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2024/10/20 09:00
【動画 3分チャート塾】シーズンⅡ:第1回 移動平均線のしくみを知ろう
「動画 3分チャート塾」は、株価チャートの見方を学びたい初心者から中級者の方向けの動画シリーズです。 シーズンⅡ「相場の見方の強い味方、移動平均線」初回の今回は、移動平均線の基本的な仕組みについて説明しています。 シーズン I:意外と知らないローソク足(全8回)ローソク足の基本の読み方や中長期的な相場の捉え方などについてわかりやすく解説していきます。シーズンII:相場の見方の強い味方、移動平均線(全9回)移動平均線の基礎や活用法についてわかりやすく解説していきます。シーズンIII:上値、下値のメドを探ろう(全10回)上値、下値メドの探り方についてわかりやすく解説していきます。シーズンIV:相場の過熱感を測るには?(全9回)オシレーター系指標についてわかりやすく解説していきます。シーズンV:トレンドラインを引いてみよう(全9回)トレンドラインについてわかりやすく解説していきます。 ご投資にあたっての注意点
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2024/10/19 16:00
消費市場としての中国への対応再考 -都市階級毎の消費社会フェーズの理解と対象市場への戦略アプローチ-
執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネスビジネス・コンサルティング部 コンサルタント 周 旋(2024年10月10日) 1. 強まる中国リスクと消費市場の回復 (1) リスクが顕在化した近年のマクロ経済 2016年に中国の経済成長率が7%を下回り、1980年代から概ね10%前後と高い成長率を維持してきた局面が変化し、中国の経済停滞リスクが注目されている。2023年になると、不動産大手の恒大集団の実質的な経営破綻など顕在化した中国の不動産バブル崩壊、それを背景とする中国経済のさらなる低迷、失業率の急速な上昇などが、中国事業を展開している多くの外国企業の経営者に不安を与えた。 実際、2023年7~9月期の外国企業の中国への投資は、国際収支が公表された1998年以降で初めてマイナスとなった。同年10~12月期はプラスと持ち直したが、年間では前年比82%減となり、30年ぶりの低水準にとどまった。同年12月に米国の格付け会社のムーディーズ・インベスターズサービスが中国の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。外国企業による中国事業の縮小や撤退、中国国内に投資した資産の回収が多く行われ、経済成長の鈍化や政治リスク、つまり「チャイナリスク(China risk)[1]」への警戒が外国企業の対中投資意欲を減退させているとみられる。 2024年に入ってからもその傾向に大きな変化はない。中国国家外貨管理局が8月9日に発表した同年4〜6月の国際収支によると、外資企業の直接投資は3期ぶりにマイナスとなった。これは、工場新設など新規投資分が、撤退や事業縮小に伴う資本の回収分を下回ったことを示す。中国の経済成長の期待値が低下する中で、特にコロナ禍以降、米中対立による経済安全保障の観点からサプライチェーン(供給網)の見直しが加速し、外国企業が中国の事業上の位置付けを引き下げていることが背景にある。それに代わる投資が、中国以外の国々で行われることになろう。 (2) 岐路に立つ日本企業 日本企業にも中国事業を見直す動きが相次いでいる。中国日本商会[2]が2024年3〜4月に実施した調査によると、同年の中国への投資額に関して、「前年より減らす」が22%、「投資はしない」が22%と、慎重な姿勢が強まり、「前年と同額」は40%で、「増やす」・「大幅に増やす」はわずかの16%にとどまった。 その一方、日本貿易振興機構(ジェトロ)が発表した「2023年度海外進出日系企業実態調査 中国編」では、「移転・撤退」予定の企業割合は2022年の1.4%に対して、2023年度では0.7%に縮小した。多くの日本企業にとって中国が重要市場であることは変わらないため撤退はしないものの、日本企業における中国事業の再構築に動く傾向もある。 このような日本企業全体の動きのなかで特に迷走しているのは、「世界の工場」から巨大なマーケットに変容した中国市場の購買力を期待する消費財メーカー、食品・農水産加工品事業者である。「日本製やメイド・イン・ジャパンという言葉だけでもモノが売れる」時代は終わり、令和に入ると、中国経済の成長鈍化や中国国産ブランドの台頭、そして2023年8月から始まったALPS処理水放出に伴う風評被害等により、日本商品の中国消費者に対する魅力がさらに衰退した。「マーケットの変化が早すぎてわからない」と、撤退を決断した企業もある一方で、このまま中国進出を進めるか否かの岐路に立ったまま、一旦「様子見」とした企業も少なくない。ただし、静観した企業の多くは、いつ、どのような対応をするかの見通しを立てられていないと思われる。 重要なことは、市場の変化を先取りし、機敏かつ柔軟に対応することであり、その前提となる消費市場としての中国マーケットを正確に認識することが求められる。 (3) 消費の回復と消費性向の低下 中国の消費は2022年に底を打ち、近年では消費の顕著な回復が窺える。社会消費品小売総額[3]は、2022年の0.2%減(対前年比、以下同じ)から2023年に7.2%増へ好転し、EC市場も8.4%増と続伸した。2024年に入っても、1~7月までの同総額は27.3兆元(約559.7兆円)、自動車を除くと24.7兆元、前年同期比4.0%増と消費市場の安定的な成長が続いている。中でも、食(食糧、油、食品)カテゴリーの伸び率は全体を上回る9%超で、社会消費市場の回復を牽引している。 また、インターネット上の実物商品小売額(以下EC市場という)は9.5%増の8.3兆元と、社会消費品小売総額の25.6%を占め、取引のEC化率が拡大していることが分かる(図表1)。このように一時的な成長鈍化は見られるものの、消費市場の長期成長トレンドは続いている。 一方、中国の消費者信頼感指数[4]は、2019 年1月の124ポイントから2022年3月には100ポイントを割りこみ、2024年7月時点では86ポイントまで低下している(図表2)。また、2023年に中国の世帯貯蓄率が31.7%まで上昇し、全国の貯蓄総額も最高額を更新していることを合わせて考えてみても、経済成長の減速、失業率が高まる環境の下で人々の貯蓄意向が高まり、消費性向が下がる現象が顕在化している。 このような矛盾する現象の背景には、「重い個人の固定支出」が存在している。例えば、住宅ローンや自動車ローン、教育費などの固定支出が重く、さらに将来の職業安定性に対する不安が経済的不確実性を高め、人々の支出動向を慎重にさせている。実際の収入が大きく変わらなくても、経済に関するネガティブなニュースや不安定要素の拡大は、消費者の消費性向を弱める要因となる。 図表1 中国社会消費品小売総額の推移 (出所)中国国家統計局統計情報より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 図表2 中国消費者信頼感指数 (出所)中国統計局 2.大都市から地方に移る消費の重心 (1) 「下級都市[5]」市場の高いポテンシャル 中国に進出しようとする日本企業は、概ね一級又は二級都市などの大都市に焦点を当てる場合が多い。ただし、このような大都市の消費が全体の消費に占める割合は限られ、2011~2019年では社会消費総額の約4割を上回っていたが、コロナ禍となった2019年末以降は上記大都市以外の「下級都市」の社会消費に占める割合が拡大している。実際、2019年時点でおよそ6割であった下級都市の同割合は、2023年には7割弱まで上昇している。下級都市は既に巨大な消費市場を形成しているが、今後も一層成長するポテンシャルを有している。以下、下級都市の数や人口、購買力について簡単に触れたいたい。 ①「下級都市」の数および人口 「下級都市」の数は280以上に上り、中国全体の人口14億人の約65%が住んでいる。そして下級都市の18~30歳の若者人口は、一級都市および二級都市の3倍以上の数にのぼる。地方から人口が流出している日本と同様に、「下級都市」からの人口流出はあるものの、軽微な水準にとどまっており、膨大な人口「下級都市」の発展を支えている。 図表3 中国における都市階級分類 (出所)新一線都市研究所「中国都市魅力ランキング」により、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 ②「下級都市」の購買力 一級都市(新一級都市を含む、以下同様)・二級都市と比べて「下級都市」の消費者は、前述の「個人の固定支出」の割合が比較的小さい。やや古い統計になるが、同都市に住む消費者の41%が、住宅ローンの返済が不要な住宅を有している(2020年58同鎮「2019年下級都市市場ユーザ調査研究報告」)。「下級都市」では、2019年において若者人口の約7割が月収の8割超を消費したのに対し、一級都市および二級都市の若者ではそれが63%にとどまっている[6]。「下級都市」は中低所得層の割合が多い地域であるが、所得水準の向上とともに「下級都市」の購買力が高まっており、一級都市・二級都市との差が縮まりつつある。 (2)社会の段階的発展に伴う都市階級毎の消費行動 消費者意識は、消費行動や消費方法に対する人々の認識と価値判断を指し、市場動向の予測や個人の消費行動を理解するために重要である。また、その変化は経営者や投資家にとって新たな投資機会を見極める鍵にもなる。消費社会研究家である三浦展氏は、自身の著書「第四の消費」[7]の中で、これまでの日本の消費社会を次の4つに分けている。 ① 第一消費社会:戦前、大正から昭和初期にかけて、中流家庭が台頭し始めた時代。西洋化したライフスタイルが始まり、都市部の特定層が消費を享受する消費社会。 ② 第二消費社会:戦後の高度経済成長期にかけ、一億総中流と言われた時代。大量生産・大量消費、家庭中心の大量消費が特徴で、家電や自動車のような高価な商品が普及した大衆消費社会。 ③ 第三消費社会:1980年代を中心とする個人消費の時代で、物欲に溢れるが、個性化、ブランド化、多様化も進む。 ④第四消費社会:2000年以降。ブランドに依存せず、欧米志向が弱まり、日本文化が再評価される。ナチュラルでエコロジカルな消費が好まれ、無印良品などのシンプルな商品が人気を集める時代。 図表4 日本の消費社会の進化 (出所)三浦展「第四の消費」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 実は、中国の消費社会も日本と同様な進化を経験している。「2019年に中国の1人当たりのGDP額が10,000米ドルに達して以来、中国人の消費が量から質へと急速に変化し、多くの都市が新しい時代におけるチャンスへの探索を進めている」とフォーブス・チャイナは述べている[8]。 上海、北京、深セン、広州といった「一級都市」では、医療、教育、文化、娯楽など健康や精神的ニーズを満たすサービスにお金をかける消費者の傾向が強まり、情緒的価値を重視しながら、有機、ナチュラル、SDGs、エコという社会的責任も意識しつつある。総じて、モノへの消費志向が、合理的かつ簡素な消費への考えへと進化している。 「二級都市」では、ブランド志向が強い一方で、個性化、コストパフォーマンスも重視される。消費の意欲、能力とも高いが、高単価な消費より低単価商品の消費頻度が高くなる傾向にある。 「三級・四級都市」では、ECの普及、コスメ、家電などの消費が増加している。また、ブランドや品質を追求する傾向が見られる。 それ以下の都市・農村部では、国からの「家電下郷」政策[9]をきっかけとした補助金制度が支える家電や自動車などの耐久消費財をメインターゲットとした大衆消費社会である。低価格を中心とした商品を提供するPDD[10]の成功が、このような大衆消費社会を象徴する。このような中国の階級都市の消費社会段階を示し、それぞれのトレンドや注目するキーワードを図表5にまとめた。 図表5 中国における都市階級毎の消費社会段階(筆者仮説) (出所)野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 3.中国市場に対する日本企業の捉え方 中国を消費市場と考える日本企業にとって、上述したように、中国の都市階級毎の市場ポテンシャルを考慮した柔軟な戦略が必要である。 第四消費社会段階まで進んでいる一級都市においては、消費者が望む健康や環境、SDGsに関する高付加価値サービス・製品の提供、オーガニックやエコフレンドリーを意識した販促活動が求められる。特に医療や教育、文化、娯楽など精神的価値を重視する消費者向けに、情緒的な価値を付加したマーケティングが有効である。また、ブランド依存が薄れ、合理性を求める消費傾向が強くなっているため、従来の「メイド・イン・ジャパン」のみではなく、新しい価値提案を行い、競合と差別化することが求められる。 新一級都市・二級都市では、中国における現地の文化に根ざした製品やマーケティングを行うことが、消費者の共感を生み、信頼を獲得する鍵である。中国市場において、日本製品の高品質を強調しつつも、中国の伝統や文化的要素を取り入れることで、より親しみやすいブランドイメージを形成できる可能性がある。中国の国潮ブームは日本企業にとっては逆風でもあるが、新たなビジネスチャンスとして捉えることも可能である。 中低所得層が多い下級都市では、コストパフォーマンスの高い商品が求められ、また、低価格販売プラットフォームを通じた購買行動が活発であり、販売チャネルを活用して地方の消費者にリーチし、手頃な価格の商品や利便性を重視したサービスを提供することが重要となる。特に、若者層の消費意欲が高く、これを取り込むためのオンライン広告やSNSを活用したマーケティングが有効である。 このように、中国の階級都市毎の違いを理解し、ターゲット市場に応じた戦略的なアプローチを取ることが、中国市場での成功に繋がる。これにより、現地の消費者とより深い関係を築き、持続的なブランド価値を高めることが期待できる。 ●文中注釈 [1] 中国が持つ様々な矛盾や不均衡に起因するビジネスリスク。具体的な要因には、政治の不透明性、所得格差、知的財産権の侵害やコピー商品の氾濫などが挙げられる。中国経済の高成長や外国企業の進出等で世界に対する影響力が増した一方、民族主義や対外拡張主義等による諸外国との対立が商行為に波及するケースもあることから、外国企業が中国国内で経済活動を行うリスクの意味で使われることが多い(野村證券株式会社・証券用語解説集)。経済合理性に加え、地政学リスクの観点から中国でビジネスや投資活動を行う際に考慮しなければならないリスクのことを指す。 [2] 542の在中国日系企業などで構成される日本商会である。前身が1980年10月に設立された北京日本商工クラブ。 [3] 中国における消費動向を示す指標。卸売業、小売業、宿泊業及び飲食業が個人消費者又は社会団体に販売した商品やサービスの総額、うち、インターネット上の取引については実物商品小売額のみ統計される。 [4] 中国全国の20の都市から15歳以上の700人を対象に、現在の経済状況に対する消費者の満足度と将来の経済動向に対する期待を0(極端な悲観主義)から200(極端な楽観主義)のスケールで指数化した指標である。100は中立を示す。 [5] 中国の経済情報メディアの第一財経・新一線都市研究所が「商業施設の充実度」「都市のハブとしての機能性」「市民の活性度」「将来の可能性」「新経済の競争力」の5つの評価指標によって中国の337都市を評価した「中国都市魅力ランキング」で、「下沈市場」と定義している都市。本稿では、一級都市(新一級都市含む)、二級都市以外の都市を「下級都市(市場」」と定義し、「下沈」「下級」を「下級」に統一した。 [6] “Helens Initiation”, Goldman Sachs, April 2022 [7] 三浦展著「第四の消費 –つながりを生み出す社会へ-」(2012年、朝日新聞出版) [8] 2023年フォーブス中国・消費活力都市ランキング [9] 農村部の家電普及率上昇を促進するために、指定された機種について補助金を出す政策。2009年2月に施行された。 [10] 中国の「下級都市」在住者や中所得者がメインターゲットとなるECプラットフォーム。 [11] 自身を悦ばせ、普段頑張っている自分へのご褒美として消費するなど、主に自己の満足感や幸福感を追求することを目的とした消費行動を指す。 [12] 中国風の流行で、中国伝統の要素と現代のトレンドを融合した消費ブームのことである。ファッションやコスメをはじめ、音楽など文化まで中国においてZ世代の中では多数の支持を得ている。 ディスクレイマー 本資料は、ご参考のために野村證券株式会社が独自に作成したものです。本資料に関する事項について貴社が意思決定を行う場合には、事前に貴社の弁護士、会計士、税理士等にご確認いただきますようお願い申し上げます。本資料は、新聞その他の情報メディアによる報道、民間調査機関等による各種刊行物、インターネットホームページ、有価証券報告書及びプレスリリース等の情報に基づいて作成しておりますが、野村證券株式会社はそれらの情報を、独自の検証を行うことなく、そのまま利用しており、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。また、本資料のいかなる部分も一切の権利は野村證券株式会社に属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。 当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。 国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。 外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
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2024/10/19 09:00
【オピニオン】日米金利差はゆっくりと縮小、円高もゆっくりと
※画像はイメージです。 米国10年国債利回り(長期金利)は再び4%台へ上昇しています(2024年10月16日時点)。10月4日に発表された米9月雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月比+25.4万人と市場予想の同+14万人を大幅に上回り、失業率も4.1%と前月の4.2%から低下し、米景気のソフトランディング(軟着陸)期待が高まりました。FRBによる大幅利下げ期待が後退し、長期金利を押し上げました。また、10月10日に発表された米9月消費者物価指数(CPI)は総じて市場予想を上回り、インフレ減速の停滞感が残りました。 9月17-18日に開催されたFOMCは大方の市場予想通り、0.50%ポイントの利下げを決定しましたが、同時に公表された「経済見通し」の中で、「中立金利」が上方修正されたことが注目されます。「中立金利」とは景気、インフレを加速も減速もさせない政策金利の中立的水準を指します。24年に入って、3月、6月、9月のFOMCで継続して引き上げられ、現在、2.875%と推計されています(下図)。 (注)データは四半期で、直近値は2024年7-9月期。政策金利はFF(フェデラル・ファンド)金利翌日物の誘導目標レンジの上限値。中立金利とは景気に対して中立的な政策金利で、FOMCは2012年より公表。(出所)FRB、LSEGより野村證券投資情報部作成 今回の利下げ局面でFRBが意識する着地点はこの3%程度のFF(フェデラル・ファンド)レートと推察されます。つまり、現在は景気、インフレを睨みながら、中立水準まで引き下げる局面と考えられます。米長期金利の高止まりは市場の目線がこの着地点を意識しているためとも思われます。FRBがこの中立水準を下回る領域まで政策金利を引き下げる場合は、不動産価格、債務などの過大な不均衡が解消される過程で、経済・金融面で直面する大きなリスクへの対応と推察されますが、現時点で大きな不均衡は見当たりません。 一方、米国の賃金関連の主要統計を俯瞰すると、減速局面が続いていますが、年率4%程度にとどまっている統計も散見されます(下図)。UAW(全米自動車労組)を始め、米国東海岸港湾の労働者と雇用者側のUSMX(米国海運連合)は6年間で賃金を62%引き上げることで合意するなど、近年にない高い賃上げ率が相次いでいます。こうした環境の中で、FRBは概ね四半期毎に0.25%ポイント程度の利下げで対応することが想定されます。 (注)データは四半期で、直近値は2024年4-6月期(時間当たり平均賃金は同年7-9月期)。(出所)ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル・インク(NSI)より野村證券投資情報部作成 一方、利上げを開始した日銀も、25年春闘の動向を睨み、賃上げによる消費への効果を確認しながら、徐々に利上げを進めるものと予想されます。米国の利下げ、日銀の利上げペースの不透明感は未だ強く、当面はボラティリティー(変動性)の高い状況が続くと思われますが、やがては日米金利差はゆっくりと縮小し、米ドル円相場もゆっくりと円高方向へ向かう局面が訪れるものと予想されます。 ご投資にあたっての注意点
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2024/10/19 07:00
【来週の予定】衆議院総選挙の行方に注目、日本株への追い風は吹くか
来週の注目点:主要国・地域のPMI速報と日本の総選挙 海外市場では2024年7-9月期の決算発表が本格化しているうえ、重要統計の発表が一巡したことから、多くの市場参加者は決算内容や今後の見通しなど、ミクロ情報から景気の先行きを探ろうとしています。このような状況下、今週は22日(火)にIMFが世界経済見通しを発表します。前回(7月)の同レポートでは「足踏み状態の世界経済」と題して、サービス価格の上昇がインフレ鎮静化を妨げ、金融政策の正常化を複雑にしていると指摘しました。足元ではECBに続き、FRBも利下げ局面入りしており、IMFの経済情勢に対する判断が注目されます。 主要国・地域では24日(木)に10月のPMI(速報)が発表されます。日米欧中の製造業PMIは全て景気判断の分岐点である50を下回っています。製造業に底入れ感が見受けられれば、市場のリスクセンチメントの改善につながることが期待されます。 米国では23日(水)に9月中古住宅販売件数、24日(木)に9月新築住宅販売件数、25日(金)に9月耐久財受注が発表されます。住宅ローン金利低下の影響が住宅販売の増加にどの程度寄与しているかが注目点です。 日本では25日(金)の10月東京都区部消費者物価指数、27日(日)の衆議院議員総選挙の結果が注目されます。総選挙は自民党苦戦が報じられており、自民、公明両党で過半数に届かない結果になれば、政治の流動化懸念から日本株の重石となるリスクがあります。逆に自公で安定多数(244議席)や絶対安定多数(261議席)を確保できれば、長期安定政権への期待から日本株にとって追い風となることが期待されます。 その他、海外では25日(金)に発表されるドイツの10月Ifo企業景況感指数が注目されます。野村證券では、ドイツ経済は24年4-6月期以降、3四半期連続でマイナス成長となり、景気後退に陥ると予想しています。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2024年10月18日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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2024/10/18 16:01
【野村の夕解説】日経平均株価3日ぶりの反発、70円高(10/18)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 17日の米株式市場でNYダウが連日で最高値を更新した流れを引き継ぎ、本日の日経平均株価は前日比181円高の39,092円で取引を開始しました。1ドル=150円台へと円安米ドル高が進行したことを受け、輸出関連株の上昇が目立ちました。他方で、米半導体株の一角の上昇を受けて東京エレクトロンなど関連株が上昇し、日経平均株価は前日比275円高まで上げ幅を広げました。しかし、高値警戒感がくすぶる中で上値も重く、1ドル=149円台へと円高に振れると、日経平均株価は上げ幅を失い下げに転じる場面もありました。その後は前日終値付近で膠着し、前日比70円高の38,981円と3日ぶりに反発して取引を終えました。 個別銘柄では、前日引け後に好決算を発表したディスコが前日比+7.67%と大幅高となる一方で、同業の半導体製造装置大手東京エレクトロンは同-0.12%、アドバンテストは同-0.42%と朝高の後下げに転じ、小幅安となりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日、米国では、9月住宅着工・建設許可件数の発表やアメリカン・エキスプレス、プロクター・アンド・ギャンブルの2024年7-9月期決算発表が予定されています。 (野村證券投資情報部 神谷 和男) ご投資にあたっての注意点
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2024/10/18 12:00
【今週のチャート分析】日経平均株価、一時4万円回復、年末に向けて史上最高値が視野に
※画像はイメージです。 ※2024年10月17日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 日経平均株価は、本格的な上昇相場への移行が見込まれる局面 今週の日経平均株価は、約3ヶ月ぶりに一時4万円台を回復する場面がありましたが、週後半は、半導体関連株を中心に軟調に推移しました。 チャート面からこれまでの動きを振り返ってみましょう(図1)。日経平均株価は、9月27日にかけての上昇で、複数の上値抵抗線を超え、さらに8月5日安値に対する二番底が完成し、本格的な上昇相場への移行が見込まれる局面となっています。 その後、一時大幅安となりましたが、徐々に下値を切り上げ、10月15日には9月27日高値(39,829円)を上回り、一時4万円台を回復しました。 17日に再び39,000円割れとなっていますが、調整一巡後に心理的フシの4万円の水準を終値で明確に突破すれば、年末に向けて7月11日に付けた史上最高値(取引時間中ベース:42,426円)を目指す展開が期待できます。 一方で、さらなる調整となった場合は、75日線(10月17日:38,309円)や25日線(同:38,133円)、200日線(同:38,115円)などを下値サポートとして下げ止まりとなるか注目されます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2024年10月17日。 (注2)日柄は両端を含む。(注3)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 8月に急落した日経平均株価は、9月・10月も一時大幅安となる等、振れ幅の大きい動きがみられました。ただし、今回は8月5日の安値から既に2ヶ月を超える日柄が経過しています(図2)。 (注1)直近値は2024年10月17日時点。 (注2)下落局面はすべてを網羅しているわけではない。(注3)ブラックマンデーや、コロナショック時や今回の下落局面は、直前の高値を起点とした。リーマンショックは2008年9月15日であり、その前営業日を起点とした。(出所)日本経済新聞社データより野村證券投資情報部作成 また、月別の指数騰落率を見ると、11月~翌年1月にかけてのパフォーマンスが特に良い傾向がみられます(図3)。これらの日柄や季節性を考慮すれば、今後、年末にかけて本格的な戻し相場に入ることが期待されます。 (注1)図中の平均は1-12月の月別騰落率の平均値。(注2) 順位は平均月別騰落率の上位順。 (注3)矢印は最もパフォーマンスが悪い9月から翌年1月にかけての局面。(注4)騰落率がプラスを勝ち、マイナスを負けとしてカウント。(出所)日本経済新聞社、S&Pダウ・ジョーンズ株式会社より野村證券投資情報部作成 日本10年国債利回り、中長期的な上昇トレンドが継続中 日本の長期金利は上昇傾向にあります。長期金利は「経済の体温計」ともいわれています。金利上昇自体は借入金利に影響を与え、経済活動にとってマイナス要因となることがありますが、経済活動の好調さを反映する形での上昇であれば、健全なものと捉えられます。 10年国債利回りは、日銀の金融政策正常化の進展を受けて、「経済の体温計」としての役割を取り戻しつつあります。チャートを通じて、今後の動向を考察していきましょう。 月足チャート(図4)を見ると、2016年のボトム(-0.300%)と2019年のボトム(-0.290%)によるダブルボトムが形成され、12ヶ月移動平均線を下支えとした本格的な上昇トレンドに入っています。 今年3月の日銀によるマイナス金利解除を経て、5月に心理的なフシとなる1%水準を上抜け、7月には一時1.100%に達しました。その後は利回り低下に転じましたが、これまでと同様に12ヶ月線(10月15日:0.849%)前後の水準から反発が見られており、中長期的な上昇トレンドは継続していると考えられます。 この先、今年7月ピーク(1.100%)や、2006年5月ピークから2016年7月ボトムまでの利回り低下幅の2/3戻し(1.226%)水準を上回った場合、チャート上の次の大きなメドは、2006~2008年につけた複数のピークや心理的フシがある1.9~2.0%水準までみられません。 これまでの上昇ペース(約5年で1.390%ポイント)を基にすれば、2~3年かけて、2%に迫る水準となる可能性も考えられます。 (注1)直近値は2024年10月15日。チャートは新発10年国債利回りの単利・日次終値を基に月足に変換している。新発10年国債利回りは日本相互証券公表の引値で、毎月、新発国債の入札日に銘柄の入れ替えを行っている。(注2)トレンドラインには主観が含まれておりますのでご留意ください。(注3)日柄は両端を含む。(出所)日本相互証券より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 岩本 竜太郎) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2024/10/18 08:15
【野村の朝解説】ASMLショックは緩和も米国株はまちまち(10/18)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 17日の米国株式市場では、寄り前に発表された9月の小売売上高が前月比+0.4%と市場予想(同+0.3%)を上回ったことを好感し、前日から上昇して始まったものの、取引終盤にかけて値を消す展開となり、S&P500は小幅安、NYダウ、ナスダック総合は小幅高で引けています。半導体受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC)は2024年の売上高見通しを上方修正、2024年7-9月期の純利益はアナリスト予想を上回りました。ASMLホールディング(ASML)の決算発表を受けて高まった人工知能(AI)や半導体需要への先行き懸念は緩和され、情報技術関連株は反発しました。米国では経済指標の上振れを受けて長期国債を中心に金利が上昇、ドル円相場は再び150円を超えるドル高円安水準へ上昇しました。 相場の注目点 ECB(欧州中央銀行)は17日、市場予想通り0.25%ポイントの利下げを決定しました。9月会合に続いて連続利下げを行った背景には、インフレが鎮静化する中で、ドイツを中心に景気下振れリスクが高まっていることがあります。野村證券では2025年6月会合まで毎会合での利下げに加えて、2025年9月会合での利下げを予想しています。米国の金融政策に関しては、2024年中は2回、2025年中は4回の利下げを予想しています。米大統領選挙でトランプ氏が当選した場合は、上院・下院共に共和党が過半数を占める「レッドウェーブ」となる可能性が高まっています。トランプ氏の掲げる政策はインフレ圧力を高めると想定され、米FRB(連邦準備理事会)の利下げ判断にも影響を与える可能性があります。トランプ氏の当選は金利上昇、ドル高につながる一方、米国株の重石になる可能性があるとみられていることから、米大統領選挙が終盤戦を迎える中で選挙情勢の変化とそれに対する市場の反応が注目されます。 (野村證券 投資情報部 尾畑 秀一) (注)データは日本時間2024年10月18日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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2024/10/17 16:00
【野村の夕解説】半導体関連株の下落により、日経平均株価は269円安(10/17)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 前日、米国で発表された9月の輸入物価指数、輸出物価指数はいずれも市場予想を下回ったほか、10月のニューヨーク連銀サービス業活動指数が前月から悪化しました。これら経済指標の結果を受けて、米国金利は低下しました。一方、金融大手のモルガン・スタンレーや空運大手のユナイテッド航空ホールディングスなどが発表した決算は、好調な結果となりました。金利低下と堅調な企業業績により、米国株式市場では、主要3指数が揃って反発しました。この流れを引き継ぎ、本日の日経平均株価は前日比83円高の39,263円で取引を開始しました。しかし、15日(火)の決算発表で業績見通しを下方修正した半導体製造装置大手ASMLホールディングの下落や、本日午後に発表を控える台湾のTSMCの決算への警戒感から、国内半導体関連株が下落し、日経平均株価も下落に転じました。14:30ごろに発表されたTSMCの2024年7-9月期決算は最高益を更新したため、半導体関連株は底打ちし、日経平均株価も一時的に下げ幅を縮小しました。しかし、上値は重く、大引けは本日の安値となる前日比269円安の38,911円でした。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日、米国では9月小売売上高や9月鉱工業生産などの経済指標が発表されます。特に、年末商戦を控え、米国の消費者の選好を探るうえで、小売売上高は注目です。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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2024/10/17 08:40
【野村の朝解説】米株が反発、ドル円は150円をうかがう展開(10/17)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 16日の米国株式市場では、主要3指数が揃って反発しました。半導体製造装置大手ASMLホールディング(ASML)の決算発表をきっかけに前日に大幅下落した半導体株の多くが反発し、好決算を手がかりに上昇した金融株、小型株が相場を牽引しました。朝方発表されたモルガン・スタンレー(MS)や地銀のUSバンコープ(USB)の2024年7~9月期決算では、利益が市場予想を上回り、金融株全般が上昇しました。他方、原油価格が続落し、欧州中央銀行(ECB)の追加利下げへの思惑が強まる中、米長期金利が小幅に低下し、1ドル=149円台後半まで円安ドル高が進行しました。 相場の注目点 本日の日本株は、米国株の上昇や、半導体株の多くが反発、円安ドル高が支援材料になるとみられます。円相場は、米国の利下げへの過大な期待が後退する中で、目先は1ドル=150円をうかがう展開になるとみています。しかし、ドル円は短期的な高止まりを経て、米FRB(連邦準備理事会)の利下げ観測や日銀への追加利上げ期待を受けて年末には145円に向かうと野村證券では予想します。通貨のボラティリティー(変動性)を高める要因として、日米の選挙には注目です。米国の大統領選挙では、引き続きハリス候補がトランプ候補をリードしていますが、一部の接戦州ではトランプ候補の支持率がハリス候補を再逆転しており、トランプ候補が世論調査以上の強さを見せる可能性が意識されています。トランプ候補が再選した場合は、一時的にドル高圧力が高まる可能性があります。本日は、ユーロ圏でECBの金融政策理事会の結果発表が行われます。景況感が悪化し、インフレ率が鈍化する中、ECBは連続利下げに向かうと予想します。海外中銀の利下げ加速は中長期的な円相場の支援材料になるとみられます。 (野村證券 投資情報部 坪川 一浩) (注)データは日本時間2024年10月17日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点