野村のオピニオン
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11/30 09:30
【野村の投資判断】米国株式市場では「年末ラリー」に注目
マクロ系ヘッジファンドが「年末ラリー」にベットする可能性 米国株式市場において、(経済情勢に基づいて売買する)マクロ系ヘッジファンドは様子見姿勢を続けていますが、年末に向けてリスクテイクに動く可能性があります。 例えば今年のように株価のパフォーマンスが良い年では、マクロ系ヘッジファンドは年末ラリーを見込んで株式への投資を増やす傾向にあります。特に、11月下旬の時点で年初からの株価リターンがプラスである年は、投資ポジションがまだ小幅なロングポジション(買い持ち)に留まっている場合、その後のロングポジションの拡大が顕著でした。 年末ラリーは単なるアノマリーに留まりません。米国株の季節性を見ると、年初から第3四半期までの株価が上昇または下落した年は、第4四半期のパフォーマンスがそれに応じて好調または低調になる傾向があります。 これは、第4四半期のヘッジファンドを巡る資金の流れである程度説明できます。一部を除いて株式ヘッジファンドのパフォーマンスは株価と強く連動しており、年初からのパフォーマンスが良好または不振な時ほど資金の流入または流出が発生しやすくなります。さらに、第4四半期に資金が流入するか流出するかによって、株価のパフォーマンスの好不調が明確に分かれます。今年は年初からのパフォーマンスが約5%であり、少なからず資金流入が期待できる状況です。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) 要約編集元アナリストレポート「野村クオンツ・インサイト – マクロヘッジファンドと「年末ラリー」(2023年11月27日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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11/29 19:00
【野村の投資判断】米金利低下による円高局面、半導体製造装置セクターに魅力
為替変動への耐性が高いことに加えて、米金利低下の恩恵も受けやすい 10月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが市場予想を下回ったことから、米連邦準備制度理事会(FRB)による追加の利上げの必要性が低下しています。ドル円相場に影響を与える米5年国債利回りがピークアウトする可能性が高まっており、金利差の観点からはドル円相場の上昇にも歯止めがかかりそうです。野村證券は2024年末のドル円相場を1ドル=135円と予想しており、このような市場環境下での適切な銘柄選択が問われています。 野村證券ではセクターとしては、システム・アプリケーション、不動産、食品、半導体製造装置に注目しています。今回は半導体製造装置について詳しく見てみます。半導体製造装置は輸出業種の中でも、グローバルな景気循環や為替変動に対する耐性が高いと評価しています。さらに、米国の金利低下に伴う円高の際には、金利低下によるバリュエーション上昇の効果を通じて株価が上昇しやすいグロース株の特性を持つ点も魅力です。実際にTOPIX17業種を比較すると、半導体製造装置を含む電機・精密業種は、円高耐性と金利低下メリットの観点で機械や自動車業種より優位にあります。 半導体製造装置の2023年7-9月期決算では、業績底打ちが確認されましたが、その後の回復は緩やかとなり、本格的な回復は2024年下半期以降と予想しています。しかし、各社の決算で業績底打ちが確認されたことから、株式市場では市場回復への期待がこれまでよりも高まりやすくなったと考えます。 野村證券がカバーしている半導体製造装置企業の決算動向ですが、東京エレクトロン(8035)とSCREENホールディングス(7735)は通期の会社計画を上方修正しました。また、東京精密(7729)の受注は野村予想を上回る結果となりました。ディスコ(6146)は為替の影響を除けば、出荷、売上高、営業利益が野村予想を上回りました。一方で、アドバンテスト(6857)は通期の会社計画を下方修正しました。 (FINTOS!編集部) (注)2023年11月21日時点での野村證券各種見通しに基づき作成。(出所)野村證券市場戦略リサーチ部、エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成 参考アナリストレポート 日本株ストラテジー – 注目点とトピック(2023年11月16日配信)日本SPE:23年7~9月期決算振返り – SPE市場底打ちで回復がより意識されよう(2023年11月20日配信)国際金融為替フラッシュ – ドル円:24年に向けた見通しを修正(2023年11月20日配信) 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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11/29 09:30
【野村の投資判断】12月中旬まで「モメンタム」ファクターは調整か
モメンタムは追加で2~3%程度の調整が生じる可能性 日本株の株価反発を主導してきた海外の先物投資家については、足元で減速感が強まっているものの、目先は再び株高に作用する可能性が高いでしょう。「順張り」のCTA(商品投資顧問)は、ロングポジション(買い持ち)の拡大傾向を維持しています。株価が34,000円を上抜けると、買い越しペースが徐々に加速し始めると見込まれます。 経済情勢などに基づいて売買するマクロ系ヘッジファンドも、ロングポジションの拡大が期待されます。米金利上昇への懸念が高止まりする中、米国株よりも日本株を選好する姿勢は維持される可能性が大きいと見ます。 ヘッジファンド動向については、「(買い持ちと売り持ちを同額にする)マーケットニュートラル」でのリデンプション(償還)にも注目します。今年の相対パフォーマンスの低迷を踏まえると、第4四半期から資金流出が見込まれます。ポジション(持ち高)の解消に伴い、ファクター(要因)別では「モメンタム(相場の勢い)」が調整しやすい状況になるでしょう。 11月に入ってからのモメンタムファクターは既に約4%調整していますが、過去の傾向に従えば、リデンプション対応が一段落すると見られる12月中旬までに、追加で2~3%程度の調整が生じる可能性があるでしょう。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) 要約編集元アナリストレポート「野村クオンツ・インサイト – マクロヘッジファンドと「年末ラリー」(2023年11月27日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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11/28 15:30
【資産運用の視点】アクティブETFの発展
特定の指標に連動しないアクティブ運用のETF(以下、アクティブ ETF)の取り扱いが9月に東京証券取引所で始まった。ETFではない投資信託と比較して、ETF は「市場での日中売買が可能(成行・指値注文も可能)」、「(一般的に)信託報酬や購入時手数料が安い」、「保有銘柄が日次開示される」というメリットがある。 アクティブETFの取り扱いが先行している米国市場では、2023年9月末でアクティブETF の総資産額は4,347億ドルでETF 全体の6.5%に過ぎない。しかし、5年前と比較して約3.36倍に拡大しており、成長率ではパッシブETF(同期間で約1.85倍)を上回っている。今後日本においても、アクティブETFは拡大していくものと思われる。以下、アクティブETFにまつわる話題を2つ取り上げる。 ① アクティブETF への参入障壁ETF の「基準価額」をリアルタイムで正確に算出するために、「保有銘柄情報の日次開示」が課されている。しかし、ファンドマネージャー独自の銘柄選択や運用戦略が模倣される懸念が生じ、運用会社の参入障壁となっている。この問題に対応するため、非・半透明型ETFという手法が米国市場に登場した。マーケット・メイクを行う特定機関にだけ保有明細の全部もしくは一部を開示することで、リアルタイムでの売買を可能にしている。しかし、上場する際のハードルが高く(非開示や一部開示に関して規制当局の承認が必要)、資産規模はまだ小さい。このように、アクティブETFはまだ黎明期とも言える状況にあるが、今後、障壁の解決が進み、市場規模が更に拡大する余地が残されているとも言える。 ② テーマ型アクティブETFテクノロジーやエネルギーなど特定のテーマに関連する企業に投資するETFが近年注目を浴びている。投資家が特定のテーマに興味や関心を持っている場合、投資意図が理解しやすいことが背景と思われる。注意すべき点として、「特定のテーマに投資が集中してしまうと、価格変動が大きくなること」、「テーマの注目度が低くなった場合、取引量が低下し、流動性が低くなること」等があり、投資する際はテーマの持続性や成長性にも注目し、リスクの分散や流動性に気を付ける必要がある。 (野村ファンド・リサーチ・アンド・テクノロジー 樋渡 靖一郎) ※野村週報 2023年11月27日号「資産運用」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/28 09:30
【市場展望】2023~25年度の日本経済見通し
潜在成長率を上回る景気回復へ 7~9月期GDP(国内総生産)統計(1次速報)の発表を踏まえ、野村では日本経済の見通しを改定した。改定に当たり、ドル円レートは23年度末140円、24年度末130円、25年度末130円、原油価格(北海ブレント)は23年度末85.2ドル(バレル当たり、以下同)、24年度末79.3ドル、25年度末76.8ドルとの前提を置いた。 改定後の見通しにおける実質GDP 成長率は、23年度が前年度比+1.4%(23年9月8日時点の前回見通し:同+1.8%)、24年度は同+0.5%(同+0.4%)、25年度は同+1.0%(同+1.0%)である。 野村では、23年度に入って低迷していた民間内需が今後、持ち直してくると見込んでいる。①実質雇用者報酬の緩やかな増加、②岸田政権による給付金、所得税・住民税の定額減税、③人手不足を背景とする省力化投資やデジタル化投資の促進、④米国経済の早期の後退リスクの低下などを材料として、23年10~12月期以降、振れを伴いながらも、潜在成長率(年率0.5%程度)を上回る景気回復が実現しよう。 コアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)に基づくインフレ率は、23年度が前年度比+2.8%(23年9月8日時点の前回見通し:同+2.8%)、24年度は同+1.7%(同+1.7%)、25年度は同+1.6%(同+1.2%)と予想する。 食料価格によるCPI インフレ率の押し上げ効果は、24年半ばにはほぼ消滅しよう。 一方、潜在成長率を超える景気回復が23年10~12月期以降に見込まれることから、需給ギャップ(実際のGDP と潜在GDPの乖離)は需要超過(実際のGDP が潜在GDP を上回る)の度合いを強めそうだ。加えて、今回の需給ギャップは人手不足の色合いが濃く、今後の賃上げ圧力を強める要因と位置付けられる。野村では、24年、25年の春闘においていずれも3.9%(定期昇給を含む)と、23年(3.6%)を上回る賃上げ率を見込む。こうした環境において、より基調的な物価変動を反映するコアコアCPI(酒類以外の食料・エネルギーを除く)で評価したインフレ率は24年半ば以降、前年比+1%台後半で安定するとみる。コアCPI インフレ率が下がる中でも、インフレの粘着性は徐々に高まるだろう。 金融政策シナリオを変更 今回の経済見通しの改定を経て、野村では金融政策のシナリオを変更した。これまでのメイン・シナリオでは、YCC(長短金利操作)の撤廃を24年10~12月期、マイナス付利の撤廃を25年以降としていたが、新たなメインシナリオ(確率60%)では、YCCの撤廃を24年4~6月期(4月を有力視)、マイナス付利の撤廃を24年7~9月期以降(同年7~9月期を有力視)に、それぞれ前倒しする。また、日銀のフォワード・ガイダンスについては、「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」という文言がYCC 撤廃と同時に削除されると見込む。 一方、インフレ率が持続的・安定的に2%を超えるような経済環境(需要や賃金の伸び)の定着を想定しがたい中、野村では引き続きプラス金利政策や量的引き締めは想定しない。オーバーシュート型コミットメント(コアCPI の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという日銀のコミットメント)も据え置かれると、野村では予想する。 上述したメイン・シナリオに対して、2つのリスク・シナリオを想定している。リスク・シナリオA(確率30%)では、①賃金・物価の好循環が想定よりも早く実現する、あるいは、②賃金ではなく、為替や金利など市場環境に配慮する形で、半ばなし崩し的に、日銀が2%インフレの持続性・安定性を確認する、などを前提として、24年3月までのYCC撤廃、24年6月までのマイナス付利撤廃を見込む。 リスク・シナリオB(確率10%)では、景気の鈍化、物価・賃金上昇の持続性喪失を前提に、YCCの撤廃は25年以降、マイナス付利の撤廃は26年以降にずれ込む。 GDPデフレーターの上昇に見られるように、足元にかけてインフレの「国産化」がじりじりと進んでいる。次に問われるのは、日銀もその重要性を強調する「賃金・物価の好循環」である。 2%インフレの実現を目指している日銀にとって、なぜ単なる物価上昇ではなく、賃金・物価の好循環が求められるのだろうか。それは、日銀の目指すところが、ただインフレを醸成することではなく、インフレの「原因」を日本経済に根付かせることにあるからだ。 賃金・物価の好循環は、インフレの原因が日本経済に根付いたかを評価する材料として、今後も金融政策運営の適否を判断する際の軸を提供する。 (野村證券経済調査部 森田 京平) ※野村週報 2023年11月27日号「焦点」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/27 19:00
【野村の投資判断】年内は大型株優位の展開が続くか
高ROE、輸出、大型株の3ファクターが株高を牽引 TOPIX(東証株価指数)は、年初来高値の更新をうかがう水準にありますが、その突破にはさらなる株高材料が必要となるでしょう。米国の年末商戦に関しては、モノ消費が好調ならグローバル製造業にとって追い風となる可能性がありますが、サービス消費が過度に強い場合は賃金インフレの再加速に対する懸念が生じかねない点には留意が必要です。 日本株の物色動向を見ると、2023年の5月から6月にかけての株高ラリー局面と似た傾向が見受けられます。すなわち、「高ROE(自己資本利益率)」、「輸出」、「大型株」の3つのファクター(要因)が市場を牽引しています。日本銀行の金融政策決定会合や企業の決算発表を経て、海外投資家による日本株買いが本格化している点も同様です。2023年11月に入ってからは、CTA(商品投資顧問)による先物の買いが目立ちますが、11月第3週には現物株の買い越しも3,630億円に達し、10月第2週の4,558億円以来の高水準となるなど、拡大傾向が見られます。 現在、アジアの投資家から野村證券のストラテジーチームに対して、東証の「要請」やNISA(少額投資非課税制度)の仕組みといった基本的な問い合わせが増加しています。来年に向けて、アジア地域内でのリスク分散を目的とした日本株の購入が検討されている可能性があるでしょう。年内は、個人投資家が新NISAの開始を待って様子見となる可能性もあるため、大型株優位の相場展開が続くと見ています。 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 注目点とトピック(2023年11月24日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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11/26 19:00
【12月の投資戦略】好調な企業業績がけん引して、株式市場は好環境へ
結論:米国は金利低下を追い風にテクノロジー企業が業績をけん引、日本は製造業の循環的な拡大に注目 目次・日米ともに株式市場は好環境へ・2024年は米国利下げ局面へ・米国企業業績の拡大は続く・2024年は半導体を中心に製造業の循環的な活動拡大・日銀の金融政策変更には注意が必要・2024年度も日本企業は過去最高益更新へ 日米ともに株式市場は好環境へ 2023年は米欧主要国・地域のインフレが減速し、利上げが終了に向かう局面でした。インフレが落ち着く2024年は、利下げ時期を探る展開になるでしょう。米国企業業績は2023年7-9月期に増益に転じ、2024年は増益率が拡大に向かうとみられます。これまでの利上げによる景気下押し圧力や、日本銀行の金融引き締めへの政策転換には注意が必要でしょう。しかし、我々は2024年の米国株市場が金利低下による金融相場から企業業績が拡大に向かう業績相場へと続き、日本企業も業績拡大が続くことで、株式市場は好環境が続くとみます。 ▲TOPに戻る 2024年は米国利下げ局面へ 米国経済は減速していますが、個人消費は過熱からコロナ禍前の平常時のペースとなり、雇用の減速もひっ迫状態からの緩和の範囲に留まり、景気後退は無いと市場で予想されています。エネルギー価格が落ち着く中で、インフレの減速が様々な品目に広がっています。様々な金利指標でみて、市場はFRBが2024年年央に利下げを開始することを織り込んでいるようです。 ▲TOPに戻る 米国企業業績の拡大は続く 米国企業業績は、大手テクノロジー企業の増益拡大が顕著です。その他の多くの企業は、2024年に入って利益が拡大すると見込まれます。金利低下が追い風となり、米国産業のけん引役であるテクノロジー産業を中心に、幅広い企業の業績拡大が続くとみられます。2024年11月の米国大統領選挙が注目されます。現時点で、バイデン大統領の再選の可能性が高いとみられますが、景気や世論の風向きによっては予断を許さない状況が続くでしょう。 ▲TOPに戻る 2024年は半導体を中心に製造業の循環的な活動拡大 ユーロ圏ではECBがインフレ抑制を優先し、金融引き締めによる景気悪化が強まるリスクが高まっています。中国は景気減速や不動産開発企業の問題などが山積する中で、政府はその対応に苦慮しています。一方、中国の鉱工業セクターの在庫圧縮や世界的な半導体市場の再拡大は、2024年に製造業の循環的な活動が復調に向かうことを示唆しています。 ▲TOPに戻る 日銀の金融政策変更には注意が必要 日本経済は、輸出の回復や在庫調整が進展するものの、名目賃金の上昇が物価上昇を下回っています。日本銀行の物価安定目標の達成には、国内の賃金と物価とが好循環に入る景気拡大が必要です。市場は日銀のマイナス金利解除への関心を強めており、2024年3月の春闘や、その前後の景気動向が注目されます。日銀の金融引き締めや米国の金利低下が起きると、米日金利差の縮小により、円安圧力の低下や、輸入物価の下落が想定されます。政府はデフレ完全脱却に向けて、減税や低所得者向けの給付を含む経済対策を策定しました。2024年は総選挙が行われる可能性もあり、政治動向には注意が必要です。 ▲TOPに戻る 2024年度も日本企業は過去最高益更新へ 2023年7-9月期決算を経て、日本企業は業績の上方修正が強まっています。中国向けの不振などは減益要因ですが、価格転嫁などの収益性の改善が好決算に表れています。2024年は為替などの不確実性もありますが、製造業の循環的な回復や賃上げによる内需拡大が続けば、2024年度も過去最高益更新となるでしょう。企業のガバナンス改革の進展も下支えとなり、野村證券は2024年末の日経平均株価の見通しを38,000円と予想します。 ▲TOPに戻る (野村證券投資情報部 小髙 貴久) ※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 12月号」(発行日:2023年11月20日)「投資戦略の概要」より 業種分類、Nomura21 Globalについて ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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11/25 19:00
【注目トピック】本格化し始めた会社側の見通し上方修正
日本:2023年7-9月期決算レビュー 2023年7-9月期決算出揃う 2023年7-9月期決算が出揃いました。ラッセル野村Large Cap(除く金融)では、前年同期比2.2%増収、同19.3%営業増益となった模様です(11/14時点,下図)。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 今回の決算シーズンでは、事前の市場コンセンサスに対して61.7%の企業が上振れて着地しました。平準ベースの50%台半ばに比べて高い水準です。業種レベルでは、①中国経済減速の影響をうけた機械や家庭用品、②人件費などのコスト増の転嫁が遅れたサービスやソフトウエアなど少数の業種を除く、幅広い業種で市場コンセンサスを上回る実績となった企業の比率が高くなっています。 また、今回の決算では増収率が比較的低めにとどまった一方で、増益率が高めとなったことも特徴です。 交易条件の改善が顕在化 2023年7-9月期の業績を取り巻く環境を整理しておくと、米ドル円レートが前年同期に対して6円/米ドルの円安、鉱工業生産は前年同期比-3.5%でした。 介入が警戒されるほど円安が進んだ印象ですが、前年同期も円安が進行していたため、2%強の利益押上げ効果にとどまった模様です。また、生産は自動車などで挽回生産が本格化しましたが、中国経済の不振から電子部品や電子材料、資本財が苦戦し、利益を押し下げる要因となったようです。 その結果、7-9月期決算では通常であれば業績に対する影響度の大きい為替要因および生産要因の増益寄与はほとんどなく、『その他要因』の増益寄与が非常に大きくなりました。 『その他要因』が何によるのかは局面により様々ですが、今回は交易条件の改善によるものとみられます。昨年来企業は、原材料費や人件費の増加分の価格転嫁に取り組んできましたが、2023年度に入りその効果が顕在化しています。7-9月期の営業利益率は8.5%と過去最高を記録しています。 順調に進む会社側見通しの変更 2023年7-9月期の決算発表時には、実績値だけでなく会社側の通期業績見通しの動向にも注目が集まりました。 例年、年度がスタートして日の浅い4-6月期の決算発表時(7~8月)には、会社側の通期業績見通しの修正件数は低調です。年度の1/4しか経過していない時点では、将来の不確実性が高く、期初見通しを修正する企業が少数にとどまるのはやむを得ないと思われます。 これが年度の半分を経過した7-9月期決算発表時には一挙に見通しを修正する企業が増加します。今回も、ほぼ例年通り57.3%の企業が見通しを修正しました。なお、このうち3社に2社が上方修正となっており、企業の景況感が良好なことも確認されました。 多くの企業が見通しを上方修正したことから、ラッセル野村Large Cap(除く金融)の会社見通しベースでの2023年度経常増益率は、決算発表シーズン前の9月月初時点で前年同期比-1.6%でしたが、現在では同+4.9%と増益見通しに転換しています。 会社側見通しの再々上方修正も 通期業績見通しに対する、第1-2四半期累計利益の比率、いわゆる進捗率は54.2%となっており、ほぼ過去10年平均と同水準です。 進捗率は、四半期利益が公表された時点の当時予想利益に対するもの(下図だと灰色の線)と、第4四半期が終了した時点で事後的に計算可能となる実績利益に対するもの(赤色の線)の2種類が存在します。 過去10年では、人民元ショック(2015年度)、コロナ禍(2019年度)といった不測の事態が起きた年度を除けば、おおむね実績利益に対する進捗率の方が低くなっています。これは、期中で通期利益見通しを会社側が引き上げたことを意味します。 今回も、期が進行するのにあわせ、追加的な会社側の見通し上方修正が期待できます。 (野村證券投資情報部 伊藤 高志) ご投資にあたっての注意点
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11/25 13:00
【オピニオン】日銀金融政策の修正を予想する理由
日本銀行は2023年10月の政策決定会合で、YCC(長短金利操作)運用の更なる柔軟化を決定しました。具体的には、10年国債利回りの誘導目標はゼロ%程度と据え置いたうえで、許容変動レンジの事実上上限であった1.0%を「目途」へと変更し、1.0%を上回る金利上昇を許容する姿勢を示しました。 ただし、声明文ではフォワードガイダンス(政策運営指針)を据え置き、「粘り強く金融緩和策を続けていく」方針を改めて示しました。また、同時に公表したコアインフレ率(生鮮食品を除く消費者物価)の前年比見通しを上方修正し、2023年度、24年度はともに+2.8%としたものの、25年度は+1.7%とし、2.0%の物価安定目標を「持続的・安定的」に実現する見通しは示しませんでした。 野村證券では11月15日、2023年7-9月期の実質GDP(1次速報)を受けて経済見通しを改定しました。野村のコアインフレ率の見通しは、2023年度+2.8%、24年度+1.7%、25年度+1.6%と、日銀同様に物価安定目標の持続的な実現は予想していません。 一方で、金融政策に関しては、従来の見通しと比べて金融政策の変更時期を前倒しし、YCCの撤廃は2024年4-6月期(改定前は同年10-12月期)、マイナス付利の撤廃を同年7-9月期以降(同2025年以降)としました。 物価安定目標の持続的・安定的達成を予想していないにもかかわらず、金融政策の修正時期を前倒しした背景には、企業の賃金設定行動が変化した可能性が高いとみている点があります。 2023年の春闘では前年比+3.60%と、約30年ぶりの高い賃上げが実現しました。これはインフレ率の上昇に経営側が配慮した一時的な動きとの評価もあります。一方で、経団連(日本経済団体連合会)の十倉会長は「今年以上の熱量をもって取り組んでいく」と発言するなど、経営側も2024年の賃上げに対して積極的なスタンスを示しています。また、人手不足を背景に、個別企業では既に2023年を上回る賃上げを表明する動きが相次いで報じられています。 このような変化を踏まえて、野村證券では企業の賃金設定行動がデフレ期(推計上は1995年以降と想定)からインフレ期(1994年以前)へ変化した可能性があると想定し、2024年、2025年の賃上げ率の見通しを上方修正しました。 2023年に続き2024年以降も高い賃上げが実現する可能性が視野に入れば、日銀が賃金上昇を伴った物価安定目標の達成に自信を深め、政策修正を実施する可能性が高いと予想しています。ただし、2.0%目標の達成を予想していないことから、マイナス付利の撤廃後の利上げは予想していません。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 ご投資にあたっての注意点