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日本産アルコール飲料の輸出促進に向けた課題と施策
執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネスビジネス・コンサルティング部 シニア・アソシエイト 鈴木 拓実(2025年2月13日) はじめに 2013年、農林水産省は「農林水産物・食品の国別・品目別輸出戦略」において、農林水産物・食品の輸出金額を2020年に1兆円規模に拡大する目標を定めた。この目標に基づき、2021年には初めて輸出金額が1兆円を超えたが、その主因の一つに、アルコール飲料の輸出額増加が挙げられる。 現在、国はさらなる輸出拡大を目指し、農林水産物・食品の輸出金額を2025年までに2兆円、2030年までに5兆円にそれぞれ拡大する目標を掲げている。筆者は、引き続き、アルコール飲料がこれらの目標達成に大きく寄与するものと予想している。 本レビューでは、日本産アルコール飲料の中でも輸出金額が大きいウイスキー、清酒、ビールに絞り、国内需要および輸出状況を確認し、今後のさらなる輸出拡大に向けた主な課題と必要な施策について論じる。 1. アルコール飲料の国内消費数量および輸出動向 (1) アルコール飲料の国内消費量 アルコール飲料の国内消費量は、戦後の経済発展に伴い、1990年代後半まで拡大を続けた。しかし、近年では高齢化の進展や若者のアルコール離れの影響により、減少傾向が顕著となっている。消費量は1996年の9,657千キロリットル(以下、「KL」と記載)をピークとして、2022年には7,828千KLまで下落した。また、成人一人あたりの年間アルコール消費量も1996年の98.6Lから2022年には74.6Lに減少している。今後も、国内市場は断続的な縮小が予測される。 国内消費量の内訳を見てみると、清酒、ビール、発泡酒の消費量が著しく減少している一方で、リキュール類の消費量は増加している。かつては酒税が低い発泡酒の消費量が増加したが、その後、酒税がさらに低い「第三のビール(ビール、発泡酒とは別の原料・製法で作られたビール風味の発砲アルコール飲料の名称)」が台頭していることが伺える。アルコール飲料の課税額は1996年には約2兆円であったが、2022年には1.1兆円に減少しており、消費量が約2割減少したにもかかわらず、課税金額は半減している。このことから、より酒税の低いアルコール飲料が日本国内で消費されていることがわかる。 一方で、2017年の酒税法改正を受けて、ビール、発泡酒、第三のビールの税率は段階的に変更され、2026年10月にはビールの税率が下がり、発泡酒や第三のビールの税率が上がり、税率が一本化されることが予定されている。消費する酒類の種別が変動することが予想されるが、アルコール飲料の消費量が大きく増加するわけではなく、今後の環境は依然厳しいと言わざるを得ない。 図表1 国内アルコールの飲料消費量 (出所)国税庁HP「統計情報」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 (2) アルコール飲料が輸出全体に占める割合 日本のアルコール飲料は海外で高い注目を集めており、輸出金額は年々増加傾向にある。2013年に251億円であった輸出金額は、2023年には1,343億円に達し、10年で5.3倍に増加した。特に2020年から2021年にかけては、前年比61.4%(436億円)増という顕著な伸びを記録した。この時期はコロナ禍の影響もあり、在宅環境を充実させるための巣ごもり需要が活発化していた。国際的なコンクールにおける高い評価や、インバウンドによって日本のアルコール飲料の質の高さが認識されたこと等が要因となり、海外における「家飲み」需要を取り組むことができたのだと推測される。次章では、個別のアルコール類に分類した上で、現在の輸出動向について考察する。 図表2 アルコール飲料の輸出金額と全体(農林水産物・食品の輸出額)に占める割合 (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 2.ウイスキー、清酒、ビールの輸出動向 前章の通り、2023年のアルコール飲料の輸出金額は1,343億円であるが、輸出金額の上位はウイスキー497億円、清酒410億円、ビール179億円となっている。本章では輸出金額が大きいウイスキー、日本酒、ビールについての輸出動向を確認していきたい。 (1) ウイスキー 日本産アルコール飲料の輸出金額が大幅に増加した要因の一つとして、日本産ウイスキーの輸出の躍進が重要な役割を果たしたことは疑いの余地がない。2020年から2021年にかけて、日本産アルコール飲料の輸出金額は436億円増加したが、そのうち、ウイスキー単体の輸出金額は2020年の270億円から2021年には460億円に達し、わずか1年で190億円の大幅な伸びを記録した。この間の日本産アルコール飲料輸出金額の増加分の4割強は、ウイスキーの輸出金額の増加によるものである。 さらに、2023年時点におけるアルコール飲料全体に占めるウイスキーの輸出割合は26.3%に達しており、2013年の15.8%から伸長している。このように、日本産ウイスキーはその存在感を一層強めており、今後も日本の主力農林水産物・食品の一つとして重要な役割を果たすことが期待される。 図表3 ウイスキーの輸出金額・数量 (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 まず、過去5年におけるウイスキー輸出の国ごとの実績を見比べてみる。比較対象として、2023年時点における輸出金額が多い上位5か国を挙げる。2023年時点で最も存在感が強いのは中国市場であり、輸出金額、輸出量、輸出単価のすべてにおいて上位5か国中最大である。中国向けの輸出が最初から最大市場であったわけではなく、2019年時点では輸出金額、輸出量、輸出単価はいずれも2023年時点と比較するとそれほどの存在感は示していなかった。ここまでの存在感を発揮したのは2020年から2021年にかけてのことであり、第1章でも述べた通り、コロナ禍において大きな躍進を遂げた。これは中国に限ったことではなく、米国、オランダ、フランスでも同様の現象が見られた。ただし、オランダはEU向け輸出の中継貿易の側面があるため、厳密な測定は困難である。 また、ウイスキーの中国輸出において、筆者が特に着目している点は「輸出単価」である。2019年時点での中国向けウイスキー単価は3,157円/Lであり、他の国と比較しても特に高い水準ではなかった。しかし、2021年から2023年にかけては8,500~9,000円/Lで推移しており、他の国と比較してもよりプレミアムな価格帯のウイスキーが中国で人気を博している。一方、2013年におけるフランス向けのウイスキー輸出単価は約2,007円/Lであり、現在の水準とほぼ変わっていない。この背景には、フランス国内でジャパニーズウイスキーが高級品として位置付けられるよりも、普段飲み用のウイスキーとしての考え方が多いことが考えられる。 2023年のウイスキーの輸出額は、世界的なインフレ圧力や中国国内の景気後退を背景に下落している。特に、中国向けの輸出は金額および数量ともに大きく減少した。これに対し、2023年のオランダおよびシンガポール向けの輸出額は増加しているものの、輸出量自体は減少している。このことから、プレミアムな価格帯の需要が下支えしていたと考えられる。また、フランス国内においては、普段飲み用としての利用が主流であると推測されるため、輸出金額および数量を大きく下げる結果となった。 この10年でみると、ウイスキーの輸出市場は急速に拡大している。ウイスキーのように熟成が必要な酒類にとって、このような急速な市場拡大に対して、売れる製品がないという原酒不足は非常に深刻な問題である。国内外問わず、多くの銘柄が終売や休売といった状況に追い込まれており、生産規模の拡大がウイスキー業界にとっての急務であると言えよう。 図表4 ウイスキーの輸出金額・数量・単価(上位5か国) (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 (2) 清酒 清酒は諸説あるものの、日本を起源とし、発展し続けた伝統的なアルコール飲料である。2020年にはウイスキーに抜かれるまで、日本産アルコール飲料の中で最も輸出金額が大きく、長年にわたり日本産アルコール飲料の輸出において存在感を示していた。2013年の清酒の輸出金額は104億円であり、同年のアルコール飲料全体の輸出金額の41.8%を占めている。2023年にはその割合が30.6%に減少したものの、2013年から2023年にかけて清酒の輸出金額はおよそ4倍の増加を見せている。ウイスキーの13倍の増加には及ばないものの、清酒も輸出増加に一役を買っている。 図表5 清酒の輸出金額・数量 (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 清酒の輸出金額は2013年から概ね右肩上がりを続けてきたが、輸出数量は2019年と2020年に減少する結果となった。この減少の要因を2023年時点における清酒の輸出金額が多い上位5か国で比較すると、特に韓国向けの輸出数量の減少が顕著である。具体的には、2018年には5,350KLであった韓国向けの輸出数量は、2019年には2,912KL、2020年には1,535KLと大幅に減少した。この背景には、日韓関係の悪化があると考えられる。また、アメリカや中国においても輸出数量は減少している。 図表6 清酒の輸出金額・数量・単価(上位5か国) (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 一つの仮説として、日本酒の利用シーンが家庭等の日常的な飲用ではなく、日本食レストラン等で利用されることが多く、結果として2020年のコロナ禍においてロックダウン(都市封鎖)が実施されたことにより、飲食店の営業が制限され、大きな影響を受けたのではないかと考えられる。 (3) ビール 2023年におけるアルコール輸出量の内、ビールはウイスキー、清酒に次ぐ3番目の金額を占めている。輸出量で比較すると、ウイスキーは12,506KL、清酒が29,184KLに対し、ビールの輸出数量は137,882KLと数量だけでは最大のアルコール輸出である。一方で輸出金額自体は両者より低く、ビールは輸出においても安価なアルコール飲料である。2018年までは順調に輸出金額・数量が成長を遂げていたが、2019年から2022年にかけては大幅に下落している。これも、日韓関係の悪化が影響していると考えられる。 図表7 ビールの輸出金額・数量 (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 図表8 ビール輸出金額・数量・単価(上位5か国) (出所)貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 実際、ビールの最大の輸出先は韓国である。2023年の韓国向けの輸出金額は83億円でビール輸出金額の約46.3%を、輸出数量は79,545KLでビール輸出量の57.7%をそれぞれ占める。一方、輸出単価を比較してみると、韓国は104円/Lと上位5か国で最も低い。これは、輸送距離が短く輸送コストが比較的少額で済むため、国内と同程度の単価で輸出が可能な背景が考えられる。 3.アルコール飲料の輸出増加に向けた主な課題と施策 ここまで、ウイスキー、清酒、ビールの輸出動向を分析してきたが、本章では、各業界が輸出増加において直面している主な課題を明らかにするとともに、これらの課題に対する施策を考えていく。日本の伝統的な酒文化を世界に広めるためには、戦略的なアプローチとともに、国内産業の持続可能な発展を促進することが急務である。これにより、さらに多くの国々で日本の酒類が愛されることを目指すものである。 (1) ウイスキー 近年、日本産のウイスキーは急速に輸出市場が拡大しており、売りたくても原酒が不足する問題が生じている。ウイスキーは長期間の熟成が必須であり、将来の需要を見込んで生産量を一朝一夕に増加させることは困難である。 このような中、全国規模で小規模の蒸留所が相次いで開設されている。ウイスキーの蒸留所を開設するためには免許が必要である。2014年には年間1件の法人がこの免許を取得していたのに対し、コロナ禍以降の2021年は年間34件と大幅に増加している。免許取得者数が新規参入者の数と必ずしも一致しないものの、ウイスキー業界に注目を寄せる企業が増えていることは明らかである。また、筆者が2024年7月時点で確認できた蒸留所の数は92件あり、2010年代が10数件の蒸留所しかなかった点を踏まえると、ウイスキー業界が急速に発展していることは疑いがない。 新規参入者の増加は歓迎されるが、一方でいくつかの弊害も生じている。その一つが樽価格の上昇である。世界的なウイスキー需要の高まりと国内の新規参入者の増加により、樽価格はわずか数年で2~3倍に上昇している。ウイスキー事業は初期コストが高く、資金の回収にも時間がかかるため、こうした初期コストが増加する問題は、新規に参入した事業者および既存の事業者にとって重い課題である。 図表9 酒類等製造免許の新規免許取得件数 (出所)国税庁HP「酒類等製造免許の新規取得者名等一覧」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 さらに、急激に新規参入者が増加したことにより、国内向けのウイスキー市場は競争がより激化し、当初計画していた事業計画の実現が難しくなる可能性も挙げられる。新規免許取得状況を確認すると、2021年ごろに取得した事業者の多くが2024年ごろに3年熟成の商品を上市させることが予想される。 また、ブランド管理の観点から、日本で製造・熟成されたウイスキー「ジャパニーズウイスキー」の定義は急務だ。現状の酒税法では、ウイスキーの定義は定まっているものの、ジャパニーズウイスキーに関する定義は定まっていない。酒税法では、スピリッツ等が最大90%加えられて出来上がった代物でも「ウイスキー」を名乗ることが可能である。また、海外から輸入してきたウイスキー樽を国内で瓶詰めした商品を『ジャパニーズウイスキー』と名乗ることに対して、酒税法では罰則を設けていない。ジャパニーズウイスキーが国際的に注目を集めている中、法制度の隙間を悪用する事業者が出てくる可能性は高い。 現状のジャパニーズウイスキーの評判は、先人たちの努力によって築かれたものであり、法制度の抜け穴を活用し、こうした評判を悪用する事業者は排除しなければならない。特に、ウイスキーは欧州をはじめ世界各国で愛飲されている酒であり、清酒と違って新たに市場を開拓するための啓蒙活動が不要である点を考慮すると、「ジャパニーズウイスキー」という名前だけで市場に受け入れらやすい側面がある。このような状況を踏まえると、法的な枠組みをもってジャパニーズウイスキーを明確に定義する必要性が高まっていると筆者は考えている。 実際、日本を除く5大ウイスキーの生産国である、スコットランド、アイルランド、アメリカ合衆国、カナダでは品質を担保させるためウイスキーの定義を確りと法律で定められている。例えば、スコットランドのウイスキーの定義は、「国内で3年以上樽熟成されている」、「水とカラメル色素以外は足されていない」こと等が定義づけされている。また、アメリカ合衆国のウイスキーは、バーボンやコーンウイスキー、テネシーウイスキー等、それぞれ別の法律で定められている。 日本の自主規制機関における規制も、こうした法律を参考にして策定されていると考えられ、国がウイスキーを日本の基幹的な輸出産業として認識しているならば、悪質な事業者がジャパニーズウイスキーの評判を落とす前に法整備を進め、海外輸出を促進していく必要がある。また、地理的表示(GI)としてジャパニーズウイスキーを設定することも一つの手段だと考えている。すでに日本酒がGI登録されているため、ジャパニーズウイスキーも同様に登録が可能であると考えられる。 (2) 清酒 弊部では、中国の伝統料理である火鍋と清酒のペアリングを促進する取り組みを行った実績がある。この取り組みは、清酒と現地料理のペアリングを図り、輸出増加を目指すための良い参考になると考えている。 この取り組みは、具体的には、県内の一部酒蔵を取りまとめて、火鍋と清酒のペアリングの作成、プロモーション活動、現地バイヤーとの試飲会・商談会等の実施である。火鍋は中華料理であり、清酒は中華圏からみると異文化そのものあるため、その魅力を消費者に伝えることが重要である。そのため、弊部の取り組みでは、火鍋の多様な具材やスパイシーな味付けに合う清酒を選定し、消費者やバイヤーにその相性の良さを体験してもらう機会を提供した。 今後の課題として、火鍋と清酒の文化を定着させるために、教育やプロモーションの取り組みを強化することが重要である。定期的に火鍋とのペアリングイベントを開催し、消費者に直接その魅力を体験してもらうことができる。特に、高級レストランや専門店と提携し、火鍋と清酒のペアリングをテーマにした特別なイベントを実施することで、清酒への理解を深める機会を提供できる。また、現地の飲食業界のプロフェッショナル向けに、清酒の特性や火鍋との組み合わせについての研修を行うことで、専門知識を深めることも重要である。 さらに、マーケティング戦略の見直しも必要である。特に若年層や健康志向の消費者をターゲットにした広告展開を行い、清酒の健康効果や低アルコールの特性を強調することで、より多くの人々にアプローチできる。SNSを活用し、火鍋とのペアリングを紹介するコンテンツを作成し、InstagramやTikTok等で拡散することが効果的である。最後に、物流と供給チェーンの強化が求められる。輸送コストを見直し、現地での価格競争力を向上させることで、清酒のアクセスを容易にする。また、現地の流通業者による適切な清酒の管理も求められてくるため、現地業者への啓蒙活動が必須となってくる。 これらの取り組みを通じて、日本の清酒が火鍋をはじめとする現地料理とペアリングしやすくなり、輸出が増加する可能性が高まる。清酒と現地料理の文化を定着させる試みは一朝一夕には実現しないが、今後清酒の輸出量を一段階上に引き上げるためには、従来の日本料理との提案だけでなく、新たなアプローチが求められる。こうした現地料理との相互理解と協力を基にしたアプローチが、清酒の国際的な普及に寄与するであろう。 (3) ビール 日本のビール産業は、その優れた品質から国際的に高い評価を受けているが、輸出量の増加にはさまざまな課題が存在している。特に、輸送コストが販売価格に影響を及ぼし、現地のビールメーカーとの価格競争が難しくなることが大きなネックである。ビールは鮮度が重要な商品であるため、島国である日本からの長距離輸送による品質の劣化が懸念される。そのため、輸出の切り口ではなく現地生産や地場のビールメーカーを買収するケースが目立つ。このような状況では、一般的なビールの輸出だけでは限界があり、より革新的なアプローチが求められる。 その一つの施策は、独自商品の開発・展開である。近年では、「職人技のビール「手作りのビール」といわれるクラフトビールや、アサヒビールが展開する「生ジョッキ缶」等、ユニークな商品が注目を集めている。クラフトビールは特に海外の若年層に人気があり、日本の多様な地元産の素材を使った新しいビールのプロモーションを強化することで、輸出を促進することができる。また、「生ジョッキ缶」のような革新的な商品は、手軽に日本のビールを楽しむ方法として海外市場でのニーズに応えることが期待される。 このような商品で新たな市場を開拓するためには、当然、現地パートナーとの協力が不可欠である。現地のディストリビューターや小売業者との連携を強化し、販売チャネルを拡大することが求められる。また、現地の市場ニーズに応じたマーケティング戦略を共同で策定することも重要である。 結論として、日本のビール輸出を増加させるためには、輸送コストや価格競争を克服しながら、品質の高さを活かし、独自の商品展開を進めていくことが求められる。クラフトビールや「生ジョッキ缶」等の革新的な商品を通じて、海外市場での競争力を高め、持続可能な成長を目指す必要がある。もしくは早期に一定以上の規模獲得とそれに伴う現地生産(OEMを含む)の開始が必要であると考えられる。量当たりの単価が、今回紹介した清酒やウイスキーと比較すると安価であるため、輸出だけで量を増やすと物流コストが合わないことを念頭に戦略的な取り組みが求められている。 おわりに 本レポートでは、ウイスキー、清酒、ビールの輸出動向を中心に考察し、現状の主な課題と施策を明らかにした。しかし、輸出の現状だけでは捉えきれない複雑な課題も存在している。たとえば、国内外の消費者行動の変化や、環境への配慮、労働力の確保といった側面も考慮する必要がある。また、国際市場での競争が激化する中、他国の醸造技術やマーケティング戦略との比較も重要な視点となるだろう。 特に、個別企業の努力だけでは解決しきれない課題も多く存在する。市場の開拓や国際的なブランド力の向上には、業界全体の協力が不可欠である。これを実現するためには、国を挙げての体制整備が求められる。政府や関連機関が一丸となり、輸出促進のための政策や支援体制を整えることが、持続可能な成長を達成するための鍵となるだろう。 現在、順調に成長を遂げている日本のアルコール飲料の輸出であるが、ウイスキーに関して考えると、本場イギリスの輸出金額は2023年には56億ポンド(約1兆800億円、スコッチウイスキー協会調査)に達しており、イギリスのウイスキー単体で日本の農林水産物・食品の輸出金額に匹敵する金額となっている。 また、日本で清酒を「ソウルドリンク」とするならば、イタリアではワインがその地位を占めており、2022年の時点でワインの輸出金額は82億USドル(約1兆1,800億円)に達している。 このように、順調に成長を続けているアルコール飲料業界であるが、グローバルな視点から見ると、まだまだ規模が1周りどころか2周りも違うことを意識しなければならない。例えば、最も世界で飲まれているウイスキーブランドの「ジョニーウォーカー」のようにグローバルブランドの世界で定着している長い歴史と比べると、日本産アルコール飲料の輸出の「伸びしろ」は大きい。今後、さらなる成長を目指すためには、国際市場において競争力を高めるための戦略的な取り組みが求められる。 当然、アルコール飲料の輸出強化を考えた際には、本レポートの範囲を超えた詳細な検討が必要である。次回以降のレビューにおいては、これらの課題を深掘りし、具体的な解決策や戦略を提示していく予定である。業界全体の成長のためには、包括的な視点からのアプローチが求められることを再確認し、今後の取り組みに期待を寄せている。 ディスクレイマー 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外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
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02/15 09:00
【オピニオン】長期金利が本格上昇、節目の2%越えを目指すか
※画像はイメージです。 日銀は2025年1月23~24日開催の金融政策決定会合で、事前の市場予想通り政策金利の引き上げを決定しました。24年3月に17年ぶりの利上げに踏み切って以降、24年7月会合に続き今回で3回目の利上げ決定となります。政策金利の引き上げとともに長期金利(10年国債利回り)も上昇基調を続けており、足元では1.3%台半ばまで上昇ピッチが加速しています(2月12日時点)。市場参加者の一部では、長期金利の1.2%超えは株価上昇の重石、と警戒する声も散見されます。チャート面から今後の長期金利の動向について考えてみましょう。 下図は2004年1月以降の日本の10年国債利回りの月足チャートです。10年国債利回りは、16年7月ボトム(-0.300%)と19年8月ボトム(-0.290%)によるダブルボトムを形成し、その後は本格的な利回り上昇トレンドに入りました。22年以降は12ヶ月移動平均線(2月12日:1.012%)を下支えとする上昇となっているのがわかります。24年夏場に株価が急落し利回りが急低下した際でも概ね12ヶ月移動平均線が下支えとなっており、日銀が追加利上げを模索するスタンスを崩さない以上、今後も同線を下支えとしながらの上昇基調が継続すると考えられます。 (注1)直近値は2025年2月12日。チャートは新発10年国債利回りの単利・日次終値を基に月足に変換している。新発10年国債利回りは日本相互証券公表の引値で、毎月、新発国債の入札日に銘柄の入れ替えを行っている。(注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(注3)日柄は両端を含む。(出所)日本相互証券より野村證券投資情報部作成 中長期的な観点からは、2025年1月に06年5月ピーク(1.990%)から16年7月ボトム(-0.300%)までの利回り低下幅の2/3戻し(1.226%)水準を突破した点も重要です。チャート上の次の大きな節目は、同全値戻し(1.990%)を含む06~08年につけた複数のピークや心理的フシがある1.9~2.0%水準まで見当たりません。今回の19年8月以降の利回り上昇ペース(約5年半で1.630%ポイント)をベースにすれば、今後12ヶ月移動平均線を意識する一時的な利回り低下をこなしつつ、先行き2~3年かけて2%超えを視野に入れる利回り上昇となる可能性も十分考えられます。 テクニカル分析は過去の株価・為替等の値動きを分析・表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。また、記載されている内容は一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。 ご投資にあたっての注意点
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02/15 07:00
【来週の予定】ドイツ総選挙へ、極右勢力台頭の可能性
来週の注目点:トランプ政権の関税政策、ウクライナ情勢、ドイツ総選挙 引き続き、米国トランプ政権の動向が市場のボラティリティー(変動性)の大きな要因になっています。2月初旬に155円付近にあった円の対米ドルレートは、2月7日には一時150円台まで円高が進行しましたが、その後、154円台まで揺り戻しました(2月13日時点)。トランプ関税による日本経済への悪影響が相対的に小さくなるとの思惑や、日銀の利上げ継続期待が円高要因です。しかし、足元では、ウクライナ紛争の停戦・終結への期待が高まったことや、1月の米国の消費者物価指数(CPI)の伸び率が市場予想を上回り、インフレ懸念と米金利の先高観が強まったことを受けて、米ドルやユーロに対して円は弱含んでいます。 米国では、19日(水)に1月FOMC議事要旨が発表されます。政策金利とインフレ見通しに加えて、トランプ政権の政策に対する議論が注目されます。経済指標では、18日(火)発表の2月NY連銀製造業景気指数、20日(木)の2月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、21日(金)発表の2月PMI速報値など、景気指数の発表が続きます。 日本では、17日(月)に10-12月期実質GDP(1次速報値)が発表されます。野村では、前期比+0.8%(年率+3.2%)と大幅なプラス成長になったと予想します。ただし、輸入の減少が主因で、内需はやや伸び悩んだとみています。19日(水)には12月機械受注と1-3月期の受注見通し、21日(金)には1月全国CPI、2月PMI速報値が発表されます。1月全国コアCPIは前年同月比+3.2%と、12月(同+3.0%)から伸び率が加速したと野村では、予想します。こちらは日銀の政策判断にも影響するため、重要です。 ユーロ圏では、18日(火)にドイツの2月ZEW景況感調査、21日(金)には2月PMI速報値と、景気指数の発表が続きます。また、23日(日)にはドイツで総選挙が実施されます。連立政権の組み方によって、政策の方向性が大きく変わる可能性があるだけに、注目です。 (野村證券投資情報部 坪川 一浩) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2025年2月14日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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02/14 16:29
【野村の夕解説】日経平均株価反落312円安 円高進行が重石(2/14)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 昨日トランプ米大統領が「相互関税」の即時発動を見送ったことから米国のインフレ再加速の懸念はいったん後退しました。これを受け外国為替市場は朝9時ごろ1米ドル=152.90円台後半と、昨日の17:00時点の1米ドル=154円台前半から急速に円高へと進行しました。円高が重石となり本日の日経平均株価は前日比42円安の39,419円で始まり、1日を通して軟調な推移となりましたが、個別銘柄では、前日までに発表した決算内容が好感されたソニーグループやソフトバンクグループなどが上昇し、相場を下支えしました。また、昨日経営統合の協議を打ち切ると正式に発表した本田技研工業、日産自動車も上昇しました。来週17日(月)は米国市場が休場となり、トランプ米大統領の発言を警戒した利益確定の売りもみられ、引けにかけては下げ幅が拡大しました。大引けは前日比312円安の39,149円と、反落して取引を終えました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 17日(月)ではワシントン生誕記念日で米国市場は休場となります。日本では24年10-12月期実質GDP(1次速報値)が発表されます。また19日(水)に米国では1月FOMC議事要旨が発表され、トランプ政権の政策に対する議論が注目されます。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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02/14 12:00
【今週のチャート分析】ドル円相場、昨年7月高値に対する二番天井形成か
※画像はイメージです。 ※2025年2月11日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 今後、150円前後の水準を下抜けるか注目 ドル円相場は、今年1月に158.45円をつけましたが、米長期金利の低下が米ドル安圧力となる一方で、日銀の利上げ継続路線が円高圧力となり、2月には一時150.96円まで下落しました。今回は、今後の動きについて長期波動面から考えてみましょう。 ドルは対円で、1975年以降は7-9年(83~107ヶ月)の周期で主な高値を形成してきました(図1)。昨年7月高値時点で、前回のサイクル高値(2015年6月)から約9年(110ヶ月)が経過し、過去5回のサイクルを超えて最長の期間となりました。さらなる日柄の延長は考えにくい時間帯に入っており、昨年7月高値で天井を形成した可能性が考えられます。 この先の注目点は、週足チャート上のフシが集中する150円前後の水準を下抜けるか否かです(図2)。150円前後の水準には、52週移動平均線(2月12日:152.59円)や、2023年11月高値(151.80円)、22年10月高値(150.48円)といった重要なフシがあります。また昨年12月安値(149.50円)といったフシもあり、下抜けとなれば、今年1月高値が昨年7月高値に対する二番天井となる可能性が高まったと言えそうです。 一方で、超長期のトレンドは上向きに変化している可能性が高いと考えられます(図1)。ドルは対円で、1970年代から大幅に下落してきましたが、その後横ばいを経て、2011年以降上昇に転じました。今後、当面の天井形成には注意が必要ですが、超長期トレンドは上向きであり、天井形成後の円高・ドル安方向の動きは限定的となると考えられます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2025年2月12日時点。数値は日銀公表値で東京市場、取引時間中ベース。 (注2)日柄は両端含み。 (注3)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本銀行より野村證券投資情報部作成 (注1)直近値は2025年2月12日。 数値は日銀公表値で東京市場、取引時間中ベース。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本銀行より野村證券投資情報部作成 日経平均株価、4ヶ月半続く保ち合い上限のある4万円回復なるか 今週の日経平均株価は、2月11日にパウエルFRB議長が米上院議会証言にて利下げに慎重な姿勢を示し、その後円安・ドル高が進行したことなどから、堅調に推移しました。 チャート面からこれまでの動きを振り返ってみましょう(図3)。日経平均株価は、1月に4万円をつけましたが、中国の生成AI開発に関する報道や米トランプ関税への懸念から大幅安となり、2月3日には38,401円まで下落しました。ただ、その後は為替が円安・ドル高方向の動きとなったことを受けて、株価は上昇し39,000円台にのせました。 各種テクニカル指標に過熱感はなく、保ち合い相場入りから既に4ヶ月半が経過し、日柄調整も十分となっています。この先、まずは昨年9月下旬以降の保ち合い上限である1月24日高値(40,279円)や昨年12月27日高値(40,398円)のある4万円を回復し、保ち合い上放れへ向けた動きとなるか注目されます。 一方で、再び調整となった場合は、200日移動平均線(2月13日:38,637円)や、2月3日安値(38,401円)の水準が下値のメドとして挙げられます。仮に先行き同水準を割り込んで下げが続く場合は、1月17日安値(38,055円)や、昨年9月以降の保ち合い下限(37,700~800円前後)の水準がさらなる下値メドとして挙げられます。 (注1)直近値は2025年2月13日時点。 (注2)日柄は両端を含む。 (注3)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 岩本 竜太郎) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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02/14 09:30
【#水道需要】AI抽出15銘柄/住友大阪セメ、荏原、丸一鋼管など
私たちの命を支える水道インフラ 水道は私たちの生活に欠かせない存在であり、命を支える重要な役割を担っています。しかし、日本各地では上下水道の老朽化が進み、浸水や漏水といった問題が住民の生活に深刻な影響を及ぼしています。このような状況を改善するには、水道設備の適切な管理と更新への投資が欠かせません。AI「xenoBrain」は、「水道需要」が他のシナリオにも波及する可能性を考慮し、影響が及ぶ可能性のある15銘柄を選出しました。 ※ xenoBrain 業績シナリオの読み方 (注1)本分析結果は、株式会社xenodata lab.が開発・運営する経済予測専門のクラウドサービス『xenoBrain』を通じて情報を抽出したものです。『xenoBrain』は業界専門誌や有力な経済紙、公開されている統計データ、有価証券報告書等の開示資料、及び、xenodata lab.のアナリストリサーチをデータソースとして、独自のアルゴリズムを通じて自動で出力された財務データに関する予測結果であり、株価へのインプリケーションや投資判断、推奨を含むものではございません。(注2)『xenoBrain』とは、ニュース、統計データ、信用調査報告書、開示資料等、様々な経済データを独自のAI(自然言語処理、ディープラーニング等)により解析し、企業の業績、業界の動向、株式相場やコモディティ相場など、様々な経済予測を提供する、企業向け分析プラットフォームです。(注3)母集団はTOPIX500採用銘柄。xenoBrainのデータは2025年2月4日時点。(注4)画像はイメージ。(出所)xenoBrainより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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02/14 08:24
【野村の朝解説】相互関税の即時発動見送りで安心感(2/14)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 13日の米国株式市場では主要3指数がそろって上昇しました。朝方に発表された1月生産者物価指数は前月比+0.4%となり、市場予想(同+0.3%)を上回りました。しかし、FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数の算出に利用される項目は全般的に弱含んだことから、米10年債利回りが低下し、ハイテク株を多く含むナスダック指数が大きく上昇しました。一方、トランプ大統領が13日に相互関税の導入を指示する覚書に署名しましたが、即時発動は見送られました。インフレ等に対する過度な警戒感が後退し、安心感が広がったとみられます。 相場の注目点 日本は本日(2月14日)で3月期決算企業の2024年4-12月期の決算発表シーズンが概ね終了します。円安の追い風が吹いた製造業、利上げの恩恵を受けた金融などが業績を伸ばし、総じて好調な9ヶ月間となった模様です。また、一足先に10-12月期の決算発表シーズンを終えた米国では、S&P500採用企業のEPS(1株当たり純利益)がシーズン開始前の予想を上回る結果となっています(LSEG集計、2月7日時点)。 株式市場に目を向けると、足元では日米ともに一進一退の展開となっています。1月20日のトランプ大統領の就任後、通商政策に関して予測不能な発言が相次いでおり、不透明感が強まっていることなどが日米株価の上値を抑える一因になっている可能性が指摘できます。しかし、株価の先行きに過度な警戒は不要であると考えています。株価はEPSとPER(株価収益率)の掛け算ですが、今後も日米株式はトランプ大統領の発言に一喜一憂する(PERが変動する)公算が大きいとみられます。一方で株価が下落する局面では拡大を続けるEPS(企業業績)が下支え役になると予想されます。 (野村證券 投資情報部 岡本 佳佑) (注)データは日本時間2025年2月14日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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02/13 16:15
【野村の夕解説】円安を追い風に日経平均株価3日続伸、497円高(2/13)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は前日比261円高の39,225円と続伸して取引を開始しました。前日の米国株式市場でナスダック総合指数が上昇したことや、1米ドル=154円台へと進行する円安が追い風となりました。東証プライム市場上場銘柄の約7割にあたる1,260銘柄が上昇し、投資家心理を和らげました。日経平均株価は上げ幅を広げ、一時前日比617円高の39,581円となる場面もありました。しかし、米国でインフレ再燃懸念が燻る中では上値も重く、高値圏で一進一退となり、前日比497円高の39,461円と3日続伸して取引を終えました。日経平均株価の構成比上位銘柄では、前日引け後の決算発表が悪材料視されたソフトバンクグループが前日比ー3.57%、リクルートホールディングスが同ー4.59%と下落し、2銘柄で日経平均株価を約118円押し下げました。一方で、ファーストリテイリングが同+2.92%、アドバンテストは同+3.13%と上昇し、2銘柄で日経平均株価を約201円押し上げました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 日本では、明日700社超の企業が決算発表を予定しています。昨年12月までの企業業績動向が注目されます。他には、本日米国では1月の生産者物価指数が発表されます。今後のFRBの金融政策への影響が注目されます。 (野村證券投資情報部 神谷 和男) ご投資にあたっての注意点
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02/13 09:30
【#対中追加関税】AI抽出15銘柄/トヨタ、TSテック、ヤマハ発など
トランプ政権、中国からの輸入品に10%の追加関税を発動 トランプ米政権は2月4日、中国から輸入されるすべての品目に対して10%の追加関税を発動しました。この対中関税の引き上げが、米国内の企業や消費者、さらにはグローバル経済全体にどのような影響を及ぼすのか、関心が高まっています。AI「xenoBrain」は、「米国対中関税引き上げ」が他のシナリオにも波及する可能性を考慮し、影響が及ぶ可能性のある15銘柄を選出しました。 ※ xenoBrain 業績シナリオの読み方 (注1)本分析結果は、株式会社xenodata lab.が開発・運営する経済予測専門のクラウドサービス『xenoBrain』を通じて情報を抽出したものです。『xenoBrain』は業界専門誌や有力な経済紙、公開されている統計データ、有価証券報告書等の開示資料、及び、xenodata lab.のアナリストリサーチをデータソースとして、独自のアルゴリズムを通じて自動で出力された財務データに関する予測結果であり、株価へのインプリケーションや投資判断、推奨を含むものではございません。(注2)『xenoBrain』とは、ニュース、統計データ、信用調査報告書、開示資料等、様々な経済データを独自のAI(自然言語処理、ディープラーニング等)により解析し、企業の業績、業界の動向、株式相場やコモディティ相場など、様々な経済予測を提供する、企業向け分析プラットフォームです。(注3)母集団はTOPIX500採用銘柄。xenoBrainのデータは2025年2月4日時点。(注4)画像はイメージ。(出所)xenoBrainより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点