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【オピニオン】「良い円安」と「悪い円安」を再考する

※画像はイメージです。 円安基調が続いています。米国においてCPIの高止まりを理由に、長期金利が上昇したことなどが背景にあるとされ、米ドル円レートは4月29日に約34年ぶりに160円/米ドルの大台を突破しました。その後、4月29日、および5月2日に、2022年8月以来の為替介入が行われたとの観測が広がり、一時151円/米ドル台にまで円高が進んだものの、その後は155円/米ドル前後での推移が続いています。 株式市場では円安は株価に追い風という捉え方が一般的ですが、足元では経済団体の首脳から行き過ぎた円安に苦言が呈されたり、株式市場においても介入に伴う為替水準の乱高下に対する警戒感がささやかれるようになっています。本稿では、為替変動が株価に及ぼす影響について、『短期的反応』および『長期的なトレンド』という観点から見てみましょう。 まず、短期的な反応では(下図)、日経平均株価と米ドル円レートの相関係数(以下、相関係数)と、為替水準の間には明確な関連性は見受けられません。ただ、為替のボラティリティーが上昇すると、相関係数がマイナスになる傾向がみられます。これは、為替当局がたびたび「為替の水準よりは、円安進行の速度が速いことの方が問題だ」といった趣旨の発言をすることと整合的です。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 次に長期的な為替と株価の関係を見てみると、わが国では資産バブル崩壊後の1990年代後半よりデフレが進行したことなどから、円安(通貨の信認低下)⇒株安という関係が一時期見られました。その後不良債権処理の進展により徐々にデフレ圧力は低減に向かい、少なくとも2008年以降には、『円安=株高』というルールが定着しました。今回も、下図を見る限りでは、この関係から逸脱した動きにはなっていないようです。 株式市場に上場している企業の多くは、資産バブル崩壊後、海外事業を拡大することにより、GDPを上回る利益成長を遂げてきました。また、同時に多くの業種・企業で(資金調達や生産体制の)現地化も進展しました。結果的に、①為替水準の変化により競争力は左右されない体質に近づいたものの、②円安が進行すれば邦貨換算の利益は膨らむ、というメカニズムが働くようになっています。『円安=株高』というルールが変更になるようなことは、当面考えづらいでしょう。 ご投資にあたっての注意点

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