野村のオピニオン
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11/01 09:30
【業界展望】石油・鉱業セクターの投資視点
企業価値向上への取り組みに注力 鉱業・石油元売会社のPBR(株価純資産倍率)は1倍を下回った状態である。その要因としては、世界がカーボンニュートラルを目指す中で、中長期的に石油の需要の減少が見込まれることが挙げられる。PBR が1倍を下回る状況に対して、鉱業・石油元売会社各社は対策を講じている。 具体的な事例として、2023年4~6月期決算発表時に対策を発表したINPEX とコスモエネルギーホールディングスがある。 INPEXは①WACC(加重平均資本コスト、6%程度)を上回るROIC(投下資本利益率)の安定的確保の実現による資本効率の向上、②イクシス、アバディの成長など市場の信認を得る具体的な取り組み、③株主還元・投資家との対話強化を挙げた。特に株主還元は23.12期の1株当たり年間配当金を前期の62円から74円へ増額し、1,000億円の自己株式取得を行うとした。 コスモエネルギーホールディングスは収益力として中期経営計画の徹底と稼ぐ力の向上、資本政策として総還元性向60%以上の早期実現および事業ポートフォリオと資本効率の再点検の実施、成長期待としてNEW事業の着実な実現を打ち出した。また、資本政策では1株当たり年間配当金の下限額を200円から250円へ引き上げた。 また、23年7~9月期決算発表では出光興産とENEOS ホールディングスが対策強化を打ち出すか注目している。 出光興産は23年4月より始動した新中期経営計画でROIC7%の実現を掲げている。23.3期決算発表時には30年に向けた事業構造改革を通じて、PBR 改善に資する資本効率の改善を進めると共に、ROE(自己資本利益率)目標の上方修正についても今後議論するとコメントしている。 ENEOS ホールディングスは23年4~6月期決算発表時に企業価値向上への取り組みとして、① ROE を改善させエクイティスプレッド(ROE-株主資本コスト)をプラスにする、②エネルギートランジション実現への取り組みの加速を打ち出している。 企業価値向上への取り組みでは、稼ぐ力を向上させる具体的な方策を打ち出せるかが注目すべき点である。具体的には石油精製の収益性向上や成長事業の早期収益化などが挙げられるだろう。 原油価格の上昇は業績に追い風 原油価格(WTI)は10月20日現在、88ドル/バレル前後の水準である。原油価格は5月から7月にかけて70ドル/バレル前後で推移していたが、そこから20ドル/バレル近く上昇した。 原油価格が上昇した要因は、需要と供給の両面にある。需要面では中国を中心として新型コロナウイルス影響からの経済回復による需要増への期待などが挙げられる。供給面では① OPEC(石油輸出国機構)プラスが24年末まで協調減産を実施する、②サウジアラビアが23年末まで日量100万バレルの自主減産を実施して供給が抑制されている、③イスラエルとパレスチナの軍事衝突によって中東からの原油供給が不安定になる可能性、などが挙げられる。 原油価格の上昇は、鉱業・石油元売会社の業績にとってプラスに働く。鉱業会社では、原油生産のみならず、天然ガス生産も原油価格の影響を受ける。アジア・太平洋地域のLNG(液化天然ガス)価格は、原油価格に連動して決定する仕組みを導入していることが多いため、原油価格の上昇はプラスに働く。例えば、イクシスLNG プロジェクトが主な収益源であるINPEX の23.12期(7~12月期)の原油価格の感応度は、ブレント原油1ドル上昇で、親会社株主利益が20億円の増益と試算される。 また、石油元売会社では、石油精製の際に使用する燃料コストが上昇する点は業績に対してマイナスとなるものの、石油・天然ガス開発事業で販売単価の上昇がプラスとなることに加え、在庫評価益の計上が見込まれる。石油元売会社は法律(石油の備蓄の確保等に関する法律)によって、70日間分の石油を備蓄する必要がある。そのため原油価格が上昇すると、備蓄している石油(棚卸資産)の評価額が変動して評価益を計上することになる。例えば、ENEOSホールディングスでは、ドバイ原油1ドル上昇で、24.3期の在庫評価益が88億円、在庫影響を除いても4億円、各々営業利益が増加すると試算される。 株価もINPEX などの鉱業企業各社の株価は原油価格上昇と連動する傾向にある。一方、ENEOS ホールディングスなどの石油元売会社各社の株価は一定程度、原油価格の変動と連動しているものの、過去には業界再編による収益性改善の要因が、足元ではPBR 1倍割れ問題への取り組み状況を評価するなど他の要因も株価に影響しているとみられる。株価および業績を左右する原油価格動向は注視すべきだろう。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 山﨑 慎一) ※野村週報 2023年10月30日号「産業界」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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10/31 09:30
【野村の投資判断】日銀会合、Q2決算をこなし日本株は再浮上へ
「日銀と企業業績」の2つの不透明感解消とともに株安から株高に転換すると予想 先週の日本株は軟調な展開となりました。日本のハイテク株の下落には、米金利の上昇だけでなく、米ハイテク企業の失望的な決算に起因する連想売りも影響しています。日本銀行が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)でも、電気機械などの業績モメンタム(勢い)の弱さが表れており、第2四半期決算(Q2)によるハイテク株へのプラスの影響は期待しにくいと言えます。 さらに、日本の衆院解散・総選挙のタイミングが、来年夏の所得税と住民税の定額減税よりも後にずれ込むという見方が強まっています。短期的な株高材料が減少したことに加えて、財政政策に依存しない日本経済の自律回復というイメージが傷つく可能性もあります。 しかし、野村證券では株価回復をメインシナリオとしています。日経平均株価は前回の安値である30,527円に近づいており、海外投資家の短期ポジションは再びショート(売り)超過となりました。これは、強気ポジションの巻き戻しという形での株価の下落余地が狭まっていることを示しています。 Q2決算においても、日本企業全体としては業績予想の上方修正が優位と見ています。日銀が予想外にタカ派化(金融引き締めに積極的)することがない限り、2023年4~5月の相場展開と同様に、日銀と企業業績の不透明感が解消されることで、株安から株高に転換すると予想します。 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 注目点とトピック(2023年10月26日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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10/30 20:00
【今週の米国株】下げ止まらぬ株価、FOMCはストッパーにならず(10/30)
先週:波乱含みの企業業績と地政学リスク 前週に一時16年ぶりの5%台に乗せた米長期金利(10年国債利回り)は、先週末(27日,金)に4.8%台とやや落ち着きを取り戻しました。しかしながら、株価に下げ止まりの兆しはありません。 一つの理由として、本格化する企業決算発表が市場の期待ほどには好調に推移していない点があります。 以下は10月13日(金)時点のS&P 500指数構成企業のポジティブサプライズ比率(注1)です。この統計では6-8月期の企業決算も含むため、既に32社が発表されたとみなされています。この時点では、全体の87.5%が純利益ベースで市場予想を上回る決算を発表していました。 (注1)ポジティブサプライズ比率は、S&P 500 企業のうち決算実績がアナリスト予想平均を上回った企業の比率。2023年7-9月期には、2023年6-8月期決算、2023年8-10月期決算企業も含む。 (注2)直近4四半期平均とは2022年7-9月期~2023年4-6月期の平均。長期平均とは、売上高は2002年以降、純利益は1994年以降の平均。 (注3)LSEG(旧リフィニティブ)による2023年10月27日時点(売上高について32社、純利益について32社)の集計。 (出所)LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成 しかし、S&P500指数構成企業の半数近くが発表を終えた10月27日(金)時点では以下の通りとなっています。 (注)LSEG(旧リフィニティブ)による2023年10月27日時点(売上高について245社、純利益について244社)の集計。 (出所)LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成 純利益ベースで市場予想を上回る決算を発表した会社の比率は全体の77.6%まで低下しています。依然として直近4四半期平均の73.6%を上回っていますが、サプライズ比率の低下が市場のセンチメント悪化につながった可能性があります。クラウド事業の売上高が市場予想を下回ったアルファベットの株価が決算発表翌日に前日比10%近く下落するなど、最大手7社の中でも明暗が分かれています。 加えて、イスラエルによるガザ地区への地上侵攻への警戒が高まり地政学的リスクも意識されました。原油価格上昇→金利上昇→株価下落、といった金融市場への影響は現時点では限定的ですが、米企業業績に与える影響には引き続き注視が必要です。25日(水)に決算を発表したメタ・プラットフォームズの2023年10-12月期売上高見通しは市場予想を下回りました。当社は決算説明会で、10月に中東で紛争が勃発して以降、広告収入が軟調になっている点を挙げています。 Point1. 企業業績、発表後半戦で巻き返しなるか 7-9月期決算発表は折り返し地点を迎え、後半戦に差し掛かります。野村證券の池田チーフ・エクイティ・ストラテジストは、先週までの決算発表を受け「苦戦が目立つのが不動産、インダストリアル(特に運輸)、テクノロジー(特に情報サービス)の3業種。逆に、素材(化学、鉄鋼など)は上振れ優位。素材業種の業績改善は、中国景気のボトムアウトにも助けられているとみられる」と分析しています。個別銘柄を保有する投資家にとっては、セクターや銘柄の選別も重要な局面となりそうです。 今週は、30日(月)にマクドナルド、31日(火)にAI向け半導体でエヌビディアと競合するアドバンスド・マイクロ・デバイセズ、1日(水)に素材のアルベマール、2日(木)にアップルと、業界を代表する企業の決算発表が相次ぎます。 先週発表された米7-9月期GDP速報値は市場予想を上振れたものの、内訳では設備投資が前年同期比マイナスとなったことがネガティブ・サプライズでした。金融引き締めが企業の設備投資意欲に悪影響を与え始めた可能性も示唆されます。こうした懸念を払しょくし市場予想を上回る決算発表が続けられるかが、今週の米国株にとってのポイントとなりそうです。 Point2. 米長期金利が変える金融政策 高い長期金利が「利上げ見送り」を後押し 米国株を左右するもう一つの大きな要素が長期金利(金利上昇は株価下落の一因)ですが、足元でFRB(米連邦準備理事会)関係者から長期金利を重視する発言が相次いでいます。 米国野村グループの雨宮シニア・エコノミストによれば、「タームプレミアム(長期金利に対する上乗せ金利)と政策引き締めの間には一定のトレードオフ(相殺関係)がある。最近の長期金利上昇は、0.25%ポイントの利上げが1回ないし2回行われたのと同等の引き締め効果をもつと推定される」と分析しています。 これに従えば、年内のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ見送りの可能性は高まっているとみられ、金利上昇による株価下押し圧力を、利上げ観測の後退による株価下支え効果が打ち消していくと考えられます。 1日(水)の「リファンディング」発表に注目 今後の長期金利を考える上では、リファンディング(米国債発行計画四半期会合)の発表が注目されます。特に、1日(水)に公表される11・12・1月分の具体的な年限別発行額は市場にとって重要です。前回(8月)のリファンディングでは市場予想を上回る米国債の増発が決定され、それ以降米金利の上昇が強まりました。今回も、前回と同様のペースでの利付債増発が決定されると見込まれます。 今回の増発の年限構成が前回と同様となれば追加的に金利上昇のリスクがある一方、長い年限での増発ペースの鈍化が示唆される場合には、材料一巡から金利は低下すると想定されます。 Point3.FOMCより経済指標 11月1日(水)に発表されるFOMC(米連邦公開市場委員会)では据え置きが市場のコンセンサスとなっています。このため、市場の関心は今後の政策スタンスに関するパウエルFRB議長の発言に集まっています。11月FOMCは9月や12月のFOMCと違い、ドットチャート(参加者による政策金利の見通し)の発表がなく、金融政策の先行きを予測するヒントは多くないとみられるためです。むしろ、金融政策の判断基準となりうる10月雇用統計と10月ISMサービス業景気指数(ともに3日(金)に発表)に市場の関心が集まると見られます。 中東情勢や長期金利上昇に出口が見えない中で株価反発の材料は見出しづらいですが、まずは堅調な企業業績・見通しの銘柄に注目し、投資対象を見極めていく局面と考えます。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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10/30 12:00
【野村の投資判断】日銀会合プレビュー:YCC再修正なしをメインシナリオに
YCC「撤廃」はファンダメンタルズ、YCC「修正」は市場環境が鍵を握る 10月の日本銀行(以下、日銀)の金融政策決定会合(以下、決定会合)について、野村證券では、YCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)における政策金利や、金融政策が据え置かれることをメインシナリオとしています。 一方、金融市場には日銀がYCC再修正に踏み切ると見る向きも多くなっています。その背景として、10年物国債利回りが長期金利の変動幅の上限(1%)に迫っていることで、YCCの持続性を損ねる恐れがあることや、為替レートが1ドル=150円を超える中、YCCが据え置かれると更に円安が進む恐れがあること、などを挙げることができます。 YCCの先行きを見通す上で重要なことは、YCCの「撤廃」が物価や賃金などのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に基づいて判断される一方、YCCの「修正」は金利や為替など市場環境に左右されることです。野村證券では、持続的かつ安定的な2%インフレの実現を見通せるほど、賃金・物価の好循環が十分に形成されたとは見ていません。次回決定会合でYCCが「撤廃」される可能性は低いと考えます。 加えて、日本のインフレ率の低下や、米国の金利低下、ドル円レートのピークアウトなどを背景に、2024年には日本の長期金利も上昇から横ばい圏内の動きに転じると見ています。非常に難しい判断ではありますが、YCCの「再修正」についても次回決定会合では行われないと見ています。 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「日本銀行金融政策決定会合プレビュー 2 – 会合焦点:YCC「撤廃」はファンダメンタルズ、YCC「修正」は市場環境が鍵を握る(2023年10月27日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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10/29 19:00
【11月の投資戦略】短期的な米政治リスクの決着後、株価は復調へ
結論:短期的な政治リスクの決着後、株価は復調色が強まるとみる。利上げ終了も大きな転換点に 目次・いずれ金利低下と業績拡大局面に・FRBは高い政策金利を暫く維持か・米国下院の混乱に注意もテクノロジー企業の業績は拡大へ・半導体市場の復調が鮮明に・日本企業の業況は良い・円安もあり日本企業の業績は良好 いずれ金利低下と業績拡大局面に 日米で長期金利が上昇しています。米国の金融引き締め姿勢の長期化や、主要国の景気持ち直しなどが理由とみられます。金利上昇による景気や企業業績の悪化(いわゆる逆業績相場の特徴)は今のところ限定的です。我々は、利上げ終了は大きな転換点となり、いずれ金利が低下し、企業業績の拡大が明確になれば、金融相場、業績相場として株価が追い風を受ける局面に移るとみます。ただし、経済・金融市場のリスクには短期的に注意すべきものもあります。 ▲TOPに戻る FRBは高い政策金利を暫く維持か ニューヨーク連銀が長短金利差から計算する1年後の米国景気後退確率は高く、住宅ローン金利の上昇もあって、住宅市況は低迷しています。しかし、米国の消費には復調がみられ、雇用環境も殆ど悪化していません。原油価格が上昇しているものの、米国のインフレ率は着実に減速しています。ただし、FRBの物価目標である2%の上昇率に向けては、更なる減速が必要です。FRBは利上げを終了させたとしても、高い政策金利を暫く維持するとみられます。金利低下局面に入るとしても、そのペースは緩やかであるとみます。 ▲TOPに戻る 米国下院の混乱に注意もテクノロジー企業の業績は拡大へ 11月17日の暫定予算期限切れまでに米国下院の混乱が収束しなければ、政府閉鎖のリスクがあります。しかし、米国企業業績はS&P500指数EPS(1株当たり利益)でみて、2023年7-9月期にいよいよ増益に転じるかどうかの節目にあります。先行きはテクノロジー企業を中心に業績拡大が強まり、短期的な政治リスクの決着後、株価は復調色が強まるとみられます。 ▲TOPに戻る 半導体市場の復調が鮮明に ユーロ圏は景気悪化懸念が強まっており、利上げは9月が最後で、金利上昇圧力は収まってゆくでしょう。中国は景気減速が懸念され、不動産開発企業の経営難などの問題もあります。中国政府は矢継ぎ早に景気支援策を発表しており、財政支出を伴う経済対策も検討されるとみられます。一方、中国で鉱工業セクターの在庫圧縮が進んでいます。また、世界的に半導体市場の復調が鮮明になりつつあり、日本の製造業にも恩恵が及ぶことになるでしょう。 ▲TOPに戻る 日本企業の業況は良い 日本の輸出は円安や国内外の在庫調整の進展に伴い、回復に向かっています。企業の景況感は、製造業の改善だけでなく、非製造業においても人流回復や企業の価格転嫁などが功を奏し、良好です。一方、実質賃金は大幅なマイナスとなっており、家計の生活水準は物価上昇分を賄いきれず、実質的に低下しています。政府は期限付きの所得税減税や物価高対策などの経済対策の策定を進めています。消費者の値上げ疲れなども見え始め、インフレ率は減速に向かう可能性が出てきましたが、長期金利は海外の金利環境につられるように上昇しています。日銀は、異例の金融緩和政策の変更素地が整うのを見極める段階にあるとみられます。 ▲TOPに戻る 円安もあり日本企業の業績は良好 米ドル円レートは企業の想定為替レートを上回る円安が進んでいます。円安は製造業を中心に業績の追い風で、良好な経済環境の下で企業業績は増益の勢いが強まるとみます。ここ1ヶ月間の株価下落で、PERなどのバリュエーションでみた割高感は、かなりの程度払しょくされています。野村證券は2023年末の日経平均株価の見通しを34,000円と予想します。 ▲TOPに戻る (野村證券投資情報部 小髙 貴久) ※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 11月号」(発行日:2023年10月23日)「投資戦略の概要」より 業種分類、Nomura21 Globalについて ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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10/29 13:00
【注目トピック】岸田首相の経済対策、減税議論が本格化へ
減税議論 税収が過去最高を更新 2022年度の国の一般会計における税収・税外収入の合計は、約78.5兆円と3年連続で過去最高を更新しました。背景には、消費税、法人税、所得税の「基幹3税」が経済の正常化や企業業績の好調により3年連続で増収となったことが挙げられます。 「減税」議論に注目が集まる 岸田首相は9月25日に5本の柱からなる経済対策の方針を示しました。経済対策の狙いについて、「経済成長の成果である税収増などを国民に適切に還元すべく対策を実施したい」と述べ、「税や社会保障負担の軽減などあらゆる手法を動員する」と発言したことで、減税への期待が高まりました。 減税政策は税制改正で検討 各種報道によると、11月初旬に取りまとめられる経済対策には低所得世帯向けの給付金やガソリン価格の高騰を抑える補助の継続などが列記される模様です。また、期限付きの所得税減税を打ち出す方向で調整しているようです。予算規模は税収増の追い風を受け、ある程度の景気刺激効果を期待できる規模になる可能性があります。一方、減税政策については、減税に必要な法改正に時間がかかるため、11月初旬の経済対策ではなく、例年通り12月以降の税制改正のプロセスで議論される見込みで、そこに向けて与党の税制調査会に具体策の検討が指示される模様です。 今後のスケジュール 本格的な減税を行うためには、税制関連法案を成立させる必要があります。その場合、12月上旬に2024年度税制改正大綱が取りまとめられ、2024年1月の通常国会に関連法案が提出され、3月までに成立させるという段取りになります。減税の効果が現れるのは、来年度以降になるでしょう。近年、税収は増加傾向にあることから、経済・社会の在り方を見極めた上での継続的な減税政策が期待されます。 (野村證券投資情報部 寺田 絢子) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
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10/29 09:00
【注目トピック】中東情勢が緊迫化も原油価格への影響は限定的か
中東情勢の緊迫化 ハマスとイスラエルの衝突 10月7日に始まったイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘による犠牲者の多さや戦力の規模は、第4次中東戦争以来となっています。今後、米国や中東周辺国を巻き込む形で紛争が拡大することが懸念されています。 2国の共存を目指す協議が停滞 1947年、パレスチナをイスラエル人国家とアラブ人国家、国連管理地区に分割するパレスチナ分割決議が国連で採択され、1948年にイスラエルが独立を宣言しました。しかし、アラブ諸国はこれを受け入れず、数次にわたり戦争が繰り返されました。特に、1973年の第4次中東戦争の際に起きた石油危機は、原油価格急騰という、世界的に大きな影響を引き起こしました。1993年にパレスチナが暫定的に自治を始めるオスロ合意が結ばれ、2国家共存の機運が高まりましたが、その後のイスラム組織ハマス、イスラエルでの右派政権の台頭などで対立は先鋭化し、イスラエル軍のガザ侵攻などで和平協議は停滞しました。 ハマスによる攻撃の背景は アラブ諸国は、パレスチナ問題を巡りイスラエルと対立を続けてきましたが、安全保障や経済面での協力を進めるため、次々と国交を樹立しました。今回のハマスによる攻撃は、米国の仲介で、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化に向けた交渉が本格化している中で行われました。ハマスはこの国交正常化阻止を狙ったと考えられるほか、パレスチナ問題が国際社会から置き去りにされることを懸念しての行動との見方もあります。 原油価格への影響は限定的か 第4次中東戦争では、アラブ諸国がイスラエルを支援する西側諸国への制裁として、原油価格の引き上げを行い、石油危機を招きました。今回の攻撃は、中東産油国を巻き込むような構図ではありません。また、ガザ地区は産油地帯ではなく、石油の重要な輸送路ではないため、現時点で原油相場に与える影響は限定的となっています。 (野村證券投資情報部 澤田 麻希) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
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10/28 13:00
【オピニオン】最近、金利が上昇しても株価が上がりがちな理由
米国の長期金利は、10月19日に前日比0.09%ポイント上昇し4.988%に達しました。2007年以来の高水準です(下左図)。同時に、米国の株式市場では主要3指数が揃って下落、「金利上昇を嫌気し下落~』との見出しがおどりました。教科書通りの表現で一見問題なさそうですが、果たしてそうでしょうか? 実は、過去30営業日のうち、前日比で金利が上昇したのは19日を数えましたが、このうちセオリー通りS&P500株価が下落したのは9日に留まっています。(どちらかというと)金利が上昇したほうが株価が上がりやすい、ような気もします。本稿では改めて金利と株価の関係を考えてみることにしましょう。 下右図は、2000年以降の米国長期金利と、S&P500のPER(株価収益率)をプロットしたものです。金利3%近辺を境にして、①3%以下では金利上昇=PER低下(≒株価下落)、②3%以上では金利上昇=PER上昇(≒株価上昇)、という関係が大よそ存在するようです。 一般的に、金利上昇の際には、実体経済が順調に拡大していることが多く、金利上昇による影響を打ち消し、場合によっては補って余りあるEPS(1株当たり利益)増加期待が生じ、PERが上昇しやすくなると考えられます。米国の場合は3%以上の金利水準がそれにあたるとみられます。 一方、米国の場合3%以下の金利水準は、リーマンショック~コロナ禍の間の緊急事態に対応したもので、本来の米国の実力に対しては低すぎ、いわゆる過剰流動性相場の様相を呈していたとみられます。米国が金融政策の引き締め方向への転換を意識し始めた2021年後半以降、金利上昇=株価下落の傾向が強まったのは、『ぬるま湯』からあがることへの不安感がそうさせたのでしょう。 冒頭で述べたとおり、米国の長期金利は5%に近づき、分岐点となる3%よりはかなり高い水準に達しています。金融引き締め局面初期では、PERが高くリスクが高いとされたNASDAQが、今年は年初来パフォーマンスでNYダウやS&P500を大きく上回っているという事実は、米国株式市場が3%以上の金利水準の環境下でもしっかりとEPS成長を達成できるという自信の顕れとみることができるでしょう。 また今回紹介した事実は、近い将来日本が金融政策正常化に舵を切った際の参考にもなるでしょう。無論、米国と同じように長期金利3%を境にして、とはならないと思いますが。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
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10/27 12:00
【今週のチャート分析】日経平均は10月4日安値に接近し、東証騰落レシオ70%台へ(10/27)
※2023年10月26日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 騰落レシオは売られ過ぎを示唆する水準に接近 今週の日経平均株価は長期金利上昇を嫌気し、軟調な展開となりました。 チャート面として、日経平均株価の日足チャートをみてみましょう。日経平均株価は、10月13日高値(32,533円)にかけて一旦は値を戻す動きとなりましたが、その後は再び調整となり、10月26日時点で同月4日安値(30,487円)に接近しています(図1)。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2023年10月26日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 ただ、東証プライム騰落レシオは70%台まで低下し、売られすぎを示唆する水準に接近しており、この先、底入れに向けた動きとなると考えられます(図2)。 (注1)直近値は2023年10月26日時点。 (注2)東証プライム騰落レシオは2022年4月4日以降はプライム市場の上昇及び下落銘柄数を使用、同日より前は東証一部ベース。(注3)東証プライム騰落レシオの主なボトムと、その前後の日経平均株価を赤丸囲みで示した。(注4)東証プライム騰落レシオが70~80%の箇所を赤色網掛けしている。(出所)日本経済新聞社、東京証券取引所より野村證券投資情報部作成 底入れとなった場合は、10月13日戻り高値形成時に上値を抑えられた25日移動平均線(10月26日:31,700円)や75日線(同:32,224円)を完全に上抜けることができるか注目されます(図1)。 一方、仮に調整継続となり10月4日安値(30,487円)を割り込んだ場合は、さらなる下値メドとして、200日移動平均線(同:30,287円)や心理的フシの30,000円、今年1月安値から6月高値にかけての上昇幅に対する半値押し(29,716円)の水準が挙げられます。 上海総合指数、長期上昇トレンドライン上まで下落 世界の株式市場は夏場以降軟調な動きとなっていますが、長期金利上昇や地政学的リスクの高まりに加え、中国経済に対する懸念も相場の下押し圧力の一つとなっています。今回は中国を代表する株価指数の一つである上海総合指数についてみてみましょう。 上海総合指数は、今年5月ピーク(終値ベース:3,395pt)から下落基調となり、10月中旬以降の大幅安で心理的フシの3,000ptを割り込みました。ただ、10月安値(同:2,939pt)にかけての下落によって、チャート上の重要なフシの一つである2005年以降の長期上昇トレンドラインに到達しており、下げ止まりとなるか注目されます(図3)。 仮に同ラインを割り込み、さらに2022年10月安値(同:2,893pt)や同年4月安値(2,886pt)の水準を割り込んだ場合は、2020年3月安値(2,660pt)や2019年1月安値(2,464pt)の水準がさらなる下値メドとして挙げられます。 (注1)月足は終値ベース。直近値は2023年10月24日。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。 (注3)日柄は両端を含む(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 一方で底入れ反発となった場合、2023年5月以降の下降トレンドラインを超えることができるか注目されます(図4)。 同ラインを超えれば、自律反発の域を超え、数ヶ月続いた下落トレンドが転換した可能性が高まったと捉えられます 。 (注1)直近値は2023年10月24日。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 (投資情報部 岩本 竜太郎) ※画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点