閉じる
閉じる

12:00

【注目トピック】トランプ政権の関税政策 ~これまでに示された方針を整理~

※画像はイメージです。 トランプ政権の関税政策 関税政策に揺れる金融市場 米国のトランプ政権は、貿易赤字削減と米国への製造業の回帰を目的に掲げ、矢継ぎ早に関税引き上げの発表を行ってきました。    トランプ大統領は、様々な国・製品に対して関税政策を打ち出し、その直後に前言の修正を行うことも珍しくなく、関税政策を巡る不透明感が高まっています。株式市場のボラティリティー(変動率)の高さを示すVIX指数は、2025年2月末以降、平常時の10-20の水準を上回る状況が続いています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)データは日次で、直近値は2025年4月25日。全てを網羅している訳ではない。3月11日のカナダとの通商摩擦拡大では、カナダのオンタリオ州の首相が米国への電力供給停止も辞さない姿勢を示し、トランプ大統領がカナダから輸入される鉄鋼・アルミニウム製品への関税を25%から50%に引き上げると表明(後に、それぞれ撤回)した。VIX指数はS&P500指数を対象に、オプションを元に算出されるボラティリティー・インデックスで、指数の上昇は株価変動が大きくなる予想を反映する。VIX指数は「恐怖指数」とも呼ばれている。(出所)ブルームバーグ、各種報道資料より野村證券投資情報部作成 対メキシコ、カナダ制裁関税 トランプ政権は2025年3月4日、メキシコとカナダに対して、不法移民と薬物の流入を理由に、国家緊急事態令を宣布し、IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づいて、25%の制裁関税を発動しました。しかし、発動直後の3月6日に、①USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の基準を満たす品目と自動車・同部品に対する関税の発動を見送り、➁エネルギー関連製品やカリウム(肥料に使用)に対する関税率を10%に引き下げる決定をしました。 対中国追加制裁関税 中国に対しては、現在発動中の制裁関税(相手国の不公正な貿易政策への報復を認める通商法301条に基づき、輸入額の70%程度の品目に課税)の関税率を引き上げるという手段をとっています。フェンニタルをはじめとする違法に製造された麻薬性鎮痛薬の米国への流入阻止を目的に、IEEPAに基づいて2月4日に第一弾、3月4日に第二弾として、それぞれ10%の追加関税を発動しました。 品目別関税 別途、特定国以外にも、通商拡大法232条に基づいて、トランプ政権は3月12日に鉄鋼・アルミニウム製品に対して25%(軽減措置廃止)の関税、4月3日に自動車に対して25%の関税率引き上げを発動しました。 通商拡大法232条は、特定製品の輸入が米国の安全保障に脅威を及ぼすと商務長官が判断した場合に、追加関税などの措置を発動する権限を大統領に認めているものです。 (注)全てを網羅している訳ではない(2025年4月25日時点)。全世界相互関税は中国を除き、一律10%に上乗せする関税率は90日間(7月7日)まで猶予期間。カナダの対米報復関税は298億カナダドル相当の製品で、全てではない。USMCAは米国・メキシコ・カナダ協定。 (出所)ホワイトハウス、各種報道資料より野村證券投資情報部作成 現在調査中の品目も トランプ政権は、2月25日に通商拡大法232条に基づく銅製品、3月1日に木材の調査をそれぞれ商務長官に指示しました。4月14日には、医薬品や半導体の調査を開始したと商務省が発表しました。   商務長官は、大統領令が発表された日から270日以内に調査を完了し、米国の国家安全保障に脅威を及ぼすか否かの判断や、追加関税などの措置の提言を含めた報告書を大統領に提出します。大統領は、その調査報告書に基づいて、発動を判断し、措置を実施します。大統領が措置の発動ではなく、輸出国との交渉を行う決定を下した場合には、決定から180日以内に貿易相手国との合意を目指します。合意できない場合には、大統領が改めて措置を決定します。 国・地域別相互関税 トランプ政権は4月5日、IEEPAに基づいて、全輸入相手国に基礎関税10%を発動し、4月9日には、各国・地域別それぞれの貿易赤字に応じて、超過分の相互関税(約60ヶ国・地域を対象)を発動しました。 トランプ政権は、非関税障壁なども根拠に相互関税率を計算したとしていますが、米国の貿易赤字額を輸入額で割った比率の半分を相互関税率としており、貿易赤字の縮小が重要な一方、非関税障壁は何を問題としているのかが不明確です。   一転して、同日(4月9日)、トランプ政権は中国を除き、報復措置をとらなかった国について、超過分の相互関税の発動を90日間猶予すると発表しました。 これまでの各国・地域の対応 トランプ政権に関税を課せられた国・地域では、中国、カナダ、EUのように、報復関税を実施する国や、メキシコのように報復を抑制する国もあり、対応は様々となっています。日本は交渉で解決を目指す方針を示しています。 (注)全てを網羅している訳ではない。赤の網掛けは大統領権限で直ちに実施可能(通商301条は中国に対しては実施可能)な措置。 (出所)USTR(米通商代表部)、各種資料より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 澤田 麻希) ご投資にあたっての注意点

新着 矢印

467