野村のオピニオン
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2022/06/08 13:00
業績拡大継続で米株市場は上昇基調復帰へ(市場展望)
企業業績は拡大が予想されている 野村では、米国の実質GDP(国内総生産)成長率は、2021年の前年比+5.7%に続き、22年は同+2.5%と引き続き潜在成長率を上回る高い成長率を予想するが、23年には同+1.3%と減速を予想する。 野村では、FRB(米連邦準備理事会)の政策金利は22年については6月、7月、9月に0.50%ポイントずつ、その後は11月、12月に0.25%ポイントずつ引き上げられ、利上げ幅は3月、5月分を含め合計2.75%ポイントと予想する。23年については2月、3月、5月、6月に0.25%ポイントずつ引き上げられ、合計で1.00%ポイント引き上げられると予想する。今回の利上げサイクルでは、最終的には3.75~4.00%で利上げを終了すると予想している。 野村では、米長期金利(米10年国債利回り)は、米国経済が回復するのに伴い緩やかに上昇し、22年末は3.10%程度と予想する。その後、23年春から年央にかけては3.15%程度まで上昇するが、その後は米国経済が鈍化することに伴い低下し、23年末には3.05%程度と予想する。 次に企業業績であるが、調査会社リフィニティブによる5月27日時点の集計では、S&P500指数構成企業のEPS(1株当たり利益)は、22年は前年度比+9.6%の228.03ドル、23年は同+9.2%の248.96ドル、24年は同+7.0%の266.40ドルと予想されている。 米国企業は独自の技術力やビジネスモデルでグローバルに競争力を発揮し業容を拡大している企業が多い。景気が回復し拡大に向かう中で、22年以降も史上最高益を更新していくと予想されている。 足元インフレに鎮静化の兆しがみられるが、まだ予断を許さない状況だ。このため、今後の金融政策にも不透明感が残り、株式市場は不安定となっている。しかし、6月FOMC(米連邦公開市場委員会)会合後に示されるFRB の経済予測やFOMC 参加者の今後の政策金利見通しなどを通して、今後の金融政策の経路や着地点が見通せるようになれば、不透明感が後退しよう。 今後、米長期金利が上昇するとしても、3%をやや超える水準であれば、米企業業績の拡大を織り込み、米国株式市場は緩やかながらも上昇基調へ復帰しよう。 構造的に成長していく企業群に着目 米国株式の銘柄選別の視点としては、独自の技術力やビジネスモデルで構造的に成長していくことが期待できる企業群の、中長期的な株価上昇に着目したい。 一例として、ネットワークセキュリティー企業のフォーティネットが挙げられる。同社は独自に開発したプロセッサーやソフトウェアを組み込んだアプライアンス(セキュリティー用途に特化した機器)などを通じ、広範なセキュリティー・ネットワーク機能をユーザー企業に提供している。 セキュリティー企業からは、企業のシステム管理者に付与される権限等を管理する、特権アクセス管理ソフトウェアを主力とするサイバーアーク・ソフトウェアも挙げたい。サイバー攻撃手法の巧妙化に加え、内部者による犯行への備えから特権管理の重要性は高まっており利用企業数を増やしている。 もう一つの分野としては、企業向けに営業力の強化や、業務効率を改善させるためのソフトウェアを展開する企業群に注目したい。売上高で世界最大のソフトウェア企業であるマイクロソフトや、顧客関係管理ソフトウェア大手のセールスフォース・ドットコム、人工知能や機械学習を駆使して企業や人材に関する正確性の高い情報をユーザー企業に提供するズームインフォ・テクノロジーズなどを挙げたい。 世界最大の検索エンジン「グーグル」を展開し、積極的に新技術に投資するアルファベットも挙げたい。 カード決済ネットワークにも着目したい。コロナ禍の影響で実店舗でのカード利用減少の影響を受けてきたが、コロナへの対応で世界的に電子決済化の流れは加速しており、同分野最大手のビザを挙げたい。 また、総合娯楽企業のウォルト・ディズニーも注目される。TV放送やストリーミング配信、映画・TV コンテンツ、テーマパークなどの事業拡大に加え、メタバース(仮想空間)、NFT(非代替性トークン)など新技術の活用で業績の成長が期待される。 それぞれの分野で競争力を発揮し、着実な業容拡大で長期間増配を続ける優良企業も紹介したい。過去25年以上増配を継続している企業で構成される「S&P500配当貴族指数」採用で、かつNY ダウ指数の構成銘柄でもある企業は、シェブロン、スリーエム、キャタピラー、マクドナルド、プロクター・アンド・ギャンブル、コカ・コーラ、ウォルマート、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、ジョンソン・エンド・ジョンソン、IBM 等である。 (投資情報部 村山 誠) ※野村週報 2022年6月6日号「焦点」より 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2022/06/07 18:30
プラント、重機でのエネルギー情勢影響(業界展望)
エネルギー安全保障の構造変化が重要 ウクライナ紛争を契機にして一段とエネルギー価格が上昇した。エネルギー価格の上昇はLNG(液化天然ガス)開発プロジェクトに代表されるエネルギー投資を後押しするため、プラント、重機各社の需要動向に追い風だが、ウクライナ紛争の影響を考える上でより重要なのは、地政学リスクやエネルギー安全保障への意識の高まりによる調達の変化にあると考える。欧州各国を中心に今後、天然ガスの調達先をロシアから北米や中東、アフリカなどにシフトする可能性は高いだろう。これは紛争を契機とした不可逆な事象であり、大きな構造的な変化と考える。これまでエネルギー価格は上昇するものの、再生可能エネルギーの普及などもあり、中長期の需給環境が考慮される中、LNGの大型案件の投資決定は遅れてきた。ただし今後は地政学リスクを考慮した構造的な変化がこうした大型案件の増加をサポートすることとなるだろう。 REPowerEU(欧州委員会の脱ロシア・エネルギー転換計画)ではロシアからのパイプラインによる天然ガスの調達を削減するために、省エネや再生可能エネルギーへの迅速な移行に加えて、ガス調達の多様化が挙げられている。このうち、LNGの調達多様化は500億立方メートル(LNG 換算で3,680万トン)とされている。LNG 需要は足元で年間2,000~2,500万トン程度の増加と見られ、これに追加される欧州での調達多様化の需要の影響は大きい。 JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の試算ではこれらの施策により、2022年予想のロシアからのパイプライン輸入量の1億3,200万トンは5,900万トンまで55 % 減少することとなる。ただし、REPowerEUの詳細に関する政策文書ではロシアからの調達を可能な限り早期にゼロにするとしており、これらの施策に留まることは考えづらい。一層の再生可能エネルギーの導入推進や水素活用も図られると考えられるが、LNGの調達拡大も引き続き重要な施策の一つとなるだろう。現状では世界全体におけるLNGの供給はひっ迫しており、追加の供給余力は足元で600万トン程度に限られる。そのため欧州によるLNGの調達拡大は既存設備の拡張や、新規のプロジェクトの開始につながるだろう。 LNGプラントの開発が加速されよう 22年は北米でFID(最終投資決定)が実施される案件が数多く見込まれる。REPowerEUの詳細に関する政策文書によると、欧州委員会はアメリカとの間でLNGの追加供給に関し、少なくとも150億立方メートル(LNG 換算で1,100万トン)を22年内に、年間500億立方メートル(同3,680万トン)を遅くとも30年までに実施する取り組みについて合意している。北米では新型コロナ発生前から計画されてきた案件も多く、こうした政府間の動きが北米の案件の開発を加速させている。日揮ホールディングス(HD)が受注候補とするFreeportやCameronは既存プロジェクトの増設案件で、新設案件と比較すると早期の立ち上がりが期待できる。早くて22年末、遅くとも23年内にFID が実施されると見込まれる。両案件とも千代田化工建設が元施工だが、同社はカタールの大型案件を遂行中で、23年にはカタールで増設案件のFID も見込まれることから、北米での2案件に取り組む余力は限られよう。 一方、日揮HD では23.3期の受注計画は8,400億円と高く、LNG カナダの大型案件を受注した19.3期以来の高水準だが、受注候補となる北米案件の開発準備が加速されている足元の状況を考慮すると、達成の確度は高いと野村では考える。22.3期から期ずれした大型案件2件(計3,000億円)に加えて、FLNG(浮体式LNG 生産設備)やオイル&ガスの案件で3,000億円程度の受注候補が見込まれる。さらに上述の北米2案件(計数千億円規模)も受注候補と考える。24.3期の受注も7,800億円(うち海外6,300億円)と23.3期比では減少するが、高水準を維持できるとみる。パプアニューギニアのLNG 案件や、LNG カナダの増設案件、モザンビークArea4などの案件が受注候補に加わり、24.3期の候補案件も豊富である。 インフレの進展は各社が関わるLNGやオイル&ガスのプラント案件を発注する顧客にとって業績拡大に寄与するため、需要面ではポジティブだが、資材価格の上昇などにより、進行中の施工案件においては採算性を低下させるリスク要因となる。今後に受注が見込まれる案件については、資材価格だけでなく労務費の上昇も対象として、契約にインフレスライド条項や不可抗力条項を盛り込んだり、一定のインフレ水準に達した場合に協議を行うことを事前に取り決めたりするなどの対応がとられることでリスクは限定されよう。受注時の需給環境や、コスト上昇リスクへの対応にも引き続き注目したい。 (エクイティ・リサーチ部 前川 健太郎) ※野村週報 2022年6月6日号「産業界」より 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2022/06/05 20:00
インベストインキシダ インベストバイROIC (野村のオピニオン)
(2020年度に続き)波乱に満ちた2021年度決算の発表が概ね終了しました。ラッセル野村Large Cap(除く金融)の営業利益は前年同期比+55%の大幅増益となり、2018年度に記録した過去最高益を更新しました。今回は、企業の(自社株買いも含めた)投資行動や、財務戦略に大きな影響力をもつ、投下資本利益率(以下ROIC)の直近の状況について見てみることにしましょう。 ラッセル野村Large Cap(除く金融)の2021年度のROICは5.21%となり、2020年度の3.41%から大幅に上昇しました(下図)。2020年度は、2019年度に比較して資本構成(D/Eレシオ)に大きな変化はなく、投下資本(IC)の増加も小幅にとどまったため、このROICの上昇は専ら利益増によりもたらされました。 その結果、コロナ禍により一時的に消滅していた、『Rf < WACC < ROIC < 株式益利回り』という関係が復活しました。この関係が成立している環境下では、①非常に低いRf(リスクフリーレート,長期金利)のもとで、②WACC(加重平均資本コスト)を顕著に上回るROIC(事業活動からのリターン)を獲得しやすくなり、その結果③M&Aや設備投資等の投資行動の積極化が可能になり、④割安な株式(高い株式益利回り)もその対象となる、循環が生まれます。 3月調査の日銀短観で大企業製造業の2022年度設備投資計画が前年度比8.4%増と3月調査としては異例に高水準だったのも、今年4-5月の決算発表シーズンに企業が発表した自社株買いの設定枠が同時期としては史上最高に並ぶ水準となったのも、企業が『投資』に前向きな姿勢を取り始めた証左と考えて間違いないでしょう。 なお、現在のアナリスト予想に基づけばラッセル野村Large Cap(除く金融)の営業増益率は2022年度+17%(前年同期比)、2023年度は同+8.3%となっています。その結果、ROICは2023年度には5.96%に達し、過去最高であった2006年度の5.8%を更新する可能性があります。 ROICが高まってくると、株主資本の積み上がるスピードも速くなることから、企業はこれまで以上に、設備増強、M&A、自社株買い、などへの『選別・投資』を行う必要性が高まってくると考えられます。 (注)WACC(加重平均資本コスト)とROIC(投下資本利益率)はラッセル野村Large Cap(除く金融)のもの。リスクフリーレートは、10年債パーイールドの各年度ごとの期中平均。WACCは、D/(D+E)×Rf×(1-t)+E/(D+E)×(Rf+Rp)。ただし、Dは有利子負債、Eは自己資本、tは税率、Rfは10年債パーイールドの10年移動平均、Rpはイールドスプレッドとした。ROICは、NOPAT/IC。ただし、NOPATは、営業利益×(1-税率)。ICは、自己資本+有利子負債。株式益利回りは、TOPIXのもの。12ヶ月後予想EPSベースの各年度期末値。2022年度以降のROICは野村證券市場戦略リサーチ部などによる予測値。株式益利回り、WACC、リスクフリーレートの直近値は2022年3月時点。 (出所)野村證券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
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2022/06/01 13:00
2022~23年度の日本経済見通し(市場展望)
拮抗する上下双方向のリスク 5月18日公表の2022年1~3月期GDP(国内総生産)1次速報値を踏まえ、22~23年度の日本経済見通しを改定した。実質GDP 成長率は、21年度(実績)の前年比+2.1%に対し、22、23年度がそれぞれ同+3.2%、+1.7%と予測する。 前回4月5日時点の見通しとの比較では、21年度実績が0.2%ポイント上振れたのに対し、22、23年度はそれぞれ0.4%ポイント、0.1%ポイントの下方修正となる。 21暦年及び21年度の日本経済は、停滞色の強い展開を辿った。実質GDP成長率は、21年1~3月期、同7~9月期、22年1~3月期がそれぞれ前期比マイナスとなり、1四半期おきに前期比成長率のプラス、マイナスが入れ替わる格好となった。経済成長の停滞を招来した要因は、国内における新型コロナウイルス感染症拡大が繰り返され、家計支出を中心とする経済活動の停滞を招いたことに加え、半導体不足などの供給制約によって輸出の持ち直しが妨げられた点にある。これらの要因が今後解消に向かい、安定的な成長軌道への復帰が実現するかどうかが、日本経済が差し当たって直面する課題であると言える。 22、23年度実質経済成長見通しが前回比下方修正となる主因は、財貨・サービス輸出の下方修正である。財貨・サービス輸出の22年度前年比は前回比2.7%ポイントと比較的大幅な下方修正となる。従前の半導体不足を中心とする供給制約の影響が長期化しているほか、「ゼロコロナ戦略(厳格な感染対策)」に起因する中国の経済成長下振れの影響が現れてくると予想する。輸出下振れは、輸出との連動性の高い民間企業設備投資(22年度前年比が前回比2.7%ポイント下方修正)にも影響すると予想する。 日本経済全体では、感染症禍からの経済活動再開の影響が実質民間消費を押し上げる形となり、22年4~6月期、7~9月期においては実質GDP が前期比年率で+5%を上回る成長を記録すると予想する。しかし、中国のゼロコロナ戦略長期化に加え、金利上昇やインフレ加速に起因する海外経済の想定以上の成長鈍化や、国内での「体感物価」上振れに起因する家計心理、購買意欲の下押しなど、スムーズな経済活動再開を妨げる下方リスクも山積している。 円安進行下でも金融政策は現状維持 コア(生鮮食品を除く総合)消費者物価上昇率は、22、23年度において、それぞれ前年比+2.4%、+0.9%を予想する。前回見通し比では、原油価格想定の上方改定や食品を中心とする値上げの動きの広がりを反映する形で、22年度が0.2%ポイントの上方修正となっている。四半期ベースで前年比がピークとなる22年7~9月期の上昇率も、前回見通し比0.2%ポイント高い+2.6%に達すると予想する。一方、2%を超えるコアインフレ率は、経済活動再開に後押しされた経済の持ち直し基調の下でも定着しないと判断される。 22年4月27~28日の日本銀行金融政策決定会合で決定・公表された「経済・物価情勢の展望(2022年4月)」においては、消費者物価(除く生鮮食品)前年比の政策委員見通し中央値が22年度について+1.9%と、前回1月比で0.8%ポイント上方修正され、2%の物価安定目標に迫る値となった。一方で、23、24年度については、ともに+1.1%となり、2%に近い物価上昇率が持続的ではないと認識されていることが示唆された。日銀の物価見通しは、エネルギー、食料の押上げ寄与剥落とともにコアインフレ率が低下していくとの野村見通しに近いものであると考えられる。 米国を中心とする海外市場での市場金利上昇と円安の進行を受け、日銀が金融政策の修正を余儀なくされるのではないかとの見方が依然根強い。 日銀は、エネルギー価格上昇を主因とする持続性に欠ける物価上昇の下では、資源価格上昇が実体経済に対してむしろ下押し圧力を及ぼす可能性があるとの判断から、「現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことで、経済活動をしっかりと支えていく必要がある」との姿勢を崩していない。23年度末にかけて、現行の金融緩和政策が変更される可能性は低いと考えられる。 (経済調査部 美和 卓) ※野村週報2022年5月30日号「焦点」より 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2022/05/31 20:00
逆風下でも高水準の利益を確保する鉄鋼業界(業界展望)
22年度は減益ながら高水準の利益を確保へ 鉄鋼業界では、野村カバレッジの11社合計の2021年度の税前利益は1.6兆円弱となり、過去最高水準であった。このうち6社は過去最高益を更新した。世界的に鋼材の需給環境が良好であったことに加えて、高炉メーカーを中心とした設備集約によるコスト削減効果、海外展開による収益貢献、鋼材値上げの進展などが背景にある。 22年度は、ロシア・ウクライナ紛争等による不透明な経済環境もあり、上記の11社合計の税前利益は前期比で33%減益の約1.1兆円弱を予想する。2社を除いて前期比で減益予想ではあるが、水準としてはリーマンショック後では21年度に次ぐ利益水準を予想する。 新型コロナ感染拡大もあり、足元で中国の鋼材需要が低迷する等の不透明な要因がある。しかし、21年度決算発表では、上記の11社のうち6社において、事前の野村予想を上回る22年度会社計画の経常利益(IFRS(国際会計基準)採用の会社は税前利益)が示された。業況悪化要因はあるが、予想以上の底堅さと野村では考える。 国内の鋼材値上げが予想以上に進む 21年度の決算発表では、22年1~3月期に様々な種類の鋼材の国内販売において、予想以上に値上げが進んだ点を確認できた。これは、22年度の業績を考える上でもプラスに作用すると野村では考える。 背景としては世界的に鋼材需要が堅調であったことに加えて、各鉄鋼メーカーが製品の価値を販売先に認めてもらうために、様々な取り組みや販売面での工夫を実施したことが挙げられる。例えば、原材料価格の上昇が速やかに製品価格に転嫁されるような仕組みの導入等が見られた。 加えて、鉄鋼業界では、カーボンニュートラル(CN)の対応で、今後に投資負担の増加が予想される。こうした点をサプライチェーン全体で負担することに、顧客側の理解も進んでいることも考えられる。 さらに、高炉メーカーを中心に生産能力の削減を進めた結果、適正な需給バランスの達成につながった側面もあろう。鉄鋼会社の付加価値や投資負担を販売価格に適正に反映させやすい需給環境を従来よりも構築しやすくなっている。 好調な米国の鉄鋼事業 アジア等では鋼材価格が足元で低迷しているが、世界の主要地域の中では北米の事業環境が良好な状態にあり、同地域で事業を展開する企業の好業績が予想される。 大和工業は米国での利益構成比が22年度の野村予想の経常利益で7割強に達する。野村では同社の22年度の経常利益を前期比で37%増益と大幅な増益を予想する。その牽引役は米国事業である。同社は現地の電炉大手とH形鋼事業を合弁で展開している。非住宅建設向けの需要が旺盛であるほか、今後はバイデン政権によるインフラ投資の効果も期待できる。 共英製鋼は米国とカナダで棒鋼事業等を展開しており、22年度の北米の営業利益は前期比で40%増益と全社の約44%に達すると予想する。丸一鋼管も北米の複数の拠点で鋼管事業を展開している。いずれも好調な業績を確保できている。 日本製鉄は米国で自動車用鋼板事業を展開している。同事業は合弁相手のアルセロール・ミッタルから22年1~3月期の業績が発表され、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は前年同期比で約2.1倍となった。同拠点では電炉を建設中で高級鋼の生産にも着手する計画である。 低CO2鋼材の導入の動きが活発化 欧米企業で先行していた低CO2鋼材の販売の動きが日本企業でも顕在化してきた点にも注目している。 山陽特殊製鋼は最も先進的な取り組みをしている。欧州子会社のオバコが会社として22年1月からCN 体制に移行した。これは世界の鉄鋼業で会社としてCN 体制を導入した初めての事例であろう。CN 導入に関するコストを気候サーチャージとして販売価格に反映させる仕組みも導入しており、基本的に顧客に受け入れられている。 日本製鉄は、5月10日の説明会で、22年度下期から23年度にかけてCN 鋼材を発売する方針を明らかにした。同社は、広畑地区(兵庫県)に電炉を建設中で、世界で初めて、電炉一貫プロセスでの電磁鋼板を生産する方針である。電炉に使用される電力をグリーン電力にすることによって、CN鋼材対応をするとのことである。 神戸製鋼所は、5月17日に低CO2鋼材を販売することを発表した。専用の新しいブランドも導入する。高炉でのCO2削減効果を特定の鋼材に割り当てるマスバランス方式による低CO2鋼材の販売である。少量ではあるが、全鋼種の対応が可能であるので注目できよう。 (エクイティ・リサーチ部 松本 裕司) ※野村週報2022年5月30日号「産業界」より 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2022/05/29 18:00
「米国の実質金利プラス」は本来、正常な状態 (野村のオピニオン)
米国10年国債利回りは5月に入り、一時3.2%台へ上昇し、2018年11月以来の高水準となりました。足元では2.7%台へと上昇が一服しています(5月26日現在)。米国の主要株価指数であるNYダウ、S&P500指数、ナスダック総合指数は5月に入り、年初来安値を更新し、不安定な状況が続いています。ウクライナ紛争を契機に原油、穀物など商品価格の高騰、中国の主要都市封鎖によるサプライチェーンの目詰まり、米国における人件費の上昇などインフレ加速が長期化し、不透明感が続いています。 株価のバリュエーション面では、インフレのピークアウトはいつ訪れるのかという大前提もさることながら、政策金利であるFFレート(フェデラルファンド・レート)の着地点と、それを受けて長期金利(10年国債利回り)がどこまで上昇するのかという不透明感が株価のボラティリティー(変動性)を高める要因となっています。 6月14~15日に開催される次回のFOMC(米連邦公開市場委員会)において、参加者の政策金利見通し(いわゆるドッツ・チャート)がアップデートされます。ここで示される政策金利見通しの中央値の着地点がある程度の目途となることが考えられます。 こうした市場環境の中、5月に入って注目される現象が「実質金利」がプラス域へ浮上した点です(下図)。実質金利はほぼ「名目金利-期待インフレ率」と同義です。差分をあらわす「実質金利」は長期的には潜在実質GDP成長率を示すことになります。例えば、米国において潜在名目GDP成長率が4%、長期的なインフレ率が2%とすると、潜在実質GDP成長率は4%ー2%=2%≓実質金利、となります。 従って、実質金利がプラスの状態は平時であれば正常な環境と言えます。2008年のリーマンショック後、2020年の新型コロナ感染拡大後にFRB(米連邦準備理事会)は大規模なQE(量的緩和)を実施しました。この政策により、名目金利は意図的に押し下げられ、実質金利がマイナス域で推移しました。この局面ではお金の実質的な価値が減価するため、消費や投資が活性化することになります。まさにFRBによるQEの狙いはそこにありました。金融市場では株式などのリスク性資産にとって「大規模な金融相場」となります。 長期的には正常化に向かう過程ですが、実質金利がマイナスからプラスへ転換する局面は金融相場の終了を意味しますので、株式市場にとって重石となります。「インフレのピークアウト」という条件付きですが、市場は実質金利プラス状態を徐々にこなしてゆくものと思われます。なお、5月25日に公開された5月のFOMC議事録によれば、インフレに関して「もはや悪化していないかも知れないことを示す経済指標が出始めた。ただ、インフレがピークに達したと確信するには時期尚早である」と指摘しています。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
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2022/05/28 17:00
カーボンニュートラル実現に向けた新エネルギー (週末トピック)
グリーン水素 CN実現に向け水素の活用が期待される 2050年までのカーボンニュートラル(以下、CN)実現に向け、世界の主要各国・地域で取り組みが積極化しています。こうした中、環境にやさしい新エネルギーとして期待されているのが水素の活用です。 水素エネルギーの大きな特性は、輸送や貯蔵面での優位性です。細かな送電網がなくても、高圧ボンベやタンクローリー車で供給することが可能です。利用先としては、FCV(燃料電池車)や燃料電池バスが代表的です。また、技術的な問題などにより、電化が難しいとされる航空機や船舶などの分野でも、それらに搭載される内燃機関で水素をエネルギーとして活用することもできます。 CO2を排出しないグリーン水素 燃焼時にCO2が発生しない水素ですが、生産過程でCO2排出を伴うか否かで主に3種類に分別されます。 再生可能エネルギー(以下、再エネ)を用いた水の電気分解によってCO2を排出せずに作られるものを「グリーン水素」、化石燃料由来ではあるものの、CCUS(CO2回収・利用・貯留技術)などと組み合わせることでCO2排出を抑える「ブルー水素」、化石燃料由来でCCUSなどを行わないものを「グレー水素」と呼びます。 (注1)全てを網羅しているわけではない。(注2)「MCH(メチルシクロヘキサン)」とは、水素にトルエンを添加させた液体のこと。「CCS地中貯留」は回収したCO2を地中に貯留すること。(出所)経済産業省、各種資料より野村證券投資情報部作成 CN実現にはグリーン水素への転換が必要不可欠 2020年の世界における水素需要量は9,000万トンとなっています。しかし、その多くは化石燃料から生産されたグレー水素であるため、生産過程において、9億トンものCO2が排出されています。 2050年にカーボンニュートラルを実現するには、水素の生産量を5.3億トンにまで拡大させ、その内3.2億トンをグリーン水素によって生成しなければならないと、IEA(国際エネルギー機関)の策定したロードマップでは予測されています。水素利用の拡大とともに、グリーン水素への転換が求められています。 グリーン水素普及に向けた当局の動向 IEAによると、2021年10月時点で17の政府が水素戦略を策定しており、少なくとも370億米ドル規模の投資が公表されています。 また、欧米の政府当局を中心にブルー水素への環境基準の強化も進んでいます。化石燃料の採掘から水素を製造するまでのCO2をどれだけ減少させれば「クリーン」であるという国際基準は存在しておらず、これまでは欧州の企業団体「サーティファイ」が定めた基準(CO2を6割削減)が意識されてきました。しかし、EU(欧州連合)の欧州委員会は2022年1月、「EUタクソノミー規則」において、CO2を7割超減らした水素をクリーンとみなす規則を施行しました。また、米国や英国でも同様の動きがみられており、グリーン水素への転換はこれまで以上に加速することが予想されます。 EU中心にカーボンプライス政策が進展 さらにEUでは、2026年を目途に国境炭素税の導入が検討されています。これは、気候変動対策が不十分な国から輸入される産品に対して、製造過程で排出されるCO2量に応じて課税するものです。当初は、鉄鋼、セメント、肥料、アルミ、電力が対象ですが、将来的には対象となる品目が広がることが予想され、製造過程でCO2排出量の多い工業製品は国際的に取引することが難しくなる可能性があります。グリーン水素は製造コスト面で導入へのハードルが高いとされてきましたが、こうした枠組みの変化によりコスト面でのハンディが軽減される公算が大きくなってきています。 大規模な量産計画が加速 足元では、民間企業によるグリーン水素量産に向けた計画が相次いで発表されています。量産計画が数多く立ち上がっているのは、再エネ導入が盛んで余剰電力の多い地域や再エネによる発電条件が良い地域です。 特に、大規模な量産計画をけん引しているのはオーストラリアです。そして、同国で生産されるグリーン水素の代表的な供給予定先が日本です。日本の水素関連メーカー各社は、オーストラリアのグリーン水素事業者との関係作りを積極化させています。効率的に水素を輸送する手段の開発などにおいて、日本企業の貢献が期待されます。 (投資情報部 大坂 隼矢) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
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2022/05/25 13:00
北欧諸国のNATO加盟の意味する所(市場展望)
ロシアのウクライナ侵攻が契機 2月にロシアがウクライナに軍事侵攻を開始したことを受けて、金融市場でも警戒が高まった。ロシアに対する経済制裁を背景に、原油や小麦をはじめとした商品価格の高騰が続いている。しかし、世界の株式、債券市場がウクライナにおける戦況を材料視する局面は減りつつある。市場の関心は、ウクライナ情勢よりも、米国の利上げの進捗や、都市封鎖など厳格な新型コロナウイルス対策を続ける中国の景況感にシフトしつつある。これは、5月9日の独ソ戦・戦勝記念日までにロシアがウクライナの国土を占拠したり、休戦の条件をウクライナに呑ませたりすることが出来なかった一方で、ロシアが、今のところ生物・化学兵器や核兵器を使用していないことから、軍事的緊張に対する市場の警戒感が薄れたことも一因だろう。 ただし、ウクライナ紛争の派生的な影響には注意したい。ロシアの軍事侵攻によって、ウクライナ以外のロシアの周辺国でも懸念が高まっているのは当然の帰結だろう。そして、ウクライナがロシアに攻撃されたのは、NATO(北大西洋条約機構)に加盟していなかったことが一因だとの見方は、ウクライナ自身も認める所である。NATOには集団安全保障が定められており、加盟国が武力攻撃を受けた際、全加盟国に対する攻撃と見なし反撃する仕組みになっている。核保有国で強大な軍事力を有する米国の他、核保有国の英国、フランスも加盟国になっていることが後ろ盾となっている。ソ連崩壊後、東欧諸国の多くや旧ソ連のバルト三国はNATO に加盟した。 一方、北欧のフィンランド、スウェーデンはEU(欧州連合)には加盟しているものの、東西冷戦時から軍事的には中立寄りの姿勢を示し、これまで、NATO には加盟していなかった。しかし、今回のウクライナ紛争を機に、両国は長年の安全保障政策を転換する決断を下した。フィンランド政府が5月15日、スウェーデン政府が5月16日にNATO 加盟申請を正式に決定した。早ければ、6月29、30日のNATO首脳会議において、NATO 側が正式加盟を承認する議定書に署名することが見込まれる。正式加盟までには、全加盟国が議会の採決などで議定書を批准することになる。 ロシアの軍事的牽制のリスク プーチン・ロシア大統領は、5月16日にフィンランドとスウェーデンのNATO 加盟について、両国にNATO の軍事施設が設置されれば対抗措置を取る可能性を示唆し、加盟を牽制している。 問題は、フィンランドとスウェーデンが加盟申請を行っても、全加盟国が加盟の議定書を批准するまでは、両国はNATO の集団安全保障の適用外であり、ロシアの軍事的圧力にさらされる点だろう。ちなみに、北マケドニアの加盟時のケースでは、2019年1月にNATOに正式な加盟申請を行い、同年2月6日にNATO 側が北マケドニアの正式加盟を承認する議定書に署名した。その後、全加盟国の批准が終了し、北マケドニアが正式加盟したのは、20年3月27日だった。フィンランドとスウェーデンの場合も全加盟国の批准が完了するまでに最低でも1年程度が掛ると見られる。特に、NATO の一員であるトルコが、国内のクルド系過激派を支援していることを理由に、両国の新規加盟に消極的な姿勢を示しており、批准の遅れも考えられる。 このため、ロシア軍が、両国のNATO 加盟が完了するまでの間に、両国の領空や領海近辺で、航空機や艦船を出動させたり、軍事演習、弾道ミサイルなどの発射実験を行ったりすることも考えられる。その場合、金融市場では、フィンランドとスウェーデンに関するリスク回避の動きが高まることになるだろう。特に、スウェーデンはユーロではなく独自通貨であり、動揺が大きくなる点には注意が必要だろう。一方、フィンランドはユーロ加盟国であり、フィンランドの地政学リスクがユーロ圏全体に波及することになろう。フィンランド、スウェーデンの株式、債券が売られ、ユーロ、スウェーデン・クローナが主要国通貨に対して売られ、米国債やドル、あるいは金に資金が逃避する反応が考えられる。 もっとも、5月11日に、ジョンソン英首相が、スウェーデンとフィンランドを相次いで訪問し、両国が攻撃の脅威にさらされるなど有事の際には、英国が軍事面での支援を行うことで合意し、相互安全保障の文書に署名した。英国の決断を踏まえると、他のNATO加盟国も同様の軍事的支援を、NATO 正式加盟まで両国に行う可能性が高い。こうした支援は、ロシアによる軍事侵攻を回避することに繋がり、ロシアの軍事的挑発も政治的抗議を示すような象徴的なもの、小規模なものに留まらざるを得ないだろう。従って、市場のリスク回避の動きは一時的なものに留まろう。 (経済調査部 吉本 元) ※野村週報2022年5月23日号「焦点」より 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2022/05/24 15:00
食品ベンダー業界:海外成長力に注目(業界展望)
食品業界:短期は原材料高がコスト増 コロナ禍からの世界各国での消費活動再開を受けて需要が強いうえに、労働者不足による供給不安により需給がタイト化したため、世界的にコモディティ市況高が続いている。ウクライナ情勢、円安進行も加わり、国内のコモディティ市況高が影響して、国内でのコストインフレ懸念が高まっている。そのため、2022年度は原材料高が想定され、食品メーカーにとって国内では1度目の価格改定に留まらず、2度目の価格改定をできるかが焦点になってこよう。それに対して、海外は国内に比べて価格改定をしやすく、すでに複数回の価格改定を実施している企業も多く、原材料高を消費者に価格転嫁できる市場であると言えよう。そのため、国内の売上構成比が高い食品メーカーは原材料高の影響を吸収しきれず、厳しい事業環境が続く可能性が高いと考える。 しかし、過去を振り返ると原材料高の局面は食品メーカーの業績が伸長するケースが多かった。それは価格改定やインフレが生じるからである。日本では、コストプッシュ・インフレが主だが、それでも、原材料を含めた製造コスト、数量影響などを加味して価格改定幅が決められるため、数量減が大きくなければ、価格改定は利益増に繋がりやすい。 22年度はほとんどの食品業界のカテゴリーにおいて価格改定が発表されており、その中でも主食カテゴリーで先駆けて価格改定を実施したのが山崎製パンである。小麦粉価格の上昇を受けて、22年1月に食パンや菓子パンの価格改定を実施したが、パン製品の販売は価格改定後の1~4月も堅調に推移した。市場では節約志向が加速していると言われているが、食パンや菓子パンにおいては大きな数量減がみられておらず、消費者には一定程度の価格上方改定への耐性があると推測する。 ただ、現在足元で実施されている価格改定はウクライナ情勢によるコモディティ価格の上昇や円安進行を踏まえたものではなく、更なるコストプッシュ・インフレが進み、価格改定の波が22年度下期に再び訪れると考える。 わらべや日洋HDの海外成長力に注目 日本の食品メーカーは、国内では食品価格の改定が難しいうえに、少子高齢化の進行もあり、今後の需要拡大は限定的であろう。一方、海外では新たな地域への拡大余地があることに加え、海外の所得増に伴う需要拡大が見込まれるため、中期的な成長拡大が期待できよう。野村では、国内の原材料高を価格改定によって吸収することは困難であり、短期的には厳しい事業環境が続くものの、中期的には海外成長力を有している米飯ベンダー企業であるわらべや日洋ホールディングス(以下、わらべや日洋HD)に注目している。 わらべや日洋HDは、セブン-イレブン・ジャパン(以下、SEJ)向け米飯ベンダーであり、SEJ向け売上高が80%程度を占める。国内では常温のおにぎりや幕ノ内弁当、かつ丼やビーフカレーなどチルド弁当を販売している他、米国ではサンドイッチやブリトーなどの軽食を販売している。 国内では、SEJ の3月既存店売上が前年同月比0.8%増と、九州フェアなどが奏功したことにより、わらべや日洋HD の主力商品群である米飯類などが増収となった。21年10月に価格改定を行った炭火焼牛肉カルビ弁当は販売数量が落ち込んだが、様々なフェアを通じた商品価格改定は消費者に受け入れられていると考える。ただ、足元で急上昇している水道光熱費を吸収するほどの価格改定を実施できておらず、次のリニューアルのタイミングで価格交渉を行う必要があろう。 海外では米国のセブン-イレブン・インク(SEI)向けにハワイ及びテキサス州で事業展開をしているが、新たにバージニア州の工場を24年に稼働予定。セブン&アイ・ホールディングスの子会社であるSEIがスピードウェイを買収したことがわらべや日洋HD の大きな転換期になるだろう。その理由は、セブン&アイHDは日本で培ったSEJ のノウハウを米国のSEI へ横展開することを考えており、日本だけでなく、米国でも商品開発力の評価が高いわらべや日洋HD がセブン&アイHD の米国展開に重要な役割を担うと考えられるからである。 22.2期の国内の営業利益率2.1%に対して、海外の営業利益率は11.9%と収益性に大きな差がある。野村では22.2期を起点に24.2期までの営業利益は年率10%成長を予想する。短期的にはエネルギーコストを含む原材料高が厳しく、国内の価格転嫁に時間を要するが、収益性が高い海外事業の売上拡大に伴い、利益成長をけん引することを期待したい。 (エクイティ・リサーチ部 迫間 正) ※野村週報2022年5月23日号「産業界」より 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点