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10/07 09:00
【週間ランキング】日本株の値上がり/値下がり銘柄は?(10月第1週)
※画像はイメージです。 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(上位) 2025年10月第1週(9月第5週)(2025年9月26日~10月3日) 2025年9月月間(2025年8月29日~9月30日) 2025年年間(2024年12月31日~2025年10月3日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2025年10月3日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(下位) 2025年10月第1週(9月第5週)(2025年9月26日~10月3日) 2025年9月月間(2025年8月29日~9月30日) 2025年年間(2024年12月31日~2025年10月3日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2025年10月3日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 <参考>今週の日本株式市場パフォーマンス 主要指数 TOPIX: 東証33業種 (注)業種分類は東証33業種ベース。直近値は2025年10月3日時点。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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10/07 08:13
【野村の朝解説】S&P500とナスダックが史上最高値を更新(10/7)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 6日の米国株式市場では、NYダウが7営業日ぶりに反落しました。前週末まで連日で最高値を更新していたことから高値警戒感が意識され、主力株の一角に利益確定の動きが出たことが重石となりました。一方、FRBが今月のFOMCで追加利下げを決定するとの観測は引き続き相場を支え、朝方はプラス圏で推移する場面もみられました。また、NYダウ構成銘柄ではないものの、オープンAIとの複数年契約が報じられた半導体のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が急騰し、他のAI関連銘柄に買いが波及する場面もみられました。S&P500は4営業日連続で、ナスダック総合は2営業日ぶりに、史上最高値を更新しました。為替市場では、日銀に対する10月利上げ期待後退が円安圧力となり、ドル円は150円台を回復しています。 相場の注目点 日米欧、主要各国の政局に関心が集まっています。日本では、高市氏の総裁選勝利を受けて株高、円安の動きが広がっています。来週に向けては財務相を中心とした経済閣僚人事が注目されそうです。米国では政府機関の一部閉鎖が2週目に突入しました。連邦職員の解雇を巡る懸念も意識されつつあり、引き続き与野党による予算案の交渉が注目されます。欧州ではフランスで政局不安が高まっています。ユーロ圏最大規模に膨らんだ財政赤字を是正するため、ルコルニュ仏内閣は財政再建路線を継続していましたが、野党の反発が大きく、10月5日の新内閣発足からわずか1日でルコルニュ首相は辞任を発表しました。今後、マクロン大統領は①新首相の指名、②議会の解散総選挙、③自らの大統領辞任、の三択を迫られるとみられますが、フランスではどの勢力も議会過半数に満たず、安定政権の樹立が困難な状況に変わりがないため、2026年予算を巡る与野党の交渉の行方には不透明感が漂います。 (野村證券 投資情報部 引網 喬子) 注)データは日本時間2025年10月7日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、中心限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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10/06 16:25
【野村の夕解説】日経平均株価2,175円高 積極財政期待で最高値更新(10/6)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は、総裁選の結果を受けて積極的な財政政策への期待が膨らんだ結果、大きく上昇し史上最高値を更新しました。自民党総裁選で高市早苗氏が勝利し、同氏が選挙戦で掲げた積極財政実現への期待から、日経平均株価は前日比866円高の46,636円で寄り付きました。また、金融緩和を志向する高市氏が新総裁に決まったことを受け、日銀による利上げペースが減速するのではとの見方が広がり、米ドル円が1ドル=150円台まで円安に進んだことも株価を押し上げました。株価の上昇の勢いは終日続き、最終的に日経平均株価は前日比2,175円高の47,944円で引けました。一日の上げ幅としては、2025年4月以来となり、歴代4番目の上昇幅となりました。個別では日経平均株価の指数寄与度の高いアドバンテストが前日比+14.02%となり、一銘柄で日経平均株価を592円押し上げました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 高市新総裁が総裁選で掲げた経済政策の実現性について、今後焦点となるのは連立協議の進展です。連立協議に関する報道などが注目されます。 (野村證券投資情報部 笠原 光) ご投資にあたっての注意点
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10/06 08:05
【野村の朝解説】利下げ観測の高まりが米国株の追い風に(10/6)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 3日の米国株式市場では、ナスダック総合指数は下落したものの、NYダウとS&P500は続伸し、連日で過去最高値を更新しました。1日に発表された9月ADP全米雇用レポートが低調だったことに加え、この日に発表されたISMサービス業景気指数の雇用指数が4ヶ月連続で好不調の境目である50を下回ったことなどを受け、FRBが10月末のFOMCで追加利下げを実施するとの見方が強まったようです。政府閉鎖の影響で9月米雇用統計の発表が見送られましたが、株式市場では短期的な政府閉鎖であれば米経済への影響は小さいとみられており、株価の反応は限定的となりました。 相場の注目点 4日に行われた自民党総裁選で高市早苗氏が勝利しました。15日に召集されるとみられる臨時国会での首相指名選挙を経て、高市新内閣が発足する見通しです。高市氏は現行の政策金利を維持すべきとの見解を示しています。また財政面では、将来世代に恩恵を及ぶ投資には赤字国債の発行も選択肢としており、拡張的な財政政策が採られる可能性があります。先行きは、自民党幹部の人事や野党との連携の行方、経済対策などに焦点が当たるとみられます。 一方、米国では1日から続いている政府機関の一時閉鎖解消に向けて共和・民主両党の歩み寄りがあるかどうかが注目されます。市場は現在、政府機関の閉鎖は短期間にとどまると想定しているようですが、長期化すれば経済活動への悪影響が懸念されます。また、政府閉鎖により、既に主要な経済指標の発表が延期されています。閉鎖が長期化すれば、15日に発表予定の9月米消費者物価指数など、他の統計にも影響が及ぶ可能性もあります。さらに、重要指標が発表されなければ、月末のFOMCでの金融政策決定にも支障が出る恐れがあり、注意が必要です。 (野村證券 投資情報部 岡本 佳佑) 注)データは日本時間2025年10月6日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、中心限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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10/05 09:00
【10月の投資戦略】日米の株価、史上最高値更新の裏にAI関連ビジネスの拡大
(注)画像はイメージです。 関税の影響一巡後は日米とも史上最高益更新へ 日米の主要株価指数は、史上最高値の更新を続けています。トランプ政権は、今後も様々な品目を対象に、関税を発動する可能性があります。ただし、我々は、リスクの所在が明確化し、主要国・地域の経済や企業活動などへの悪影響は克服可能/限定的となれば、企業業績の復調や拡大と共に株式市場への信頼感は回復してゆくとみており、この見方は現在も不変です。関税の影響が一巡した後は、日米ともに史上最高益の更新が続くとみます。 FRBは利下げを再開 ウクライナや中東の地政学リスクにおける商品市況への悪影響は限定的で、エネルギー価格は落ち着いています。米国景気は底堅い状況です。中国など一部の国を除き、米国の追加関税は実行されました。自国産業の保護と拡大を目的に、重要品目に対する個別の関税が今後発表される可能性があります。このような環境下にもかかわらず、AIインフラ拡充のための関連品目の輸入は増えているようです。雇用環境の緩和が進む一方、消費は底堅く推移しています。FRBは、雇用の下振れリスクに対応するため、2024年12月以来となる利下げに踏み切りました。金融市場は、2026年末に政策金利が3%程度に低下することを織り込んでいるようです。 テクノロジー企業を中心に史上最高益更新が続く 米国企業業績は、テクノロジーセクターを中心に堅調です。関税による業績低下懸念に対し、企業決算毎の実績では上振れが続きます。AI関連のインフラ投資は急拡大していますが、直接の好影響を公表する企業を除き、企業業績への織り込みは限定的です。主要企業の業績は、テクノロジー企業を中心に史上最高益の更新が続くとみられます。 フランスの政治は混迷 ユーロ圏では、フランスで首相交代が相次ぎ、政治が混迷しています。ECBが政策金利据え置き局面に入る中、フランスの10年国債利回りはイタリアの同利回りを初めて上回りました。中国は、不動産市況を中心に国内経済が弱含んでおり、政府の追加経済対策が期待されています。米国との関税交渉は、期限となる11月10日前に閣僚級協議が開催される予定です。 日本の企業業績は2026年度に増益転換と史上最高益更新へ 日本の輸出数量は米国向けで大きく減少しており、米国関税政策の影響とみられます。ただし、日本に対する関税率は、他の国・地域と比べて有利な水準です。企業の在庫水準は抑制的で、リスクへの耐性を確保しているようです。インフレ率は2%を上回る水準が続き、日本銀行は経済や物価の改善に応じて利上げを行う姿勢を示しており、年内の利上げの可能性も市場では意識されています。与野党の財政拡張的な政策議論もあり、超長期国債を中心に利回りが上昇しています。銀行の貸出約定平均金利が上昇しており、銀行収益の追い風です。一方、日米金利差の縮小に対して、米ドル円相場は円高・米ドル安に進んでいません。底堅い米国景気や株高などが背景にあるとみられます。2025年度の企業業績は、米国の関税政策という異例の状況から減益が予想されていますが、足元の企業業績の方向感には底打ちの兆しがみられ、2026年度は増益転換と史上最高益の更新が見込まれています。野村證券は2025年末の日経平均株価の予想レンジ上限を48,000円とみます。 投資戦略については、トランプ政権の関税政策や日米政治情勢の不透明さから、株式市場のボラティリティー(変動率)が高まる場面はあるとみます。しかし、関税の影響を受けにくく、成長が続くテクノロジーやサービスなどの業種を基軸とする見方は変えません。米国関税政策を悲観視するよりも、成長が続く分野を見直す局面にあるとみます。 ※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 10月号」(発行日:2025年9月22日)「投資戦略の概要」より 野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト 小髙 貴久 1999年野村総合研究所入社、2004年に野村證券転籍。日本の経済・財政・金融動向、内外資本フローなどの経済・為替に関する調査を経て、2009年より投資情報部で各国経済や為替、金利などをオール・ラウンドに調査。現在は日本株に軸足を置いた分析を行う。2013年よりNomura21Global編集長を務める。 Nomura21Global参考銘柄について ご投資にあたっての注意点
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10/04 18:00
【投資と税金】相続と認知症 相続税の負担が大きくなる?
相続が発生した際、相続人に認知症の方がいると遺産分割協議ができないと聞きました。特に遺産分割協議ができず未分割の状態だと配偶者のための税額軽減などが活用できず、相続税も高額になるようです。今回は、相続人である配偶者が認知症の場合について、大手町トラストの税理士に伺いました。 (注)画像はイメージです。 はじめに 相続手続きでは、遺言書が無い場合は相続人全員が話し合いに参加して遺産分割協議を行う必要があります。しかし、相続人の中に認知症の方がいて、判断能力が不十分の場合、事前に成年後見制度を利用していないと意思能力の問題から遺産分割協議が進められず、相続税の申告や財産の名義変更が滞ってしまうことがあります。 また、過去の記事で取り上げた、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」は、相続税の申告期限までに遺産分割協議が確定していることが条件となります。相続税の申告期限までに遺産分割協議が確定されていない財産は、原則としてこれらの特例による課税価格の減額が受けられません(一定の場合、事後に適用を受けられる場合あり)。 認知症と遺産分割協議 <小規模宅地等の特例>小規模宅地等の特例の適用を受けるには、その宅地を誰が取得するかが明らかになっている必要があります。遺産分割協議が完了していない場合、取得者が確定していないため特例は適用されません。 <配偶者の税額軽減>遺産分割協議が終わっていないと、配偶者が相続する財産の範囲が決まらないため、配偶者の税額軽減も受けられません。 遺産分割協議が成立していないときは、法定相続分で財産を取得したものとして申告と納税をします。協議ができない財産は相続人全員の共有となります。この状態では、不動産の売却や、大規模な改修、賃貸としての運用などができません。また、預金を口座から引き出す際にも銀行から遺産分割協議書の提出を求められることがあります。 相続税の比較シミュレーション 【例】被相続人の財産総額:自宅の土地1億円・現金等2億円相続人:配偶者1名、子ども2名(計3名)遺言書:無し(遺産分割は法定相続分で行う)相続税の基礎控除:4,800万円=3,000万円 + 600万円 × 3(法定相続人の数) ■遺産分割協議が不成立の場合の内訳(相続人が認知症と診断)課税遺産総額:2億5,200万円=3億円−4,800万円(基礎控除)法定相続分に応ずる取得金額:配偶者1/2(1億2,600万円)、子1/4(各6,300万円) <相続税の総額> 5,720万円 <各人の相続税額>・配偶者:2,860万円・子A:1,430万円・子B:1,430万円 ■遺産分割協議が成立。配偶者が小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減を活用した場合の内訳 <相続財産の評価額>自宅の土地:2,000万円(小規模宅地等の特例適用*後価額) *小規模宅地等の特例:土地評価額は1億円×20%=2,000万円(要件を満たしているとする)現金等:2億円課税価格:2億2,000万円(2,000万円+2億円) 課税遺産総額:1億7,200万円=2億2,000万円-4,800万円(基礎控除)法定相続分に応ずる取得金額:配偶者1/2(8,600万円)、子A・B各1/4(4,300万円) <相続税の総額> 3,200万円 <各人の相続税額>・配偶者:0円 (配偶者の税額軽減適用後)・子A:800万円・子B:800万円 事前の対策 認知症の推定相続人がいる場合、相続手続きが複雑になりやすいため、事前に準備することでトラブルを回避することが重要です。 遺言書遺言書があれば、遺産分割協議を行わずに相続手続きを進めることができます。被相続人の財産の分け方や希望をあらかじめ書面で残すことができます。 家族信託本人が信頼できる家族に財産の管理や運用を託し、定めた目的や方法に従って、その家族が財産を管理・処分する制度です。 成年後見制度成年後見制度には、大きく分けると「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。 法定後見制度―本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が選任した成年後見人が法律的に支援します。任意後見制度―本人が判断能力のあるうちに、将来の後見人や委任する事務内容を決めておき、判断能力が低下した際にその後見人が代理で事務を行う制度です。 まとめ 家族が元気なうちに相続について話し合っておくことは、とても大切です。事前に家族の希望や考えを共有しておくことで、いざ相続が発生したときのトラブルや手続きの負担を大きく減らすことができます。また、遺言書の作成や家族信託、成年後見制度の利用など、早めに準備を進めておくことで、安心して将来を迎えることができます。大切なご家族のためにも、早めの準備と話し合いを心がけましょう。 この資料は情報提供を唯一の目的としたもので、投資勧誘を目的として作成したものではありません。この資料は信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、野村證券は、その正確性および完全性に関して責任を負うものではありません。この情報は、ご覧いただいたお客様限りでご利用いただくようお願いいたします。詳しくは、所轄税務署または顧問税理士等にご確認ください。 ご投資にあたっての注意点
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10/04 12:00
【注目トピック】資産バブル 生成と崩壊の物語~過度な楽観論を避け、分散投資を~
※画像はイメージです。 FRBは再び利下げ局面へ 米国では2025年7月、8月の雇用統計が雇用増加ペースの大幅な鈍化を示したことから、FRBは利下げを再開しました。ただし、現時点では、米国の景気後退が懸念されている訳ではありません。米国株式市場では主要3指数がそろって史上最高値を更新しています。このため、今回の利下げ局面は予防的利下げの色彩が色濃いものになると予想されます(図表参照)。 図表:米国の政策金利とS&P500株価指数の騰落率 (注)データは月次で、直近値は2025年9月。政策金利はFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標の上限。□は予防的利下げとみなすことができる局面で、背景にあったイベントとして①はメキシコ通貨危機(テキーラショック)、②はヘッジファンドのLTCM破綻、➂は米中貿易摩擦の先鋭化と米国株の急落が挙げられる。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 一方、トランプ大統領はFRB内の人事に積極的に関与し、FRBに対する利下げ圧力を高めています。景気が底堅く推移する中でFRBが大幅な金融緩和を講じれば、いずれは資産バブルにつながる可能性があります。本稿では、過去の経験に基づいて、資産バブルとは何なのか、どのように誕生するのかに加え、資産バブルに対する心構えを確認したいと思います。 バブルの定義とは? 有名な相場の格言の一つに「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく」というものがあります。これは「逆張り投資」で名を馳せたジョン・テンプルトン氏の言葉ですが、資産バブルの生成から崩壊までの過程を言い表したものと解釈することができます。 何をもってバブルと呼ぶのか、バブルの定義は必ずしも明確ではありません。かつては、「資産価格が長期かつ大幅に上昇し、信用膨張や財務レバレッジの拡大を伴いながら景気が過熱する現象」をバブルと呼んでいました。最近では、期間の長短や景気過熱の有無にかかわらず、特定の資産価格の急上昇と急落を含めてバブルと呼ばれることが多いようです。この点を踏まえると、バブルとは「持続不可能なペースでの資産価格の急上昇」と定義できそうです。 過度な金融緩和はバブル発生の必要条件 バブル発生の要件として、一般的に「過度な金融緩和」が挙げられます。1980年代初頭の米国では、インフレを抑制するためにボルカーFRB議長(当時)の下で強力な金融引き締め(利上げ)が行われました。その後の展開をたどってみると、政策金利がピークアウトし、利下げが継続した後にバブル(ブーム)が発生し、利上げに伴ってバブルが崩壊するパターンを繰り返したどってきたことが分かります(図表参照)。このため、過度な金融緩和はバブル発生の必要条件であると考えられています。 図表:1980年代以降の資産バブルの系譜 (注)資産バブル発生時期はおおよその目安。日本(1986~1991年)、新興国(中南米:1992~1994年、東南アジア:1993~1997年)、ITバブル(1999~2000年)、住宅バブル(2003~2006年)、資源バブル(2004~2008年)、中国株バブル(2014~2015年)。政策金利は米国がFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標の上限。日本は主要政策金利で1998年9月以前は公定歩合、その後は無担保コール翌日物金利、ただし2016年2月~24年2月は政策金利残高適用金利。データは月次で直近値は2025年9月。(出所)FRB、日本銀行、LSEGより野村證券投資情報部作成 バブル生成と崩壊の背景は… 問題は、バブルの発生はいつでも同じ資産や市場ではなく、発生するたびに異なる市場で生じている点でしょう。つまり、「このような金融緩和を続ければバブルが生じるのではないか」との疑問は沸くものの、では「どこでバブルが生じるのか」、あるいは「既に生じているのか」を特定するのは困難であると言えます。実際、日本では2013年の黒田日銀総裁(当時)の就任後、長期間にわたって異例の金融緩和策が講じられてきましたが、バブルと呼べるような特定の資産価格の上昇は見受けられませんでした。近年の日本の経験は、金融緩和はバブルが発生する必要条件ではあっても、十分条件とは言えないことを示唆しています。 この点に関して2013年にノーベル経済学賞を受賞し、米国でのITバブル崩壊や住宅バブルの発生を事前に予測してきたとして名を馳せた米エール大学のロバート・シラー教授は、バブルの発生・崩壊の過程では「ナラティブ(物語)」が作用していると指摘しています。例えば、「新しい時代が到来する」といった物語が流布し、経済を刺激、株価を押し上げ、「何らかのショックによって物語の力が失われ、バブルが崩壊する」としています。 振り返ってみると、1980年代に発生した日本のバブルでは、「国土が狭小な日本では土地の価格は値下がりしない」と言う「土地神話」が、まん延していたことが知られています。地価の上昇を前提に、土地を担保に財務レバレッジを拡大することが常態化していきました。 同じく、1990年代後半から2000年代初頭のITバブル時には「ニューエコノミー論」が興隆し、情報が瞬時に共有される社会では「在庫循環に基づく景気循環はなくなる」といった言説や「商社不要論」など、今から振り返れば突飛な見解が飛び交っていました。 いずれも、「物語」に基づき、過剰な値上がり期待や過剰な成長期待が、いわゆる『ユーフォリア』とも呼ばれるような状況を生み出したと言えます。これらの経験に基づけば、シラー教授の主張には一定の説得力があります。 バブルに対する心構え 資産価格の上昇が合理的な収益期待等に裏付けされた持続可能なものなのか、ユーフォリアに侵された持続不可能なバブルなのかを見極めることは容易ではありません。なにより、資産価格の上昇が最初からバブルとして生じる訳ではないと考えられます。 1987年から2006年までFRB議長を務め、その手腕から「マエストロ(名指揮者)」と呼ばれたグリーンスパンFRB議長(当時)が「バブルは、はじけて初めてバブルとわかる」と発言したことは有名です。 17世紀のオランダではチューリップの球根が、明治時代の日本ではウサギがバブルとなったように、どのような資産でバブルが生じるかを事前に予想することも困難を極めるようです。 海千山千の市場参加者の中には「バブルが一番儲かる」と、そう述べる方もいます。また、「FOMO(Fear Of Missing Out:取り残されることへの恐怖)」といった言葉に代表されるように、バブルは自己増殖的に拡大していく面があります。 このような点を踏まえると、積極的に資産運用を行っている投資家がバブルと無縁でいることは、むしろ難しいのかもしれません。それでもなおバブル崩壊による深刻な影響を回避するためには、資産価格の上昇や市場のナラティブ(物語)が数字によって合理的に説明可能かを常に点検する、過度な楽観論には与しない、多様な資産に分散投資する、といった心構えが肝要と言えそうです。 図表:S&P500株価指数・PER(株価収益率)とEPS(1株当たり利益) (注1)年度は1-12月期。株価は日次で、直近値は2025年9月15日時点。2025年度以降の予想EPSは2025年9月12日時点のLSEGによる市場予想。(注2)破線は、向こう1年の予想EPSに、表示の株価収益率(15倍、17.5倍、20倍)を掛けて算出した株価指数値。 (出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト尾畑 秀一 1997年に野村総合研究所入社、2004年に野村證券転籍。入社後、一貫してエコノミストとして日本、米国、欧州のマクロ経済や国際資本フローの調査・分析に従事、6年間にわたり為替市場分析にも携わった。これらの経験を活かし、国内外の景気動向や政策分析、国際資本フローを踏まえ、グローバルな投資戦略に関する情報を発信している。 ご投資にあたっての注意点
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10/04 09:00
【オピニオン】日銀利上げ「いつから」よりも「どこまで」が重要
※画像はイメージです。 日本銀行は2025年9月18~19日に金融政策決定会合を開催し、事前予想通り政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.5%程度で据え置くことを決定しました。日銀による政策金利据え置きは5会合連続となります。今回の決定に対しては、高田委員、田村委員が0.75%程度への利上げを提案し、反対しました。 また、日銀は保有するETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)を、市場価格で売却することを決定しました。売却開始時期は「所要の準備が整い次第」という事で、現時点では未定です。 これらの結果を受けて市場では、「従来以上に日銀が利上げに対して前向きになっているのではないか」との見方が高まっています。先物金利に織り込まれた次回10月会合での利上げ確率を見ると、9月会合前には3割程度であったものが、足元(9月30日時点)では7割弱まで上昇し、26年1月会合までの利上げがほぼ織り込まれています。 9月会合で利上げの必要性を主張した高田、田村両委員はその根拠として「物価の上振れリスク」が高まっている点を挙げています。9月30日に公表された同会合の「主な意見」を確認すると、利上げの必要性に関して言及した委員は少なくとも4名おり、日銀内で利上げに向けた機運が高まっている様子が確認できます。 日銀内での利上げ機運の高まりに反応する形で、日本の10年国債利回りは1.6%台半ばまで上昇し、年初来のピーク水準を更新しました。日本の長期金利にどの程度の上振れ余地があるかを考える上で、次回利上げのタイミング以上に重要なのが、今回の利上げ局面におけるターミナルレート(政策金利の着地点)です。つまり、「いつから」ではなく「どこまで」を見極める必要があります。 下の図表はターミナルレートの代理変数として2年先1ヶ月物の先物金利を用いて、10年国債利回りとの関係を見たものです。市場では1.2%程度への利上げが織り込まれる中で、10年国債利回りが1.6%台まで上昇している様子が確認できます。両者の関係(金利差)が大きく変化しないと仮定すれば、政策金利が1.25%程度まで引き上げられれば、10年国債利回りは1.6%半ばから1.7%程度まで上昇する可能性があると読み解けます。 市場の利上げ観測と日本10年国債利回りの推移 (注)データは日次で、直近値は2025年9月29日。円スワップ金利は2年先1ヶ月先物金利で市場の政策金利見通しを示唆するものとして注目度の高い利回り。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 現在、日銀は景気に対して緩和的でも引き締め的でもない中立金利に向けて利上げを検討しています。日銀は中立金利を1.0~2.5%程度と相当幅広に想定していると見受けられることから、市場では当面の間、長期金利の上限を模索する展開が続きそうです。 ご投資にあたっての注意点
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10/04 07:00
【来週の予定】米国政府閉鎖の行方とFRB高官発言、植田総裁発言
米国では2025年9月末までに2025/26年度予算が成立せず、10月1日から政府閉鎖が実行されました。このため、経済指標の発表が延期・中止される事態になっています。短期間で収束すれば景気への影響は軽微にとどまる一方、長期化すれば企業・消費者センチメントの悪化も相まって、景気への悪影響が顕在化するとみられます。前週末のマーケットでは政府閉鎖に伴う公務員の大量解雇は民主党の造反を促す交渉材料との見方が広がり、市場は静観の構えを示しました。 米国では今週も多くのFRB高官の講演が予定されています。経済指標の発表延期が政策判断にどのような影響を与えるのか、各高官の発言が注目されます。 日本に関しては、政治面では自民党総裁選後の与野党協議の行方が注目されます。金融政策面での注目点としては、6日(月)の日銀支店長会議が挙げられます。10月の金融政策決定会合はライブ(政策変更もあり得る)だとの見方が高まっているうえ、直近の日銀短観(9月調査)は大企業製造業の景況感が2四半期連続で改善する結果になりました。地方の景気動向を踏まえた上で、植田総裁の発言が注目されます。経済指標では8日(水)の8月毎月勤労統計、9月景気ウォッチャー調査と今後の景気動向を見極める上で注目度の高い指標が発表されます。 欧州では6日(月)にユーロ圏の8月小売売上高、7日(火)にドイツの8月製造業受注が発表されるうえ、9日(木)には9月ECB政策理事会の議事録が発表されます。ECBは25年6月の利下げを最後に政策金利を据え置いています。先物金利を見ると、市場では26年半ばにかけて金利据え置きを予想しています。ドイツの製造業受注統計は国内およびユーロ圏内外からの財別の受注動向を把握することができます。トランプ関税が、ドイツおよびユーロ圏の消費、設備投資に与える影響を探るうえで重要な手掛かりとなることから、注目されます。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2025年10月3日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。なお、米国で2025年10月1日から実施された連邦政府機関の一部閉鎖の影響で、米国の経済指標の一部で発表が延期・または中止されるものがありますのでご注意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点