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2024/08/10 12:00
【特集】急激な円高・ドル安をもたらした3つの波 野村證券ストラテジストが解説
円高ドル安を促した3つの波 2024年半ば以降も米ドル円相場では円安基調が続き、7月11日には一時161円台まで円安ドル高が進行しました。その後は一転して円高基調へ転じ、8月5日の取引時間中には141円台を付けるなど、およそ1ヶ月の間に20円近く円高になりました。円高ドル安を促した要因の第1波は7月11、12日に実施されたと目される本邦通貨当局による円買いドル売り介入です。続く第2波は7月会合に向けた日銀の利上げ観測と7月会合を経て高まった日米金利差の縮小観測、第3波に米国の景気後退懸念を背景とした世界的な株安を挙げることができます。 ドル円急落の背景に投機資金のポジション調整 日銀は7月30-31日に開催した金融政策決定会合で、市場コンセンサスに反して利上げを決定、植田総裁は「引き続き金利を上げていく」と発言するなど、タカ派(利上げに積極的)な姿勢を示しました。 一方、FRB(米連邦準備理事会)は同日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で予想通り政策金利を据え置きました。パウエルFRB議長は会合後の記者会見で「早ければ9月に利下げが可能になる」と発言しましたが、その後に公表された主要な経済指標が市場予想を下振れたことを受けて、市場では米国の景気後退懸念が台頭、ハイテク関連企業の業績への失望も相まって主要株価指数が大きく下落しました。 結果、米ドル円相場は7月11日に付けた161円台から8月5日の141円台まで、わずか1ヶ月余りの間に20円も円高が進行する事態となりました。 短期間の間に円急騰をもたらした資本フローとして、第1に投機筋による円売りドル買いポジション(建玉)の巻き戻しが挙げられます。投機筋の通貨に対する投資ポジションを示すシカゴ通貨先物市場のドル円投資ポジションを見ると、2024年7月2日は約2.4兆円と1999年以降では最大規模に積み上がっていた円売りポジションが、7月30日時点には約9,700億円まで取り崩されています。日米金利差を背景に積み上げられた円売りポジションの解消過程で生じた強力な円買いがドル円相場の下落につながったと見受けられます。 円キャリートレードの巻き戻しも円高に寄与 第2に円キャリートレードが挙げられます。円キャリートレードは、主に機関投資家やヘッジファンドなどが低金利の円を調達して、相対的に金利の高い通貨で運用する取引を指します。外国銀行の在日支店から海外本店への貸付額と米ドル円相場の関係を見ると、両者の間には比較的高い正の相関関係があることが確認できます。 円で調達された資金は、通常、米国債などで運用されていると想定されています。しかし、近年では好調であった米国株にも相当程度の資金が振り向けられていたと見られます。このため、米国株の下落が円高につながり易い状態にあったと想定されます。 日米金利差の縮小ペースに注目 投機筋による通貨先物ポジションにせよ、円キャリートレードにせよ、いずれも基本的には日米金利差に依拠した投資ポジションであることから、ポジション調整一巡後は再び日米金利差の行方を念頭に投資ポジションが形成されることが予想されます。 野村證券では7月の金融政策決定会合を受けて日米の金融政策見通しを変更しました。パウエルFRB議長が9月FOMCでの利下げ実施を示唆した背景には、インフレ高止まりリスク以上に、労働市場の冷え込みを背景とした景気悪化懸念があると見受けられます。この点を踏まえて野村證券では、24年中の米国の利下げ見通しを2回(9月、12月)から3回(11月を追加)へ変更しました。 日本銀行は7月の決定会合で利上げを実施し、植田総裁は過度の金融緩和策の是正に積極的な姿勢を示しました。日銀の金融政策に関して野村證券では、従来の据え置き見通しから、24年中に1回(12月会合を有力視)、25年中に2回(4月、7月)の利上げへと変更しました。 野村證券では、短期的には一段の円高リスクが残ると判断し、24年9月末のドル円見通しを143円へ下方修正しました(前回は150円)。ただし、米国経済後退局面入りと断定するのは時期尚早であり、24年10-12月期にはトランプ氏勝利を織り込んだドル高圧力再燃の可能性も残るため、現段階では24年12月末の予想は148円で据え置きました。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) ご投資にあたっての注意点
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2024/08/10 07:30
【特集】令和のブラックマンデー、全治半年の見込み
※画像はイメージです。 2024年前半の日本株市場は、日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)がそろって34年ぶりに史上最高値を更新するなど順風満帆の相場展開を見せていましたが、年後半に入って暗転しています。日銀のタカ派(利上げに積極的)化懸念と米国の景気下振れリスクに加え、それらに伴う円高加速への警戒感が市場で強まった結果、8月に入って歴史的な急落に見舞われました。 日経平均株価は、今年7月11日高値からわずか1ヶ月弱で1万円を超える大幅下落となり、8月5日(月)には前営業日比で4,451円安(12.40%安)の歴史的な急落となりました。1営業日の騰落としては、1987年10月20日のブラックマンデー(3,836円安)を上回る歴代1位の下落幅で、下落率はブラックマンデーの14.90%安に次ぐ歴代2位となります。 その一方で、各種テクニカル指標が軒並み極端な売られ過ぎを示唆する水準まで低下したことから、翌6日以降は自律反発に転じています。8月6日は一転して歴代1位の上昇幅(上昇率では歴代4位)となる前営業日比で3,217円高 (10.23%高) の過去最大となる急反発となりました。過去の歴史的な急落時は、その後に歴史的な急騰がワンセットになっているケースがほとんどです。当面は上下に値動きの荒い相場展開を覚悟する必要がありそうです。 今年7月以降の株価急落と、1987年のブラックマンデーや2008年のリーマンショック、2020年のコロナショック等の過去の急落局面とその後の株価の推移を見てみましょう(下図)。一番深く、長い調整となったのはリーマンショック後の調整ですが、当時は金融危機と呼ばれる状況で、深刻な信用収縮も起こっていました。一方、ブラックマンデーやコロナショック時の株価の動きはどうだったのでしょうか。両ケースともに直前の高値から1ヶ月前後で大底をつけ、その後は一時上値を抑えられる局面はあったものの、半年程度で急落前の高値前後まで値を戻しています。 過去の経験を参考とすれば、今回は、米国や日本で金融危機や信用収縮は発生しておらず、後者のパターンに当てはまりそうです。この先、8月中は引き続きボラタイルな展開が続く可能性はありますが、時間の経過とともに徐々に下値を固めていくとみられます。その後は、戻り待ちの売りをこなしつつ、年末に向けて本格的な戻り相場入りとなることが期待されます。 テクニカル分析は過去の株価・為替等の値動きを分析・表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。また、記載されている内容は一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 ご投資にあたっての注意点
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2024/08/10 07:00
【来週の予定】景気後退懸念を受けて米ハードデータへの注目が高まる
来週の注目点:米国・中国のハードデータと日本の4-6月期実質GDP 米国の景気後退懸念に端を発した世界的な株安は、急速な円高を伴って日本株を直撃しました。日経平均株価は8月5日に急落した後、6日は反発しましたが変化幅、変化率とも歴史的な変動を記録しました。7日に内田日銀副総裁による「市場が不安定な状況では利上げしない」旨の発言を受けて、日経平均は一旦、落ち着きを取り戻しています。 今週の米国では13日(火)に7月生産者物価指数、14日(水)に7月消費者物価指数が発表されます。これまではインフレ鎮静化が利下げ要件と見られてきましたが、景気後退懸念を受けて重要度は低下していると見ています。景気の先行きを予想する上では、15日(木)の8月NY連銀およびフィラデルフィア連銀の製造業景気指数、16日(金)の8月ミシガン大学消費者マインド(速報値)などの景気に対して先行性のあるサーベイデータに加え、7月小売売上高、7月鉱工業生産(いずれも15日発表)、7月住宅着工・建設許可件数(16日発表)など、実際の経済活動を計測したハードデータが注目されます。 中国では15日(木)に7月小売売上高、鉱工業生産、1-7月固定資産投資、不動産投資と重要な月次のハードデータが発表されます。製造業の在庫調整は順調に進展していることから、中国経済の先行きを巡っては個人消費と不動産市況の動向が注目点です。 日本では15日(木)に4-6月期の実質GDP(1次速報値)が発表されます。1-3月期は前期比年率-2.9%と大幅に落ち込みましたが、主因は能登半島地震などの外生的・一時的要因であったことから市場ではリバウンドが予想されています。野村證券では、輸出や民間消費、民間企業設備投資、公共投資等が実質GDP押し上げに寄与する一方、輸入や民間在庫が押し下げに寄与する結果、4-6月期は同+0.9%成長にとどまると予想しています。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2024年8月9日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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2024/08/09 16:08
【野村の夕解説】日経平均株価、小幅に反発 193円高(8/9)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 米国では新規失業保険申請件数が市場予想を下回り、米国景気の後退懸念が和らぎ、米国株主要3指数がそろって上昇しました。この流れを引き継ぎ本日の日経平均株価は前日比441円高の35,272円で始まりました。外国為替市場では朝方に1米ドル=147.40円台と、昨日17時台からおよそ1円程度円安に推移し、これを背景に日経平均株価は一時前日比840円高まで上げ幅を拡大させました。しかし、後場に入ると徐々に上げ幅を縮め、一転し前日比マイナスとなりました。その後は一時前日比386円安となったものの、再度前日比プラスへと転じました。終値は193円高の35,025円となり、反発して本日の取引を終えました。個別企業では、前日の取引終了後に発表されたリクルートホールディングスの決算が好感され株価が大幅に上昇しました。終値は前日比6.80%高となり、ソフトバンググループ(約69円押し上げ)ともに、日経平均株価を約51円押し上げました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 米国では14日(水)に7月のCPI(米消費者物価指数)が発表されます。市場予想通り米国のインフレ率が緩やかな鈍化が明確になれば、米株式市場のボラティリティー(変動率)が和らぎ、日本株市場にも安心感が広がると考えられます。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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2024/08/09 12:00
【今週のチャート分析】8月5日に史上最大の下落幅、その後反発へ
※画像はイメージです。 ※2024年8月8日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 5日に史上最大の下げ幅となった日経平均 今週(8月5日~)の日経平均株価は、米国景気悪化懸念による米国株安や、一時1ドル=141円台まで急速に円高が進行したことなどを嫌気して、大幅下落となりました。8月5日は、前営業日比4,451円安と史上最大の下げ幅となりました(図1)。 (注1)直近値は2024年8月8日時点。 (注2)出来事の日付は現地時間ベース。7月17・31日の報道は日本時間。(注3) 2024年7月11日・7月12日の為替介入は各種報道を元に記入。(注4)業種別株価は、TOPIX17業種ベース。業種表記は一部略称。 (出所) 日本経済新聞社、 ブルームバーグ、各種資料より野村證券投資情報部作成 フシを次々と下抜けた後、6日に自律反発 チャート面からこれまでの動きを振り返ってみましょう(図2)。 日経平均株価は、今年7月11日高値(取引時間中ベース:42,426円)からチャート上のフシを次々と下抜け、8月5日に一時31,156円まで下落し、約1ヶ月で1万円を超える大幅下落となりました。しかし、25日移動平均線からの乖離率がマイナス20%超え、RSIが11%台など、各種テクニカル指標は軒並み極端な売られ過ぎの水準まで低下したことから、翌6日は一転して自律反発に転じ、歴代1位の上昇幅(上昇率では歴代4位)となる前営業日比で3,217円高の急反発となりました。 (注1)直近値は2024年8月8日。 (注2)日柄は両端を含む。(注3)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。 (出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 戻りのメドは3万6000円台後半 次の戻りのメドとして、今年7月以降の下落幅の半値戻し水準(36,791円)や、200日移動平均線(8月8日:36,896円)等が意識されます(図2)。 一方、当面の戻りが鈍く、再度調整となる場合は、8月5日安値(31,156円)に向けて二番底を固めに行く展開が見込まれます(図2)。 超長期トレンドは継続中 歴史的下落を演じた株価ですが、2010年代から続く、超長期上昇トレンド自体は継続中だと考えられます(図3)。 (注1)直近値は2024年8月8日。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。 (出所)日本経済新聞社、各種資料より野村證券投資情報部作成 今回の下落は、これまで概ね下支えとなってきた、5年移動平均線(8月8日:28,492円)以上の価格帯での出来事です。この先、しばらくは、振れ幅の大きい展開が続くとみられますが、徐々に落ち着きを取り戻していくと考えられます。 日経平均は歴史的大幅安 過去の急落局面に学ぶ 今回は、今年7月以降の株価急落と、1987年のブラックマンデーや2008年のリーマンショック、2020年のコロナショック等の過去の急落局面とその後の株価の推移を見てみましょう(図4)。 (注1)直近値は2024年8月8日時点。 (注2)下落局面はすべてを網羅しているわけではない。(注3)ブラックマンデーや、コロナショック時や今回の下落局面は、直前の高値を起点とした。リーマンショックは2008年9月15日であり、その前営業日を起点とした。 (出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 一番深く、長い調整となったのはリーマンショック後の調整ですが、当時は金融危機と呼ばれる状況で、深刻な信用収縮も起こっていました。一方、ブラックマンデーやコロナショック時の株価の動きはどうだったのでしょうか。両ケースともに直前の高値から1ヶ月前後で大底をつけ、その後は一時上値を抑えられる局面はあったものの、半年程度で急落前の高値前後まで値を戻しています。 ブラックマンデー類似なら回復まで半年程度か 過去の経験を参考とすれば、今回は、米国や日本で金融危機や信用収縮は発生しておらず、後者のパターンに当てはまりそうです。この先、8月中は引き続きボラタイルな展開が続く可能性はありますが、時間の経過とともに徐々に下値を固めていくとみられます。その後は、戻り待ちの売りをこなしつつ、年末に向けて本格的な戻り相場入りとなることが期待されます。 (野村證券投資情報部 岩本 竜太郎) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2024/08/09 08:21
【野村の朝解説】米景気への懸念後退でダウは683ドル高(8/9)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 8日の米国株式市場は、主要3指数が揃って上昇しました。先週末の7月米雇用統計の弱い結果に加え、このところ米新規失業保険申請件数は増加傾向にあり、米国では雇用情勢の悪化が警戒されていました。しかし、朝方発表された8月3日までの1週間の米新規失業保険申請件数は23.3万件と、前週比で1.7万件減少しました。労働市場の底堅さが示されたことで米景気後退に対する過度な懸念は和らぎ、NYダウは終日しっかりとした値動きとなりました。為替市場では先週末の米雇用統計がドル円相場の急落の一つのきっかけとなりましたが、急速なドル安円高の動きは一服しており、ドル円相場は概ね147円前後での推移が続いています。 相場の注目点 今週の米国株式市場は大荒れ相場となりました。米景気に対する先行き警戒感から、週明け5日のNYダウは約1年11ヶ月ぶりに1,000ドル超の急落となりました。翌6日は買い戻しの動きから300ドル近く上昇したものの、7日には再び下落に転じるなど、不安定な値動きが続きました。本日の上昇は、米国の雇用関連指標が市場予想よりも改善したことを受けて過度な懸念が和らいだことが材料視されたとみられますが、先行きを警戒する投資家は依然として多く、引き続き不安定な相場展開が予想されます。8日は米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを急ぐとの見方が後退、米10年国債利回りは一時節目の4%を上回り、米2年国債利回りは4%台へ再上昇しました。FRBの利下げによる景気下支え期待が相場を支えていることから、目先は14日(水)の7月米消費者物価(CPI)が注目されます。なお、本日は中国で7月の物価統計(CPI、PPI)が発表されます。 (投資情報部 引網 喬子) (注)データは日本時間2024年8月9日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点