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17:00
【Q&A】「有事の金買い」は有効な戦略だったか?その出口は?
投資家の皆様から関心の高い質問を専門分野のリサーチャーに聞いてみました! Q:「有事の金買い」は有効な戦略だったか?その出口は? 金融(地政学)不安の発生時に資産保全の必要性が高まることで安全資産としての金の価値が上昇するというのが一般的なロジックかと思います。近年、実際にそのような価格変動は発生していたのでしょうか。有事の際の金投資が有効かどうか教えてください。また、可能であれば、いつ「金売り」をすればよいのかの考え方もあれば教えてください。 A:過去「有効」だが高値での利益確定は難しい リーマンショック前後で当時の高値「1895ドル」へ 2007年に発生した米サブプライムローン問題とそれに続く国際金融危機(いわゆるリーマン・ショック)、そして2009年からの欧州債務危機の過程の中で金価格は上昇し、ロンドン金現物午後値決め値は2011年9月5日に当時の史上最高値1トロイオンス当たり1895.00ドルを記録しました。 コロナ禍~ウクライナ紛争で「2000ドル」突破 近年では新型コロナウイルス感染症拡大の際、2020年8月6日に同価格は現在の史上最高値記録2067.15ドルへ達しました。また、ウクライナ紛争勃発時にも同価格は記録更新には至りませんでしたが、2039.05ドルへ達し、史上最高値へ迫りました。このように国際的に経済へ深刻な悪影響が生じる可能性が顕著に高まった場合に金価格は大きく上昇しており、「有事の金買い」が発生していたケースはあります。 高値圏推移の期間の長さはまちまち 欧州債務危機の時には、金価格の高値圏での推移がやや長期化しました。2012年10月にEMS(欧州安定メカニズム)が発足し、危機に対する包括的な対策が整ってから金価格は低下し始めており、国際経済に対する不透明性が取り除かれるようになって金価格が下落したと評価できます。 現在はコロナ禍とウクライナ紛争の趨勢が影響 他方、新型コロナウイルス感染症拡大とウクライナ紛争勃発の時に関しては、金価格は高値を付けた後、比較的速やかに低下しています。ただし、いずれの場合も、市況抑制への明確なきっかけは見出せません。金価格が2000ドルを超えて達成感が生じたという市場のセンチメントが影響したことも考えられますが、過去の価格水準との比較感からすると、依然として有事の際の高値圏での金価格の推移が続いていると見ることも不可能ではありません。新型コロナウイルス感染症については変異株が発生し続けている中で近い将来に完全に落ち着くことは考え難い一方で、ウクライナ紛争が終結に至れば、金価格が大きく下落する可能性があるかもしれません。 米金融政策と金融情勢も総合的に検討して判断 金価格が上昇した要因が取り除かれれば金価格は下がると考えられますが、その要因が取り除かれたかを判断することは難しい上に、現在は米国の金融政策や金融情勢といった他の要因も金価格に影響しており、金価格の下落の時期に関しては、様々な要因を総合的に検討する必要があります。「有事の金買い」が比較的容易なのに比して、それに対する高値での利益確定は容易ではありません。 (出所)野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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12:00
【#風力発電】AI抽出15銘柄/日立造船、レノバ、三谷商事…
2022年の米国の発電量、再エネが石炭火力を抜く 米国エネルギー情報局(EIA)の発表によると、米国の発電量に占める再生可能エネルギーの割合が2022年に初めて年間で石炭火力を上回りました。再生可能エネルギーの電源別では風力発電の割合が最大となりました。昨年、バイデン政権下で成立した「インフレ抑制法」では再生可能エネルギーの導入支援が盛り込まれており、再エネの割合はさらに高まる可能性があります。仮に今後、風力発電の需要が増加した場合、日本企業にどのような影響を与えるのでしょうか。AI『xenoBrain』が「風力発電需要増加」の他シナリオへの波及をもとに、影響が及ぶ可能性がある15社を抽出しました。 ニューストピック:風力発電需要増加 『xenoBrain』は風力発電事業や電気設備工事事業を手掛けている企業などを中心に15銘柄をリストアップしました。 ・日立造船・レノバ・三谷商事・サンケン電気・明電舎・トーエネック・日本電設工業・コムシスホールディングス・きんでん・九電工・住友電設・関電工・中電工・日東工業・因幡電機産業 ※xenoBrain 業績シナリオの読み方 (注1)本分析結果は、株式会社xenodata lab.が開発・運営する経済予測専門のクラウドサービス『xenoBrain』を通じて情報を抽出したものです。『xenoBrain』は業界専門誌や有力な経済紙、公開されている統計データ、有価証券報告書等の開示資料、及び、xenodata lab.のアナリストリサーチをデータソースとして、独自のアルゴリズムを通じて自動で出力された財務データに関する予測結果であり、株価へのインプリケーションや投資判断、推奨を含むものではございません。(注2)『xenoBrain』とは、ニュース、統計データ、信用調査報告書、開示資料等、様々な経済データを独自のAI(自然言語処理、ディープラーニング等)により解析し、企業の業績、業界の動向、株式相場やコモディティ相場など、様々な経済予測を提供する、企業向け分析プラットフォームです。(注3)時価総額500億円以上の銘柄を表示している。xenoBrainのデータは2023年3月29日時点。(出所)xenoBrainより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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昨日 20:00
【業界展望】商社:24.3期は減益も高い利益水準が続こう
一過性を除く利益は引き続き高い水準 2023.3期10~12月期決算では、鉄鉱石や原料炭などの市況が前四半期比で下落した悪影響はあったが、エネルギー分野でLNG(液化天然ガス)などのトレードが好調に推移したこともあり、資源分野の業績は前四半期比で大きな落ち込みとはならなかった。非資源分野では、化学品関連事業が市況の下落で業績が軟化傾向となり、食品関連ではコスト上昇による悪影響などがあったが、自動車関連事業においては半導体不足を背景とした供給不足から高い販売マージンが続いた。くわえて、欧州の電力市況の上昇効果などからインフラ関連事業も好調な推移となったことで、非資源分野全体では高い水準の利益が続いた。結果的に23.3期10~12月期の大手7商社の一過性損益を除く親会社株主利益は前四半期比で横ばい圏の推移となった。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 短期業績の好調は続いており、資源分野では鉄鋼原料市況が上昇するなど一部で改善傾向がみられる。中国のコロナ規制緩和による鉄鋼製品需要の回復期待が背景にあり、鉄鉱石市況が回復傾向にある。原料炭市況についてもコロナ規制緩和にくわえ、中国が豪州産の石炭輸入を再開していることもあり、高い水準での推移となっている。商社の対TOPIX(東証株価指数)での相対株価は23.3期10~12月期の好調な決算や鉄鋼原料価格の上昇もあって堅調な推移を続けている。 追加の株主還元期待も強い 鉄鋼原料市況は足元で回復しているが、野村では24.3期は前期比で下落を予想しており、商社各社の24.3期の資源分野の親会社株主利益は減益を予想する。特にエネルギー部門では、23.3期がウクライナ紛争を背景とした天然ガス価格の上昇や、地域間格差の拡大を背景にLNG などエネルギートレードで収益機会が多かったため、その反動によって減益幅が大きくなると予想している。ただし、足元で欧州の暖冬を背景にLNG のスポット市況が下落しているとはいえ、供給制約が残る中でトレード機会が多い状況が続くため、ウクライナ紛争前の水準まで落ち込むとは予想していない。 24.3期の非資源分野については、円高による減益影響に加え、23.3期に幅広い分野で新型コロナやウクライナ紛争を背景とした供給制約からトレード事業のマージンが拡大した反動は見込まれる。また、インフラ事業では23.3期は商社各社が欧州の電力市況上昇による恩恵を受けていたが、欧州各国で電力価格の上限規制の導入もあり24.3期は減益影響が見込まれる。ただし、自動車などでの半導体不足による供給不足については24.3期上期も残る可能性が高く、供給制約の解消は下期以降と考えている。結果的に24.3期の非資源分野の親会社株主利益は減益とはなるものの、利益水準は22.3期を上回る水準を予想しており、高水準の利益は維持できると考えている。 商社セクター全体では24.3期の親会社株主利益は前期比で減益とはなるものの、高い利益水準を維持すると見込む。そのため追加の株主還元期待も高く、株価は堅調な推移が見込めよう。 (エクイティ・リサーチ部 成田 康浩) ※野村週報 2023年3月27日号「産業界」より 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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昨日 17:00
【Q&A】近づく日韓の距離感、日本経済や企業にとってのメリットは?
投資家の皆様から関心の高い質問を専門分野のリサーチャーに聞いてみました! Q:近づく日韓の距離感、日本経済や企業にとってのメリットは? 尹錫悦(ユン・ソンニョル)・韓国大統領の訪日が実現するなど、だいぶ日韓関係が改善されているように見えます。日韓関係改善による日本経済にとってのメリットはなんでしょうか。日本の半導体装置や素材の輸出、韓国からのメモリー半導体輸入などでしょうか。 A:半導体材料輸出規制解除も影響は軽微 半導体材料3品目の輸出規制解除も影響は軽微 2019年に日本は半導体の材料である3品目について輸出規制を強化しました。マクロ統計を見ますと日本の輸出に占める韓国のシェアは2018年の7.1%から2019年に6.6%に低下しています。もっとも、2020年には7.0%に戻っており、輸出規制のマクロ経済上の影響はそれほど大きくはありませんでした。尹錫悦大統領の訪日に際し、輸出規制を解除することが決定されたとはいえ、おそらくマクロ経済上の影響は大きくなさそうです。一方、韓国は2019年の輸出規制強化に対抗して、文在寅前政権が日本をWTO(世界貿易機関)に提訴しましたが、紛争解決手続きが取られる前に、韓国側が取り下げることになり、こちらの影響も軽微と見られます。 輸出規制問題は、経済安全保障に絡むもの そもそも、この問題は、経済安全保障に絡むものであり、必ずしも日韓の政治的な対立の所産という訳ではありません。2019年の輸出規制強化は、安全保障上重要な物資(軍事転用が可能な物資)が、韓国を経由して第三国に渡り、軍事利用されるリスクがあったことが理由です。第三国とは北朝鮮だったと見られており、北朝鮮に対する宥和政策を続けていた文在寅(ムン・ジェイン)前政権が政府として対応するか不透明だったために採られたと考えられます。結局、文在寅前政権は、輸出強化を「いわゆる徴用工」の請求問題に対する日本の報復措置だとして政治問題化し、政府として第三国への譲渡防止の対策を行うことはありませんでした。このため、規制下で、韓国のユーザー企業が流出させることは無いと確認する手続きを経て輸出されていました。これが2022年に政権交代し、北朝鮮に厳しい姿勢を示している尹錫悦政権になったことで、規制が解除されることになったと見られます。今後は、民間企業に確認を取る手続きが不要になります。 2027年の大統領選挙の結果には注意 ただし、韓国の政権は一期5年のみです。2027年の大統領選挙の結果、仮に、北朝鮮に宥和(ゆうわ)姿勢をとるような政権になった場合には、改めて輸出規制強化の話が出てくる可能性がある点には注意したいところです。 (出所)野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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昨日 12:00
【#電子カルテ】AI抽出15銘柄/メドレー、エムスリー、PHCHD…
電子カルテ情報共有サービスの構築を進めることが示される 政府は3月8日に発表した「医療DXの推進に関する工程表(骨子案)」について、4月6日までパブリックコメントを募集、その後具体的な工程表として正式決定予定としています。骨子案では、政府が全国の医療機関や薬局にて電子カルテ情報の一部共有、閲覧を可能とする電子カルテ情報共有サービス(仮称)の構築を進めることが示されました。仮に今後、電子カルテの需要が増加した場合、日本企業にどのような影響を与えるのでしょうか。AI『xenoBrain』が「電子カルテ需要増加」の他シナリオへの波及をもとに、影響が及ぶ可能性がある15社を抽出しました。 ニューストピック:電子カルテ需要増加 『xenoBrain』は電子カルテシステムを提供している企業などを中心に15銘柄をリストアップしました。 ・メドレー・エムスリー・PHCホールディングス・EMシステムズ・ビー・エム・エル・東芝・日本電信電話・オプティム・菱洋エレクトロ・ジャストシステム・日本電気・伊藤忠商事・エクシオグループ・スカパーJSATホールディングス・ホシデン ※xenoBrain 業績シナリオの読み方 (注1)本分析結果は、株式会社xenodata lab.が開発・運営する経済予測専門のクラウドサービス『xenoBrain』を通じて情報を抽出したものです。『xenoBrain』は業界専門誌や有力な経済紙、公開されている統計データ、有価証券報告書等の開示資料、及び、xenodata lab.のアナリストリサーチをデータソースとして、独自のアルゴリズムを通じて自動で出力された財務データに関する予測結果であり、株価へのインプリケーションや投資判断、推奨を含むものではございません。(注2)『xenoBrain』とは、ニュース、統計データ、信用調査報告書、開示資料等、様々な経済データを独自のAI(自然言語処理、ディープラーニング等)により解析し、企業の業績、業界の動向、株式相場やコモディティ相場など、様々な経済予測を提供する、企業向け分析プラットフォームです。(注3)時価総額500億円以上の銘柄を表示している。xenoBrainのデータは2023年3月28日時点。(出所)xenoBrainより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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03/27 12:00
【#ドローン】AI抽出15銘柄/ACSL、日本セラミック、日本アビオニクス…
日本郵便がレベル4のドローン配送実験を実施 日本郵便は、補助者なし目視外飛行(レベル 4)のドローンによる配送サービスの実証試験を東京都奥多摩町で実施しました。改正航空法施行により、市街地や住宅地などの上空でドローンを目視なしに自動で飛ばせるようになっており、低コストの小口配送手段として期待が高まっています。仮に今後、ドローンによる配送サービスが実現した場合、日本企業にどのような影響を与えるのでしょうか。AI『xenoBrain』が「ドローン配送サービス開始」の他シナリオへの波及をもとに、影響が及ぶ可能性がある15社を抽出しました。 ニューストピック:ドローン配送サービス開始 『xenoBrain』はドローン部品の製造メーカーなどを中心に15銘柄をリストアップしました。 ・ACSL・日本セラミック・日本アビオニクス・大日本印刷・東京エネシス・ミライト・ワン・トーエネック・北陸電気工事・北海電気工事・エクシオグループ・コムシスホールディングス・沖縄セルラー電話・セントラル硝子・関東電化工業・田中化学研究所 ※xenoBrain 業績シナリオの読み方 (注1)本分析結果は、株式会社xenodata lab.が開発・運営する経済予測専門のクラウドサービス『xenoBrain』を通じて情報を抽出したものです。『xenoBrain』は業界専門誌や有力な経済紙、公開されている統計データ、有価証券報告書等の開示資料、及び、xenodata lab.のアナリストリサーチをデータソースとして、独自のアルゴリズムを通じて自動で出力された財務データに関する予測結果であり、株価へのインプリケーションや投資判断、推奨を含むものではございません。(注2)『xenoBrain』とは、ニュース、統計データ、信用調査報告書、開示資料等、様々な経済データを独自のAI(自然言語処理、ディープラーニング等)により解析し、企業の業績、業界の動向、株式相場やコモディティ相場など、様々な経済予測を提供する、企業向け分析プラットフォームです。(注3)時価総額100億円以上の銘柄を表示している。xenoBrainのデータは2023年3月27日時点。(出所)xenoBrainより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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03/27 09:30
【銘柄紹介】塩野義製薬/リコー/大日本印刷
塩野義製薬(4507) 医薬品 24.3期は政府購入大きく貢献 2023.3期は10~12月期にコロナ治療薬Xocova の政府購入1,000億円が大きく寄与したほか、ViiV 社によるHIV フランチャイズが好調でロイヤルティ収入が伸び、4~12月期累計で営業利益をはじめ各利益項目が通期会社計画を上回った。決算を受けて会社はロイヤルティ収入の通期計画を上方修正した。1~3月期は中国・韓国でのXocova 販売が見込まれ、通期では保守的な会社計画を上回ると野村では予想する。 24.3期はコロナ感染症5類移行で政府購入は縮小するも、コロナワクチン・治療薬の業績貢献は依然大きいと考える。Xocovaの処方が診療所でも可能になり、処方が拡大することに期待する。 5類移行後の展望 2月28日時点でXocova 処方実績のある医療機関はわずか3,352施設であり、インフルエンザ治療薬Xofluza の全盛期の5万施設には程遠い。とはいえ、4月以降に政府調達から一般流通へと移行すると一気に施設数が増えるであろう。5類感染症移行後は、日本ではインフルエンザ治療薬が多く処方されることに鑑みて、Xocova が処方される可能性は高い。コロナ治療薬の公費負担は最低でも9月まで続くため、患者には無料となる。またインフルエンザ治療薬同様に国家備蓄対象にもなる。 以上から、コロナ治療薬は日本だけ見ても十分持続的な収入源といえる。海外のアップサイドも見込まれる。 (エクイティ・リサーチ部 甲谷 宗也) リコー(7752) 電気機器 デジタルサービス会社への変革が進む サプライチェーン問題の悪影響を大きく受けてきたが、今後は部材不足や物流混乱の改善によるオフィスプリンティングの着実な改善を見込む。供給制約の改善が寄与する2024.3期の営業利益は前期比27%増の990億円を予想。不透明なマクロ環境下でも高い増益率が続くと考える。 中期的にはペーパーレス化の継続でオフィスプリンティングの市場縮小が続く見通しだが、当社はグローバルな顧客基盤を活用したオフィスサービスの強化でカバーし、利益成長を維持できると野村では考える。M&A(買収・合併)も活用したサービスラインナップの強化で、デジタルサービス会社への変革の加速に期待したい。 オフィスサービスの中身の変化に注目 デジタルサービスの会社への変革を牽引するのはオフィスサービス事業の拡大である。オフィス機器で培った顧客基盤を活用し、日本・欧州・北米といった主要地域で売上成長を狙う。 3月7日引け後に第21次中期経営戦略(24.3期~26.3期)を発表した。会社はグローバルソフトウェアの売上拡大に意欲的で、23.3期から26.3期のCAGR(年平均成長率)30~40%を狙っている。高付加価値な自社ソフトをSaaS(サービスとしてのソフトウェア)型サービスで展開することで、オフィスサービス事業の収益性・安定性をさらに改善していくことが可能になるだろう。 (エクイティ・リサーチ部 岡崎 優) 大日本印刷(7912) その他製品 電池材料や有機EL 材料が成長分野 3月9日に中期経営計画の骨子を発表した(詳細は5月発表予定)。営業利益の目標を2026.3期850億円、長期1,300億円、ROE(自己資本利益率)の目標を24.3~26.3期8%、長期10%以上などと示した。 野村では車載リチウムイオン電池用バッテリーパウチ、有機EL製造用メタルマスク、半導体製造用フォトマスク・リードフレームなどが利益拡大ドライバーと見ている。営業利益は23.3期625億円と予想し、28.3期には945億円まで拡大すると予想している。長期目標達成には、これら成長分野に加えて、食品包装材料や建材、印刷・コンテンツ関連など既存事業の収益性向上策も必要となるだろう。 資本効率改善に向け自己株取得も計画 会社はROE 向上に向けて利益拡大とともに資本の圧縮にも取り込んで行くことを示し、23.3期末の自己資本約1.1兆円に対し長期目標を1.0兆円と設定した。施策として「24.3期~28.3期の5年間で3,000億円程度の自己株取得を計画している」ことを示し、その第1回として上限1,000億円(上限4,000万株、自己株式を除く発行済株式数の15%)の自己株取得を発表した(発表は3月9日)。利益拡大と自己株取得による株数の減少により、野村ではEPS(1株当たり利益)を23.3期237円と予想し、28.3期には414円へ拡大すると予想する。5年間でDPS(1株当たり配当金)も大幅に増加すると見ている。 (エクイティ・リサーチ部 河野 孝臣) ※野村週報 2023年3月27日号「銘柄研究」より 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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03/26 17:00
【業界展望】カーボンニュートラルを目指す電機業界
エネルギーサプライチェーンを効率化 日本政府が2050年カーボンニュートラル(CN、温室効果ガスを全体としてゼロにする)の目標を表明してから2年超が経過し、多くの企業も同様の目標を掲げて取り組んでいる。電機業界は、エネルギーサプライチェーンにおいて、川上のエネルギー創出分野、川中のエネルギー流通分野、川下のエネルギー消費分野の全てを支える基幹産業である。エネルギーサプライチェーン全体で効率化を進める動きは、広範囲にわたる事業機会として捉えられる。 創エネルギーの分野では再生可能エネルギーの普及拡大が鍵で、太陽光発電、風力発電、地熱発電などが代表例として挙げられる。再エネの利用率が低い時には直接的な投資の可否だけを議論すれば良かったが、一段と利用率を上げるためには発電できる立地条件や電力系統につなぐための技術ハードル等を考慮する必要がある。例えば風力発電を効率良く行うためには、年間を通じてある程度強い風が吹き続ける場所でなければならない。電力の大消費地である都会近郊にそうした場所はあまりなく、高圧直流送電技術により、電力を消費地まで遠距離に送る必要がある。直流電源の整流化や交流化、直流電源への蓄電装置導入が再エネインフラの普及に不可欠である。 電力の需要と供給のバランスを取る流通分野では、自然エネルギーの発電量が不安定という課題を克服する必要がある。電力システム全体で、需要と供給がバランスしていないと停電が起きる可能性があるためである。リアルタイムで需給バランスを実現するためにVPP(バーチャル・パワー・プラント)やDR(デマンド・リスポンス)等の新たな技術への期待が高い。 省エネルギーの分野では、エネルギーを利用する産業領域で、より高効率な電動化を進める必要があろう。キーコンポーネントとしてのモーターの効率向上やインバーターの小型化等が求められる。モーターで駆動する電子機器でのインバーター搭載比率の上昇や、インバーターの駆動電圧の高圧化といった技術変化は、省エネ機器の普及には不可欠である。キーデバイスとしてパワー半導体が挙げられ、多くの半導体製品の中において比較的世界市場でも存在感を維持できている分野である。 事業ポートフォリオ改革でグリーンに注力 CN を実現するためには様々な技術を導入する必要からコスト増となる業界が多いが、電機業界の場合は本業の事業機会の広がりにつながるため追い風となることが多い。電機大手の中でも全社的な取り組みを強化している企業として日立製作所と富士電機が挙げられる。 日立製作所は、24年中期経営計画において、「データとテクノロジーでサステナブル(持続可能)な社会を実現して人々の幸せを支える」ことをめざす姿として掲げている。6つのマテリアリティ(重要課題)の一つに環境があり、具体的な目標は、30年度までに事業者での、50年度までにバリューチェーン全体でのCN 達成である。目標達成に向けてGX for COREとGX for GROWTHの2本柱のロードマップを策定している。 GX for COREではエネルギー消費量の削減や再生可能エネルギーの活用を通じて事業活動におけるCNを推進する。スコープ1、2では24年度にGHG(温室効果ガス)排出量の50%削減(10年度比)の達成に向けて3年間で省エネと再エネ設備に370億円投資する。 GX for GROWTH では各事業部門が連携しながら多様なシステムや技術を提供する。HVDC(高圧直流送電)等の送電システム、蓄電池駆動トラム等の公共交通システム、エネルギー消費を見える化するデジタル技術、電動化部品など多岐に亘る。顧客における24年度のGHG 排出削減目標量は年間1億トン(金額換算値1.1兆円)である。同中期経営計画では、グリーンエナジー&モビリティセクターで2,000億円、日立Astemoの電動化等に3,000億円の研究開発投資を計画している。また、グリーン戦略を担うグローバル環境統括本部はセクター横断事業に注力し、バス車両・小型商用車・自家用車での電動化促進サービス、エネルギーの生成・貯蔵・消費を最適化するサービス等により事業規模を24年度に300億円、27年度に600億円、30年度に1,500億円へ拡大させる計画である。 富士電機は10年から事業ドメインをエネルギー・環境事業に明確化し経営資源を集中させており、現在はパワエレ事業と半導体事業の2つに注力。30年を見据え、複雑化する社会課題に対して、あらゆる事業と技術を掛け合わせ総合力で貢献する方針である。脱炭素電源、電力需給の調整力、熱の電化、省エネを実現する装置とシステムを、工場・空港・港湾・店舗等の多くの社会インフラに向けてワンストップで提供できる仕組みを構築していく。 (エクイティ・リサーチ部 山崎 雅也) ※野村週報 2023年3月20日号「産業界」より 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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03/25 20:00
【Q&A】金融システム不安に陥る可能性は低いのか?
投資家の皆様から関心の高い質問を専門分野のリサーチャーに聞いてみました! Q:金融システム不安に陥る可能性は低いのか? 預金者が金融機関から預金を引き出したり、金融機関が取引相手の金融機関の信用リスクを懸念して金融取引を控えたりする形で、金融システム不安が生じる可能性が出てきました。欧米金融当局の対応は素早かったですが、不安材料はまだ残っています。例えば、(1)SNSの発展で過去に比べて、取り付け騒ぎの動きが急速に拡散しやすくなっています。また、(2)どんな銀行でも預金は全額保護されるという前例を作るとモラルハザードを生みかねません。さらに、(3)現在はインフレ・リスクが高く、中央銀行がインフレ抑制と金融システム不安回避のジレンマに陥りやすい状況下にあります。これらを踏まえても、「個別事象かつ当局の対応も十分なため、金融システム不安に陥る可能性は低い」と言えるのでしょうか、それともいったんは様子見姿勢にした方が良いのでしょうか。 A:現状、安心/危険の二者択一はできない (1)SNSは情報伝達が早くなったというだけで、不安を加速させる悪材料だけでは無いと思います。悪事千里を走ると言われるように、良くない噂の方が広がりやすいのはその通りですが、十分な対応が行われた場合、安心感を素早く広めることにも貢献する面はあります。(2)預金全額保護がモラルハザードを生み出す可能性がありますので、米国でも平時から全面保護の議論には反対が多いとみられます。(3)中央銀行の使命は第1が物価の安定(米国では同時に雇用の最大化)になりますので、まずはインフレ、続いて、物価見通しに影響を及ぼす事象(景気後退、突発的な市場リスク)が基本になるとみられます。 質問の中心となる最後の問に関する答えですが、今の金融システムに関する評価は、現状見えるデータやニュースからの判断であり、隠れているものが100%無いとも言えないため、安心/危険の二者択一はできません。かつて、米国で住宅バブルが崩壊し、サブプライムローン(低信用の住宅ローン)に特化していた米ニューセンチュリー・フィナンシャルが2007年4月に破綻した時も、サブプライムは一部の借り手の問題と言われていました。それが、様々な証券化商品などに隠れて問題の所在が分からなくなり、デリバティブがレバレッジを掛けて影響を増幅させ、信用不安に拍車をかけて大混乱に陥いった歴史を、我々は(1年以上後の)2008年9月のリーマン・ショックという名称で覚えています。 そこから、事象に際しては(1)リスクの洗い出し、(2)十分な対応を迅速に示す、が重要だということを学んでおり、現在は(1)のフェーズが残る部分があるということでしょう。(1)(2)がスムーズに進めば、良い例ではないかもしれませんが、2009年11月のドバイ・ショックのように、当時はそれなりに大きな信用問題とみられていたものが、時間が経過すると記憶が薄れてゆく事象になるかもしれません。 ちなみに、金融・銀行システムリスクの払しょくには、(A)カウンターパーティーリスクの軽減(取引業者間の信用確保)と(B)流動性の供給が施策の中心になります。伝統的な金融政策の政策金利の上げ下げは、(アナウンスメント効果以外に)直接的な意味は無いというのが一般的な考え方だと思います。3月のECB、FRBの対応がそのことを示しているとみられます。 市場リスクは常にどんな時でもあります。車の故障が怖いので自動車に乗らないとなると日常何もできなくなりますから、経済・リスク指標を見ながらリスク耐性に合った投資を行うことが肝心でしょう。 (野村證券投資情報部 小高 貴久) ご投資にあたっての注意点