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01/23 13:20
【速報・解説】日銀、金融政策の現状維持を決定
全員一致で金融政策の据え置きを決定 日本銀行は1月22-23日に金融政策決定会合を開催し、大方の事前予想通り金融政策の据え置きを決定しました。決定は全員一致で下されています。今後の政策方針を示すフォワードガイダンスも据え置かれており、「粘り強く金融緩和を継続する」との従来の政策姿勢に変化はないと見受けられます。 同時に公表された展望レポートでは、既報通り2024年度のコア消費者物価(除く生鮮食品)の見通しは、前年比+2.8%から同+2.4%へ下方修正されました。一方で、25年度に関しては同+1.8%と10月時点の同+1.7%から上方修正されましたが、日銀版コアコア消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)が24年度、25年度ともに同+1.9%と据え置かれたことから、いずれもエネルギーの変動を反映したものに過ぎず、政策判断の変更につながるものではないと評価できます。 今回の決定を受けて、外国為替市場では対米ドルの円相場が一時1ドル=148円台半ばまで円安に進行、債券先物も上げ幅を拡大していることから、市場では3月ないしは4月会合でのマイナス金利解除期待が維持されていると見受けられます。 展望レポートでは、インフレに関して「「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていく」と評価していることから、本日15時半から行われる植田日銀総裁の記者会見では、政策修正への距離感が注目されます。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) ご投資にあたっての注意点
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01/23 08:23
【モーニングFINTOS!】NYダウ、初の3万8000ドル台(1/23)
海外市場の振り返り 22日の米国株式市場では、NYダウとS&P500株価指数が連日の最高値更新、NYダウは史上初めて38,000ドル台に乗せました。市場全体では本日の日本銀行の金融政策決定会合を皮切りに、1月30-31日のFOMC(米連邦公開委員会)まで、多くの中央銀行の金融政策会合が続くことから、やや様子見ムードの高い展開となっています。米国株はFRB(米連邦準備理事会)に対する利下げ期待に後押しされて上昇している面が大きいと見受けられるため、本格化している企業決算発表が業績改善を示す結果になるかが注目されます。 相場の注目点 今週から来週にかけて日銀、ECB(欧州中央銀行)、FRBの政策会合が予定されていますが、いずれも金融政策の据え置きが予想され、注目点は今後の政策運営姿勢となります。日銀に関しては展望レポート、総裁会見等で3月及び4月会合でのマイナス金利解除期待が維持されるかが注目されます。一部報道によれば24年度のインフレ見通しは下方修正される見込みですが、25年度のインフレ見通しが下方修正とならなければ、市場の政策修正期待は継続すると見込まれます。 本日のイベント 米国の大統領選挙ではデサンティス・フロリダ州知事の撤退表明を受けて、共和党の指名候補争いは事実上、トランプ前大統領とヘイリー元国連大使の一騎打ちとなりました。本日のニューハンプシャー州の予備選の結果次第では早々に決着が付く可能性があります。 (投資情報部 尾畑 秀一) (注)データは日本時間2024年1月23日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【今週の米国株】火曜ネトフリ、水曜テスラ、木曜ビザ…決算発表佳境へ(1/22) 【銘柄ランキング】新NISAスタートダッシュで買われた個別銘柄は? ご投資にあたっての注意点
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01/22 20:00
【今週の米国株】火曜ネトフリ、水曜テスラ、木曜ビザ…決算発表佳境へ(1/22)
先週:米経済の軟着陸と半導体好調、2つの期待 先週は、FRB(米連邦準備理事会)のウォラー理事による早期利下げ観測牽制発言や堅調な経済指標を受けて長期金利(10年国債利回り)が上昇したことから、週前半は軟調に推移しました。 しかし、18日(木)のTSMC(台湾セミコンダクター,米国預託証券(ADR)のティッカーコードはTSM)の2023年10-12月期決算発表で示された良好な24年1-3月期の見通しを受けて情報技術株主導で反発しました。 また、マクロ面でも19日(金)に発表された、1月ミシガン大学消費者センチメント指数速報値は78.8と、市場予想の市場予想の70.0を大きく上回り、2年6ヵ月ぶりの高水準となりました。ミシガン大学が併せて発表した消費者期待インフレ率調査の1月速報値は、1年先は2023年12月22日に発表された12月確報値の3.1%から2.9%に、5年先については同じく2.9%から2.8%に低下しました。強い消費者マインドとインフレの鈍化の組み合わせは、市場にソフトランディング(軟着陸)を想起させ、株価の追い風となりました。 19日にS&P 500 指数、ダウ指数共に史上最高値を更新しました。 今週のポイント1:26日(金)のPCE統計 金融政策関係では、1月30日(火)-31日(水)開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)を前に、FRB幹部は沈黙期間に入っていて、講演等は予定されていません。こうした中では、26日(金)の12月個人消費支出・所得(PCE)統計、特にFRBがインフレ指標として重視しているコアPCE(個人消費支出)デフレーターに注目が集まります。 12月コアPCEデフレーターの市場予想は前月比+0.2%(11月同+0.1%)ですが、6ヵ月平均では年率2%をやや下回る伸びに留まると見られる一方、12月個人支出の市場予想は同+0.4%(11月同+0.2%)と、堅調が予想されています。市場予想通りとなれば、先週のミシガン大学調査と同様、市場はソフトランディング期待を高めそうです。 今週のポイント2:25日(木)のインテルなど半導体銘柄決算 今週も米主要企業の2023年10-12月期決算発表が続きます、24日(水)にはラムリサーチ(LRCX)、25日(木)にはKLA(KLAC)、インテルと、半導体・半導体製造装置セクターの決算発表が予定されています。前週のTSMC決算の堅調さは個別要因によるものか、半導体業界全体に及ぶのかを確認できそうです。 2023年半導体・半導体製造装置セクターの株価が米国株式市場をけん引してきた背景には、同セクターの業績が2023年の反動ではあるものの、2024年に前年比+30.0%と高い増益率が予想されていることがあります。 (注)2024年1月19日時点のLSEG(旧リフィニティブ)集計による市場予想平均。産業グループ名に付されている( )内の番号は、識別のために野村證券投資情報部で付与している番号。*は景気敏感業種。 (出所)LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成 さらに、同セクターは2025年の予想に関してもS&P500の産業グループ内で上から2番目に位置づけられる高い伸びが予想されています。 (注)2024年1月19日時点のLSEG(旧リフィニティブ)集計による市場予想平均。産業グループ名に付されている( )内の番号は、識別のために野村證券投資情報部で付与している番号。*は景気敏感業種。 (出所)LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成 2年連続で高い伸びが予想される半導体・半導体製造装置セクターは、米国株全体の動向を左右します。実績・見通しともに市場期待を超えられるかが、今週の重要なチェックポイントとなります。 今週のポイント3:セクターを代表する3銘柄に注目 半導体銘柄の他にも、米国株やセクターを代表する銘柄が決算発表を迎えます。注目度の高い、NYダウやナスダック、NYSEファングプラス等の指数を構成する銘柄では、23日(水)のネットフリックス(NFLX)、24日(木)のテスラ(TSLA)、25日(金)のビザ(V)が挙げられます。ネットフリックスは、来週に予定されるメタ(FB)やアルファベット(GOOGL)といったメディア・娯楽セクターのスターターとも言え、注目が集まります。 その他、前回決算発表時の市場の反応は以下をご覧ください(ネットフリックスは今四半期の決算発表より決算速報をお届けします)。 ビザ(V):消費堅調継続・四半期見通しはやや市場予想を下回る、株価は-0.67%(時間外取引) テスラ(TSLA):サイバートラックの出荷や年間生産台数の目標を維持、株価は-2.13%(時間外取引) (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点 世界産業分類基準(GICSⓇ) スタンダード&プアーズはモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)と共同で作成した世界産業分類基準(Global Industry Classification Standard=GICS)を採用しています。この世界産業分類基準の目的は投資調査及び資産運用のプロセスをより容易にすることによって、世界の金融専門家の便宜を図ることにあります。世界の投資家、投資顧問会社、投資アナリストなど各方面の専門家との議論に基づいて設計されたこの分類基準は正確、完全かつ標準化された産業の定義に対する世界の金融界のニーズに応えることを目的に作成されています。 世界産業分類基準は、11のセクター、25の産業グループ、74の産業、及び163の産業サブグループからなっています。(2023年3月時点) 業種の分類は主として売上高に基づいて行う一方、二義的な基準として利益を検討対象にするという方法を採用しており、事業毎または商品毎に精査・分析して行っています。 1つの企業は各階層で1つのグループにしか入ることができません。3つ以上の分野にまたがって事業展開している多角化企業で、売上高または利益のどちらかが全体の半分以上を占める事業部門がない場合は、コングロマリット産業サブグループ(一般事業会社セクター)、またはマルチセクター持株会社産業サブグループ(金融セクター)に分類されます。 分類は投資対象ユニバースを十分に反映するよう、毎年見直しを行います。
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01/22 15:53
【イブニングFINTOS!】日経平均株価、続伸し36,000円台に乗せる 半導体株がけん引(1/22)
本日の株式市場 本日の日経平均株価は前週末比330円高の36,294円で取引を開始しました。前週末の米国株式市場でフィラデルフィア半導体株指数が前日比+4.02%となるなど、半導体関連株を中心に主要3指数が揃って上昇したことが好感されました。寄付き後はやや上げ幅を拡大したものの、日銀の金融政策決定会合の結果発表を明日に控えていることから、様子見姿勢もあり、上値がやや重い展開となりました。その後は、36,400円台を挟んで横ばいとなり、引けにかけてやや上げ幅を拡大し、前週末比583円高の36,546円と、約33年11ヶ月ぶりに終値ベースで36,000円台を回復しました。 個別では、ファーストリテイリングやアドバンテスト、東京エレクトロンといった値がさ株や半導体関連株が上昇し、3銘柄で日経平均株価を約178円押し上げました。 本日発表予定の海外経済指標等 特にありません。 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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01/22 09:30
【銘柄ランキング】新NISAスタートダッシュで買われた個別銘柄は?
NTTや三菱商事、三菱UFJ、JTなどがランクイン 2024年1月から新NISA(少額投資非課税制度)がスタートしました。新NISAの開始直後には、どのような銘柄が購入されたのでしょうか。2024年1月の第1週(4日、5日)と第2週(9日から12日)に、野村證券のNISA口座の成長投資枠で購入された上位20銘柄をご紹介します。 日本電信電話(9432)が1位にランクインしました。同社は昨年、1株を25株に分割する株式分割を実施したことや、NTT法の見直しを巡る議論が浮上したことなどが話題となりました。また、2025.3期には傘下のNTTドコモとNTTコミュニケーションズの経営統合により生じた不要資産の売却益を計上する予定であり、構造改革の進展にも注目が集まっています。通信セクターからはソフトバンク(9434)も10位にランクインしています。 三菱商事(8058)が2位にランクインしました。同社は2024年1月1日を効力発生日として1株を3株に分割する株式分割を実施しました。足もとの商社の事業環境については、為替動向などが懸念材料となっていますが、鉄鉱石や原料炭など、鉄鋼原料市況が高水準で推移しており、良好な状況が続いています。 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)が3位にランクインしました。昨年、銀行セクターでは日本銀行による金融政策正常化に向けた動きなどが注目を集めました。銀行セクターの株価は内外の長期金利と連動性が高いため、今後しばらくの間は金融政策の動向が注目されるでしょう。その他のメガバンクでは、みずほフィナンシャルグループ(8411)が11位に、三井住友フィナンシャルグループ(8316)が18位にランクインしています。 日本たばこ産業(2914)が4位にランクインしました。同社は配当利回りが相対的に高いことで有名です。配当金が受け取れるという点は株式投資の大きな魅力の一つです。例えば、13位にランクインしている三菱HCキャピタル(8593)は、連続増配企業としても知られています。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) (注1)画像はイメージ。(注2)各種データは2024年1月16日時点。 ご投資にあたっての注意点
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01/22 08:25
【モーニングFINTOS!】米景気軟着陸の期待から株高に(1/22)
海外市場の振り返り 19日のNY株式市場で、NYダウは約2週間ぶりに、S&P500は約2年ぶりに史上最高値を更新しました。19日に発表された1月米ミシガン大消費者センチメントが78.8と市場予想(70.1)を大きく上振れ、2021年7月以来の高水準となったほか、同時に示された1年先の予想インフレ率が約3年ぶりの低水準となったことも、米景気が底堅く推移するとの安心感につながりました。 相場の注目点 今週は米国の10-12月期実質GDP成長率(速報)や12月耐久財受注、12月個人消費支出(PCE)など重要指標の発表が予定されています。市場で高まる米景気軟着陸への期待を裏付ける結果が示されるか注目されます。市場予想を上回る結果が示されれば、早期利下げ期待の後退が広がり相場の重しとなる可能性はありますが、主要企業の決算発表に関心がうつるなか大幅な調整リスクは低いとみられます。 本日のイベント 22日より日銀金融政策決定会合が開催され、23日に結果が公表されます。一部報道では24年度のインフレ見通しが下方修正される見込みです。金融政策は据え置きが見込まれますが、昨年末には政策修正に向けた動きが示されるといった観測もありました。植田総裁の記者会見では、12月会合時点と比較して、賃金・物価の好循環について前向きな姿勢を強めるのか、そして早期のマイナス金利解除期待が回復するかが焦点となります。 (投資情報部 引網 喬子) (注)データは日本時間2024年1月22日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【今週のチャート分析】日経平均は、1月に約半年の保ち合いを上放れて大幅上昇に (1/19) 【基礎から学べる「行動ファイナンス」】 第4回 高値覚えと塩漬け株 ご投資にあたっての注意点
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01/21 19:00
【注目トピック】決算発表シーズンに突入、エレクトロニクスが増益転換か?
日本:2023年10-12月期決算プレビュー 2023年10-12月期決算発表がはじまる 2024年1月下旬より、2023年10-12月期決算の発表が本格化します。QUICKによる事前の市場予想ではラッセル野村Large Cap(除く金融)は、前年同期比3.9%増収、同+15.3%営業増益が見込まれています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 日本企業の業績は2022年度には、インフレ圧力の増大と、投入価格上昇分の価格転嫁の遅れなどにより、増収率の割に営業増益率は低位に留まってきました。 しかし、2023年度に入りインフレ圧力が徐々に逓減した結果、増収率は常識的な範囲に落ち着き、同時に価格転嫁も進展したことによりここ数四半期の営業増益率は比較的高い水準を維持しています。2023年10-12月期についても事前予想では同様の傾向が予想されています。 交易条件の改善が顕在化 日本企業の業績は一般的には、米ドル円レートを中心とした為替と、鉱工業生産によりほぼ方向性が決まります。 2023年度業績は、期初時点より円安米ドル高が進行していたことから円安による企業業績の底上げ期待が高まりました。ただ、実際には前年同期にあたる2022年度の時点ですでに円安米ドル高が進行していたことから、実際には2023年度業績に対する為替の貢献は殆どありませんでした。 また同じく、2023年度の業績を牽引すると期待された挽回生産の本格化による生産増も、自動車を中心とした一部の産業に留まりました。半導体関連を含む電気機器や、資本財分野などへの挽回生産の広がりは実現せず、むしろ企業業績を押し下げる要因となってしまっています。 その結果、業績を牽引しているのは、原材料価格や人件費などの高騰分を製品/サービス価格に転嫁することによる交易条件の改善とみられます。 エレクトロニクスが増益転換か? 2023年10-12月期業績は、前四半期に比べさらに多くの業種が全体の増益に寄与するとみられます。その中でも、2023年年初より需要低迷/在庫調整に苦しんできたエレクトロニクスで僅かではあるものの営業増益転換が見込まれている点には注目です。 エレクトロニクス産業に関連する、電子部品や電子材料などのセミマクロ統計では在庫調整の進展を示す指標がここ数ヶ月で顕著に目立つようになってきており、今回の決算発表により実際に増益転換が実現すれば、市場のセンチメントに大きな影響を与えそうです。 また、エレクトロニクス製品の在庫調整の目途がたってきたことにより、さらに需要の回復が遅れている(半導体製造装置やロボットなど)資本財の分野への波及にも期待感が高まります。 会社側見通しの再上方修正も 2023年10~11月の2023年度中間決算の発表時には、(期初からの通算で)6割弱の企業が自らの2023年度通期業績見通しを修正し、またその多くが上方修正でした。 第1四半期決算実績発表(2023年7~8月)の段階ですでに業績モメンタムは好転していましたが、2023年度の残存期間が長かったことから見通しの変更を見送っていた多くの企業が中間決算時に業績見通しの修正に踏み切りました。その結果、期初時点で前年度比減益でスタートした会社側の業績見通しは、2023年12月月初時点で増益に転換しました。 これから本格化する2023年10-12月期決算発表の際には、2023年度の残存期間がさらに短くなっていることから、例年通りであればさらに3社に1社が1~2月にかけて通期業績見通しを変更してくると見込まれます。 (野村證券投資情報部 伊藤 高志) ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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01/21 13:00
【オピニオン】逆イールド解消に向けた注目点
米国債市場では短期金利が長期金利を上回る「逆イールド」が続いています。逆イールドは一般的に、利上げ局面において市場が景気後退を織り込んでいるシグナルとみなされ、利下げ局面で解消されます。 野村證券では、FRB(米連邦準備理事会)は2024年6月FOMC(米連邦公開市場委員会)で予防的に利下げを実施し、同年9月FOMC以降は25年末まで各会合で0.25%ポイントの利下げを実施し、25年末にはFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を2.25~2.50%へ引き下げると予想しています。同様に、先物金利などの金融指標は、1回当たりの利下げ幅を0.25%ポイントとした場合、24年中に5~6回程度の利下げを織り込んでいます。 利下げに伴って逆イールドの解消が予想される中で注目すべきポイントとして、ここでは①短期金利の着地点の目安、②長期金利の着地点の目安、➂有効な投資戦略の3点を挙げたいと思います 過去の利下げ局面における逆イールドの解消パターンを確認すると、利下げ実施に先がけて長短金利ともにピークアウトし、利下げ局面の初期段階では長短金利はともに政策金利と連動して低下するものの、いずれかの時点で長期金利が下げ止まる一方、短期金利は政策金利に沿って低下を続けることで逆イールドが解消していることがわかります。 今後の利下げ局面でFRBは、景気にとって中立的な水準までは利下げを行うことが予想されます。FRBが政策金利見通しとともに示している中立金利は2.5%です。このため、当面の間は、短期金利の着地点の目安としては、2.5%程度が意識されやすいと考えられます。 過去の利下げ局面で長期金利は、FRBの想定とは異なる考え方から算出された長期均衡金利付近でレンジを形成する傾向が見受けられます。米国では実質均衡金利の目安とされる潜在成長率は1.8%程度と試算され、これにインフレ目標である2.0%を加えた3.8%程度が長期均衡金利の目安と考えられます。実際、足元の米10年国債利回りは3.8~4.0%で推移しています。 国債などの固定金利の債券においては、利回りの低下は債券価格が上昇していることを示しています。このため、インカムゲインの観点からも、キャピタルゲインの観点からも、なるべく利回りが高い段階で投資をすることで、高いリターンが得られることが期待できます。 また、利回りの変化に対する価格の変化は、償還年限に比例します。このため、金利の低下幅は長期国債に比べて短期国債の方が大きくなる一方、金利と価格変動を含むトータルリターンは長期国債の方が大きくなる傾向にあります。当然リスク量は長期債の方がより大きくなることから、リスク・リターンを上手くバランスさせることが有効な投資戦略につながります。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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01/21 09:00
【基礎から学べる「行動ファイナンス」】 第4回 高値覚えと塩漬け株
投資を楽しむBさんは… 40歳のBさんは中堅の企業で働く営業職の社員です。現在は独身で、余計な支出を嫌う倹約家だったため、お金には比較的余裕があります。 Bさんは数年前から雑誌やネットで勉強し、詳しい友人の話も聞いつつ、株式投資をしています。成長しそうな企業を選んで買っており、現在では十数銘柄の株式を保有しています。 ちまたで騒がれる「老後の不安」のために投資しているわけではありません。好きな企業に投資をし、その後の株価の動きを見守ることに楽しさを感じているのです。全体としては利益が出ていますが、一部の銘柄は損失が出ています。 「代わりに売る銘柄が…」 Bさんは、以前から魅力的と感じていたZ社の株式を買いたいと感じています。しかし、悩ましいのは「代わりに売る銘柄」をなかなか選べないことです。 ずいぶん前、高騰していたころに友人とともに買ったX社の株式があります。しかし、その後X社の株価は急落。最高値を付けた時の半値ほどになってしまいました。今後も値上がりは見込めないと思ってはいるものの、なかなか売却には踏み切れません。 他に損失の出ている銘柄もありますが、同じく売る気が起きません。結局、Z社の株式を買うため、利益が出ている銘柄を選んで売却し、購入資金に充てることになりそうです。Bさんは「企業を合理的に評価すること」には自信を持っているつもりですが、こうした「買い替え」が合理的なのかどうかに関しては、どうしても自信が持てないようです。 Bさんに生じたバイアスとは? Bさんの行動は、自らが薄々感じている通り全く合理的とはいえません。深く考えた結果、変な行動をするという、典型的な「熟慮システムの悪影響」と言えます。株式を売る時に過去の高値が気になることは、個人投資家にはよくある話で「高値覚え」と呼ばれています。そんな高値覚えの裏にある心理バイアスには、「アンカリング」と「保有効果」があります。 「アンカリング」とは、強く印象に残っている数字に影響を受け、その後の判断を下してしまうというバイアスです。例えば、ある人に大きなルーレットを回してもらい、出た数字を記憶してもらって、直後に「アフリカの国連加盟国数は?」などと聞いてみると、ルーレットで出た数字に影響されている(相関がある)ことがわかります。 「保有効果」とは、自分が保有しているものに対し、保有していないものと比較して高い価値を感じやすいというバイアスです。例えば、ある人たちに対して同じ商品を異なるタイミングで見せるとします。それぞれの人がその商品を所有していない時に「いくらの値段なら買いたいか」と聞き、所有している時に「いくらの値段なら売ってもよいか」と聞きます。すると「いくらの値段なら買いたいか」という質問に対する答えの方が安くなる傾向があります。 「高値覚え」では、「アンカリング」のバイアスで株価が高値を付けていた時の影響を強く受け、「保有効果」によって、高値を付けていた時より安い値段で売却することに対し、心理的な障壁ができてしまうのです。 「高値覚え」のせいで、売るに売れなくなった株のことを「塩漬け株」と言います。こちらもよく聞く話です。(ここに紹介した二つの心理実験については、拙著「行動ファイナンスで読み解く投資の科学」〈2009年・東洋経済新報社刊〉をご参照ください)。 第3回で登場したAさんや、今回登場したBさんのような、心理バイアスを原因とする失敗を避けるにはどうすれば良いのでしょうか。連載(全12回を予定)の後半では、「失敗を避ける技術」を中心に解説したいと思います。 (KINZAI Financial Plan 2023年4月号掲載の記事を再編集したものです) 大庭 昭彦 野村證券株式会社金融工学研究センター エグゼクティブディレクター、CMA、証券アナリストジャーナル編集委員、慶應義塾大学客員研究員、投資信託協会研究会客員。東京大学計数工学科にて、脳の数理理論「ニューラルネットワーク」研究の世界的権威である甘利俊一教授に師事し、修士課程では「ネットワーク理論」を研究。大学卒業後、1991年に株式会社野村総合研究所へ入社。米国サンフランシスコの投資工学研究所などを経て、1998年に野村證券株式会社金融経済研究所に転籍、現在に至るまで、主にファイナンスに関わる著作を継続して執筆している。2000年、証券アナリストジャーナル賞受賞。 本稿は、野村證券株式会社社員の研究結果をまとめたものであり、投資勧誘を目的として作成したものではございません。2023年2月掲載時点での情報に基づいております。 ご投資にあたっての注意点