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【新春特集】2024年相場大展望 – 日本株編 (解説:池田)
野村證券市場戦略リサーチ部 チーフ・エクイティ・ストラテジストの池田雄之輔が、2024年の日本株展望について解説します(約33分)。 ~ 講師紹介~ 池田 雄之輔 1995年野村総合研究所入社、2008年に野村證券転籍。一貫してマクロ経済調査を担当し、2019年より現職。「野村円需給インデックス」を用いた、円相場の新しい予測手法を切り拓いている。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。現在、テレビ東京「モーニングサテライト」に定期的に出演中。著書に「円安シナリオの落とし穴」(日本経済新聞出版社)。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 休日の過ごし方・リラックス法:愛犬(トイプードル2匹)との散歩好きな食べ物・お酒:焼き鳥、お酒は何でもOK,特に缶チューハイが好き趣味:音楽鑑賞、読書、ランニング好きな言葉・心掛けている言葉:通説を疑う長期休暇で行きたいところ:沖縄特記事項:音楽はクラシック・ジャズ・ロックが好きで、特にジャズは、アントニオ・ファラオ(ジャズピアニスト)が好き。カラオケは断然ミスチル ※動画の終盤に言及している、「アンケート」については、FINTOS!ではご回答いただけません。ご了承ください。 ご投資にあたっての注意点
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【新春特集】令和6年、「甲辰(きのえ・たつ)」
「辰」には龍が割り当てられています。十二支の動物では唯一空想上の存在ですが、古代中国では実在すると考えられていました。現在も中国では恐竜の化石が多く出土します。古代の人々もこの化石を目の当たりにし、その存在を信じたのでしょう。 古代中国で龍は麒麟、鳳凰、霊亀と並んで四霊獣の一つとされ、天地を行き来し水と雨を自在に操るものと考えられていました。勇ましく絶大な力を持つことから権力の象徴となり、「伝説上の君主・黄帝が龍とともに天へと昇っていった」など、王にまつわる逸話が数多く残っています。龍の存在は日本にも中国から伝わったとされ、『日本書紀』に登場するヤマタノオロチ、全国各地の神社で祀られている水を司る「龍神」などが知られています。さらにゲームや物語にも頻繁に描かれていることから、空想上の生物でありながら、非常に身近な存在でもあると言えるでしょう。 さて、それでは恒例の「甲辰」縁起談。二回り前の甲辰は明治37年(1904年)です。2月には日露戦争が勃発しました。日清戦争からわずか10年での開戦です。国内では根強い戦争反対論がありましたが、人的、経済的に大きな負担を重ねながら翌年9月まで続きました。9月に与謝野晶子が発表した「君死にたまふことなかれ」は、日露戦争の旅順攻囲戦に従軍していた弟を思って作られた詩です。 一回り前の甲辰は昭和39年(1964年)。この年はなんといってもアジア初開催となった東京1964オリンピックがありました。このために建設が進んでいた施設や交通網の整備が、続々と完成します。10月10日の開幕を前に、1日には東海道新幹線が開業し、2日後の3日には柔道競技会場として日本武道館が開館。中継を見るためのテレビの購入、会場への旅行の増加も後押しし、オリンピック景気をもたらしました。 東京1964オリンピックで、日本選手はこれまでの努力の成果をいかんなく発揮し、金メダル16個を含むメダル29個を獲得。この快進撃は、日本の人々にとってスポーツをより身近なものにしたと言えるでしょう。 野球では村上雅則がアジア人初のメジャーリーガーに。他にも王貞治がシーズン55号本塁打を達成するなど、記録にも記憶にも残る躍進が続きました。 1964年は海外旅行自由化の年でもあります。4月から観光目的のパスポートの発行が開始され、年1回、持ち出し500米ドルまでという制限付きで個人の海外旅行が可能になりました。同じく4月には「ミロのヴィーナス」がフランスのルーブル美術館から来日し、80万人の動員を記録。世界との距離がぐっと縮まる一年だったと言えそうです。 一方で、数々の自然災害に見舞われた年でもありました。6月には新潟地震、7月には東京で深刻な水不足が発生し、「東京砂漠」と呼ばれる事態になりました。一方で、同じ月には山陰北陸豪雨も起こっています。 世界に目を向けると、総合的な黒人差別をなくす立法措置として公民権法が成立。これまでの公民権運動がようやく実を結びました。4月には、映画『野のユリ』に主演したシドニー・ポワチエが黒人初のアカデミー賞主演男優賞に輝きました。また、12月にはキング牧師がノーベル平和賞を受賞しています。 「甲(きのえ)」は十干のはじまりにあたり、「木の兄」、つまり大きな木を指します。甲冑の「甲」の字から連想される通り、草木の種子が硬い殻に覆われ、成長の時を待っている状態を意味しています。「辰」は二枚貝が開いて間から足を出している状態を示し、「のびる」「ふるう」などを意味します。ここからは、はじまりの地点に立ち、殻を破って勢いよく成長していく年と読み解くことができるでしょう。 2023年、ふつふつと湧き上がる力を見せはじめた株式相場が、2024年こそ龍のように勢いよく、天まで高く上昇する吉年となりますよう。 (紙結屋小沼亭) ※野村週報 2024年新春合併号 「甲辰」縁起より ※こちらの記事は「野村週報 2024年新春合併号」発行時点の情報に基づいております。※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/31 19:00
【新春特集】インフレとディスインフレ、どちらが構造的か?(投資の視点)
中国で再燃するディスインフレ、日米で続くインフレのぶつかり合い原油価格が重要なバロメーター、日米インフレ期待を左右トランプ再選なら米中通貨安競争激化、岸田政権失脚ならアベノミクス復活か 2024年は「ディスインフレ」が投資テーマに再浮上するかもしれません。コロナ禍後の3年間は「インフレ」がテーマとして支配的でしたが、主要国の金融引き締め策が効き始め、グローバルに景気・インフレの減速感が強まっています。ディスインフレは、インフレ鎮静化を狙う米欧には吉報ですが、その定着を試みる日本には凶報です。23年、日本株では銀行、商社、外需関連など、円安・インフレ加速に乗って買い進まれた銘柄・セクターが多く(図表1)、もし流れが円高・ディスインフレへと変わればそれらが調整圧力を受け、他国株に対して劣勢に回る可能性があります。 ディスインフレの先頭を走るのは中国です。消費者物価で見ても足元マイナスの伸びになり、同国経済の「日本化」リスクを指摘する声が増えています。中国は、日本の失敗から多くを学んでおり、その轍を踏まぬよう様々な手段を取ってくると思われます。積極的な金融緩和と通貨安で、他国にデフレを輸出する形で自国のそれを回避するのが1つです。現在は露骨な元安誘導により米国との緊張を強めたくないとの配慮も働いていますが、この先米国が利下げ局面入りすれば、中国も金融緩和を積極化すると思われます。米中で通貨安が進み、裏返しで円は上昇し易いでしょう。また中国企業は輸出品の値下げを通じシェア拡大も狙うと見られ、家電や自動車など、日本の主力産業に与える影響も大きいと思われます。 インフレとディスインフレ、どちらがより構造的かを考える上では原油価格がバロメーターでしょう。単にインフレ指標の構成品目というだけではなく、グローバル景況の鏡でもあり、米日ともインフレ期待への影響も大きいためです。長期視点では、米国でインフレ期待が下方シフトしたのは、2014年秋の「シェール・ショック」後です。それを境に原油価格のレンジの中心が100→60ドル/バレルへ、米長期インフレ期待は2.5%→2.0%へそれぞれ下方シフトしました(図表2)。 シェール・ショック後、米株価のバリュエーションは切り上がりましたが(図表3)、ディスインフレから恩恵を受けづらい日本株価のそれは低迷を続けました。一方コロナ禍後は、それぞれ80ドル/バレル、2.25%を中心とするレンジに再浮上している様にも見えます。仮にこの先景気減速に伴い原油が60ドル/バレル付近へあっさり戻る様だと「インフレは一時的、ディスインフレが構造的」との見方が広がり易く、逆に60ドル/バレルへ戻る前に反発する様だと「2010年代後半のディスインフレ期を脱し、構造的にインフレ化が進んでいる」との評価になり易いでしょう。 コロナ危機・ウクライナ紛争をきっかけとした「インフレ」的な経済・社会構造の変化が消えてしまったわけではありません。例えば日米とも完全雇用状態にあり、労働市場における高齢者の退出増や、女性参加率増加の一巡を踏まえると、よほど景気後退が深くならなければ、賃金上昇率は高止まると思われます。米国では90年代後半の様に、利下げ幅が思ったほど広がらずに、景気・インフレが底入れする可能性があります(図表4)。日本では値上げ・賃上げができる企業とできない企業で差が開き、より強い企業に労働や資本が集中していくと思われます。ただし人口減の日本では、国内で企業が生産性向上を進めながら景気拡大を続けるには、輸出や海外進出拡大を通じた対外収支改善が不可欠と考えられ、グローバル景気減速下では容易な作業ではありません。 最後に24年のリスクを挙げておくと、日米とも「政権交代」に伴う政策転換の可能性です。米国でトランプ氏が大統領に再選した場合、前回の様に財政拡張が使えない分、景気浮揚を金融緩和に頼る可能性が高く、米中通貨安競争に拍車がかかりそうです。また同氏の自国優先主義が地政学的リスクを高め、商品価格の高止まりにつながり易いと思われます。サプライチェーン分断も進み易くなり、これらはインフレ的影響をもたらすかもしれません。一方日本では、岸田政権の推す企業の生産性改革と新陳代謝がもたらす痛みに耐え兼ね、アベノミクスへの回帰を求める声が再び強まる可能性があります。同政策が一時的な景気のカンフル剤とはなっても、生産性向上ひいては賃金と物価の好循環をもたらすことはなく、大胆な金融緩和政策がむしろ円安による日本の窮乏化につながったとする見方もあり、その際には日本株市場への影響には注意が必要かもしれません。 (野村證券市場戦略リサーチ部 松沢 中) ※野村週報 2024年新春合併号 「投資の視点」より ※こちらの記事は「野村週報 2024年新春合併号」発行時点の情報に基づいております。※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/31 13:00
【新春特集】2024年相場大展望 – 世界経済・為替編 (解説:尾畑)
野村證券投資情報部 シニア・ストラテジストの尾畑秀一が、2024年の世界経済と為替の展望について解説します(約33分)。 ~ 講師紹介~ 尾畑 秀一 1997年に野村総合研究所入社、2004年に野村證券転籍。 入社後、一貫してエコノミストとして日本、米国、欧州のマクロ経済や国際資本フローの調査・分析に従事、6年間にわたり為替市場分析にも携わった。これらの経験を活かし、国内外の景気動向や政策分析、国際資本フローの動向を踏まえ、グローバルな投資戦略に関する情報を発信している。分かりやすく、明瞭な解説には定評がある。 身近なお金の話から、資産形成のノウハウまで幅広く解説する「東証マネ部!」(日本取引所グループホームページ)にも定期的に記事を寄稿。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 休日の過ごし方・リラックス法:愛犬(コーギー)との散歩好きなお酒:クラフトビール、ワイン、日本酒趣味:ボルダリング、バスケット尊敬する人:岩井 克人(東京大学名誉教授)好きな言葉・心掛けている言葉:Cool head but warm heart長期休暇で行きたいところ:モルディブ好きな本:スラムダンク、MASTERキートン ※動画の終盤に言及している、「アンケート」については、FINTOS!ではご回答いただけません。ご了承ください。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/31 09:00
【新春特集】2024年に円債回帰へ(内外債券市場)
2023年には本邦投資家による為替ヘッジなしの米国債購入が進展した模様2024年にはFRBが利下げを実施、円高米ドル安が進む可能性本邦投資家は円債回帰の公算 2023年には本邦投資家による為替ヘッジなしの米国債購入が見られましたが、24年には本邦投資家の円債回帰が進むと予想されます。理由として、FRB(米連邦準備理事会)が24年6月に利下げを開始、円高米ドル安が進み、また、日本国債の利回りが為替ヘッジ付きの米国債利回りを上回ると予想されることが挙げられます。 FRBは24年6月に0.25%ポイントの利下げを実施すると当社は見込んでいます。24年6月には予防的利下げの条件が満たされると考えられるからです。 予防的利下げの条件は、ウォラーFRB理事の23年11月28日の発言を踏まえると、コアPCE(除く食品、エネルギーの個人消費支出)デフレーターが3~5ヶ月間、前月比0.2%程度の上昇を続けることと考えられます。24年半ばにかけて、基調的な物価上昇率であるコアPCEデフレーターの前月比は0.2%程度で推移、FRBは24年6月に0.25%ポイントの予防的利下げを実施すると野村では予想しています。 また、非農業部門雇用者数の前月差が10万人未満に減速すると、米国の利下げの可能性がより高まります。FRBの一部は、インフレ目標達成と整合的な非農業部門雇用者数の前月差は約10万人としています。予想される米経済の減速により、24年4-6月期には非農業部門雇用者数の前月差は約7万人と、23年11月の19.9万人から減速すると野村では見込んでいますが、この点からもFRBによる24年6月の利下げの可能性があります。 その後、FRBは24年7月に政策金利を据え置くものの、24年9月以降、FOMC(米連邦公開市場委員会)会合毎に0.25%ポイントずつ利下げを実施、米政策金利は24年末には4.25%~4.50%と、現在の5.25%~5.50%から引き下げられると考えています。24年後半の米国経済は、雇用の減少を伴う景気後退に陥ると予想しているためです。 予想される米政策金利の低下、米国債の利回り低下は、日米金利差の縮小を通じ、米ドル安・円高をもたらすと考えます。米10年債利回りのピークは事後的に見れば、23年10月19日の約4.98%となり、米10年国債利回りは24年末に3.45%に低下すると野村では見込んでいます。 また、日本銀行による政策修正も米ドル安・円高要因と考えます。日本銀行は24年1月にマイナス金利を解除、4月にイールドカーブ・コントロール(YCC)を撤廃すると野村では見込んでいます。24年後半に予想される米国の景気後退を踏まえると、日本銀行が政策金利をプラス圏内に引き上げる可能性は低く、日本10年国債利回りは上昇するとしても1%が上限と考えています。それでも、日本銀行による引き締め措置は米ドル安・円高圧力となり得ます。 24年に本邦投資家は、日本国債市場への回帰を強める可能性があります。24年には為替ヘッジ無しでもヘッジ有りでも米国債の保有に妙味を欠くと予想されるためです。 23年においては本邦投資家による為替ヘッジ無しでの米国債投資が進みました。米国のインフレ圧力が根強く、FRBが利上げを継続、米ドル高・円安が進むとの期待も、為替ヘッジなしでの米国債投資が進んだことの背景にあると考えられます。 しかし、24年に米ドル安・円高が進めば、本邦投資家の一部が、23年に為替ヘッジなしで投資した米国債を売却することも考えられます。 このような中、日本国債利回りは引き続き、為替ヘッジ付き米国債利回りを上回ると予想されます。現在、日本国債利回りは、全年限に亘り、為替ヘッジ付きの米国債利回りを大幅に上回っています。円ベースの投資家にとって、米ドルの為替ヘッジコスト(3ヵ月物)が6%弱と高止まりしているためです。24年には、米ドルの為替ヘッジコストは低下するものの、限定的に留まる可能性があります。24年にFRBは延べ1%ポイントの利下げを実施すると見込んでいますが、日米短期金利差は開いたままとなり、24年末の米ドルの為替ヘッジコストは4%台後半となる可能性があります。24年末の米10年債利回りを3.45%と野村では予想していますが、円ベースの米ドル為替ヘッジコストがそれを上回り、24年末の為替ヘッジ付き米10年債利回りはマイナスのままになる可能性があります。本邦投資家にとっては為替ヘッジ付きで米国債に投資する妙味は殆どありません。 今後、本邦投資家の一部は、利回りの面から妙味の高い日本国債に資金を振り向けることも考えられます。23年10月に発表された日本の大手生命保険会社10社の23年度下期の運用計画などを踏まえると、生命保険会社は総じて、24年3月の日本30年債利回りを2%弱と見通している可能性が窺えます。日本銀行が24年に政策修正を実施し、23年12月18日時点で1.6%台にある日本30年債利回りが2%程度に上昇すれば、一部の投資家は、これ以上の利回り上昇(債券価格の下落)余地は限定的と判断し、日本の超長期国債の購入が進む可能性もあります。 (野村證券市場戦略リサーチ部 岸田 英樹) ※野村週報 2024年新春合併号 「内外債券市場」より ※こちらの記事は「野村週報 2024年新春合併号」発行時点の情報に基づいております。※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/31 08:30
【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事の配信スケジュール
FINTOS!編集部では、野村オリジナルの記事を毎週40本程度配信しています。主な定期配信スケジュールは次の通りです。 赤塗りのコンテンツはプレミアムユーザー向けの記事ですが、ベーシックユーザーの方も内容の一部をご覧いただくことが可能です。 ※2023年3月11日更新 日刊(平日のみ) 週刊 季刊、不定期 市場の変動や記事のラインナップ状況、祝日などの理由により、配信タイミングが変更、休止となる場合もございます。ご了承ください。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/30 19:00
【新春特集】日本発の円安圧力は既にピークアウトか(外国為替市場)
2023年も円安圧力が根強かったが、22年の円安とは重要な違いが存在日本発の円安圧力は既にピークアウト、米利下げを織り込み米ドル円は140円割れへ米国経済軟着陸成功時には1米ドル=140円前後が押し目買いの好機となる可能性も 2023年の米ドル円相場は11月半ば以降、上値が重くなっていますが、秋口には一時1米ドル=151円台まで上昇するなど、総じて円安米ドル高傾向が維持されました。 海外と日本の高水準の金利差が維持される中、24年の米ドル円相場についても、根強い円安圧力が予想されますが、23年の円相場の値動きにはいくつかの点で22年からの変化が見られました。具体的には、①アジア時間帯で進まなくなった円安、②経常収支黒字化と円需給改善、③改善し始めた交易条件、④日銀政策正常化の進展と日本の金利上昇、⑤「ボラティリティ低下=円安」との関係への回帰、といった変化です。 これらの変化は、日本発の円安圧力が既にピークアウトしている可能性を示唆しています。一方、海外と日本の大きな金利差に加え、米経済ソフトランディング期待を背景に市場心理が22年対比で改善、絶対的な金利差に着目したいわゆるキャリー目的での円売り圧力が海外投資家を中心に強まったことが、円安局面を長期化させたと考えられます。 この視点に立てば、24年に向けた円相場を占う上では、米経済のソフトランディングが実現するかが最大の焦点となります。市場では2024年に向けてFRB(米連邦準備理事会)に対する利下げ期待が高まっていますが、仮に米経済がソフトランディングを実現すれば、市場のリスク心理は安定しやすく、高水準の金利差が米ドル円を支える展開が続きやすくなります。1米ドル=140円前後が押し目買いの好機となる可能性が出てきます。 一方、野村が想定する24年後半の米経済マイナス成長シナリオに基づけば、24年後半に向けて円高米ドル安の動きは持続、130-135円方向に向けて一段の調整が予想されます。FRBの利下げが継続することに加え、市場の米景気楽観論が修正を迫られることで、市場ボラティリティは上昇・高止まりとなりやすいでしょう。金利差縮小に加え、ポジション調整を通じても円高圧力が強まりやすくなると予想されます。 日本発の円安圧力はピークアウト済みと見られますが、24年の円相場にとっては、日銀の政策正常化が進むかどうかも依然として重要です。日銀は23年7月会合でイールドカーブ・コントロール(YCC)の形骸化を進め、同年9月会合ではマイナス金利解除を含むより本格的な出口戦略議論を開始した可能性が高いと見られます。 23年9月会合における主な意見では「出口を見据えた市場や社会とのコミュニケーション等、出口に向けた準備、環境整備を進めることがリスク・マネジメント上、重要」との意見が見られました。実際、23年12月6日には氷見野副総裁がマイナス金利解除の各経済主体への影響に詳しく言及、市場とのコミュニケーションを図っています。日銀はマイナス金利解除に向け、着実に地ならしを進めているといえ、日銀は24年1月会合にもマイナス金利を解除、正常化をさらに進める公算が大きく、24年前半の円相場の支えとなりそうです。 23年7月及び同年10月の2回のYCC修正前後の円高が限定的だったことから、日銀引き締めの円高インパクトは限られるとの見方も強まっていますが、24年1月にも予想されるマイナス金利解除は、①海外金利上昇を受けた受動的なYCC修正とは異なり、海外金利低下局面での逆行的な引き締めとなる可能性、②長期や超長期金利ではなく為替市場にとってより重要な5年国債利回りを上昇させる可能性、などから円高インパクトが大きくなりそうです。特に、24年中の日銀追加利上げ余地は0.25%ポイント程度に限られるとの市場の見方が覆され、利上げ期待が高まった際には円高圧力が強まりやすいと考えられます。 米ドル円相場のドライバーとなってきた米日5年国債金利差は縮小方向への転換が明確化、米ドル円の下落につながりそうです。 アジア時間帯に円安米ドル高が進みにくくなっている点に象徴されるように、日本発の需給面の円売り圧力は既にピークアウトが明確になっています。実際、①原油価格ピークアウトによるエネルギー輸入の減少、②供給制約解消による輸出の堅調、③訪日外国人客の回復、などにより日本の経常収支は大幅な黒字が定着しました。秋口に一時、2014年以来の経常収支赤字化となった22年とは大きな違いと言えます。 22-23年と円安圧力の強い相場が続いてきましたが、24年は特にFRBの利下げ開始と日銀のマイナス金利解除が予想される年前半にかけて、円高圧力が高まる公算が大きそうです。米日金利差の縮小、キャリー目的での円売りポジションの取り崩し、円需給の改善、などが円高圧力として想定されます。米ドル円は24年前半には140円割れを試す展開となりそうです。 ただし、24年後半まで見据えた円高の持続性は米国を中心とした世界景気の強弱に大きく依存すると考えられます。米経済がソフトランディングに成功する際には140円前後が押し目買いの好機となる可能性もあり、年央に向けて米国を中心に景気動向を慎重に見極めることが重要になりそうです。 (野村證券市場戦略リサーチ部 後藤 祐二朗) ※野村週報 2024年新春合併号 「外国為替市場」より ※こちらの記事は「野村週報 2024年新春合併号」発行時点の情報に基づいております。※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/30 13:00
【新春特集】2024年相場大展望 – テクニカル編 (解説:岩本)
野村證券投資情報部 ストラテジストの岩本竜太郎が、テクニカル分析の観点から2024年の展望や注目点について解説します。 ~ 講師紹介~ 岩本 竜太郎 2008年から投資情報部にてテクニカル分析を担当。「マーケット解説動画」でもおなじみで、「週刊チャート展望」も執筆。株式・為替等のチャート分析を中心として、幅広く情報提供をおこなう。日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 休日の過ごし方・リラックス法:家族と一緒に過ごす好きな食べ物・お酒:チーズ全般、ただしお酒は苦手趣味:ランニング、音楽鑑賞(クラシック音楽)好きな言葉・心掛けている言葉:感謝長期休暇で行きたいところ:那須・沖縄好きな本:池上彰さんの著書や「嫌われる勇気」は、オーディオブックでの“ながら聞き”にお薦め。 ※動画の終盤に言及している、「アンケート」については、FINTOS!ではご回答いただけません。ご了承ください。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/30 09:00
【新春特集】FRBの利下げなどで新興国投資の魅力が高まる可能性(新興国為替市場)
FRBの利下げや中国経済の安定化が実現すれば、新興国への資金流入が期待されるキャリートレードが弱まれば、ファンダメンタルズも新興国通貨を左右する要因に主要新興国で選挙が予定されているが、大きなサプライズの可能性は低い 2023年はFRB(米連邦準備理事会)の金融引き締め長期化や中国経済減速懸念などを背景に新興国への株式投資などは低調でしたが、新興国金融市場は大規模な資本流出を回避できました。新興国は概ねインフレに対して早めの利上げで対処するなど、適切なマクロ経済政策運営で外部要因に対する耐性を示しています。 個別通貨では、23年は対米ドルでメキシコペソ、ポーランドズロチ、ブラジルレアルが堅調、トルコリラ、ロシアルーブル、南アランドが軟調でした。中南米通貨や欧州新興国通貨は高金利に支えられましたが、一部の欧州新興国通貨はインフレ率の高さや巨額の経常収支赤字などファンダメンタルズの悪化が嫌気されました。 2024年には新興国の株式や債券への資金流入は一段と回復すると見られます。新興国への株式・債券フローは、FRBの金融政策、新興国と先進国との成長率格差などの影響を受けやすいと考えられます。アジア新興国での利上げは景気を失速させるほど大規模には実施されてこなかったことなどを踏まえると、24年の新興国景気は減速しつつも失速を回避するでしょう。FRBは24年6月から利下げを開始し、新興国経済の減速は先進国経済に比べて小幅にとどまるとの前提を置くと、新興国への株式・債券フローは大きく持ち直すと見込まれます。 24年は23年に比べてキャリートレード(金利の低い通貨で資金調達して金利の高い通貨で運用して利ザヤを稼ぐ手法)は弱まる可能性があります。FRBの金融緩和後に新興国各国中銀は利下げに積極的になると想定されます。FRBの利下げや世界景気の不透明感で金融市場全体でボラティリティが上昇すれば、キャリートレードの妙味が低下することも考えられます。 キャリー需要だけではなく、ファンダメンタルズも新興国通貨を左右する材料になるでしょう。新興国への投資に際し、投資家は財政収支や経常収支、インフレ動向などを重視する傾向があります。そこで、各国の対外ファイナンス、財政リスク、インフレリスクを考慮して脆弱性指数を作成しました。 脆弱性指数を見ると、ロシア、タイなどでファンダメンタルズが健全で、南ア、トルコ、ハンガリーで脆弱なことが示されています。また、地域別では全般的にアジアが健全で、欧州・アフリカや中南米が脆弱です。2024年に向けて良好なファンダメンタルズがアジア通貨の追い風になると見込まれます。金利動向やファンダメンタルズを踏まえると、タイバーツ、メキシコペソ、ブラジルレアルなどは新興国通貨のなかでも対米ドルで好調と予想されます。 一方、政治面では、24年は主要新興国の多くで選挙が予定されています。現在の世論調査を踏まえると、インドネシア、インド、南ア、メキシコでは政権交代で政策方針が大幅に転換するリスクは低そうで、大きなサプライズはなさそうです。インドでは、モディ首相率いるインド人民党が単独で過半数の議席を確保し、新政権は製造業振興などの企業寄りの政策を継続すると期待されます。23年12月3日に地方選の結果が公表され、重要3州でインド人民党が勝利し、同党は勢いづいています。インドネシアでも現職のジョコ・ウィドド大統領は3選を禁じる憲法規定で退任予定となっており、有力候補プラボウォ氏とガンジャル氏はジョコ・ウィドド政権の政策路線を踏襲することを表明し、新首都開発やインフラ投資の積極化などが期待されます。 24年は新興国経済や金融市場への投資が市場で注目されそうです。世界的にインフレ率は低下傾向にあり、先進国・新興国ともに金融政策は利下げへ転換しつつあります。世界経済が深刻な景気後退に陥らなければ、相対的に高成長の新興国に株・債券資金が流入しやすいと考えられます。米中対立でサプライチェーンを分散する動きもメキシコ、ASEAN諸国、インドなどでは引き続き恩恵になると見られます。選挙後の政策動向なども意識したうえで、新興国各国のファンダメンタルズを見極めながら投資を行うことが大切です。 (野村證券市場戦略リサーチ部 春井 真也) ※野村週報 2024年新春合併号 「新興国為替市場」より ※こちらの記事は「野村週報 2024年新春合併号」発行時点の情報に基づいております。※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点