野村のオピニオン
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11/19 09:00
【業界展望】SPE市場は足元で調整も中期成長テーマは豊富
生成AI による好影響は既に一部顕在化 株式市場では半導体製造装置(以下、SPE)市場に対する中期的な成長期待は高い。従来から成長市場と捉えられていたうえに、2023年には生成AI(人工知能)により期待感は一層と高まっている。生成AIは様々な領域、用途で普及する大きな可能性を有し、23年5月のNVIDIA決算でAI用途向けで大きな売上の伸びが確認され、株式市場で大きなテーマとなった。 一部の領域で生成AIの好影響が既にSPE市場にも顕在化してきている。ハードウェア面では並列的な計算処理能力が高いAIアクセラレーターを搭載したAIサーバーの需要が増加する。アクセラレーターの代表はNVIDIAなどが販売するGPU(画像処理半導体)で、足元で需要が急増している。GPU はTSMC が提供する特殊なパッケージ技術(アドバンスドパッケージ)を使用しており、足元ではそのパッケージ供給能力がGPU製造量のボトルネックになっている。そのため、供給キャパシティの拡張が急ピッチで行われており、SPEでは関連する後工程装置、ダイサ、グラインダ、ボンダなどの需要が急増している。 SPE市場への影響はそれだけではなく、AIサーバーではDRAMメモリの搭載量も大幅に増加、特に高速・広帯域通信が可能なHBM(High Bandwidth Memory、広帯域メモリ)の需要が急増している。韓国メモリメーカー中心にライン新設が行われており、HBM のパッケージに関連する装置への需要が押し上げられている。また、現状はスマートフォン向けチップなどの需要の弱さで打ち消されているが、AI用途向けには処理能力が高い最先端チップが必要となるため、前工程装置やテスト装置でも中期的な好影響も想定される。 半導体需要を牽引するアプリケーションはPC、スマートフォン、サーバーと変遷してきた。今後は生成AIなどのAI用途が半導体市場を牽引し、SPE市場に中期的に好影響を与える可能性は十分にある。一方でリスク要因も存在し、各国での生成AI普及の逆風となる規制導入や米中貿易摩擦の一層の拡大が挙げられよう。23年10月の米国による追加規制ではAI半導体の輸出規制が一層と強化されており、中国でのAI普及動向に影響が生じる可能性もある。 短期的には市場回復の不透明感が残る 中長期的な市場の成長期待が高まる一方で、足元のSPE 市場は調整局面の真っ只中にある。世界的なインフレやコロナ特需からの反動減などを要因に、PC、スマートフォン、サーバーなどの最終製品需要が鈍化しており、半導体製造業者は生成AI用途などの一部を除いて製造キャパシティの拡張に慎重になっているためである。 ただし、野村ではSPE市場は現状が底に近いと考えている。1つ目の理由はSPEの顧客業績に底打ち感が確認できていることである。高付加価値製品の増加による製品ミックス影響もあるが、DRAMのビット単価が底打ち、反転してきており、メモリメーカーのSamsungやSK Hynix、Micronの業績は既に前四半期比での改善が確認されている。最大手ファウンドリのTSMCも7~9月期決算で売上底打ちを確認できており、これまで以上に設備投資が縮小される状況からは脱したと考える。2つ目の理由は、SPE企業側からも底打ちの近さを示す兆候があることである。業績が前工程や検査工程装置に先行する傾向のあるディスコや東京精密などの後工程装置企業では受注や出荷などの先行指標が1~3月期で底打ちし、7~9月期も改善が継続している。 一方で、底打ち後の市場回復は底這いともとられるような緩やかさで、本格的な回復は24年下期以降となると見ている。本格的な回復にはスマートフォンなど最終製品の需要が高まることが必要となろう。 本稿執筆時点で国内外のSPE関連企業の7~9月期決算が出揃いつつあるが、上記の事業環境の見方を大きく変えるようなものはない。国内外の大手半導体製造装置メーカーは、中国からの強い需要にも支えられ、足元の着地は会社計画に対して順調な企業が多く、四半期毎の売上でも底打ち感が生じている。23年の市場見通しもLamResearch など引き上げる企業が多かった。一方、24年の見通しは露光装置最大手の蘭ASMLが従来見通しを慎重に見直すなど不確実性が高い。明確な見通しの言及を現時点では時期尚早として避ける会社も多い。 そんな中、野村ではディスコや東京エレクトロンの業況に注目している。ディスコはSi(シリコン)ベースのパワー半導体の需要に減退感はあるが、想定以上の規模感であった生成AI 向けも含めた出荷合計では着実な成長が確認できると考える。東京エレクトロンは堅実な中国需要もあり業績底打ち感がある。メモリの売上比率が高いため24年半ばからメモリが回復局面を迎えれば増益率は上昇しよう。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 吉岡 篤) ※野村週報 2023年11月13日号「産業界」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/18 13:00
【市場展望】ドル円ピークアウト期待は時期尚早か?
日銀はYCC を再修正も円安継続 ドル円相場は10月の日銀金融政策決定会合後、一時年初来高値となる151円70銭台まで上昇した。日銀は長期金利の1%上限を厳格な上限から目途へと変更し、長期金利上昇を許容することを決定した。7月会合に続きイールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)政策の修正に踏み切ったが、円高インパクトは限定的に留まったと言える。事前報道で1.5%程度まで長期金利上限が引き上げられる可能性も報じられていたため、あくまでも想定の範囲内の修正に留まったとの見方だろう。 もっとも、ドル円は昨年高値である151円94銭を突破することはなかった。①本邦当局による円買い介入への警戒感、②米金利ピークアウト期待、が高まったことがドル円の上値を抑えていよう。 ドル円の年初来高値更新を受け、11月1日には神田財務官が円安について、「(要因で)一番大きいのは投機」「ファンダメンタルズと合っていない」とした上で、為替介入についてスタンバイと明言した。神田財務官は2022年9月22日の介入直前にも、「(為替介入などの対応は)スタンバイの状態だ」と発言していた。実弾介入発動が近いことを意識させる、かなり強い口先介入と言えよう。 日銀会合後の円安のスピードの速さに加え、米日金利差が全体的に縮小する中で円安ドル高が加速したことで、ファンダメンタルズに反した投機的な動きと当局が見なしやすくなっている可能性がある。152円超での円買い介入の可能性に注意が必要だろう。海外勢の間でも介入への警戒感が高まった印象であり、当面のドル円の上値を試す機運低下につながりそうだ。 高まる米金利ピークアウト期待 11月FOMC(米連邦公開市場委員会)は大方の予想通り政策金利が据え置かれたが、声明文では金融状況の引き締まりが経済活動や雇用、インフレに影響を及ぼす公算との言及が見られた。FRB(米連邦準備制度理事会)が長期金利上昇の影響を警戒している姿勢が改めて示されたと言える。パウエル議長は追加利上げの可能性を排除していないが、12月利上げの確度は低下していよう。 FRBは依然としてデータ次第の姿勢でもあり、米指標次第で金利上昇圧力が再燃する可能性は否定できないが、11月第1週に公表された米指標は利上げ休止や早期利下げ開始への期待を高める内容となった。雇用統計では労働市場の過熱感後退が示唆される。ISM(全米供給管理協会)指数は製造業、サービス業ともに市場予想以上に低下しており、7~9月期に見られた米経済の再加速が一時的に留まる可能性が高いことも再確認されている。 FRBが追加利上げに慎重姿勢を見せ、米指標にも弱さが見え始めたことで、米金利はピークアウトの公算が高まった。介入警戒感の高まりもあり、ドル円の上値は重くなりそうだが、明確な円高ドル安トレンドに入ったと判断するのは時期尚早だろう。 雇用統計などの米指標下振れ後の米株反発に見られるように、市場では米景気軟着陸期待が依然として優勢と見られる。米景気楽観論が維持される中での株高や為替市場の予想変動率低下は金利差収入目的での円売り需要を維持、クロス円での円安圧力がドル円にも下支え要因となり得る。 FOMC及び米雇用統計後の米長期金利急低下や株価急反発による金融環境の再緩和を受けて、FRB高官発言のタカ派色(金融引き締め重視姿勢)が再び強まる可能性にも注意が必要だろう。また、口先介入レベルの強化により、150円超でのドル円の上値を試す機運は低下の公算が大きくなったとはいえ、ドル円相場を押し下げることには必ずしもつながらない。日銀発の本格的な円高圧力の高まりについても、マイナス金利解除やその後の利上げ期待の高まりが必要となると見られる。 24年1~3月期に向けては円高圧力がより本格化する可能性が高いと見ているが、目先は150円近い水準でのドル円の高止まりが続きやすい。本格的な円高転換のタイミングを占う上で、米国を中心に世界の主要指標が一段の弱さを見せるか、日銀がより本格的な政策修正に向けた動きを早めるか、に注目したい。 (野村證券市場戦略リサーチ部 後藤 祐二朗) ※野村週報 2023年11月13日号「焦点」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/17 12:00
【今週のチャート分析】日経平均は中段保ち合い上限に接近、突破となるか注目(11/17)
※2023年11月16日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 保ち合い突破となれば35,000円が次の上値メド 今週の日本株は、米国長期金利が低下したことなどを好感し、グロース株を中心に上昇しました。 日経平均株価のこれまでの動きを振り返ってみましょう。日経平均株価は、10月30日安値(30,538円)形成後に大幅上昇となりました(図1)。 11月6日に①10月に上値抵抗となってきた75日移動平均線(11月16日:32,166円)を上抜けたことに加え、②10月13日高値(32,533円)を超え10月4日・30日安値でのダブルボトムが完成となったことから、本格的な上昇トレンド入りとなってきたと捉えられます。 15日には今年最大の上昇幅(前日比)で33,500円台にのせており、この先、急騰の反動をこなしつつ、まずは中段保ち合い上限である9月15日高値(33,634円)や、6月19日高値(33,772円)の突破へ向けた動きとなると考えられます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2023年11月16日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 また今回の中段保ち合い上限への接近は、下落率や調整期間の点で2020年6月~10月末の中段保ち合い時と比較して調整十分となった後の上限接近です(図2)。上限突破となる可能性も十分考えられ、次の上値メドとして心理的フシの35,000円の水準が挙げられます。 (注1)直近値は2023年11月16日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 一方で、上昇一巡後に押しを入れる動きとなった場合は、11月6日上抜け後に下値支持線として機能した75日移動平均線(11月16日:32,166円)や、上向きに転じた25日線(同:31,914円)が下支えとなると期待されます(前述:図1)。 米国長期金利低下、5%で天井形成の確度高まる 米国で長期金利が低下しています。米FRBが2022年3月利上げ開始以降初めて2会合連続で利上げを見送り、その後10月の消費者物価指数が市場予想を下回ったことを受けて、10月に一時5%にのせた米国10年債利回りは4.5%を下回る水準まで低下しました(図3)。 では米国10年債利回りは10月ピークの5%の水準で天井をつけたのでしょうか。チャート面でみると当面の天井をつけた可能性が高いと考えられます。まず、2020年3月ボトムから今年10月ピークまでの上昇期間は、これまでの中長期的な金利上昇期間を大幅に上回っており、その点からいつ天井形成してもおかしくない状況にあったと捉えられます。その中、11月の利回り低下によって、これまで下支えとなってきた今年7月以降の上昇トレンドラインを割り込みました。今年4月以降の上昇局面が終了し、10月ピークで当面の天井を付けた可能性が高まったと考えられます。 (注1)直近値は2023年11月14日。 (注2)トレンドラインには主観が含まれておりますのでご留意ください。 (出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 一方で、2020年ボトム形成後の中長期上昇局面では数ヶ月単位の利回り低下の動きはみられましたが、12ヶ月移動平均線前後の水準から切り返してきました。先行き、12ヶ月線(11月13日:3.973%)を下放れとなれば、年単位の利回り低下トレンド入りした可能性が高まったと捉えられます。 (投資情報部 岩本 竜太郎) ※画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/16 12:00
【野村の投資判断】Q2決算で増益に転じた銘柄は高パフォーマンス?
減益から増益に転じた銘柄の高パフォーマンスは特にQ2決算後に顕著 2023年度第2四半期(Q2)の決算は、事前のIFISコンセンサス(アナリストの予想平均値)を上回るポジティブサプライズが多く、全体的には堅調な状況のようです。野村證券では、第1四半期(Q1)は減益だったものの、第2四半期(Q2)から増益に転じた銘柄に注目しています。特に、その中でも上半期(Q1+Q2)では前年同期比減益となった銘柄に投資機会があると考えられます。 このような銘柄は、決算発表後に株価の上昇が続きやすい傾向が確認されています。背景について考えてると、通常、Q2の決算発表時の株価は、Q2単独の実績と概ね一致する方向で反応します。しかし、Q2単独の「増益or減益」と上半期の「増益or減益」が一致しない銘柄の場合、上半期の業績に引きずられる投資家の影響で、Q2単独の「増益or減益」が株価に反映されるまで時間がかかっている可能性が考えられます。 加えて、増益という決算結果に対して株価が正の方向に反応したかどうかを確認することも重要です。過去、増益や減益に転じた銘柄の中で、決算発表後の2営業日目以降も株価モメンタム(勢い)が観測されたのは、主に決算発表翌日のTOPIXに対する超過リターンが正の方向だった銘柄でした。 参考までに、税引き利益または営業利益がQ2で増益に転じた銘柄の中で、決算発表翌日(場中発表の場合は発表日)のTOPIXに対する超過リターンがプラスだった銘柄のリストを掲載します。 税引き利益または営業利益が増益に転じ、かつ決算発表直後のTOPIX超過リターンが正の銘柄 (注)TOPIX500を構成する3月決算銘柄かつ今Q2決算で営業利益または税引き利益が減益から増益に転じた銘柄のうち、Q2決算発表翌日(場中に決算発表を行った場合は当日)のTOPIX超過リターンが正の銘柄を抽出。「減益 → 増益」列の”◎”は「Q2で増益に転じかつ上期減益」を、”〇”は「Q2で増益に転じかつ上期増益」を表す。「決算発表翌日の超過リターン」列は今Q2決算発表翌日(場中発表の場合は決算発表当日)のTOPIX超過リターン。2023年11月9日までに決算発表を行った銘柄が対象。値は2023年11月10日時点。(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「日本株クオンツストラテジー – Q2決算で増益に転じた銘柄に注目(2023年11月6日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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11/15 19:00
【野村の投資判断】2024年12月末の日経平均株価は38,000円を予想
マクロ環境が改善する2024年前半は特に株価上昇が強いと予想 2023年は日本株市場の力強さが目立ちました。この強さの背景には、①日本経済のデフレからの脱却に向けた動きや、②企業統治(ガバナンス)の改善、そして③アジア地域内でのリスク分散先としての魅力が高まったことがあります。2024年に向けてもこの基本的な状況は変わらない見込みです。ドル安・円高による逆風が想定されますが、日本企業は値上げの文化を取り入れることで利益率を改善させ、2024年度と2025年度も増益基調が続くと予想します。 2023年7-9月期の企業業績は、営業利益率が8.1%と前年同期比1.3%ポイントの改善を見せ、7-9月期としては過去最高を記録しました。企業は輸入コストの低下に対して国内価格を迅速に下げず、利益率の改善を享受しています。このような利益率の改善と為替・原油の前提変更を考慮し、野村證券はTOPIX-EPS(1株当たり利益)予想を更新しました。新しい予想は、2023年度は158.3(前期比+13.3%)、2024年度は163.8(同+3.5%)、2025年度は183.1(同+11.8%)です。 2024年末のTOPIXは2,675と予想、これは2025年度のEPSとPER(株価収益率)14.6倍を基に計算しています。また、日経平均株価をTOPIXで割ったNT倍率は、現在の14.0倍から14.2倍に上昇すると想定し、これに基づいて2024年末の日経平均株価は38,000円と予想します。 2024年の株価動向としては、年前半に上昇の勢いがつきやすいと見ます。これは①春闘の季節にデフレ脱却への期待が高まる、②2024年6月に実施予定の5兆円の定額減税・給付金による消費の押し上げ、そして③米国での利下げ期待が高まることに起因します。しかし、年後半には、⒈ 日銀の金融政策正常化(期待)、2. 円高の定着、3. 業績悪化(前年同期比での一時的な減益)により株価の上昇が鈍ると予想します。2025年は、野村證券が掲げる「日経平均株価45,000円」のシナリオに沿った順調な推移を見込みます。 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 24年12月末の日経平均は38,000円を予想(2023年11月14日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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11/15 12:00
【野村の投資判断】マクロ系ヘッジファンド、日本株への再エントリーは年末前後か
日本株固有の強気材料として「新NISAの開始」に注目 日経平均株価は上値の重さを払拭しきれていない状況が続いています。ヘッジファンドの一種であるCTA(商品投資顧問)はロングポジション(買い持ち高)の拡大に傾斜しており、株価が33,500円を超えると買い越しペースが加速する見込みです。しかし、逆に32,000円を下回ると売り越しに転じる可能性があります。 一方で、(経済情勢に基づいて売買する)マクロ系ヘッジファンドは、様子見姿勢を続けているようです。基本感としては、米金利の上昇への懸念が続く限り、米国株よりも日本株を好む傾向は維持されそうです。ただし、第2四半期の決算がそれほど力強い内容ではないことを考慮すると、日本株への様子見姿勢は当面続くかもしれません。 そのような状況下では、日本株に再び投資するタイミングは年末前後になる可能性が高いでしょう。2024年から開始される新NISA(少額投資非課税制度)は、日本株にとって強気の材料となり得ます。 新NISAの始動に伴い、日本株にどれだけの新規資金が流入するかは不透明ですが、一部の個人投資家が日本株に強気の姿勢を見せているのは明らかです。例えば、内閣府が発表した消費動向調査によると、高収入層は株価上昇への確信を強めているようです。 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「野村クオンツ・インサイト – 円安カタリストとしてのHFのキャリー取引(2023年11月13日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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11/14 12:00
【野村の投資判断】日本株決算、米国関連企業の間で明暗が分かれる
自動車・消費関連は上振れ、設備投資関連は下振れ 米国の長期金利の変動に対して、日本株と米国株は異なる反応を示しています。金利上昇がもたらす米国の銀行株への影響は、金融ストレスへの警戒から「逆相関」となっています。一方で、日本の銀行株は、日銀の金融政策正常化に対する期待感から「順相関」を示しています。この逆行性により、米国の金利が上昇する際には、バリュー株を中心に日本株が相対的に優れたパフォーマンスを見せる傾向にあります。 2023年7-9月期の日米企業の決算では、米国企業の減速に対し、日本企業は好調を維持しています。決算の特徴ですが、日本については米国関連企業の間で明暗が分かれています。自動車・消費関連企業は、コロナ禍で蓄積された過剰貯蓄の解消とペントアップディマンド(繰り延べ需要)によって、業績が上振れています。一方、システム投資を含む設備投資関連企業は、金利上昇による冷却効果から業績が下振れています。 先行きについては米国景気の不確実性に注意が必要です。特に重要なのは米国の消費がヤマ場を迎える年末商戦の動向です。年末商戦の見通しが弱気に転じると、日米間の金利差と不整合となっている円安の修正も含め、外需環境が大きく悪化するリスクが高まります。 セクター推奨としては、値上げ効果や米金利の低下から恩恵を受けるグロース特性を持つ「システム・アプリケーション」、日本のデフレからの脱却や実質金利の長期的なマイナス状態を背景に「不動産」、さらに値上げ効果のある「食品」業界に注目しています。また、輸出関連株の中では、景気サイクルに対してほぼ中立な「半導体製造装置」がアウトパフォームする可能性のある候補として挙げられます。 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 注目点とトピック(2023年11月9日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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11/13 20:00
【今週の米国株】株価続伸のカギは8-10月期決算とCPI(11/13)
先週:金利上昇の一方、業績予想は上方修正 前週の米国株は、米長期金利(10年国債利回り)は週後半にかけて緩やかに上昇となった一方で、アナリストの今期業績予想の上方修正が進みました。 リビジョン・インデックスはFY1で大きく上振れ (注) S&P 500 指数構成企業のリビジョンインデックス。リビジョンインデックスは直近4週間にアナリストが業績予想を上方修正した銘柄数/下方修正した銘柄数で計算。指数が1を上回ると上方修正優位、1を下回ると下方修正優位と判断される。直近値は2023年11月10日時点。FY1は予想1期目(12月決算企業の場合、2023年12月期)、FY2は予想2期目(12月決算企業の場合、2024年12月期) 。(出所) LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成 上図から読み取れる通り、7-9月期決算本格化前~発表中に下方修正優位であった今期(FY1)のリビジョン・インデックス(RI)が1.0を超え、上方修正優位にシフトしています。このことは、先週の米国株価には追い風になったと考えられます。 一方で、来期(FY2)のRIは下方修正優位で推移しています。このことは、ここまで発表された実績が予想を上回り、今期の上方修正につながった一方で、来期以降の予想については依然として慎重に見ていることを示唆しています。7-9月期決算自体は4四半期ぶりの前年同期比での増益となる公算が大きくなっており、その後も成長軌道への回帰が期待されている中で、市場(アナリスト)の来期見通しが、後述の6-8月期決算発表などを通し本格的な上方修正に転じられるかが今後の焦点となります。 Point1. 8-10月期決算がスタート 米国では早くも8-10月期決算がスタートします。 注目されるのは、システム・アプリケーションの先行きを見る上で15日(水)のシスコシステムズ(CSCO)、半導体投資を見る上でアプライド・マテリアルズ(AMAT,半導体製造装置大手)、米消費の堅調さを見る上で16日(木)のウォルマート(WMT)です。特に、年末商戦を前にして小売企業の先行きに対するコメントに関しては、マクロ面からも関心が高いと考えられます。 Point2.CPIは引き続き注目 先週末にはミシガン大学調査の予想インフレ率が発表され、全体として市場予想を上回りました。インフレ再燃の懸念がくすぶっている状態といえ、今週14日(火)発表の10月CPI(消費者物価指数)には注目が集まります。 野村では、10月のコアCPI上昇率は前月比+0.4%へ、9月の同+0.3%から加速すると予測しています。10月のCPI上昇率が野村予想通り加速する場合、現在の政策金利がインフレ率をFRBの目標である+2%に向けて低下させるうえで 「十分に抑制的」 ではないという懸念を引き起こす可能性があります。しかし、金融機関の貸し出し態度の厳格化など最近の金融環境の引き締まりを考慮すると、追加利上げの可能性は小さいものと思われます。 また、今週は、FOMCの中心メンバーであるジェファーソン副議長(14日講演)やウィリアムスNY連銀総裁(16日講演)の発言も市場の関心は高いと考えられます。 Point3.暫定予算成立に暗雲、ボラティリティ高まる懸念 17日(金)には、米国で暫定予算が期限を迎えます。 下院議長の選出が遅れたことから、予算にかける時間が限られ、政府閉鎖が発生するリスクがあります。過去の政府閉鎖では、連邦債務等に関連する財務省の業務が停止することはなかったため、連邦債務の法定上限問題が未解決の際に生じるような米国債のテクニカル・デフォルト(技術的債務不履行)のリスクは低いと考えられます。ただし、政府閉鎖が長期化し、12月8日発表予定の11月分雇用統計や、12月12日発表予定の11月分CPI(消費者物価指数)といった主要な経済指標の発表がキャンセルされる場合には注意が必要です。次回の12月13・14日のFOMC(米連邦公開市場委員会)において、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策を決定する際の判断材料が金融市場に提供されない場合には、市場のボラティリティを高めかねません。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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11/13 15:30
【株式需給解説】海外投資家は10月に2カ月連続の売り越し
2023年10月(10月2~27日、以下同じ)の主な投資部門別の売買動向を現物と先物の合計で概観すると、個人投資家や事業法人などが買い越した。売り越したのは海外投資家や都銀・地銀等であった。 海外投資家は現物と先物の合計で9,036億円を売り越した。売り越しの中心は先物で1兆8,684億円を売り越した。米国長期金利が上昇したことに加え、日銀金融政策決定会合(10月30、31日)、FOMC(米連邦公開市場委員会、10月31日、11月1日)といった重要イベントを控える中で、リスク回避姿勢が強まったと見られる。他方、現物は9,648億円買い越した。海外に上場する日本株ETF(上場投資信託)には同時期に資金純流入が続いたことから、中長期目線の投資家が買い手になったと見られる。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 都銀・地銀等は3,767億円を売り越した。売り越しの中心は先物で2,829億円を売り越した。6月第2週から9月第4週にかけて4,185億円を買い越しており、持ち高を解消する売りが出たと見られる。 個人投資家は7,104億円を買い越した。TOPIX(東証株価指数)が前週比で2%以上下落した第1週および第3週の買い越し額がそれぞれ4,848億円、4,757億円と大きかった。押し目買いを行ったと見られる。 事業法人は5,125億円を買い越した。企業が自社株買いを積極的に行っていると見られる。また、当月の現物売り付け総額は今年度に入ってから最も小さかった。政策保有株の売却ペースが一旦鈍化した可能性がある。 (野村證券市場戦略リサーチ部 藤 直也) ※野村週報 2023年11月13日号「株式需給」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点