11/20 20:00
【今週の米国株】3週連騰の米国株、エヌビディア決算が握る命運(11/20)
先週:長期金利低下が後押し、株価3週連騰 前週の米国株は、米長期金利(10年国債利回り)が4.6%台から4.4%台に低下し、株価の追い風となりました。懸念されていた政府閉鎖が回避されたことも市場に好感されたと見られます。 10月コアCPIが下振れ 金利低下の主因として10月のコアCPI(消費者物価指数)が前月比+0.2%と市場予想(同+0.3%)を下回ったことが挙げられます。自動車価格や宿泊費など変動幅の大きい項目が予想を下回ったことに加えて、定額中継配信サービス価格の上昇が報告されたにもかかわらず、動画・音楽配信サービス価格も下落しました。追加利上げのリスクは低下したと考えられます。 Point1:更なる長期金利低下は限定的か 米長期金利の低下は持続的でしょうか。市場は既に2024年に計1.00%ポイント程度の利下げを見込んでおり、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)で示された計0.50%ポイントと比較すると、利下げ期待が先行しています。 11月FOMCでは追加利上げを見送りとした判断の根拠として、長期金利上昇による金融環境の引き締めが挙げられていました。長期金利の水準が更に低下した場合、今後FRBのタカ派的なバイアスを強める可能性があります。FRBは現行のFFレート水準を相当程度維持する、とのスタンスを改めて表明し、市場をけん制することが考えれます。野村は2023年12月末の長期金利は4.6%と予測します。その意味でも、21日(火)に発表される11月FOMC議事録は注目です。 Pont2:エヌビディア決算、予想EPSを方向性づけるか リビジョンインデックスの動向 (注) S&P 500 指数構成企業のリビジョンインデックス。リビジョンインデックスは直近4週間にアナリストが業績予想を上方修正した銘柄数/下方修正した銘柄数で計算。指数が1を上回ると上方修正優位、1を下回ると下方修正優位と判断される。直近値は2023年11月17日時点。FY1は予想1期目(12月決算企業の場合、2023年12月期)、FY2は予想2期目(12月決算企業の場合、2024年12月期) 。(出所) LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成 上図から読み取れる通り、7-9月期決算本格化前~発表中に下方修正優位であった今期(FY1)のリビジョン・インデックス(RI)が1.0を超え、2週連続で上方修正優位となっています。アナリストの来期(FY2)見通しが、8-10月期決算発表などを通し上方修正に転じられるかが今後の焦点となります。 今週は、21日(火)引け後に予定されるエヌビディア(NVDA)など、情報技術セクターの決算発表が注目されます。 今年の5月頃には生成AI関連の銘柄に関心が集まり、関連企業の株価は大きく上昇しました。その後、株価は下落に転じたものの、一部の銘柄は堅調な推移に戻りつつあります(エヌビディアの株価は14日に496.56ドルと年初来高値を更新)。 背景には、7-9月期決算発表等を通じ、企業のIT投資拡大は進んでおり、生成AIが実用化~大きな収益源との証左が見られていることが挙げられます。マイクロソフトは、ChatGPTを活用した「Microsoft 365 コパイロット」(大手顧客向けに2023年11月1日から提供)の利用に向け、事業会社が幅広い分野でIT投資を拡大させたとコメントしています。また、アマゾン・ドットコムは、大規模なデータセンター投資は2024年以降と市場の一部の期待よりやや後ずれしていることを表明したものの「生成AIは今後数年間で数百億ドルの売上高を生む」とコメントし、生成AIの収益化に自信を示しています。 今後は、生成AIが実際に利益向上に貢献してるかが大きな銘柄選別のポイントと考えられます。まずは、半導体業界の動向を見る上で、エヌビディアの業績に高い関心が集まります。 Point3. サンクス・ギビングデー以降は年末商戦突入 今週、23日(木)は感謝祭の祝日で休場、翌24日(金)は短縮取引です。感謝祭翌日の金曜日は「ブラックフライデー」と呼ばれ、小売業界で年末商戦が本格化します。15日(水)に発表された10月小売売上高では、裁量的(生活必需品ではない)品目の比重が高い業種の多くで、前月比、前年同月比共に売上高が減少していました。10日(金)に発表されたミシガン大学消費者調査では、経済の先行きに対し消費者のマインドが低下している上、インフレへの警戒感が根強いことがうかがえました。 年末商戦については例年、メディアが売れ行きの状況などについて報じています。今週発表される小売関連企業の決算動向と併せ、感謝祭週末のセールの報道などを通じて、消費者の購買動向などを確認したいと考えます。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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11/20 15:30
【経済データの読み方】カナダで進む積極的な移民の受け入れ
カナダでは、人口増加が著しい。カナダ統計局が発表した2023年9月末の総人口(推計値)は4,010万人となり、同国として初めて総人口が4,000万人を突破した。また、23年7~9月期の人口増加率は前年同期比+3.0%となり、これは日本のベビーブーム期(1947~49年)の年平均2.6%を凌駕する。こうした著しい人口増加は、2021年以降トルドー政権が取り組んでいる積極的な移民受け入れに起因する。 カナダはコロナ禍前から年間約30万人前後のペースで永住移民を受け入れてきたが、21年には約41万人、22年には約44万人を受け入れるなどそのペースを加速させている。①コロナ禍により20年の移民受け入れが事前の想定を大幅に下回った、②コロナ禍後シニア層の離職により人手不足が顕在化した、③米英やオセアニア諸国対比で少子高齢化が急速に進んでいる、といった事情が積極的な移民受け入れ政策に繋がっているとみられる。 こうした移民受け入れは、短期的には労働需給の緩和に寄与、インフレ圧力の緩和につながる可能性がある。一方、中長期的には住宅価格の上昇を通じてインフレ圧力をもたらすとともに、労働ストックの増加を通じて潜在成長率を押し上げるとみられる。積極的な移民政策は将来的に金利上昇要因として作用する可能性があろう。 一方、隣国の米国に目を向けると、23年9月の人口増加率(米商務省経済分析局推計値)は前年同月比+0.5%に留まっており、カナダの伸びを大きく下回っている。 これまでのカナダは原油への依存度の高さが米国との経済構造面での大きな違いとして知られてきたが、直近では原油高にもかかわらず鉱業部門への設備投資が滞るなど徐々にその性格が弱まってきている。今後は、人口増加率の違いがカナダと米国の間で経済面での乖離をもたらし、金融政策や金利、為替などに影響を及ぼす可能性があろう。 (野村證券市場戦略リサーチ部 秀嶋 智輝) ※野村週報 2023年11月20日号「経済データを読む」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/19 13:00
【オピニオン】生成AIを主導する大手クラウド企業の優位性が高まる
米国企業の2023年7-9月期決算は良好だったと考えます。S&P500指数を構成する米大企業500社の7-9月期の純利益総額の前年同期比の成長率予想は、決算発表前の1%台半ばから、450社強が発表を済ませた時点で6%強に引きあがりました(注)。 決算でポジティブだった点は、IT関連の設備投資の増加です。PC向け半導体やネットワーク機器関連企業の業績が堅調でした。これは、生成AIの本格的な導入を前に事業会社がIT設備を増強し、PCサイクルの底打ちが従来の予想よりも早まったことを示唆していると推察されます。S&P500情報技術株指数は、コロナ禍中のテレワーク用のPCやスマートフォンの需要急増などを受けピーク時にはコロナ禍前(2019年11月)の約2倍に上昇し、その後需要の反動減を受け下落、今年に入り生成AIへの期待などを背景に再度反発しました。 生成AIに関して決算では、複数の大手クラウド企業が、「生成AI関連のクラウド事業の設備投資は2024年以降本格化する」「生成AIは今後数年間で数百億ドルの収入を生む」、などとコメントしました。 ITの世代は、従来はデータ・プライバシー保護や効率性の観点から、データを一元管理する(中央集権型の)クラウドから、ブロックチェーン技術を用いて端末などで管理・計算する(分散型の)Web3へ移行するとみられていました。しかし、生成AIは現状では事前にデータセンターで機械学習させたデータツールにアクセスするクラウドの仕組みを必須とします。ITの世代は、従来のクラウドから、生成AIの活用を前提とする「新しいクラウド」へ移行し、Web3や、EU(欧州連合)が提唱するWeb3にAIを組み込んだWeb4.0などと共存することになると考えます。 2023年10月30日にG7は、「広島AIプロセスに関するG7首脳声明」とその指針・行動規範を発表しました。声明は冒頭で「生成AIがもたらす革新的な機会と変革の可能性を強調する」と、生成AIを活用する方針を示しました。 G7首脳声明を受けた関係当局が制度や法令の整備に着手しており、生成AIの具体的な社会実装は早まりそうです。中でも、競争当局の調査が先んじて開始されたことは、生成AIを主導する大手クラウド企業の優位性が高まることが自明であることを示唆していると考えます。 (注)LSEG(旧リフィニティブ)による2023年11月10日時点の集計。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
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11/19 09:00
【業界展望】SPE市場は足元で調整も中期成長テーマは豊富
生成AI による好影響は既に一部顕在化 株式市場では半導体製造装置(以下、SPE)市場に対する中期的な成長期待は高い。従来から成長市場と捉えられていたうえに、2023年には生成AI(人工知能)により期待感は一層と高まっている。生成AIは様々な領域、用途で普及する大きな可能性を有し、23年5月のNVIDIA決算でAI用途向けで大きな売上の伸びが確認され、株式市場で大きなテーマとなった。 一部の領域で生成AIの好影響が既にSPE市場にも顕在化してきている。ハードウェア面では並列的な計算処理能力が高いAIアクセラレーターを搭載したAIサーバーの需要が増加する。アクセラレーターの代表はNVIDIAなどが販売するGPU(画像処理半導体)で、足元で需要が急増している。GPU はTSMC が提供する特殊なパッケージ技術(アドバンスドパッケージ)を使用しており、足元ではそのパッケージ供給能力がGPU製造量のボトルネックになっている。そのため、供給キャパシティの拡張が急ピッチで行われており、SPEでは関連する後工程装置、ダイサ、グラインダ、ボンダなどの需要が急増している。 SPE市場への影響はそれだけではなく、AIサーバーではDRAMメモリの搭載量も大幅に増加、特に高速・広帯域通信が可能なHBM(High Bandwidth Memory、広帯域メモリ)の需要が急増している。韓国メモリメーカー中心にライン新設が行われており、HBM のパッケージに関連する装置への需要が押し上げられている。また、現状はスマートフォン向けチップなどの需要の弱さで打ち消されているが、AI用途向けには処理能力が高い最先端チップが必要となるため、前工程装置やテスト装置でも中期的な好影響も想定される。 半導体需要を牽引するアプリケーションはPC、スマートフォン、サーバーと変遷してきた。今後は生成AIなどのAI用途が半導体市場を牽引し、SPE市場に中期的に好影響を与える可能性は十分にある。一方でリスク要因も存在し、各国での生成AI普及の逆風となる規制導入や米中貿易摩擦の一層の拡大が挙げられよう。23年10月の米国による追加規制ではAI半導体の輸出規制が一層と強化されており、中国でのAI普及動向に影響が生じる可能性もある。 短期的には市場回復の不透明感が残る 中長期的な市場の成長期待が高まる一方で、足元のSPE 市場は調整局面の真っ只中にある。世界的なインフレやコロナ特需からの反動減などを要因に、PC、スマートフォン、サーバーなどの最終製品需要が鈍化しており、半導体製造業者は生成AI用途などの一部を除いて製造キャパシティの拡張に慎重になっているためである。 ただし、野村ではSPE市場は現状が底に近いと考えている。1つ目の理由はSPEの顧客業績に底打ち感が確認できていることである。高付加価値製品の増加による製品ミックス影響もあるが、DRAMのビット単価が底打ち、反転してきており、メモリメーカーのSamsungやSK Hynix、Micronの業績は既に前四半期比での改善が確認されている。最大手ファウンドリのTSMCも7~9月期決算で売上底打ちを確認できており、これまで以上に設備投資が縮小される状況からは脱したと考える。2つ目の理由は、SPE企業側からも底打ちの近さを示す兆候があることである。業績が前工程や検査工程装置に先行する傾向のあるディスコや東京精密などの後工程装置企業では受注や出荷などの先行指標が1~3月期で底打ちし、7~9月期も改善が継続している。 一方で、底打ち後の市場回復は底這いともとられるような緩やかさで、本格的な回復は24年下期以降となると見ている。本格的な回復にはスマートフォンなど最終製品の需要が高まることが必要となろう。 本稿執筆時点で国内外のSPE関連企業の7~9月期決算が出揃いつつあるが、上記の事業環境の見方を大きく変えるようなものはない。国内外の大手半導体製造装置メーカーは、中国からの強い需要にも支えられ、足元の着地は会社計画に対して順調な企業が多く、四半期毎の売上でも底打ち感が生じている。23年の市場見通しもLamResearch など引き上げる企業が多かった。一方、24年の見通しは露光装置最大手の蘭ASMLが従来見通しを慎重に見直すなど不確実性が高い。明確な見通しの言及を現時点では時期尚早として避ける会社も多い。 そんな中、野村ではディスコや東京エレクトロンの業況に注目している。ディスコはSi(シリコン)ベースのパワー半導体の需要に減退感はあるが、想定以上の規模感であった生成AI 向けも含めた出荷合計では着実な成長が確認できると考える。東京エレクトロンは堅実な中国需要もあり業績底打ち感がある。メモリの売上比率が高いため24年半ばからメモリが回復局面を迎えれば増益率は上昇しよう。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 吉岡 篤) ※野村週報 2023年11月13日号「産業界」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/18 13:00
【市場展望】ドル円ピークアウト期待は時期尚早か?
日銀はYCC を再修正も円安継続 ドル円相場は10月の日銀金融政策決定会合後、一時年初来高値となる151円70銭台まで上昇した。日銀は長期金利の1%上限を厳格な上限から目途へと変更し、長期金利上昇を許容することを決定した。7月会合に続きイールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)政策の修正に踏み切ったが、円高インパクトは限定的に留まったと言える。事前報道で1.5%程度まで長期金利上限が引き上げられる可能性も報じられていたため、あくまでも想定の範囲内の修正に留まったとの見方だろう。 もっとも、ドル円は昨年高値である151円94銭を突破することはなかった。①本邦当局による円買い介入への警戒感、②米金利ピークアウト期待、が高まったことがドル円の上値を抑えていよう。 ドル円の年初来高値更新を受け、11月1日には神田財務官が円安について、「(要因で)一番大きいのは投機」「ファンダメンタルズと合っていない」とした上で、為替介入についてスタンバイと明言した。神田財務官は2022年9月22日の介入直前にも、「(為替介入などの対応は)スタンバイの状態だ」と発言していた。実弾介入発動が近いことを意識させる、かなり強い口先介入と言えよう。 日銀会合後の円安のスピードの速さに加え、米日金利差が全体的に縮小する中で円安ドル高が加速したことで、ファンダメンタルズに反した投機的な動きと当局が見なしやすくなっている可能性がある。152円超での円買い介入の可能性に注意が必要だろう。海外勢の間でも介入への警戒感が高まった印象であり、当面のドル円の上値を試す機運低下につながりそうだ。 高まる米金利ピークアウト期待 11月FOMC(米連邦公開市場委員会)は大方の予想通り政策金利が据え置かれたが、声明文では金融状況の引き締まりが経済活動や雇用、インフレに影響を及ぼす公算との言及が見られた。FRB(米連邦準備制度理事会)が長期金利上昇の影響を警戒している姿勢が改めて示されたと言える。パウエル議長は追加利上げの可能性を排除していないが、12月利上げの確度は低下していよう。 FRBは依然としてデータ次第の姿勢でもあり、米指標次第で金利上昇圧力が再燃する可能性は否定できないが、11月第1週に公表された米指標は利上げ休止や早期利下げ開始への期待を高める内容となった。雇用統計では労働市場の過熱感後退が示唆される。ISM(全米供給管理協会)指数は製造業、サービス業ともに市場予想以上に低下しており、7~9月期に見られた米経済の再加速が一時的に留まる可能性が高いことも再確認されている。 FRBが追加利上げに慎重姿勢を見せ、米指標にも弱さが見え始めたことで、米金利はピークアウトの公算が高まった。介入警戒感の高まりもあり、ドル円の上値は重くなりそうだが、明確な円高ドル安トレンドに入ったと判断するのは時期尚早だろう。 雇用統計などの米指標下振れ後の米株反発に見られるように、市場では米景気軟着陸期待が依然として優勢と見られる。米景気楽観論が維持される中での株高や為替市場の予想変動率低下は金利差収入目的での円売り需要を維持、クロス円での円安圧力がドル円にも下支え要因となり得る。 FOMC及び米雇用統計後の米長期金利急低下や株価急反発による金融環境の再緩和を受けて、FRB高官発言のタカ派色(金融引き締め重視姿勢)が再び強まる可能性にも注意が必要だろう。また、口先介入レベルの強化により、150円超でのドル円の上値を試す機運は低下の公算が大きくなったとはいえ、ドル円相場を押し下げることには必ずしもつながらない。日銀発の本格的な円高圧力の高まりについても、マイナス金利解除やその後の利上げ期待の高まりが必要となると見られる。 24年1~3月期に向けては円高圧力がより本格化する可能性が高いと見ているが、目先は150円近い水準でのドル円の高止まりが続きやすい。本格的な円高転換のタイミングを占う上で、米国を中心に世界の主要指標が一段の弱さを見せるか、日銀がより本格的な政策修正に向けた動きを早めるか、に注目したい。 (野村證券市場戦略リサーチ部 後藤 祐二朗) ※野村週報 2023年11月13日号「焦点」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/17 12:00
【今週のチャート分析】日経平均は中段保ち合い上限に接近、突破となるか注目(11/17)
※2023年11月16日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 保ち合い突破となれば35,000円が次の上値メド 今週の日本株は、米国長期金利が低下したことなどを好感し、グロース株を中心に上昇しました。 日経平均株価のこれまでの動きを振り返ってみましょう。日経平均株価は、10月30日安値(30,538円)形成後に大幅上昇となりました(図1)。 11月6日に①10月に上値抵抗となってきた75日移動平均線(11月16日:32,166円)を上抜けたことに加え、②10月13日高値(32,533円)を超え10月4日・30日安値でのダブルボトムが完成となったことから、本格的な上昇トレンド入りとなってきたと捉えられます。 15日には今年最大の上昇幅(前日比)で33,500円台にのせており、この先、急騰の反動をこなしつつ、まずは中段保ち合い上限である9月15日高値(33,634円)や、6月19日高値(33,772円)の突破へ向けた動きとなると考えられます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2023年11月16日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 また今回の中段保ち合い上限への接近は、下落率や調整期間の点で2020年6月~10月末の中段保ち合い時と比較して調整十分となった後の上限接近です(図2)。上限突破となる可能性も十分考えられ、次の上値メドとして心理的フシの35,000円の水準が挙げられます。 (注1)直近値は2023年11月16日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 一方で、上昇一巡後に押しを入れる動きとなった場合は、11月6日上抜け後に下値支持線として機能した75日移動平均線(11月16日:32,166円)や、上向きに転じた25日線(同:31,914円)が下支えとなると期待されます(前述:図1)。 米国長期金利低下、5%で天井形成の確度高まる 米国で長期金利が低下しています。米FRBが2022年3月利上げ開始以降初めて2会合連続で利上げを見送り、その後10月の消費者物価指数が市場予想を下回ったことを受けて、10月に一時5%にのせた米国10年債利回りは4.5%を下回る水準まで低下しました(図3)。 では米国10年債利回りは10月ピークの5%の水準で天井をつけたのでしょうか。チャート面でみると当面の天井をつけた可能性が高いと考えられます。まず、2020年3月ボトムから今年10月ピークまでの上昇期間は、これまでの中長期的な金利上昇期間を大幅に上回っており、その点からいつ天井形成してもおかしくない状況にあったと捉えられます。その中、11月の利回り低下によって、これまで下支えとなってきた今年7月以降の上昇トレンドラインを割り込みました。今年4月以降の上昇局面が終了し、10月ピークで当面の天井を付けた可能性が高まったと考えられます。 (注1)直近値は2023年11月14日。 (注2)トレンドラインには主観が含まれておりますのでご留意ください。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 一方で、2020年ボトム形成後の中長期上昇局面では数ヶ月単位の利回り低下の動きはみられましたが、12ヶ月移動平均線前後の水準から切り返してきました。先行き、12ヶ月線(11月13日:3.973%)を下放れとなれば、年単位の利回り低下トレンド入りした可能性が高まったと捉えられます。 (投資情報部 岩本 竜太郎) ※画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/16 12:00
【野村の投資判断】Q2決算で増益に転じた銘柄は高パフォーマンス?
減益から増益に転じた銘柄の高パフォーマンスは特にQ2決算後に顕著 2023年度第2四半期(Q2)の決算は、事前のIFISコンセンサス(アナリストの予想平均値)を上回るポジティブサプライズが多く、全体的には堅調な状況のようです。野村證券では、第1四半期(Q1)は減益だったものの、第2四半期(Q2)から増益に転じた銘柄に注目しています。特に、その中でも上半期(Q1+Q2)では前年同期比減益となった銘柄に投資機会があると考えられます。 このような銘柄は、決算発表後に株価の上昇が続きやすい傾向が確認されています。背景について考えてると、通常、Q2の決算発表時の株価は、Q2単独の実績と概ね一致する方向で反応します。しかし、Q2単独の「増益or減益」と上半期の「増益or減益」が一致しない銘柄の場合、上半期の業績に引きずられる投資家の影響で、Q2単独の「増益or減益」が株価に反映されるまで時間がかかっている可能性が考えられます。 加えて、増益という決算結果に対して株価が正の方向に反応したかどうかを確認することも重要です。過去、増益や減益に転じた銘柄の中で、決算発表後の2営業日目以降も株価モメンタム(勢い)が観測されたのは、主に決算発表翌日のTOPIXに対する超過リターンが正の方向だった銘柄でした。 参考までに、税引き利益または営業利益がQ2で増益に転じた銘柄の中で、決算発表翌日(場中発表の場合は発表日)のTOPIXに対する超過リターンがプラスだった銘柄のリストを掲載します。 税引き利益または営業利益が増益に転じ、かつ決算発表直後のTOPIX超過リターンが正の銘柄 (注)TOPIX500を構成する3月決算銘柄かつ今Q2決算で営業利益または税引き利益が減益から増益に転じた銘柄のうち、Q2決算発表翌日(場中に決算発表を行った場合は当日)のTOPIX超過リターンが正の銘柄を抽出。「減益 → 増益」列の”◎”は「Q2で増益に転じかつ上期減益」を、”〇”は「Q2で増益に転じかつ上期増益」を表す。「決算発表翌日の超過リターン」列は今Q2決算発表翌日(場中発表の場合は決算発表当日)のTOPIX超過リターン。2023年11月9日までに決算発表を行った銘柄が対象。値は2023年11月10日時点。(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「日本株クオンツストラテジー – Q2決算で増益に転じた銘柄に注目(2023年11月6日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点