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09:00
【投資と税金】上場株式等の大口株主要件の見直し
令和4年度の税制改正により「大口株主等」の定義が、令和5年10月1日以降に支払いを受ける配当等から見直されました。今回の税制改正で対象となる方は税務署への申告が必要となります。具体的にどのような見直しがあったのか、大手町トラストの税理士に伺いました。 はじめに 本年10月1日以後に支払を受ける配当等について、 「上場株式等に係る配当所得等の課税特例」の対象となる配当等の範囲が見直されました。個人として保有する上場株式等と、法人税法上の同族会社※を通じて保有する分とを合算して持株割合3%以上の大口株主に該当する場合は同特例の対象外となり、課税方式が総合課税のみに限定されるという改正が実施されました。 ※上位3株主グループが発行済株式等50%超を有する法人 上場株式等に係る配当所得等の課税特例 上場株式等に係る配当所得等の課税特例とは、配当所得等の課税方式について、1. 総合課税、2. 申告分離課税、3. 申告不要 のいずれかを選択できる制度をいいます。同特例の適用を受けることができる株主は、「持株割合3%未満」の場合とされており、持株割合3%以上の大口株主に該当すると同特例の対象外となることから、その場合は1.の総合課税のみが適用されます。 具体例(変更の影響を受ける株主) 改正前 株主Aの持株割合は①のみの1.2%と判定され、3%未満のため大口株主に該当しませんでした。 改正後(現行税制) 株主Aの持株割合は①と②の合計3.1%と判定され、3%以上のためAは大口株主に該当し、配当所得等を総合課税で申告する必要があります。 報告書等の提出 10月から配当等の支払をする会社側(上記具体例におけるC社)は、配当等の支払に係る基準日において持株割合1%以上の個人株主について、税務署長への所定の報告書等の提出が必要です。 むすびに 本件は令和4年度の税制改正にて実施が決定しており、十分な周知期間があったと思われますが、大口株主に該当する場合には申告時に注意が必要です。 この資料は情報提供を唯一の目的としたもので、投資勧誘を目的として作成したものではありません。この資料は信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、野村證券は、その正確性および完全性に関して責任を負うものではありません。この資料は提供されたお客様限りでご使用いただくようお願いいたします。詳しくは、所轄税務署または顧問税理士等にご確認ください。 ご投資にあたっての注意点
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12/08 09:30
【銘柄紹介】11月IPO銘柄のパフォーマンスと12月IPO銘柄の紹介
2023年11月のIPO銘柄のパフォーマンスと、今後のIPOの予定を紹介します。 11月IPO銘柄のパフォーマンス 11月8日 上場 DAIWA CYCLE(5888)事業内容: 自転車及び自転車パーツ・アクセサリー等の商品販売、自転車の整備及び修理サービスの提供 11 月16 日 上場Japan Eyewear Holdings(5889)事業内容:アイウェアの企画・デザイン・製造・卸及び販売 11月22日 上場 バリュークリエーション(9238)事業内容: マーケティングDX 事業、不動産DX 事業(住宅解体のマッチングプラットフォームの運営) (注)初値及び直近月末終値が公開価格に対して上回っているものは赤、下回っているものは青で表示(出所)日本取引所グループのウェブサイト、各新規上場会社の有価証券届出書等公表情報を基に野村證券作成 12月以降のIPO銘柄 12月4日 上場 アスマーク(4197)事業内容: マーケティング・リサーチ事業 12月6日 上場 QPS研究所(5595)事業内容:小型 SAR 衛星の開発、製造、小型 SAR 衛星より取得した画像データ販売 12月12日 上場 アウトルックコンサルティング(5596)事業内容:経営管理システム「Sactona」の開発、導入開発、経営管理コンサルティングの提供 12月12日から12月18日のいずれかの日(上場日の4 営業日前までに決定予定) 上場 ブルーイノベーション(5597)事業内容:複数のドローン・ロボットを遠隔で制御し、統合管理するためのデバイス統合プラットフォームであるBlue Earth Platform®(BEP)をベースに、点検・教育・物流等のサービスを開発・提供 12月15日 上場 S&J(5599)事業内容:コンサルティングサービスとセキュリティ監視・運用サービスである SOC サービスを提供するサイバーセキュリティ事業 12月15日 上場 魁力屋(5891)事業内容:ラーメンチェーン展開等の飲食事業 12月18日 上場 雨風太陽(5616)事業内容:CtoC プラットフォーム「ポケットマルシェ」運営、生産者の販路拡大等を目的とした自治体向け支援サービス、生産者のもとで学ぶ地方留学プログラムの提供等 12月19日 上場 エスネットワークス(5867)事業内容:財務・会計分野を中心とした実務実行支援型コンサルティングサービスの提供 12月20日から12月26日のいずれかの日(上場日の4 営業日前までに決定予定) 上場 ロココ(5868)事業内容:IT アウトソーシング・BPO サービス及びシステム開発・保守・導入支援等 12月20日 上場 ナイル(5618)事業内容:自動車産業 DX 事業(オンライン主体のマイカーサブスク関連サービスを提供)、ホリゾンタル DX 事業(DX・マーケティングに関するコンサルティングなどを提供) 12月21日 上場 マーソ(5619)事業内容:人間ドック・健診の予約プラットフォーム「MRSO.jp」及び各種 DX 支援サービスの開発・運営等 12月22日 上場 ヒューマンテクノロジーズ(5621)事業内容:勤怠管理を中心としたクラウドサービスの開発及び提供 12月22日から12月28日のいずれかの日(上場日の4 営業日前までに決定予定) 上場 早稲田学習研究会(5869)事業内容:小学生・中学生・高校生を対象とする学習塾事業の経営 12月25日 上場 ナルネットコミュニケーションズ(5870)事業内容:オートリース企業をはじめとする法人(自動車関連企業)・個人ユーザーに対する車両管理やメンテナンス管理事業 12月27日 上場 yutori(5892)事業内容:衣料品及び雑貨等の企画並びにそれらの小売・卸売事業 (注1)TOKYO PRO Marketの新規上場会社は含まれない。(注2)全てを網羅しているわけではない。(出所)日本取引所グループのウェブサイト、各新規上場会社の有価証券届出書等公表情報をもとに野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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12/07 19:00
【銘柄ランキング】投資家に買われた「配当利回り3%以上」銘柄は?トップ20を紹介(2023年9-11月分)
銀行・鉄鋼・海運セクターが上位を維持 メガバンク3社がランキングに名を連ねています。1位は三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)、11位はみずほフィナンシャルグループ(8411)、そして17位は三井住友フィナンシャルグループ(8316)です。銀行セクターの上半期決算では、大手5行全てで通期の親会社株主利益計画に対する進捗率が50%以上の水準となりました。長期金利の上昇による国内外の債券関連損失を計上しながらも、好調な本業収益や円安の影響を追い風に打ち返しました。 鉄鋼セクターからは、日本製鉄(5401)が4位、神戸製鋼所(5406)が5位、JFEホールディングス(5411)が20位にランクインしています。鉄鋼セクターの上半期決算では、中国の鋼材需給の悪化や、原料炭価格の高騰による高炉の輸出環境の悪化などが確認されました。しかし、複数の企業が経常利益予測を上方修正するなど、厳しい状況下でもセクター全体としては堅調な業績を維持しています。 海運セクターからは、商船三井(9104)が6位、川崎汽船(9107)が16位、日本郵船(9101)が19位にランクインしました。海運セクターの上半期決算では、自動車船事業の強さが再確認されました。低迷していたコンテナ船事業も、スポット(随時契約)運賃の下落に歯止めがかかり始めているようです。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) (注1)画像はイメージ。(注2)各種データは2023年12月4日時点。(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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12/05 19:00
【週間ランキング】最も閲覧数が多かった個別銘柄は?トップ10を紹介(12/5)
デンソーとさくらインターネットが急浮上 デンソー(6902)は、前週の24位から4位に順位を大きく上げました。トヨタ自動車(7203)、豊田自動織機(6201)、アイシン(7259)の3社は11月29日、デンソーの株式を売り出すと発表しました。売り出しの規模は、3社合計で約6,700億円(29日終値ベース)に達します。同日、デンソーは株式市場への影響を抑えるため、上限2,000億円の自社株買いを行うと発表しました。事前の観測報道があったことも影響し、発表の翌日である30日のデンソー株は前日比0.70%高で取引を終えました。 さくらインターネット(3778)は、前週のランキング圏外から6位に急上昇しました。デジタル庁は11月28日、政府や地方自治体のシステム共同基盤「ガバメントクラウド(政府クラウド)」の提供事業者としてさくらインターネットを追加することを発表しました。国内企業が選ばれるのは初めてのことです。発表日である28日のさくらインターネット株は前日比25.0%高と制限値幅の上限(ストップ高)で取引を終えました。 神戸製鋼所(5406)は、前週の11位から9位に上昇しました。同社は11月28日、ユーロ円建ての新株予約権付社債(転換社債=CB)を発行し、約500億円を調達すると発表しました。この資金のうち、約300億円は借入金の返済に、残りの約200億円は鉄鋼事業や電力事業の脱炭素化への投資に充てられる予定です。発表の翌日である29日、神戸製鋼所株は前日比4.29%安で取引を終えました。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) (注1)画像はイメージ。(注2)各種データは2023年12月4日時点。 ご投資にあたっての注意点
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12/05 09:30
【業界展望】働き方改革の建設業界への影響と対応
24年4月から働き方改革の適用が始まる 建設業界では、2024年4月から残業時間の規制が始まる。他の産業に遅れて始まるかたちではあるが、これまで特別条項を結べば残業の上限規制がなかったところ残業時間の上限が設けられ、守らなければ罰則を受けることとなる。具体的な残業時間の制限は月45時間、年360時間となり、臨時的な特別な事情がある場合でも、単月で100時間未満、複数月平均80時間以内、年720時間以内に収めなければならない。建設現場では土日や深夜作業の稼働により残業時間が多いため、現場の稼働日の削減や交代勤務の推進などが必要な状況である。 官公庁工事における足元の発注案件では4週8閉所(週休2日)が義務付けられており、土木では4週8閉所以上の工事が22年度において55%に達し、労働時間の削減が進められている。一方、民間向けが中心である建築では4週8閉所以上の案件は31%に留まっており、働き方改革が遅れている。発注者の理解が進んでいないことや、既に契約済みの案件での工期の延伸は難しいケースが多いことが背景にある。 生産性の改善や受注抑制が必要な状況 既に契約済みの案件では、発注者側がテナントの募集等を始めていることなどもあり、工期の延伸は難しい。今後ゼネコン各社は生産性の改善や受注する案件の受注量の調整等が必要な状況であると言える。例えば、ゼネコンでは生産性の改善に向け、BIM / CIMを用いた図面のデジタル化や各種資料のデータ化とクラウド上での管理・共有、iPadやスマートフォンを用いた写真撮影と図面などの各種データとの紐づけ、測量や管理業務でのドローンの活用などを進めている。設備工事の会社では、標準化された部材の組み立てを工場で行い現場施工の削減を目指すオフサイト工法を推進している。 足元のゼネコン各社の繰越工事高は大手ゼネコンを中心に再開発案件や工場、物流倉庫案件などで高水準であり、施工キャパシティも上限に近いだろう。昨今では品質面での問題が発覚する事案も散見される。ゼネコン各社は品質と工程管理の徹底に向け、受注量の調整と余裕を持った人員配置が求められよう。 競争緩和に寄与も短期はコスト上昇が懸念 現場の施工を行う技能労働者は若年入職者の減少と高齢化が進展し、総数が減少傾向にある。残業時間の規制に伴い技能労働者の労働時間が制限されることになれば、労働需給はもう一段タイト化すると見込まれる。その中で労務費上昇による採算悪化や売上の伸び悩みが建設各社の業績面でのダウンサイドリスクとなろう。 特に都市部では工事量が多く労働需給が既にひっ迫しており、労働需給のタイト化が一段と進めば技能労働者の確保が難しくなるリスクがある。手持ちに大型の再開発案件を数多く抱える大手ゼネコンでは工程遅延が発生すれば追加の労務費が拡大するリスクに留意したい。 中期的にはゼネコン各社の受注抑制により競争環境が緩和し、受注時利益率が一段と上昇する可能性もある。14年度や15年度では発注量が増加傾向にある中で施工キャパシティ以上の発注があり、値上げが進みゼネコン各社の業績は17年度まで上向き基調となった。今後発注が見込まれる大型案件のパイプラインは再開発案件や工場案件等により豊富であり、労務費の上昇の価格転嫁も含めて、値上げを進めることができる状況であろう。 人手不足解消に向けた処遇改善も必要 慢性的に建設業界の賃金は製造業などに比べ低く、技能労働者の減少傾向に歯止めをかけるには長時間労働の是正と同時に処遇の改善が必要であろう。これまで、ゼネコン各社では厳しい価格競争が発生し、協力会社の労務単価の引き上げは進まなかったと見られる。足元では労働需給のひっ迫と豊富な発注案件をうけて競争は緩和に向かっている。環境の変化を追い風として慢性的な人手不足を解消するには、中長期的に技能労働者の処遇や働く環境の改善を継続させて進める必要があると言える。 技能労働者の賃金が低い水準にとどまっている背景として、重層下請構造の問題も一因となっていよう。その中で、大手ゼネコンの鹿島は21年より、重層下請構造の改革に取り組んでいる。具体的には実質的な関与の少ない仲介業者の排除や、一次会社の従業員の能力向上や多能工化の取り組みに支援を進めている。同社では、23年2月時点で二次下請け以内の施工現場の比率は74%まで上昇し、重層下請構造の施工は減少している。重層下請構造は安全や品質面で管理が不十分となるリスクも抱えており、働き方改革と合わせて各社で早急な対応が求められよう。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 濱川 友吾) ※野村週報 2023年12月4日号「産業界」より ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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12/04 09:30
【銘柄紹介】信越化学/三浦工業/東京エレクトロン
信越化学工業(4063) 化学 塩ビと半導体ウエハの世界トップ企業 塩化ビニル樹脂(塩ビ)、半導体シリコンウエハで世界首位の大手化学メーカー。エコカーやロボット向けなどのレアアース・マグネット、半導体用フォトレジスト、光ファイバー用プリフォーム、化粧品用シリコーン、建材や塗料用セルロース等でも高い競争力を誇る。 米国では金利の高止まりが持続しており、住宅需要に強い回復感は見えていない。そうした中で当社は、塩ビの新プラント稼働による生産性の改善や強固な販売力を背景に、底堅い業績を維持できている。米国では人口増加が続いていることから、米金利がピークアウトすれば需要が一気に拡大に転じる可能性があるだろう。 半導体材料の先行きに明るさが見える 半導体の在庫調整の進展により、足元でメモリのビット成長は急回復しており、会社は先行きの半導体材料需要の回復に自信を深めている。300mm ウエハの当社売上は顧客在庫が多く、2024年1~6月に向けて強い回復は期待しがたいが、半導体メーカーの稼働改善に伴い、23年10~12月期から前四半期比で改善に向かうだろう。 当社は300mm ウエハの長期契約を28.3期分までほぼ結んでいる。グリーンフィールド投資(海外直接投資の一種)によるコスト増を補うために、25.3期以降の販売分については販売価格が上昇する形で顧客と契約を結んでいるが、こちらも顧客に遵守してもらうとしている。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 岡嵜 茂樹) 三浦工業(6005) 機械 営業利益の安定成長力を評価 当社は国内貫流ボイラ市場のシェア約6割を誇るトップメーカーである。当社はメンテナンス事業に注力しており、機器にセンサーを設置し、24時間のオンライン監視体制で事前に異常を検知し、故障停止を未然に防ぐ“ビフォアメンテナンスサービス”を強みとする。例えば更新期間が15年のボイラの場合、契約開始年から15年目にかけてメンテナンス料金が段階的に上昇していき、安定的なキャッシュフローが生み出される仕組みとなっている。国内メンテナンスは全社営業利益の約半分を占め、安定した収益基盤として業績を支える。海外でのメンテナンス契約数もボイラの新規販売に伴い拡大している。 海外は中国筆頭に拡大を図る 当社はこれまで中国を注力地域としてきており、足元でもその方向性に変わりはない。中国経済の減速感が強まる中、顧客の投資意欲の停滞といった逆風を受けるものの、非効率なガス焚きボイラを対象に無料診断を行い、当社ボイラへの入れ替え提案を行う。メンテナンス契約率は向上してきており、中国事業の収益は安定してきている。また、米州事業の売上は中国事業と同程度まで成長してきており、代理店との協力関係の強化が奏功しているとみる。 2024.3期は国内ランドリー企業の持分法適用の影響もあり、営業利益は前期比横ばいにとどまるが、25.3期以降は年率5~6%の安定した成長を予想する。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 王 博瓊) 東京エレクトロン(8035) 電気機器 日本一かつ世界有数のSPEメーカー 当社は半導体製造装置(以下、SPE)の製造を主に行っており、2022年の世界SPE市場におけるシェアは世界4位の12%程度と、世界有数のSPEメーカーである。装置ポートフォリオは幅広く、売上構成比が高い順にエッチング装置、コーター・デベロッパ、成膜装置、プローバなど。特に露光装置に付随する形でレジストの塗布や現像を行うコーター・デベロッパでは市場を独占するなど、ウエハのパターニングに使用される装置が主軸である。足元では生成AI(人工知能)用途向けにウエハボンダ出荷が増加するなど、ニッチ製品での競争力も有する。きめ細やかなカスタマーサポートも当社の強み。 短期的には業績は底打ち、回復局面へ SPE市場の底打ちにつれ、当社も23年7~9月期は前四半期比で増収と業績底打ち感が生じている。今後は生成AI用途による押上げもあるDRAM からSPE 市場の回復が始まると見るが、当社の装置・顧客ポートフォリオを勘案すると、当社はその好影響を十分に享受できると言えよう。 中長期的には各装置のシェア争いに注目する。特にエッチング装置は市場規模が大きく中期的な成長余地が大きいため、世界的に競争が最も激しい領域である。当社は23年6月に極低温でのエッチング技術を発表、3D NAND(3次元構造NAND型フラッシュメモリ)のメモリホールのエッチング工程の奪取を狙っている。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 吉岡 篤) ※野村週報 2023年12月4日号「銘柄研究」より ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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12/03 19:00
【特集】ビル&メリンダ・ゲイツ財団の資産運用戦略とは?
政府は財団などの役割を明確化へ 岸田文雄首相は 2023年10月2日に、「受益者に適切な運用の成果をもたらすよう、アセットオーナーに求められる役割を明確化したアセットオーナー・プリンシプル(原則)を、来年夏を目途に策定する」と述べました。アセットオーナーとは、資金の運用等を受託し自ら企業等に投資を行う資産運用会社に対して、当該資金を出す資産保有者のことであり、年金基金、保険会社、大学基金、財団、美術館、博物館などが含まれます。 米国最大級の財団、ビル&メリンダ・ゲイツ財団 米国では、アセットオーナーの多くが積極的な資産運用を行っています。米国の財団の中でも米国最大級の資産規模を有するビル&メリンダ・ゲイツ財団は、ビル・ゲイツ氏、メリンダ・フレンチ・ゲイツ氏(ビル・ゲイツ氏の元配偶者)、ウォーレン・バフェット氏から寄付を受け入れ、助成活動を行っています。幅広い助成分野の中でも、特に公衆衛生の向上や健康の増進に取り組んでおり、世界保健機関(以下、WHO)のスポンサーとして著名です。同財団が WHOに助成した支出額は、世界の主要国を上回る規模となっています。 2020-2021 年度の WHO への助成支出額ランキング (出所)WHO のウェブサイトより野村資本市場研究所作成 同財団に投資助言を行うカスケードの投資戦略 こうした助成活動に必要な財政的資源を確保すべく、同財団は多様な資産への分散投資を行っています。本記事では、同財団の資産運用を担当するビル&メリンダ・ゲイツ財団トラスト(以下、BMGT)と、BMGTへの投資助言を行っているカスケードの運用戦略についてご紹介します。 カスケードは、ビル・ゲイツ氏が保有する 1,100 億ドルもの個人資産(2023 年 10 月時点の推定値)の運用行うファミリーオフィス(個人富裕層やその親族の資産管理会社)であり、ビル&メリンダ・ゲイツ財団への投資助言も同時に行っています。カスケードは、BMGTの資産を運用するにあたって、株式、債券、コモディティ(商品)、デリバティブ(金融派生商品)など多様な資産に投資しています。カスケードの2022年度末時点の投資エクスポージャー(投資配分)は、株式(非上場株式を含む)が約59%、債券が約21%、バークシャー・ハザウェイB株式が約11%、デリバティブ及びその他が約5%、コモディティが約4%となっており、株式を主体とするポートフォリオを構築しています。なお、カスケードは、株式や債券などを取引するにあたって、カスケード自身が個別銘柄に直接投資しているだけではなく、外部運用会社の株式ファンドや債券ファンドに投資する場合もあります。 BMGT の投資先の内訳 (注) 図表の値は、米国会計基準に基づく公正価値である。(出所)BMGF の決算報告書より野村資本市場研究所作成 カスケードは、その他、運用担当者が投資先企業の取締役に就任し同企業の価値向上を促したり、プライベート・エクイティ・ファーム(主に未上場株式に投資する運用会社)と非上場企業に共同投資したりすることもあります。多様な手法を通じて、多様な資産に分散投資することで、BMGTの資産規模を拡大し、同財団の助成活動をサポートしています。 日本の財団も分散投資を行う必要性 日本の財団の多くは、預貯金・債券に偏重したポートフォリオを構築していますが、今後は助成活動に必要な財政的資源を確保すべく、専門の資産運用会社等から投資助言を受け、多様な資産に分散投資を行う必要があると考えられます。また、今後策定されるアセットオーナー・プリンシプルにおいては、アセットオーナーの運用高度化を図るべく、分散投資義務等を規定することを検討してもよいのではないでしょうか。 ※野村資本市場研究所レポート「ビル&メリンダ・ゲイツ財団の資産運用戦略及び助成活動-日本に求められるアセットオーナー改革への示唆-」(2023年11月8日(水)、岡田功太・船津太佑)より、FINTOS!編集部にて編集 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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12/01 09:30
【業界展望】小売業界では消費の二極化の影響が続こう
消費の二極化は今後も続こう 直近の小売各社の販売動向では、引き続き経済活動活発化の恩恵が見てとれている。ドラッグストアでの化粧品需要の増加、コンビニエンスストアへの立ち寄り需要の回復などが続いている。アパレル関連では、高気温の影響が秋冬物の販売に向かい風となっているが、外出需要が販売を下支えしている状況も見て取れる。百貨店各社についても、免税売上高の拡大も含めて追い風を引き続き受けていると言えよう。 一方、食品関連などで単価上昇が続いており、インフレ環境下における消費者の消費行動は選別的になってきている。家電など耐久消費財の需要が弱めである点に大きな変化はなく、インフレを背景に消費者が家電の購入を控える動きが続いていると想定される。また、生活必需品関連では節約志向の影響も見えており、ディスカウントストア等の販売は順調に推移している。 インフレ環境が続く点に鑑みれば、消費の二極化が続くと予想される点を念頭においた投資戦略が重要となってこよう。同じ業界内でも消費者の支持を得られるかによって、企業間の格差がさらに広がる可能性もあると考える。消費の二極化の観点では、高付加価値な商品やサービスで消費者需要を捉えられる企業の業況にまず注目できると考える。低価格に強みを持ち、節約志向の受け皿となる企業や、独自の要因により業績回復や業績成長が見込まれる企業の業況にも注目したい。 免税売上の貢献に加え、高額品販売の順調な販売が続く点に鑑みると、百貨店の業況は2024年にかけても良好だろう。百貨店の中では、経費抑制やCRM(顧客関係管理)戦略の強化など独自の取り組みを評価できる三越伊勢丹ホールディングスの事業動向に注目している。また、統合シナジーの発現が続く中、化粧品の需要回復、免税売上の貢献が予想されるマツキヨココカラ&カンパニーの業況にも注目している。節約志向の受け皿の観点では、消費者への価格面でのアピールが継続的な客数改善につながっているコスモス薬品の良好な販売は今後も続こう。独自要因の観点では、良品計画において新商品の取り組みが一定の成果につながる中、日本での売上・収益性の改善が見込まれる。 消費構造変化が百貨店への追い風に 消費の構造的な変化にも注目をしたい。日本では富裕層の世帯数や保有資産の増大、パワーカップル(高収入同士の夫婦)の増加などが進んできた。このような流れは百貨店など高額消費への追い風につながっていると野村では考えている。富裕層の増加等を背景に百貨店の高額品の販売は好調に推移している。美術・宝飾・貴金属の売上高ではコロナ前を上回る水準が続いているほか、ラグジュアリーブランドの婦人服などの販売も順調であると見られる。 若年新規顧客の取り込みも百貨店で進んでいる。例えば、大丸松坂屋百貨店の外商顧客の年齢階層別のシェアでは、20~40代の構成比が高まっている。パワーカップルの増加、企業経営者など若年富裕層の増加といった社会構造の変化そのものが百貨店での若年層顧客の増加につながっているとも言えるだろう。一方、若年層顧客をターゲットとしたブランドの展開、若年富裕層と相性の良いアートの強化、デジタルを活用したCRM など、若年層顧客を取り込むための各種施策も奏功していると野村では考えている。 富裕層の保有資産の状況については株式市場の動向等に依存すると言えるものの、富裕層の裾野の拡大、若年層の購買力の上昇といった点には継続性があると言えるだろう。百貨店各社は新たな顧客層を取り込むための施策を展開できており、新たな顧客層を今後も継続的に捉えていくことができるだろう。百貨店各社は中心顧客の高齢化という積年の課題から徐々に脱しつつあると言えるだろう。 パワーカップル化の進展と、保有資産額の多い富裕層の増加は、東京都を中心とした首都圏で特に顕著となっている。経済活動の東京一極集中の状況に大きな変化はないと想定されるため、賃上げによる高額消費の増加、資産効果による富裕層の消費刺激などは、特に東京都市圏で影響が出やすいことが予想される。東京での百貨店売上高は全国の販売動向と比べて継続的に良好に推移するなど、東京エリアの優位性は既に顕在化している。高額品や高品質商品の購買場所として、百貨店全般に優位性はあると野村では考える。ただし、東京エリアでプレゼンスを発揮できていれば、継続的な販売増を実現できる可能性が高いと言えるだろう。百貨店の中では、伊勢丹新宿本店を中心に高いブランド力を持ち、東京の販売構成比が大きい三越伊勢丹ホールディングスのポジショニングが良いと野村では考えている。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 山岡 久紘) ※野村週報 2023年11月27日号「産業界」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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11/30 19:00
【野村の動画】2024年12月末の日経平均株価は38,000円を予想
日本企業は値上げの文化を取り入れることで利益率を改善させ、2024年度と2025年度も増益基調が続くと見ています。2024年末の日経平均株価を38,000円と予想しますが、その背景を動画で解説いたします。 ご投資にあたっての注意点