野村のオピニオン
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11/05 13:00
【野村の解説】100年続くノーベル財団の資産運用
世界で最も権威ある賞のひとつと言われるノーベル賞は、スウェーデンの発明家アルフレッド・ノーベルの遺言により1901年から続いている賞で、既に100年以上の歴史があります。そのノーベルの遺産の管理と、ノーベル賞の運営を行っているのがノーベル財団です。 ノーベル財団の資産は、2022年末で約58億スウェーデンクローナ、日本円に換算すると、1スウェーデンクローナ12.5円計算で約725億円になります。ノーベル財団は、この資産を管理・運用しながら毎年のノーベル賞の運営費を捻出しているのです。 下のグラフは、2012年から2022年までのノーベル財団の運用結果を棒グラフで示しています。2022年の運用は、残念ながらマイナスとなっていますが、ノーベル賞の運営費から求められる事業費率を概ね上回る運用結果となっていて、財団の資産も増加傾向を続けています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 そのノーベル財団は、インフレ調整後で少なくとも年率3%のリターンを目指すという運用上の目標を掲げています。リターンがこのレベルであれば、将来の費用を賄うことができるとの見立てです。 運用の目標達成のための基本ポートフォリオは、株式が55%、債券が10%、不動産が10%、そしてオルタナティブが25%です。実際の運用においては、各資産の配分比率をずらしてもよい許容範囲が設けられていて、2022年末の実際のポートフォリオは、株式が53%、債券が17%、不動産が9%、オルタナティブとしてのヘッジファンドが22%となっています。 人類に最も貢献した人々を称える、というノーベルの遺志を継承していくためのノーベル財団の資産運用を真似ることは難しいかもしれませんが、その基本的な考え方は、長生きによる資産寿命の延命がテーマになりつつある個人の資産運用においても、大いに参考になるものではないでしょうか。 (野村證券投資情報部 井上 政則) ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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11/05 09:00
【経済データの読み方】処理水放出による中国人訪日客減少は限定的か
2022年10月に日本政府が海外旅行客の受け入れを再開してちょうど一年が経過した。23年9月の訪日外客数は218万人(19年同月の96%)となり、インバウンドはほぼコロナ前まで回復したと言える。 インバウンドが今後も増加を続けるかどうか、重要な要因の一つは中国人旅行者の動向だ。新型コロナ関連の水際対策の緩和の遅れから、中国人旅行者の回復は他国に比べて遅れていたが、団体旅行の解禁もあり、徐々に回復していくことが予想される。懸念材料となるのは、福島第一原子力発電所による処理水放出の影響だ。8月24日に処理水の放出が開始された後、中国人旅行者による日本への旅行のキャンセルが相次いでいるとの報道がされた。 しかし、23年9月時点においてその影響はそこまで大きくないようだ。中国からの訪日外客数は23年7月に31万人(19年同月の30%)、8月に36万人(同36%)、9月に33万人(同40%)となっており、回復ペースは鈍いが、観光客数が激減するような事態には至っていない。12年9月の尖閣諸島の国有化を契機に、中国からの訪日外客数が半分以下に急減した際と比べると影響は限定的といえよう。 中国人の日本への印象に関する世論調査(23年は処理水放出の前後に調査を実施)の結果を見ても、良くない印象を持つ人の割合は22年から横ばいであり、尖閣諸島国有化時の急激な悪化とは対照的である。中国人の対日感情の悪化という観点からも、訪日客の急減にまで至るとは想定しづらい。今後の動向を引き続き注視する必要があるものの、処理水放出の影響は中国人観光客の回復ペースをジワジワと下押しする程度に留まると推測される。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (野村證券経済調査部 野﨑 宇一朗) ※野村週報 2023年10月30日号「経済データを読む」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/04 19:00
【投資と税金】配偶者が相続するとよい財産
親から子、子から孫へと財産は引き継がれていきます。親は築いた財産をなるべく減らすことなく、子どもに引き継いてもらいたいと考えますが、遺産分割の仕方によっては相続する際に納める相続税の額が増減し、最終的に子どもが両親の財産を相続する際に遺産がほとんど残らないという事態も。どのように遺産分割をしていくといいか、大手町トラストの税理士に伺いました。 はじめに 夫婦と子という家族の相続において、一次相続(夫婦のどちらかが先に死去した場合の相続)と二次相続(夫婦のもう一方が死去した場合の相続)、二回の相続が発生することになります。夫婦の財産はこれら二回の相続を通じて子に承継されますが、一次相続時に配偶者がどれだけ財産を取得するかにより、一次相続・二次相続トータルの相続税額が増減します。今回は相続税額に影響を及ぼす「配偶者の税額の軽減」と、これを加味したバランスの良い分割方法について説明します。 配偶者の税額の軽減 配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割等により実際に取得した正味の財産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税がかからないという制度です。 (1) 1億6千万円 (2) 配偶者の法定相続分(※1) 相当額 ※1 民法第900条に定める、相続人が遺産の何割を相続できるかを表す法定割合のことであり、子と配偶者が相続人であるときは、配偶者の法定相続分は2分の1です。 つまり、一次相続において被相続人の配偶者が取得した財産額のうち少なくとも1億6千万円分については相続税がかからないことになります。ただし、一次相続において配偶者が被相続人の財産の多くを取得した場合、一次相続における相続税負担は軽減されますが、二次相続において、配偶者が相続した財産と配偶者の固有財産の合計額に対して相続税が課されるため、二次相続における相続税負担が重くなってしまいます。一次相続における遺産分割等の際は、二次相続における相続税負担を考慮して判断することが重要といえます。 二次相続を考慮した相続税額のシミュレーション 夫婦と子という家族の相続において、以下の前提のもとに一次・二次相続の相続税額シミュレーションを行いました。一次相続において夫の財産を妻が相続する割合を、ケース①:100%、ケース②:50%、ケース③:0%とした場合、トータルの税額は以下のとおりです。 【前提条件】 ① 夫の保有財産の課税価格:1億円 妻の固有財産の課税価格:1億5千万円(ともに老後の生活資金除く。) ② 一次相続の相続人:妻・子 ③ 二次相続の相続人:子 ④ 夫の死亡から15年後に妻が死亡すると仮定 ⑤ 一次相続後の財産の増減はないものと仮定 ⑥ 基礎控除と配偶者の税額軽減のみ考慮 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 一次相続における配偶者の相続割合が異なるだけで合計相続税額に差異が生じます。上記ケースでは妻固有の財産額が多額であるため、一次相続で妻が多く相続するとトータルの納付税額が高額となってしまいます。 ※2 あくまでも一つのシミュレーションのため、すべてのケースにおいてケース③が有利ということではありません。夫婦の財産状況に応じて有利不利の結果は異なりますので、ケースごとのシミュレーションが必要となります。 金融資産を手許に残して不要な土地を物納する場合 【前提条件】 ①相続人:配偶者と子 2人 ②相続財産:「現金」、「上場株式」、「未上場株式」、「手放してもよい土地」 ③相続人は現金を持っていない 子が現金を相続した場合、その現金で相続税を納付することになります。結果、子の手許に残るのは「手放してもよい土地」となります。 子が「未上場株式」と「手放してもよい土地」を相続した場合、現金納付が困難であると認められ、かつ「手放してもよい土地」が物納適格財産の要件を満たすならば、この不要な土地を物納に充てることができます。結果、子の手許には「未上場株式」という財産が残ります。また、配偶者が相続した現金や上場株式を生前贈与で子に渡していくことにより、より多くの金融資産を子の手許に残すことができます。 土地の物納を考える場合は、その土地が物納要件を満たすか(隣地との境界線は確定しているかなど)事前のチェック・準備が必要です。 バランスの良い相続財産の分割 一次相続で配偶者が取得する財産を決定する際、税金面の検討も重要ですが、被相続人や配偶者の希望を考慮して総合的にみてバランスの良い分割を検討するのが大切です。 分割時のポイント 一次相続時に必要な納税資金の確保。配偶者の老後の必要生活資金を考慮し、それを超える分は一次相続時に次世代に相続させる。一次相続では、期間の経過とともに相続税評価額が下がる財産(自宅建物等)や二次相続までに相続税対策しやすい財産(生前贈与しやすい現金等)を配偶者に相続させる。他の税額軽減措置(死亡保険金又は死亡退職金の非課税枠、小規模宅地等の特例等)を考慮する。合計の相続税額の負担のみを考慮するのではなく、誰にどの財産を残したいかという被相続人の希望、配偶者の将来の生活の安定等を考慮する。 本解説について:令和5年4月に施行されている法律等に基づき作成しております。情報提供を唯一の目的としたもので、投資勧誘を目的として作成したものではありません。この資料は信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、野村證券は、その正確性および完全性に関して責任を負うものではありません。個別の税務の詳細については、所轄税務署や税理士等にご相談ください。 ご投資にあたっての注意点
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11/04 09:00
【市場展望】「真の」歴史的円安
1ドル=150円は歴史的か? ドル円レートが2022年秋に続いて再び1ドル=150円に接近し、「歴史的円安水準」との評価が定着しつつある。このレベルの円安は、1987年前半以来の水準という点で、「歴史的」との形容は必ずしも間違いではない。しかし、足元で既に70年初頭の固定為替相場時代の水準を下回っている円の実質実効為替レートの水準こそ「歴史的円安」と呼ぶにふさわしい。 ドル円を含む名目為替レートと実質為替レートの差異は、後者が日本と海外との相対物価を用いて実質化されている点にある。前者が対象となる外貨購入に必要な円の価額を表しているのに対し、後者は、海外での生計費支払に必要な円価額を表していると言え、日本円の真の購買力を表現しているのは後者であるとも言えるだろう。 一般に、自国通貨の下落に対応して、家計が購買力を保全する上で有効な手段は金融資産を外貨に転換することであろう。ハイパーインフレに見舞われた地域で、資本逃避が発生したり自国内で自国通貨の通用力が低下し経済の「米ドル化」が生じたりするのは、その極端な事例と言える。 実質為替レートでみた歴史的円安という円の購買力低下に見舞われている日本では、今のところ、こうした動きが目立っていない。2023年4~6月期末にかけての1年間累計で家計金融資産総額は18.9兆円増加した(資産評価額の変動を除外)が、同時期に(円貨の)現預金保有額は15.0兆円増加している。 実質為替レートの歴史的下落の渦中での日本の家計のこうした金融資産選択は、不合理なものだろうか。実質為替レートの別の側面に注目すると、必ずしも不合理ではないことが分かる。 実質為替レートの歴史的下落は、名目為替レートの円安化と同時に、海外との比較で見た日本の相対物価の下落(日本の物価の割安化、あるいは、日本のインフレ率が海外に比して相対的に低いこと)によってもたらされている。 このとき、日本と海外とで同質の製品・サービスが提供されているのであれば、日本の相対物価の下落は、日本に留まっている限り海外に比べて割安に生計を維持できることを意味する。 実質為替レートの「二面性」 実質為替レートの下落が、通貨の購買力低下と同時に外国と比べた生計費の相対的な安さを表す、という「二面性」が比較的平易に理解できるのは、〇〇指数(〇〇内に入るのはグローバル展開する外食チェーンが世界共通に販売する品目)の考え方である。〇〇指数は、いわば、品目を一つに限定した実質為替レートと解釈することもできる。〇〇指数でみると本来は1ドル=75円である、といった形で現実の為替レートの割安、割高感を表現する用いられ方をされることもある。 一方で、〇〇指数でみた(実質)円為替レートが市場実勢よりも割安になっているのは、日本国内での〇〇の販売価格が、海外での販売価格の円建て額よりも低く抑えられている状態に相当する。日本に留まっている限り海外に比べて割安に〇〇が購入できるのであれば、円の購買力低下に対応して金融資産を外貨に転換する必要性は必ずしも高くないばかりか、相応に合理的な行動ということにもなる。 しかし、仮に、件の外食チェーンが日本国内での〇〇の販売を止めてしまったらどうだろうか。グローバルにみて〇〇の販売に関わるコストが均質であるならば、日本において海外より相対的に割安な販売価格で商品を提供することは、相対的に低い利益率でのビジネスを展開していることでもあり、長期的には販売体制が維持できなくなる恐れも皆無ではない。 ここに実質為替レートの「二面性」が持つ落とし穴も潜んでいる。日本円の購買力低下が極限まで進んだ場合には、実質為替レートの計算に用いられる日本と海外の物価指数の同質性が保てなくなるほど、日本国内での事業採算の悪化やビジネスからの撤退が生じる恐れがある。実質為替レートの「歴史的」円安化は、まだその臨界点を超えないレベルに留まっているに過ぎない、ということでもある。 (野村證券経済調査部 美和 卓) ※野村週報 2023年10月30日号「焦点」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/03 19:00
【野村の解説】中東情勢の緊迫化で高騰した金・原油、今後の投資判断基準は何か?
Q:中東緊迫化、金・原油は有効か? 中東情勢の緊迫をきっかけに金や原油価格が上昇しています。今後、金か原油を1年間で保有するとした場合の判断基準を教えてください。 A:世界景気上振れなら原油、下振れなら金か 2023年10月7日からの中東情勢緊迫化が金価格に与える影響には、金の安全資産需要としての直接的な影響と、「原油先物価格上昇→米インフレ率上昇期待→米長期金利上昇期待→金価格下落(金は金利がつかないため)」という間接的な影響の、2つの経路が考えられます。10月中旬に金価格が上昇したのは、初期反応として、前者の影響の方が強く意識されたためと考えられます。 一方で、後者については、10月11日にサウジアラビアが市場の安定を約束すると表明していることや、イスラエルは原油生産国ではなく、またイランの原油輸出量は大きくないことから、原油の供給が不安定化する可能性は低いと考えられ、中東情勢の突然の悪化に伴った初期反応としての原油価格の急騰は、この先一旦和らいでいく方向であると見込まれます。 従って、米インフレ率は和らぎ、米長期金利も低下していくと見込まれます。これは、金価格にとっては押し上げ要因です。金価格は、中東情勢がこの先悪化/改善した場合、双方において上昇する経路があると言えます。他方、金価格が下がる経路には、中東情勢が改善した上で、米長期金利は上昇する、つまり米景気が上振れるケースが挙げられます。 原油価格については、上述した通り、中東情勢絡みの供給側要因による上昇は、この先一旦落ち着いていく方向と見ています。したがって、原油価格が上昇するには、世界景気が上振れ、原油需要が高まる必要があると考えています。主に、中国と米国の景気動向が原油の需要動向として注目されます。 以上をまとめると、中国や米国の景気見通しがこれから上振れる場合には原油、そうでない場合には金という選択基準が導かれます(中東情勢が安全資産需要としての金需要に直接的に与える影響は除く)。 (出所)野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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11/03 13:00
【オピニオン】騰落レシオが70%台に 日本株底入れ反発へ
10月中旬以降、米国株を中心に世界の株式市場が再び調整色を強めています。インフレ高止まりを受けてFRB(米連邦準備理事会)の金融引き締めが長期化するリスクへの警戒感から、米国長期金利(財務省証券10年国債利回り)が2007年以来16年ぶりに一時5%台へ上昇したことに加え、イスラエルを巡る中東情勢の緊迫化も相まって、市場参加者のセンチメントは悪化しています。 日本株にもその影響は表れています。日経平均株価も10月初めに終値で30,500円台まで下げた後、一旦(同)32,400円台まで反発していましたが、10月中旬以降の米国株安を受けて、足元にかけて再度(同)30,600円台まで売り直される展開となりました(10月30日時点)。日経平均株価はこのままなすすべなく3万円の大台を割り込んでしまうのでしょうか? 今のところ、チャート面からはその可能性は低いと考えます。大局的に見て、現在の株価下落は、今年1月から7月までの株価上昇に対する調整局面、すなわち、中段保ち合い局面と判断され、10月末の株価はその下限に位置しています。この30,500円前後の水準は、①2023年1~7月上昇幅の38.2%押し(30,682円)のほか、②2021年2月高値((終値)30,467円)や2021年9月高値((同)30,670円)など、2021年に上値抵抗となった水準でもあり、この水準を上抜けて以降は逆に強固な下値サポートとして機能しやすい水準となります(下図上段)。日柄的にも、株価の上昇期間が両端数えで7ヶ月(日数ベースでは実質6ヶ月程度)に対して、下落期間は2023年10月安値までで同4ヶ月で十分と言えるでしょう。 テクニカル指標面から見ても、株価の底入れ反発のタイミングは近いと考えられます。相場の過熱感を測る指標の一つである「東証プライム騰落レシオ」は足元で70%台半ばまで低下し、売られ過ぎを示唆する70%の水準に接近しました。下図は、2021年7月以降の日経平均株価と騰落レシオを並べたチャートですが、騰落レシオが70~80%レベルまで低下した前後で株価も概ね底入れしてきたことが確認できます。日本株の底打ち反転にそろそろ備えたいところです。 テクニカル分析は過去の株価・為替等の値動きを分析・表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。また、記載されている内容は一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2023年10月31日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。 (注3)東証プライム騰落レシオは2022年4月4日以降は東証プライム市場の上昇及び下落銘柄数を使用、同日より前は東証一部ベース。 (注4)東証プライム騰落レシオの主なボトムと、その前後の日経平均株価を赤丸囲みで示した。 (注5)東証プライム騰落レシオが70~80%の箇所を赤色網掛けしている。 (注6)図表※の38.2%押しは黄金分割比率に基づく下値メド。 (出所)日本経済新聞社、東京証券取引所より野村證券投資情報部作成 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
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11/02 12:00
【今週のチャート分析】日経平均、中段保ち合いとして調整十分に 本格上昇傾向なるか(11/2)
※2023年11月1日(水)引け後の情報に基づき作成しています。 騰落レシオが低水準の中、株価は反発 今週の日経平均株価は、日銀金融政策決定会合を無難に通過したことに加え、決算発表を受けた個別物色の動きが寄与し、大幅上昇となりました。 日経平均株価の日足チャートで動きを振り返ってみましょう。日経平均株価は、10月24・26・30・31日の4日間共に一時30,500円台をつける等、10月4日安値(30,487円)に対する二番底固めに向けた動きとなっていました。ただ、東証プライム騰落レシオが70-80%台と低水準となる中で、日銀金融政策決定会合を事前の観測報道通りの内容で無難に通過したことから、株価は反発となりました(図1)。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2023年11月1日時点。 (注2)東証プライム騰落レシオは2022年4月4日以降はプライム市場の上昇及び下落銘柄数を使用、同日より前は東証一部ベース。(注3)東証プライム騰落レシオの主なボトムと、その前後の日経平均株価を赤丸囲みで示した。(注4)東証プライム騰落レシオが70~80%の箇所を赤色網掛けしている。(出所)日本経済新聞社、東京証券取引所より野村證券投資情報部作成 11月1日には25日移動平均線(11月1日:31,468円)を回復しており、この先、75日線(同:32,163円)超えとなるか、そして10月13日戻り高値(32,533円)を上抜けし、10月4日・30日安値でのダブルボトム完成となるか、注目されます。ダブルボトム完成となれば、自律反発の域を超え中長期的な上昇トレンド入りの確度が高まったと考えられます(図2)。一方、仮に再度調整となった場合は、10月30日安値(30,538円)や10月4日安値(30,487円)等のある30,500円前後の水準で再び下げ止まるか注目されます。 (注1)直近値は2023年11月1日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 中段保ち合いは調整十分と捉えられる さて中長期な点で見ると、今年7月高値から10月安値にかけての調整によって、下落率は9%を超え、日柄調整も進展しました(図3)。中段保ち合いとしては調整十分と捉えられる中での今回の反発であり、この先本格的な上昇トレンド入りへ向けた動きとなることが期待されます。 (注1)直近値は2023年11月1日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社データより野村證券投資情報部作成 ドル円相場、今後の天井が8年サイクル高値へ ドル円相場は日銀公表値ベース(夜間の高安を含まない)でみれば、昨年10月高値(150.48円)を今年10月に上回りました。そこで、今回はドル円相場の中長期的(1年~数年単位)及び超長期(10年単位)的な相場の方向性(トレンド)について考えてみたいと思います。 まずは、中長期トレンドの観点からみてみましょう。ドルは対円で1975年高値から約8年のサイクルで高値をつけています(図4)。 2015年6月につけた前回のサイクル高値から約7年半経過後につけた昨年10月高値(日銀公表値ベース:150.48円)を、これまでは8年サイクル高値とみていました。しかし、今年10月に昨年10月高値を超えたことで、この先つける天井を8年サイクル高値として捉え直す必要があります。過去の動きをみると8年サイクル高値形成後は、年単位の下落トレンドがみられていました。その点で先行き天井形成後は、注意が必要だと考えられます。 (注1)直近値は2023年10月31日時点。数値は日銀公表値で東京市場、取引時間中ベース。 (注2)日柄は両端含み。(注3)トレンドラインには主観が含まれておりますのでご留意ください。(出所)日本銀行より野村證券投資情報部作成 一方で10年単位の超長期トレンドはどうでしょうか。8年サイクル高値は1975年から4回にわたり値を切り下げてきましたが、2015年(125.66円)にわずかに前回のサイクル高値を上回り、その後の今年10月高値(150.77円)では同サイクル高値を完全に上抜けています。よって超長期トレンドは上向きに転じてきたと考えられ、仮にこの先中長期的な下落トレンド入りとなった場合も、下値は限定的と考えられます。 (投資情報部 岩本 竜太郎) ※画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/02 09:00
【速報・解説】FRBは2会合連続で利上げを見送り 株式市場は金利低下を好感
パウエル議長はインフレ動向次第で追加利上げの可能性があるとの姿勢を堅持 FRB(米連邦準備理事会)は10月31日~11月1日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、大方の事前予想通り政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を5.25-5.50%に据え置くことを決定しました。FRBが2会合連続で利上げを見送るのは、2022年3月会合で利上げを開始して以降初めてです。ただし、声明文では「インフレ率を時間とともに2%に戻すために適切となり得る追加的な政策引き締めの程度を決定する上で」との表現を据え置くなど、追加利上げの可能性を残しました。 パウエルFRB議長は会合後の記者会見で長期金利の上昇やドル高・株安による利上げ代替効果を一部認めたものの、インフレ動向次第で追加利上げの可能性があるとの姿勢を堅持し、今後の政策判断は経済データ次第との姿勢を重ねて強調しました。 今回の決定を受けて米国債市場では長期国債を中心にイールドカーブ全域に渡って金利が大幅に低下し、一時5.0%を上回っていた10年国債利回りは4.73%に低下、金利低下を好感して米国株式市場では主要3指数が揃って上昇しました。ドル円レートは神田財務官の円安けん制発言もあり、150円台と昨日と比べてやや円高ドル安水準で推移しています。市場の政策金利見通しの代理変数として先物金利を見ると、年内は金利据え置き、2024年6月前後からの利下げ開始との見方が織り込まれています。 FRBが23年9月会合で示した政策金利見通し(中央値)では、1回当たりの政策金利の変更幅を0.25%ポイントとした場合、2024年中は2回の利下げ見通しが示されました。ただし、これは23年中に1回の利上げを前提とした場合であり、市場コンセンサス通り、政策金利は現行水準で据え置きとなった場合は24年の利下げは1回となる可能性があります。利下げ開始後、FRBが一定のペースでの政策変更を意図した場合、2回利下げの場合は早くて24年9月利下げ開始の可能性もありますが、1回ならば24年末近くまで後ずれする可能性もあります。早期利下げ開始への自信が持てない中では、米国株式市場では、当面の間、長期金利の低下基調が定着し得るかが焦点となりそうです。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) ご投資にあたっての注意点
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11/01 12:00
【野村の投資判断】日銀会合、YCCは限定的な修正にとどまった
持続的で安定的な2%インフレには時間を要する 日本銀行(以下、日銀)は2023年10月30~31日に金融政策決定会合(以下、決定会合)を開催し、YCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)の枠組みを維持しつつ、一部運営を修正することを発表しました。7月以降、10年物国債利回りについて1%を厳格な上限としていましたが、1%を上限の「目途」として位置づける変更を行いました。野村證券では、今回のYCC修正は限定的なものにとどまったと評価しています。同時に、日銀がYCCという枠組みの下で金融緩和を粘り強く進める意向であると解釈しています。 決定会合後、展望レポート(経済・物価情勢の展望)が公表されました。2023年と2024年度のコアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)の前年度比変化率の見通しが大きく上方修正された一方、2025年度のコアCPIやコアコアCPI(生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価指数)は2%を下回る見通しとなりました。特に、コアコアCPIは2024年度、2025年度ともに前年度比+1.9%と予想されており、2年連続で2%を下回ります。これらを踏まえると、野村證券では、今回の展望レポートは、賃金と物価の好循環に基づく持続的で安定的な2%インフレに対して、日銀が自信を強めたとのメッセージを含んでいないと解釈しています。 今回の決定会合を受けての野村證券の金融政策シナリオは以下の通りです。メインシナリオ(60%の確率)では、2024年10-12月期にYCCを撤廃し、2025年以降にマイナス付利を撤廃すると見ています。リスクシナリオA(20%の確率)は、従来2023年中のYCC撤廃を予想していましたが、時間が経過しているという技術的な理由で、「2024年3月までの撤廃」へ変更します。リスクシナリオB(20%の確率)では、景気の鈍化や物価・賃金上昇の持続性が低下するとの前提のもと、2025年以降にYCCとマイナス付利の撤廃を予想しています。 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「日本銀行金融政策決定会合 – 限定的な修正にとどまったYCC(2023年10月31日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点