野村のオピニオン
801件
-
11/12 13:00
【注目トピック】米国決算まとめ:2023年7-9月期は増益に転じる
米国:2023年7-9月期決算レビュー 23年7-9月期は前年同期比3.4%増益 11月3日までにS&P 500 指数構成企業のうち402社が、2023年7-9月期決算(2023年6-8月期決算企業も含む)を発表しました。LSEG(旧調査会社リフィニティブ)の集計では、同期のEPS(1株当たり利益)は前年同期比+3.4%の57.93ドルと予想されています。 今回の決算発表シーズンが始まる直前の10月6日時点の集計では、前年同期比-0.4%の55.78ドルと予想されていました。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 2023年7-9月期は、純利益の決算実績が、事前のアナリスト予想を上回る企業の比率(ポジティブサプライズ比率)が、直近4四半期平均、長期平均を上回っており、上記のような結果につながったと考えられます。 年度EPSは引き続き増益基調予想 アナリストの業績予想の修正状況を示すリビジョンインデックスをみると、社数では上方修正よりも下方修正が多い状態が続いています。 次に、年度ベースでのEPS予想についてみると、2023年は前年比微増益となっていますが、 2024年、2025年と増益が予想されています。なお、2023年は10月6日時点と比べほぼ変わらずとなっていますが、2024年、2025年については下方修正されています。 決算実績は事前予想を上回る企業が多かったものの、足元の経済環境や地政学的リスクの高まりなどを受けて、2024年以降については、増益基調とみているものの、慎重に見直しているアナリストが多いものとみられます。 今後の留意点 S&P 500 指数構成企業の四半期EPSは、2022年10-12月期から3四半期連続で前年同期比減益となっていました。約8割の企業が決算発表を終えた段階で、2023年7-9月期は増益見通しとなっていて、2023年10-12月期以降も増益が続く予想となっています。米主要企業の業績は減益局面を脱したと推察されます。 今後は、小売企業やソフトウェア企業などの2023年8-10月期決算の発表が始まります。これら企業の決算では実績に加え、今後の会社見通しなどを通じ、企業業績の動向を確認していきたいと考えます。 (野村證券投資情報部 村山 誠) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
-
11/12 09:00
【市場展望】値上げ・価格戦略の新潮流を探る
マクロ指標に見る値上げ行動の変化 日本企業の価格設定が前向きの変化を続けている。企業の値上げに関する行動の変化を、まずマクロの観点から確認する。 日本企業の「値上げ力」が全体として高まり、交易条件が改善している様子は、需要ステージ別の価格指数によく表れている。投入価格のうち最も上流に位置するステージ1は、国際商品市況と連動し、2022年半ばにピークアウト。23年1月から8月にかけて、ほぼ横ばいで推移している。これに対して、最終需要向けの財・サービス価格は、新型コロナ禍の落ち着きに伴う経済活動再開の恩恵もあり、23年春先から再上昇に転じている。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 企業の値上げは、円安やインバウンド(訪日外国人)需要のような外部からの押し上げ作用だけではなく、徐々に自己実現的な色彩を帯びている点が重要だろう。例えば、日銀の企業向けサービス価格指数をみると、ソフトウェア開発および情報処理・提供サービスの価格の上昇が目立つ。慢性的な人手不足は、企業のIT(情報技術)システム投資を後押しすると同時に、IT システム開発を請け負う企業の価格転嫁も促している。 企業の、「値上げ力」に対する自己認識はどうか。日銀短観の価格判断DI(景気動向の方向性を示す指数)をみると、04~08年の資源高局面では、仕入価格DIの上昇に比べ、販売価格DIの上がり方は不十分であり、真のデフレ脱却は果たせなかった。一方、現在は仕入価格DI が04~08年の資源高局面と同等の水準に達する一方、販売価格DI が過去の水準を上回って大幅に上昇している。これはデフレ期以前と比較しても顕著な変化と言える。 ミクロ面での値上げに関する動きの変化 ミクロ面でも、値上げに関する日本企業の動きには様々な変化が見られる。企業の動きを大きく分けると、①製品・サービスの付加価値向上、②「値上げ」に対する企業の考え方の変化、③料金体系・制度の変更、④費用増加や仕入価格上昇への対応、と分類できる。 第一は、自社製品や提供するサービスの付加価値を上げて、その対価を引き上げるという、値上げの王道とも言うべき動きである。 食品では、プレミアム商品を強化するとともに「価格は原価に基づいて決定するのではなく消費者が納得する水準で良い」という、女性開発者の新たな視点を取り入れた事例がある。ダイバーシティ(多様性)の好影響を物語ると同時に、企業の価格設定方法に根本的な変化が生じている一例となっている。鉄鋼では、カーボンニュートラル体制を導入した欧州子会社が、全製品に対してプレミアム価格を付与し、利益率改善につなげた動きがある。 第二は、値上げに対する企業の考え方が変化してきたことである。従来、日本企業は「やむを得ない場合」を除き、値上げに消極的であった。しかし、将来にわたって質の高い製品・サービスの供給を続けるためには、適正な利潤を得ることが必要である、という考え方が広がりつつある。 民生用エレクトロニクスでは、メーカーが在庫リスクを負う代わりに販売価格を指定し、適正な収益性を確保するための「指定価格制度」の導入が広がりつつある。この事例は付加価値向上による値上げという側面も併せ持っている。 第三は、料金体系・制度の変更で、各種インフラなど公益性の高い産業で見られる動きである。これらの産業では、提供するサービスの安定性、持続性が重要であり、企業の投資負担も小さくない。最近の制度、料金体系の変更は、企業が負担した必要な費用を適正に価格に反映させるための変更と言える。 第四は、費用増加や仕入価格上昇に対応した値上げで、従来から見られる一般的な値上げである。小売では、仕入価格の上昇に対応する形で、22年秋以降に各業態で価格引き上げの動きが広がった。同時に、「インフレ警戒」を強める顧客層に対しては低価格商品も提供することで、消費者の幅広いニーズに対応する動きも出てきている。日本企業の価格設定トレンドが必ずしも値上げ一辺倒ではないという点で、これも無視できない動きである。 (野村證券市場戦略リサーチ部 元村 正樹) ※野村週報 2023年11月6日号「焦点」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
-
11/11 13:00
【オピニオン】米長期金利の目途は「3.5~4.0%」程度か
直近1ヶ月あまりの米長期金利(10年国債利回り)はボラティリティ(変動性)が高い状態となっています。9月19~20日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)で示されたドッツ(メンバーの政策金利見通し)は、2023年末5.625%、24年末5.125%、25年末3.875%、26年末2.875%とされました(前回6月同:5.625%、4.625%、3.375%、未発表)。特に24年末は前回比0.5%ポイントの大幅な上方修正となりました。24年中に0.5%ポイントしか利下げしないとの見立てであり、景気やインフレの減速基調が明確化するまで高水準の政策金利を長期間維持するとの方針が明確化したと言えます。 その後、10月3日にはマッカーシー下院議長が解任されるという前代未聞の事態が生じ、今後の予算審議に大きな不安材料となりました。米国政府の資金繰りに支障を来し、デフォルトリスクの高まりをもたらしたと言えるでしょう。こうした流れの中で、米長期金利は10月23日に5.018%へ上昇し、2007年以来の高水準となりました。 10月31日~11月1日に開催されたFOMC後の記者会見において、パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長は「慎重に進んでいる。長期金利が上昇したことなどにより、金融環境が大幅に引き締まった」と言及したため、追加利上げに喫緊性が無い様子が窺えました。米長期金利は低下へ転じ、足元で4.5%台となっています(11月7日現在)。 なお、米財務省は前回8月に実施したリファンディング(国債の四半期定例入札)から、財政赤字の想定以上の拡大、政府債務に占めるT-bill(米財務省短期証券で償還期限が1年以内の割引債)の比率が上昇したことなどから、利付債を増発したことも金利上昇の背景にありました。しかし、11月1日に実施したリファンディングでは、10年債と30年債において発行額の増加幅が小幅となったことから、需給面での長期金利上昇圧力は緩和しました(なお、20年債は発行額据え置き、2年債~7年債の増加幅は前回と同様)。 引き続きインフレ再燃の可能性も否定できず、前述の通り財政ファンディングを巡る不透明感もある中で、長期金利が5%を超えて水準訂正する想定も考えられますが、あくまでもリスクシナリオと考えます。 さて、FRBは利上げ打ち止め後も政策金利を暫く現行の水準で据え置く姿勢です。これは実質政策金利(政策金利-インフレ率)を高水準に維持することを意味します。実質均衡政策金利を潜在成長率並みの1.5~2.0%程度、期待インフレ率をFRBの目標である2.0%程度とした場合、3.5~4.0%程度が当面の名目政策金利の目途となるでしょう。勿論、リスクプレミアム等がありますので、その分を考慮する必要がありますが、米長期金利もその方向へ収斂することが想定されます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
-
11/09 09:30
【業界展望】水素・アンモニアサプライチェーン
使用、製造、輸送・貯蔵の順で有望 野村では水素・アンモニア事業をサプライチェーン毎に分け、「使用」、「製造」、「輸送・貯蔵」の順番で有望と見込んでいる。「使用」が有望とみる理由は次の3点にある。①事業化時期の早さ。JERA のアンモニア混焼の実用化が2023年度末である。②業績インパクトの大きさ。経済産業省による50年時点の世界市場規模は850億ドルにのぼる。③売上計上の確度の高さ。特に発電用途は需要が大きく安定しており、水素コスト削減のために必須とされる。 次に「製造」が有望とみているが、製造については製造コストの動向が注目される。政府は30年に水素供給コストを現在の100円/ Nm3から30円/ Nm3に低減させる目標を掲げているが、需給面から達成ハードルは高いと野村ではみている。すなわち、①政府目標は天然ガス価格+CCS(二酸化炭素回収・貯留)で200万トン/年の生産時のみクリアするが、②22年から30年にかけての日本の水素需要の増分は85万トン程度と推定され、200万トンの供給は需要に見合わない。更なるコスト低減には水素製造の技術革新が必要だろう。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 30年までの水素輸送はアンモニアが牽引 「輸送・貯蔵」に目を向けると、野村では30年までの水素輸送はアンモニアが牽引すると見込んでいる。代替技術(有機ハイドライトや液体水素)の商用化は30年以降であるのに対し、既にインフラが構築済みであることが主な理由である。 なお、30年以降は最終需要によって輸送方法のすみ分けが進むと見込んでいる。具体的には有機ハイドライドやアンモニア等、水素を取り出す際に水素濃度が低減される輸送方法は水素濃度に制限のない、発電用途で使用されるとみる。一方、液体水素や高圧圧縮水素など、高い水素濃度を供給できる輸送方法は水素還元や水素ステーションなどで使用されるだろう。 30年の水素需要は発電用途が牽引しよう 野村では30年に向けて①水素混焼、②アンモニア、③燃料電池自動車、④水素還元需要が立ち上がり始めると考える。その中でも水素発電や石炭火力発電に使用されるアンモニア需要など発電用途が需要増加の主力とみている。発電用途の需要は水素発電が実用化される24~25年頃から立ち上がるだろう。 欧州並みのカーボンプライシング(60ドル/ CO2トン)が日本で導入された場合、アンモニア混焼は既存の石炭火力発電よりもコスト優位になると考える。一方で日本での同価格は3,246円/ CO2トンと低く、改善余地がある。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 吉武 祐翔、岡嵜 茂樹) ※野村週報 2023年11月6日号「産業界」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
-
11/08 09:30
【野村の投資判断】ヘッジファンドの「45日ルール」はグロース株の追い風に
「マーケット・ニュートラル」からの資金流出はグロース株に優位に作用する公算 年末に向けて、ヘッジファンドにリデンプション(償還)が生じやすい状況になります。ヘッジファンドへの解約通知に関しては、日本では四半期末の45日前までに通知が必要な「45日ルール」が知られています。ただし、このルールを厳格に遵守するヘッジファンドはほんのわずかで、実際には解約通知期間を「45日以内」に設定するヘッジファンドが多数派です。解約通知が増え始めるタイミングとして、四半期末の45日前を意識しておくことは一定の意義があるでしょう。 今年のヘッジファンドのパフォーマンスを考慮すると、当面は「(買い持ちと売り持ちを同額にする)マーケット・ニュートラル」から資金流出が生じる可能性があります。年初来のリターンは+2.4%とそれほど悪くはありませんが、ベンチマークである米国の3ヶ月金利との相対パフォーマンスは-3.2%と低調です。直近で同程度の低迷が見られた2018年には、3%以上の資金流出が発生しました。2000年以降の傾向に従えば、2023年の第4四半期(Q4)には運用資産残高全体から約5%の資金流出が予測されます。 マーケット・ニュートラルからの資金流出時には、「(株価の変動要因を統計的に調べる)ファクター分析」の動向に歪みが生じる可能性があります。Q4で資金流出が生じた場合、日米株式市場で「モメンタム(相場の勢い)」ファクターが調整しやすい傾向があることが確認されています。特に日本株市場では、モメンタムファクターはバリュー(割安)株への傾斜が顕著であり、モメンタムファクターが調整すればバリューファクターも調整を余儀なくされるでしょう。そのため、当面はグロース株が優位になる可能性が高いとみます。 また、「リスクフリーレート(国債など低リスクの金融商品の利回り)」に対するパフォーマンスが低調な「(経済情勢に基づいて売買する)マクロ系ヘッジファンド」も、資金流出のリスクが高いと考えられます。ただし、日米株式市場では現在、ポジション(持ち高)は中立的な水準にまで引き下げられているため、リデンプションに対応する場合でもその影響は限定的でしょう。 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「野村クオンツ・インサイト – 「45日ルール」はグロース優位に作用か(2023年11月6日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
-
11/07 15:30
【資産運用の視点】日本初開催となったPRI年次総会
2006年に設立された世界最大の責任投資家イニシアティブであるPRI(Principlesfor Responsible Investment)は、機関投資家同士の交流や責任投資の促進、レベルアップを目的とした年次総会(PRI inPerson)を開催している。20年に新型コロナウイルス感染拡大によって一旦は延期となった日本での初開催が、今年10月に実現し、千名を超える投資家が集結した。 年次総会の今年のテーマは「コミットメントからアクションへ」である。機関投資家や上場企業において、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく環境関連の情報開示や、20年以降策定が進んだ「ネットゼロ目標」(事業や投融資先企業などによる温室効果ガスの排出を正味ゼロにすること)が定着した今、機関投資家はそれを行動に移すべきだという流れが生じている。 特に強調されたのは、ESG(環境・社会・企業統治)活動が不十分な企業を投資除外するのではなく、投資家として企業と対話し、課題解決を促すエンゲージメント(関与)を行うべきであり、また今後も重要性を増すだろうということだ。米国を中心に政治的な対立が資産運用分野に波及し、化石燃料を投資除外する機関投資家を州政府が取引対象から除外するなど「反ESG」の動きが生じる中、機関投資家は投資先企業を手放さず、対話や株主提案によって改善させることが真の責任と見られる。 エンゲージメントが企業行動に与える効果に関する実証研究が取り上げられたほか、PRI は署名機関が参加できる新たな協働エンゲージメント・プラットフォーム「spring」の設立を発表した。spring は地球の生物多様性や自然資本を毀損しているグローバル企業を選出し、複数の機関投資家が対話に参加することで、より強く実効性のある影響力を行使することを目指す。 また、民間企業の力だけに頼るのではなく、官民共同でサステナビリティを推進する機運も最近のものだ。年次総会において岸田文雄首相が講演し、金融機能強化の一環として、計90兆円規模を運用する7つの公的年金基金がPRI に署名することを宣言した。日本では年金による署名が少数である中、異例の展開であった。 このように、責任投資におけるトップダウン的な動きにも注目だ。 (野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング 高田 晴夏) ※野村週報 2023年11月6日号「資産運用」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
-
11/07 09:30
【野村の投資判断】2023年度Q2決算速報:アナリスト予想の上方修正モメンタムが持ち直すか
機械・自動車が円安効果などで上振れ、内需業種は値上げ効果が顕在化 ラッセル・野村ラージキャップ構成銘柄(以下、売上高と営業利益の集計については金融業種を除く)のうち、2023年10月31日までに全体の36%に当たる108銘柄が、2023年度第2四半期(Q2)の決算を発表しました。まだ決算を発表していない銘柄については、QUICKコンセンサスをもとに補完すると、Q2の売上高と営業利益は、それぞれ前年同期比+2.9%、同+19.2%となる予想です。2023年度第1四半期(Q1)の同+5.6%、同+10.2%と比べて増収率は落ち込みますが、営業増益率は改善するとの見方になっています。値上げの進展と原材料費高騰による影響の剥落が背景にあると考えられます。 Q2決算を発表した銘柄のうち、Q2の売上高実績がQUICKコンセンサス予想を上回った銘柄の割合は71.4%となりました。業種別で見ると、「機械・自動車」が82.4%、「エレクトロニクス」が82.4%と、多くの銘柄で予想を上回る結果となりました。これらの外需業種では、円安の影響が大きかったと考えられます。そのほか、「消費・流通」が76.2%、「公益・インフラ」が62.5%と、内需業種においても予想を上回る銘柄の割合が高水準でした。これは、値上げによる価格改定効果が想定以上であるか、あるいは販売数量の減少が想定以下であることを示唆しています。 Q2の営業利益実績がQUICKコンセンサス予想を上回った銘柄の割合は69.4%となり、Q1から大幅に改善しました。業種別では、「公益・インフラ」が88.9%、「機械・自動車」が76.5%、「消費・流通」が63.6%と、予想を上回る銘柄が多く見られました。一方、「エレクトロニクス」は52.9%と、Q1の41.4%からは回復していますが、依然として低調な状況です。全体として、現時点の決算動向は、アナリスト予想の上方修正モメンタム(勢い)が持ち直す可能性を示唆しています。 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 注目点とトピック(2023年11月2日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
-
11/06 20:00
【今週の米国株】株価上昇は持続的か?業績と長期金利から確認(11/6)
米国では5日(日)に夏時間が終了しました。本日以降の米国株式市場の取引開始は日本時間で23時30分、取引終了は日本時間の朝6時です。ご注意ください。 先週:米長期金利と企業業績が好転 前週の米国株は米長期金利(10年国債利回り)の急低下と、7-9月期決算発表のポジティブサプライズ比率の回復が重なり、前々週末から大きく反発しました。 企業業績は市場予想を上回り推移 S&P500指数を構成する企業のポジティブサプライズ比率(注1)は、10月27日時点(244社発表)時点での純利益ベースで、77.6%と7-9月期決算発表が本格化する前の10月13日時点(32社発表)の87.5%から低下し、10月後半、株価への下押し圧力となっていました。 しかし、11月3日時点(403社発表)までの間に、ポジティブサプライズ比率は81.6%まで回復しました。 (注1)ポジティブサプライズ比率は、S&P 500 企業のうち決算実績がアナリスト予想平均を上回った企業の比率。2023年7-9月期には、2023年6-8月期決算、2023年8-10月期決算企業も含む。 (注2)直近4四半期平均とは2022年7-9月期~2023年4-6月期の平均。長期平均とは、売上高は2002年以降、純利益は1994年以降の平均。 (注3)LSEG(旧リフィニティブ)による2023年10月27日時点(売上高について402社、純利益について403社)の集計。 (出所)LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成 株価は予想EPS(一株当たり利益)、 × PER(株価収益率、長期金利と関係)で表現されます。 これまで市場のセンチメント悪化につながっていたとみられる企業業績が堅調さが確認されたことが、米国株の追い風となったと見られます。 長期金利が急低下 先週は、EPS以上にPERの上昇が株価にプラスとなったと考えられます。PERを大きく押し上げたのは、米長期金利の低下です。11月FOMC(米連邦公開市場委員会)を無風で通過したことに加えて、米国債の借り換え(リファンディング)において増発ペースが前回から鈍化したことや、10月雇用統計やISMサービス業景気指数が市場の想定以上に弱い内容であり、利上げの必要性が薄れたことが長期金利低下の背景にあるとみられます。 Point1. 7-9月期決算企業は予想修正の局面へ リビジョン・インデックスの推移 (注) S&P 500 指数構成企業のリビジョンインデックス。リビジョンインデックスは直近4週間にアナリストが業績予想を上方修正した銘柄数/下方修正した銘柄数で計算。指数が1を上回ると上方修正優位、1を下回ると下方修正優位と判断される。直近値は2023年11月1日時点。FY1は予想1期目(12月決算企業の場合、2023年12月期)、FY2は予想2期目(12月決算企業の場合、2024年12月期) 。 (出所) LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成 S&P500構成企業の8割超の企業が7-9月期決算発表を終えているため、今週はアナリストの業績予想が注目されそうです。上図の通り、決算発表前~決算発表期間中には業績を慎重にみて下方修正するアナリストが多い傾向にありましたが、今後上方修正が進むと予想されます。 セクター別の前年比増益率(2024年) 投資家の注目度が高い2024年のS&P500指数の前年比増益率を、11月3日時点と10月13日時点とで比較すると以下の通りになります。 10月13日時点の予想 11月3日時点の予想 (注)2023年10月13日時点のLSEG(旧リフィニティブ)集計による市場予想平均。セクター名に付されている( )内の番号は、識別のために野村證券投資情報部で付与している番号。 (出所)LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成 S&P500指数全体は、前年比+11.6%→同+11.7%と大きな変化はありません。セクター別では、ヘルスケアセクターは 同+12.7%→ 同+17.6%と比較的大きな上方修正が、不動産セクターは 同+4.3%→ 同+2.2%と下方修正がなされていることが確認できます。当然ながら、決算実績が良好であった企業やセクターは市場予想も上方修正される傾向にあります。これまでの決算内容を精査し、投資に活かす局面と考えられます。 ご参考:マグニフィセント7の決算振り返り アップル(AAPL):中国でのiPhone販売は堅調・見通しは比較対象期間と新製品のタイミングが重石、株価は-0.52% アマゾン・ドットコム(AMZN):生成AIは数百億ドルの売上高をもたらす、株価は+5.14%(時間外取引) メタ・プラットフォームズ(META):AIビジネスへのシフト順調・中東情勢が広告収入に悪影響、株価は-1.91%(時間外取引) アルファベット(GOOGL):ネット広告堅調もクラウド部門が市場予想を下回る、株価は-6.33%(時間外取引) マイクロソフト(MSFT):コパイロットのリリースを前にクラウド事業堅調、株価は+3.47%(時間外取引) テスラ(TSLA):サイバートラックの出荷や年間生産台数の目標を維持、株価は-2.13%(時間外取引) ※エヌビディア(NVDA)は8-10月期決算企業のため今後発表を予定 Point2.米長期金利低下は持続的か? 先週の株価上昇の一因と考えられる米長期金利の低下は持続的でしょうか。 現在、市場が織り込んでいる2024年中の利下げ幅は1.0%ポイントです。今年に入って市場でも最も大きく利下げを織り込んだのは、3月にシリコンバレー銀行(SVB)が破綻した直後の1.5%ポイントでした。今後、仮に市場が同程度の利下げ幅を織り込んだ場合、FF(フェデラル・ファンド)先物金利と10年国債利回りの関係が変わらないと仮定すれば、10年国債の居所は3.9%程度と試算されます。 一方、国債増発ペースはスローダウンしたとはいえ、タームプレミアム(長期の国債に上乗せされる金利)の高い水準が続いています。当社の小清水ストラテジストは、「現在の上乗せ幅を前提とするならば、当面の米長期金利の低下は4.3%程度で留まる」と予想しています。 足元で住宅ローンの上昇や株価下落(による”逆”資産効果)による景気下押し圧力がかかっていることから、10-12月期の景気鈍化の可能性は高まっているとはいえ、3月のような悲観的な見通しがコンセンサスとなるかは未知数です。今週は9日(木)発表の新規失業保険申請者数(11/4の週)や、10日(金)発表の11月消費者マインド速報値(ミシガン大学調査)など、景況感を示唆する速報指標に注目したいとと考えます。 Point3.FOMC後の参加者発言に注目 11月FOMCを終え、市場の目線は12月FOMCに移っています。今週からはFOMC参加者の発言も増えます。9日(木)のパウエル議長講演や、10日(金)のダラス連銀のローガン総裁、アトランタ連銀のボスティック総裁などの講演内容に12月FOMCに向けたヒントがないか確認したいと考えます。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
-
11/06 12:00
【野村の投資判断】日銀会合と企業決算をこなして日本株の強さが目立つか
企業決算は米国不調、日本好調 前週は、日米ともに金融政策決定会合が行われた中で株価が回復しました。米国では、景気指標の下振れや、FOMC(連邦公開市場委員会)のハト派(金融引き締めに消極的)姿勢などの材料が重なり、10年債利回りは4.7%まで低下しました。一方、日本銀行はYCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)の再柔軟化を決定しました。YCCの枠組みは維持されており、デフレからの脱却を優先する姿勢が明確化されています。 2023年7-9月期の企業決算は、日米で対照的な結果となっています。米国では、EPS(1株当たり利益)実績がコンセンサス予想を上回る割合が、前四半期に比べて低下しています。一方、日本企業は現時点では好決算が目立っています。特徴として、「機械・自動車」の業績が円安効果で上振れていることや、内需業種で値上げ効果が顕在化していること、「エレクトロニクス」の営業利益が低調であることなどが挙げられます。 日本企業決算の今後の注目点としては、各企業で値上げなどにより持続的な利益率の改善効果が表れているか、また、トヨタ自動車(7203)の好決算が他の完成車メーカーや部品メーカーにも共通するかどうかが挙げられます。 今年の4月から5月にかけて見られた、日銀会合と企業決算後に日本株の強さが目立つというパターンは、10月から11月にも当てはまると見ています。推奨セクターとしては、デフレからの脱却による恩恵を受けやすいシステム・アプリケーション、不動産、食品を継続します。なお、これまで推奨セクターとしていたインバウンド関連は、中東情勢不安の長期化や中国の消費者センチメントが悪化していることを理由に、中立へと引き下げました。 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 注目点とトピック(2023年11月2日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点