米国株
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09/15 17:00
【特集】アームは売り出し価格比25%上昇!上場で話題の「半導体設計業界」とは?
9月14日(木)、ソフトバンクグループ傘下のアーム・ホールディングスが米国ナスダック市場に上場を果たしました。同日の終値は63.59ドルで、売り出し価格の51ドルと比べて25%高く、上場は成功裏に終わったといえそうです。 日本の株式市場でも、親会社のソフトバンクグループが前日比2%上昇したほか、東京エレクトロンや信越化学工業も上昇しています。 アーム・ホールディングスはイギリスに本籍を置く半導体設計企業です。この記事では、「半導体設計」が半導体産業の中でどのような役割なのか、設計業界にはどんなプレイヤーがいるのかを確認しましょう。 ファブレスと呼ばれる半導体設計企業 半導体メーカーのうち、工場(ファブ)を持たないメーカーは「ファブレス」と呼ばれます。ファブレスは、製品である半導体の用途に応じて、企画・設計・開発を行います。ファブレスは、生産を「ファウンドリー」と呼ばれる生産工場を持つメーカーに外部委託します。ゲームやAI向けGPU(画像処理チップ)などを手掛けるエヌビディアなどはファブレスです。また、PC向けやデータセンター向け半導体の大手企業であるインテルは、ファウンドリーを別事業部として独立させることを発表しました。 IPベンダーは、半導体の「設計図」を提供 IPは、Intellectual Propertyの略で、半導体業界では「設計に関する機能単位でまとまった回路情報」を指します。IPベンダーは、実際に稼働が確認されているIPや、IPを組み合わせた製品の設計図をファブレスに提供します。IPベンダーは、IPのパッケージに対するライセンス収入や最終製品一つ一つに対するロイヤリティ収入を売上高として計上します。 EDAベンダーは、IPやAIを利用した「設計ソフト」を提供 EDAは、Electronic Design Automation(電子設計自動化)の略で、EDAベンダーは、IPやAIを用いた半導体設計ソフトウェアをファブレスに販売します。様々な機能を持ったIC(集積回路)や、複数のICを組み合わせた大規模なSoC(システム・オン・チップ)などは近年複雑化・微細化しており、設計には効率的なソフトウェアの使用が必須となっています。このため、半導体設計ソフトウェアへの参入障壁は高くなっています。 IPは、IPベンダーだけでなく、ファブレスやEDAベンダーも保有しており、それぞれの企業の強みとなっています。 「半導体株」と一括りにされがちな半導体産業の企業群ですが、同じ株価材料であっても各企業への影響には濃淡があります。投資先の企業をより深く知るためにも、その業界における役割を理解して投資をすることは重要といえそうです。 ご投資にあたっての注意点
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09/11 20:00
【今週の米国株】”1ヵ月早い”アドビ&オラクル決算発表が大手ハイテク業績の試金石に/CPIを待ち構える市場(9/11)
1分でわかる今週の米国株 先週は、原油価格上昇や市場予想を上回る米経済指標が散見されました。FRB(米連邦準備理事会)による金融引き締め政策の長期化への懸念が再燃し、米長期金利(10年債利回り)が上昇しました。米長期金利の上昇を受け、米国株3指数は前週末比で下落しました。 今週のPoint1. 「沈黙期間」に入る中、CPIが相場の焦点に 19日(火)-20日(水)に開催される9月FOMC(米連邦公開市場委員会)を前にFRB幹部は沈黙期間(金融政策に関する公の発言を自粛する期間)に入っており、経済指標の内容によっては、金融政策に対する思惑で株式市場が大きく反応することも考えられます。 今週、市場が最も注目する経済指標は13日(水)の8月CPI(消費者物価指数)でしょう。市場は総合指数で前年同期比+3.6%と7月の+3.2%から再加速を想定しています。市場予想の+3.6%(あるいは、エネルギーと食品を除くコア指数の市場予想である+2.2%)からの上振れは株価の重石に、下振れは株価の支援材料になり易いでしょう。 今週のPoint2.インフレを加速させ得る原油価格の上昇 足元では産油国の減産などにより原油価格が上昇、WTI原油価格は87ドル前後で推移しています。原油価格の高騰はインフレ率の上振れ要因となるため、上昇が続けば、過去の数字である(8月の)CPI以上に注目を集める場面があるかもしれません。野村の大越シニア・エコノミストは、2022年の原油価格動向を振り返り「ウクライナ紛争勃発に絡んだ暴騰から原油価格が下落した後、WTI原油価格が90ドルを超えた局面が2回ある」※と指摘します。 ※10月の中国共産党大会を前に、党大会後にゼロコロナ政策が解除されるとの期待が高まった/11/11(金)に中国が20項目の制限緩和措置を発表する前に、ゼロコロナ政策解除期待が高まった 「足元の環境も踏まえると、今後WTI原油価格が90ドルを超えて安定する、あるいは更に上昇するためには、中国の不動産セクターに対する有効なてこ入れ策が講じられ、中国景気が改善して一定の成長を続けられるような景気対策が追加実施される必要がある」と分析しています。減産が続く中で中国景気の底入れが確認されれば、さらなる原油価格上昇も想定されます。 今週のPoint3. “1ヵ月早い”アドビ、オラクルの決算が大手ハイテク業績の試金石に 米国は早くも6-8月期決算発表が本格化します。6-8月期決算企業数はS&P500企業ベースで全体の4%にすぎませんが、最も企業決算が集中する7-9月期決算(同、全体の89%)における業績を見通す上では重要な情報となります。足元の注目は11日(月)引け後発表のオラクルと、14日(木)引け後発表のアドビで、いずれも顧客企業のクラウドやソフトウェア投資の意欲を見る上で注目が集まります。 12日(火)にはアップルが新型iPhoneを発表する見込みです。中国による政府職員のiPhoneの使用規制が発表され、同社の株価は前週末比で約6%下落しています。新型iPhoneの発表そのものが中国における規制懸念を払しょくすることにはならないと思われますが、株価の底入れ材料の一つになるかは市場の関心事項と言えるでしょう。なお、2023年4-6月の売上高で見て、同社の大中華圏の売上高比率は約2割を占めていました。 (ここまで、「1分でわかる今週の米国株」) (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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09/04 20:00
【今週の米国株】ゼットスケーラーが決算発表、セキュリティ10銘柄の上昇率は?/雇用統計がFOMCに与える影響(9/4)
1分でわかる今週の米国株 先週は、8月29日(火)に発表されたJOLTS求人件数、そして9月1日(金)に発表された8月雇用統計がいずれもインフレの鈍化を示唆する内容であったと市場に受け止められました。2023年中の追加利上げ停止期待が高まったことで、米国株主要3指数は先週を通して上昇しました。 今週のPoint1. 雇用統計を受けたFRB高官コメントに注目 8月雇用統計で、非農業部門雇用者数(事業所統計)は前月比+18.7万人増となり、市場予想(同+17万人)を上回りました。一方で、6月分と7月分の雇用者数が正味で11万人減と大きく下方修正された結果、3ヵ月移動平均でみた雇用者数の増加ペースは同+15万人増に低下し、コロナ禍前の増加ペースを下回りました。平均時給や失業率などのデータも雇用環境の緩和を示すものでした。 今週は、FOMC(米連邦公開市場委員会)各委員の雇用統計の結果に対する評価が注目されます。特に、7日(木)に予定されるウィリアムス・NY連銀総裁、6日(水)・7日(木)に予定されるローガン・ダラス連銀総裁の発言には注目が集まります。ウィリアムス氏はFOMCの中心メンバーであり、8月7日のインタビューでもはや追加利上げは不要との見方を示し、利下げについてもインフレ率の低下次第で許容する姿勢を示しています。一方、ローガン氏は全体に先駆けて会合おきの利上げを提唱し、実際の政策もその通りとなった経緯があり、雇用統計を受けて追加利上げ向けてどの程度積極的な姿勢を維持しているのかに注目が集まります。 今週のPoint2. 6日(水)のISMサービス業景気指数 6日(水)には、8月ISMサービス業景気指数が発表されます。市場では52.4(7月同52.7)と、小幅低下するものの、依然として底堅さを示唆する水準で推移することが予想されています。 今週のPoint3.ゼットスケーラーなど5-7月期決算発表が最終盤 今週で5-7月期決算発表がほぼ終了し、来週からは6-8月期決算がスタートします。今週は、クラウドをベースとしたネットワーク・セキュリティのゼットスケーラーが5日(火)に、電子署名のドキュサインが7日(木)に予定されるなど、市場の注目を集めるソフトウェア企業の決算が続きます。 (ここまで、「1分で読める今週の米国株」) もっと知りたい!経済指標&金融政策 雇用統計、金融政策への影響は 全全体として、今回の雇用統計はFOMCにとって政策金利据え置きを後押しする要因になったと考えられます。 ただし、FRBは短期的に、タカ派(インフレ警戒)寄りの姿勢を維持し、追加利上げの可能性を残すと考えられます。各物価指標は減速傾向ですが、スーパーコアPCE(個人消費支出)デフレーター(食品・エネルギーと家賃を除いたPCEデフレーター)は急反発していることから、インフレ再加速へは強い警戒を続けることになるでしょう。FRBがこれ以上の利上げは必要ないと確信できるようになるためには、より多くの証拠を確認する必要があるとの見解を示すと想定されます。 野村では、19日(火)-20日(水)に開催される9月FOMCで示されるドット・チャート(FOMC参加者の政策金利見通し)が中央値でみて、2023年内にもう一度の利上げとの見通しが維持された上で、2024~2025年の予想中央値は上昇し、その間の利下げペースが6月FOMCの見通しより遅くなると予想しています。 もっと知りたい!決算発表 5-7月期決算ではパロアルト・ネットワークスやクラウドストライク・ホールディングスなど、セキュリティ・ソフトウェア企業の好決算が市場の注目を集めました。今週も5日(火)に、ネットワークセキュリティ大手のゼットスケーラーが決算発表を予定しています。 ゼットスケーラーとは セキュリティのソフトウェアは、ユーザーやIDを管理するIAM(オクタなど)、端末を監視するEDR(クラウドストライク・ホールディングスなど)と様々な技術分野がありますが、ゼットスケーラーはセキュア・ウェブ・ゲートウェイなどの技術を用いて企業の情報全体を守るネットワークセキュリティの大手です。競合には、パロアルト・ネットワークスやサイバーアーク・ソフトウェアが挙げられます。競合は既に決算発表を終えており、各社とも一株当たり利益と売上高が市場予想を上回る好決算でした。 2-4月期決算振り返り ゼットスケーラーの2-4月期決算は一株当たり利益、売上高ともに市場予想を上回り、売上高と利益の通期ガイダンスが引き上げられました。景気の影響は前四半期とほぼ変わらず、経営陣によると成約率は高まりました。ここ数四半期に見られた成約前の精査強化の動きや営業サイクルの長期化を受けて、営業方法を見直したことが奏功したと説明されました。 5-7月期決算に向けて 4-6月期決算を含めたここまでのところ、セキュリティ・ソフトウェア各社の実績は軒並み堅調です。ただ株価の推移には強弱があり、ガイダンスが市場予想を上回ったか/下回ったかの影響が大きいと推察されます。ゼットスケーラーは7月期決算企業であるため、今週の決算発表で2024年7月期通期のガイダンスを示すと見られ、実績とともに会社見通しに注目が集まると見られます。 最後に、セキュリティ各社の今年のパフォーマンスを振り返っておきましょう。 サイバーセキュリティ銘柄の株価上昇率(2022年末比) 2023年1月18日の特集「【テーマ銘柄】サイバー攻撃から国家インフラを守れ!」の参考銘柄のうち米国株各種資料より野村證券投資情報部作成 このようにして見てみると、株価が大幅に上昇した銘柄がある一方、ナスダック総合指数をアンダーパフォームしている銘柄もあります。デジタル化やリモートワーク向けの需要はコロナ禍で一巡しており、セクター全体が株式市場に再評価されるには時間がかかっていることが示唆されます。 セキュリティ・ソフトウェア分野の業績は、一般には景気動向には左右されづらいとされますが、顧客企業によるソフトウェアの選別からは無縁ではありません。上記セキュリティ・ソフトウェア専業の企業間だけでなく、マイクロソフトやアルファベットといった基幹ソフトウェア大手との競合もあるため、各セグメント・各企業のコメントをよく確認しながら選別投資すべきテーマと考えられます。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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09/01 09:39
【米国株決算速報】ブロードコム(AVGO):生成AI向けが好調な一方、通信向けは低調、株価は-4.11%(時間外取引)
決算概要:2023年5-7月期(2023.10期第3四半期) EPS実績は市場予想を上回った 米国時間8月31日引け後に、通信向けを中心とした半導体・インフラストラクチャーソフトウェアの設計、開発、販売を行うブロードコム(AVGO US)が2023年5-7月期(2023.10期第3四半期)決算を発表しました。 売上高は市場予想を0.1%上回り、EPSは市場予想を1.1%上回りました。 会社の2023年8-10月期売上高見通しは市場予想を若干下回りました。 生成AI向けが好調な一方、通信向けは低調 会社は、大手クラウド事業者からの生成AI関連のネットワーク半導体製品の需要が旺盛な一方、供給制約があるとコメントし、供給が需要に追い付いていないことを示唆しました。一方で、8-10月期の生成AI以外の半導体製品の売上高見通しは前年同期と同水準であると述べ、通信分野の成長が停滞していることを示しました。 売上高とEPSの推移 株価は下落 ブロードコムの株価は、前日比3.43%高で引けた後、決算発表を受けて時間外取引では、終値比4.11%安の885.00ドルで推移しています(NY時間17:34)。 当社株の時間外取引での下落は、8-10月期の売上高見通しが市場予想を若干下回ったことに加えて、31日終値は終値ベースでの史上最高値で、年初来で株価は65%上昇していたことから、決算発表というイベント通過で利益確定売りも相応に出たと推察されます。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は非米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2023年8月31日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2023年5-7月期(2023/7)。2023年8-10月期の売上高の白丸は会社見通し中間値。灰色はリフィニティブ集計による市場予想平均。2023年8-10月期以降の予想は2023年8月30日時点。(出所)会社発表、リフィニティブより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・竹綱 宏行) 【米国株決算速報】ブロードコム(AVGO):AI関連が成長をけん引、株価は-1.61%(時間外取引) 野村の米国株決算リンク集:2022年1-3月期・4-6月期・7-9月期・10-12月期決算 野村の米国株決算リンク集:2021年10-12月期 ご投資にあたっての注意点
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08/28 20:00
【今週の米国株】NYダウ構成銘柄セールスフォースが決算発表/マクロの注目は雇用統計(8/28)
1分でわかる今週の米国株 5-7月期決算発表の結果はまちまちで、先週の米国株式市場は一進一退で推移しました。週末の25日(金)に株価3指数は上昇し、注目されたジャクソンホール会議でのパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長講演を無事通過した形です。 今週のPoint1. ジャクソンホール振り返り 25日(金)のパウエルFRB議長講演では、もし雇用の高い伸びが続けば追加利上げの必要性が高まることが示唆されましたが、これまでの主張に沿ったものとの見方が広がりました。また、市場が事前に警戒していたような中立金利が上昇しているとの示唆はされませんでした。 今週のPoint2. 9月1日(金)の雇用統計 目先の注目は9月1日(金)の雇用統計です。市場は雇用減速を予想しているものの、これまで実勢対比で数字を押し下げていた季節調整の歪みが剥落すれば、市場予想対比で上振れのリスクがあります。上振れとなれば、年内追加利上げの期待が拡大・来年の利下げ期待が縮小することに加え、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)で示されるドットチャートで長期水準が引き上げられるとの見方が再燃するリスクもあります。 今週のPoint3.セールスフォースなど5-7月期決算発表も後半戦 5-7月期決算発表が後半戦に差し掛かります。30日(水)には、クラウド・ストライクホールディングスやオクタなどソフトウェア・サービスセクターの注目銘柄が多く決算を発表します。中でもセールスフォースは、同セクターの時価総額上位銘柄であるだけでなく、NYダウ構成銘柄で数少ない5-7月期決算であり注目が集まります。 (ここまで、「1分で読める今週の米国株」) もっと知りたい!経済指標&金融政策 9月FOMCまでの注目ポイント FOMCでの政策金利操作に関する確率を分析するツールであるCME FedWatch Toolによれば、今後の政策金利については、9月FOMCでは据え置いた後、11月FOMCで0.25%ポイント引き上げるとみている市場参加者が多い模様です(米国時間27日(土)4:10時点)。 前述の通り、1日(金)の8月雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想の前月比+16.8万人(7月同+18.7万人)を上振れることがあれば、利上げ継続の見通しがさらに強まり株価へ下押し圧力となる可能性もあるため目先の注目指標となるでしょう。29日(火)の雇用動態調査(JOLTS)、31日(木)の新規失業保険申請件数(週次ベース)といった雇用関連指標にも関心が高まります。 他方、9月19日(火)・20日(水)に開催されるFOMCで2024年末の政策金利見通しが引き上げられ、利下げ想定が縮小すれば、雇用の伸びが十分に減速するまで引き締めを維持するとの方針が明確化します。景気やインフレが減速するとの見方が強まり、長い年限を中心とした金利上昇は終息に向かうと考えられます。足元で株価の重石となっていた米長期金利(10年国債利回り)上昇の転換点となり得るため、FOMCまでの経済統計やFRB高官の発言などをよく確認すべき局面です。 もっと知りたい!決算発表 5-7月期決算発表が後半戦を迎えます。S&P500指数構成銘柄に関するデータを確認しておきましょう。 リビジョン・インデックスは大きく上振れ S&P500指数のRI(リビジョンインデックス)は直近4週間にアナリストが業績予想を上方修正した銘柄数/下方修正した銘柄数で計算されます。指数が1を上回ると上方修正優位、1を下回ると下方修正優位と判断されます。この時期は4-6月期決算発表の時期に比べると銘柄数が少なく、上下に振れやすいことに注意は必要ですが、それでもコロナ禍からの回復局面であった2021年以来の高水準となっています。 (注) S&P 500 指数構成企業のリビジョンインデックス。リビジョンインデックスは直近4週間にアナリストが業績予想を上方修正した銘柄数/下方修正した銘柄数で計算。指数が1を上回ると上方修正優位、1を下回ると下方修正優位と判断される。直近値は2023年8月23日時点。FY1は予想1期目(12月決算企業の場合、2023年12月期)、FY2は予想2期目(12月決算企業の場合、2024年12月期) 。 (出所) リフィニティブより野村證券投資情報部作成 また、4-6月期(3-5月期、5-7月期を含む)のポジティブサプライズ比率も、純利益ベースでみれば直近4四半期の平均や長期の平均を上回っています。 (注1)ポジティブサプライズ比率は、S&P 500 企業のうち決算実績がアナリスト予想平均を上回った企業の比率。2023年4-6月期には、2023年3-5月期決算、2023年5-7月期決算企業も含む。 (注2)直近4四半期平均とは2022年4-6月期~2023年1-3月期の平均。長期平均とは、売上高は2002年以降、純利益は1994年以降の平均。 (注3)リフィニティブによる2023年8月25日時点(売上高について484社、純利益について485社)の集計。 (出所)リフィニティブより野村證券投資情報部作成 7-9月期決算発表ではS&P500指数の一株当たり利益(EPS)に関して、4四半期ぶりの前年同期比プラスへの転換も見えてきます。 米国セクター別12ヶ月先予想EPS(1株当たり利益)の推移 セクター別の12ヶ月先予想EPSでは、半導体・半導体製造装置がけん引役となっています。また、ソフトウエア・サービスや電子商取引を含む小売りなど、テクノロジーセクターの改善が目立ちます。景気の底打ち以降、外食や娯楽などを含む消費者サービスの利益拡大が続いています。一方、金融やエネルギーは、予想EPSが低下しています。 (注)図中下線はS&P500指数24産業グループより抜粋したグループ。データは月次で、直近の値は2023年8月14日。予想はリフィニティブの集計による。ECは電子商取引。消費者サービスに含まれる業種は、外食、宿泊、カジノ、クルーズ船など。(出所)リフィニティブより野村證券投資情報部作成 ソフトウェア・サービスセクターの中でも、BtoB(法人向け)ソフトウェアを手がけるセールスフォースは同分野の中でリーダーに位置付けられ、今週は当社の決算に注目が集まります。 セールスフォースの事業内容 当社は、クラウド型で企業向けに営業支援や顧客関係管理のCRM(Customer Relationship Management)システムを提供する世界最大手です。当社ソフトウェアのユーザー企業は、営業や顧客に関するデータを一元管理することで、部門内や部門間、経営上層部と現場との間で情報共有ができます。そして、営業の効率化や、より迅速かつ的確な経営判断が可能となります。 主なセグメントは5つ 当社の主要なセグメントは5つあり、ソフトウェア各領域の成長性を横断して見られる点は重要でしょう。営業支援を行う「セールス」、既存顧客を中心にサポートを行う「サービス」、潜在顧客の開拓及びデジタル販売を担う「マーケティング及びコマース」の3部門で売上の半分以上を占めます。他方、残る2つの部門はここ数年での買収で拡大した事業です。 買収の果実は実るか チャットなどで知られるスラックを買収して拡大した「プラットフォーム」、データ統合・分析で知られるタブローソフトウェア、ミュールソフトを統合した「データ」の2部門が業容拡大中であり、足元で既に全社売上高の3割強を占めます。 前述の3部門も併せた主要5部門全てにおいて、2023年2-4月期の売上高が前年同期比2桁成長で、各ソフトウェア領域の成長性に注目が集まります。当社の個別要因としては、毎年のように行ってきた積極的な買収が一段落し、人員整理などの構造改革を進めたことで、近年悪化していたキャッシュフローが再拡大すると見込まれる局面でもあり、関心が集まります。 景気減速の影響にも目配り 一方で、2-4月期決算発表ではマーケティング及びコマースの売上高は、2桁成長を維持しているもののやや減速しました。同事業は景気動向と連動する傾向があり5-7月期決算でも減速が続くか、その他部門の成長で業績を補うことができるかに注目です。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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08/24 09:59
【米国株決算速報】エヌビディア(NVDA):生成AIの導入競争が始まる、株価は+8.14%(時間外取引)
決算概要:2023年5-7月期(2024.1期第2四半期) EPS実績は市場予想を上回った 米国時間8月23日引け後に、グラフィックスや、AI、データセンター向けなどの半導体の設計・販売を行うエヌビディア(NVDA US)が2023年5-7月期(2024.1期第2四半期)決算を発表しました。売上高は市場予想を20.3%上回り、EPSは市場予想を29.4%上回りました。 会社の2023年8-10月期売上高見通しは市場予想を上回り、粗利率見通しも5-7月期実績を上回る水準です。 生成AIの導入競争が始まる 会社は、データセンター向けの売上高が前年比で大幅に増加したことについて、クラウド企業による生成AIの導入競争が始まっていると決算書で説明しました。また会社は、販売量の四半期毎の増加は来年を通じて継続すると決算説明会でコメントしました。 売上高とEPSの推移 株価は時間外取引で最高値を更新 エヌビディアの株価は、前日比3.17%高で引けた後、決算発表を受けて時間外取引では、終値比8.14%高の509.53ドルで推移しています(NY時間17:30)。 売上高やEPSの実績や、売上高と粗利率見通しが市場予想を大きく上回り、当社の生成AI向け製品の高い需要による価格決定力の強さが業績に追い風となると市場が受け止めたためと推察します。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は非米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。粗利率(売上高総利益率)は非米国会計基準。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2023年8月23日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2023年5-7月期(2023/7)。2023年8-10月期の売上高の白丸は会社見通し中間値。灰色はリフィニティブ集計による市場予想平均。2023年8-10月期以降の予想は2023年8月22日時点。(出所)会社発表、リフィニティブより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・竹綱 宏行) 【米国株決算速報】エヌビディア(NVDA):生成AI向け需要急増、株価は+27%(時間外取引) 野村の米国株決算リンク集:2022年1-3月期・4-6月期・7-9月期・10-12月期決算 野村の米国株決算リンク集:2021年10-12月期 ご投資にあたっての注意点
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08/21 20:00
【今週の米国株】”今年株価3倍”のエヌビディアが決算発表、ジャクソンホールにも注目(8/21)
1分でわかる今週の米国株 先週発表された米経済指標の多くが市場予想を上回りました。米長期金利(10年債利回り)は上昇したことが重石となり、株式市場は軟調に推移しました。 今週のPoint1. デカップリングする米中経済、米国株の重石に 15日(火)に発表された7月の米小売売上高は前月比+0.7%と市場予想(同+0.4%)を大きく上回るなど、米国経済は堅調な指標が相次いでいます。一方、同日発表となった中国の7月工業生産高や7月小売売上高は総じて軟調、中国恒大集団の米国における破産申請などネガティブな報道も相次いでいます。また物価の観点でも、米国はインフレ懸念が根強い一方、中国はデフレ基調とデカップリング(分離)しています。 先週だけを見れば、米国での「経済堅調×インフレ懸念」は米長期金利上昇と米国株のPER(株価収益率)への低下圧力に、中国での「経済軟調×デフレ」はグローバル企業の予想EPS(一株当たり利益)への下押し圧力になっていると見られます。こうした状況が続くかは見通せませんが、経済指標から目が離せない状況は続きそうです。 米経済を見る上では、景気指標では23日(水)の8月S&PグローバルPMI速報値に注目が集まります。インフレ指標では、24日(木)の新規失業保険申請件数(8/19の週)、25日(金)のミシガン大学調査の8月消費者マインド確報値での期待インフレ率が重要です。 今週のPoint2. 23日(水)のエヌビディア決算 今週も、小売や情報技術関連企業の2023年5-7月期決算発表が続きます。中でも、23日(水)引け後に発表が予定されるエヌビディアの決算には注目したいと考えます。当社の株価は2022年末比で約3倍(2.96倍,8/18時点)にまで上昇しており、当社を含む生成AI関連や半導体関連は、米国株全体をけん引するテーマとなっています。決算発表では、5-7月期の実績に加え、8-10月期見通し、AI関連の今後の市場動向などについてのジェンスン・ファンCEO(経営最高責任者)の見解に注目したいと考えます。 今週のPoint3.週末のジャクソンホール会合 金融政策関連では、FRB(米連邦準備理事会)幹部の講演が複数予定されています。24日(木)~26日(土)にカンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム、いわゆるジャクソンホール会合が開催されます。パウエルFRB議長は25日(金)に経済見通しについて講演する予定です。 (以上、「1分で読める今週の米国株」) もっと知りたい!経済指標&金融政策 ジャクソンホールは何に注目?「中立金利」の議論 目先1か月で、もっとも大切なイベントは9月19日(火)-20日(水)に開催される9月FOMCです。同会議ではドッツ(政策金利見通し)の2024年末分以降が上方修正され、FOMCによる利下げの想定が市場予想よりも小幅なものとなる可能性があります。 このため、市場は9月FOMCまで不安定な展開が続きそうです。その間は、FRBからの情報発信やFRB高官の発言が注目を集めると想定されます。先週は、NY連銀の経済ブログ(投稿は8/9及び8/10)における自然利子率(r*)についての議論が話題になりました。自然利子率は、景気・インフレを加速も減速もさせない金利水準を指します。(大幅利上げに対して、米国経済が堅調に推移していることを説明する理由に対する関心が強まる中で)同ブログでは「短期的な自然利子率はコロナ後に上昇した可能性がある」との見方が示され、注目を集め、株価へは重石となりました。一方、「長期的な自然利子率が上昇した証拠は弱い」との結論も示しています。ドッツに対する示唆としては、手前の予想期間での見通しは上方修正されやすく、長期水準の見通しは上方修正されづらいと解釈されます(小清水ストラテジスト)。 24日(木)~26日(土)に開催されるジャクソンホール会議の各セッションではコロナ禍前後での中立金利水準の変化が討議されると考えられます。各セッションは反対意見を持つパネリスト同士が討議するため、両論併記となり、いずれかの結論が示されることまでは想定しづらい形式です。一方、市場では中立金利が引き上がったとの見方が既に強まっており、今回の討論もそのような見方を補強する材料として捉えられる可能性があります。米長期金利が上昇すれば、米国株にとって重石となることから注意が必要です。 もっと知りたい!決算発表 先週から5-7月期決算発表が始まっています。今週は23日(水)のエヌビディアの決算発表に注目が集まります。 先週の半導体製造装置大手の決算発表は好調 17日(木)に半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズが決算を発表しました。年初から大きく株価が上昇した半導体セクターに対する高値警戒感が広がる中で、実績・見通しともに市場予想を上回る好決算で、発表翌日の18日に株価は上昇しました。半導体製造装置と半導体メーカーの業績は必ずしも連動はしないものの、上流工程である製造装置の最大手が受注も含め好調であったことは、半導体セクターの安心材料となりました。 エヌビディアの前四半期決算を振り返り 上記の通り、エヌビディアの2-4月期決算発表では、最大セグメントであるデータセンター向けが生成AI需要を取り込み前年同期比でプラスとなり、市場予想も大きく上回りました。また、5-7月期の見通しが市場予想を54%上回り、前四半期比で再拡大する見通しを示したことも株価上昇の一因となりました。 5-7月期決算発表のポイント まずは、前回決算発表時に大きく引き上げた5-7月期会社見通しを、超えられるかが注目となります。また、6-8月期を通じて成長軌道を維持し得るかも重要でしょう。IT投資自体は抑制傾向にありますが、マイクロソフトやアマゾン・ドットコム、アルファベットといった大手クラウド事業者は自然言語処理やレコメンドエンジンなど内外の作業用に、当社の最新GPU「H100」の導入を増やそうとしています。また、メタ・プラットフォームズはメタバース推進のため積極的なインフラ投資を続けており、これも当社製GPU の需要を押し上げるとみられます。こうした需要の恩恵を実際に受けられているか、注目が集まります。 AI関連の技術は日進月歩で変化しており、スーパーコンピューター並みの仕様で建設される現在のデータセンターが未来永劫使われ続けるとは限りません。当社も含め社会実装の現場にいる企業のコメントによく目を配りながら、投資に活かしていく局面と考えます。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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08/18 09:42
【米国株決算速報】ウォルマート(WMT):食料品堅調継続・一般消費財は回復の兆し、株価は-2.24%
決算概要(2024.1期第2四半期) EPS実績は市場予想を上回り、2024年1月期通期の売上高・EPS見通しを引き上げ 米国時間8月17日寄り前に、店舗小売、Eコマース事業を運営するウォルマート(WMT US)が2023年5-7月期(2024.1期第2四半期)決算を発表しました。売上高は市場予想を0.8%上回り、EPSは市場予想を7.9%上回りました。 会社の2023年8-10月期EPS見通しは市場予想を下回りました。一方で、会社は2024年1月期通期の売上高・EPS見通しを引き上げ、EPS見通しは市場予想を上回りました。 食料品堅調継続・一般消費財も回復の兆し 会社は、インフレによる消費者の節約志向の中で食料品や消耗品の販売の好調が継続した一方、アパレルや家電などの一般消費財の販売が、7月4日の独立記念日や9月からの新学期セールなどのイベント関連で回復の兆しがあることをコメントしました。また、抗肥満薬を中心に医薬品も堅調でした。 売上高とEPSの推移 株価は下落 ウォルマートの株価は、前日比2.24%安で引けました。株価は、寄り付き直後は上昇したものの、主要株価指数が下落に転じたことや、利益率の低い食料品や消耗品、医薬品の堅調などにより2023年8-10月期EPS見通しがやや下回ったことが重石となり、下落に転じたと考えられます。一方で、一般消費財に回復の兆しが見え始めたことは、当社の年末商戦の業績にとって明るい話題と考えます。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は非米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2023年8月17日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2023年5-7月期(2023/7)。2023年8-10月期のEPSの白丸は会社見通し中間値。灰色はリフィニティブ集計による市場予想平均。2023年8-10月期以降の予想は2023年8月16日時点。(出所)会社発表、リフィニティブより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・竹綱 宏行) 【米国株決算速報】ウォルマート(WMT):グローバルで販売好調、株価は+1.30% 野村の米国株決算リンク集:2022年1-3月期・4-6月期・7-9月期・10-12月期決算 野村の米国株決算リンク集:2021年10-12月期 ご投資にあたっての注意点
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08/16 10:02
【米国株決算速報】ホーム・デポ(HD):小規模なリフォーム工事が下支え、株価は+0.66%
決算概要 EPS実績は市場予想を上回った 米国時間8月15日寄り前に、消費者、業者向けのホームセンター事業を行うホーム・デポ(HD US)が2023年5-7月期(2024.1期第2四半期)決算を発表しました。売上高、EPSは共に前年同期を下回りましたが、売上高は市場予想を1.6%上回り、EPSは市場予想を4.6%上回りました。 2024年1月期通期について会社は、売上高は前年度比-5%~-2%、EPSは同-13%~-7%と従来の見通しを維持しました。 また会社は、従来のプログラムに代わる新たな150億ドルの自社株買いプログラムを発表しました。 小規模なリフォーム工事が下支え 会社は「小規模なプロジェクトに関連するカテゴリーでは好調だったが、一部の高額で裁量性の高いカテゴリーでは逆風が続きました。住宅改修の中長期的な見通しと、大規模で細分化された市場でシェアを拡大する能力については、引き続き非常に前向きです」とコメントしました。 売上高とEPSの推移 株価は上昇 ホーム・デポの株価は、前日比0.66%高で引けました。売上高、EPS共に市場予想を上回り、新たな自社株買いを発表したことが好感されたためと推察されます。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2023年8月15日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2023年5-7月期(2023/7)。灰色はリフィニティブ集計による市場予想平均。2023年8-10月期以降の予想は2023年8月14日時点。(注4)見通しの市場予想比は金額ベースで、会社見通し中間値と市場予想との比較。(出所)会社発表、リフィニティブより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・岩崎 晴弥) 【米国株決算速報】ホーム・デポ(HD):住宅関連需要軟調で見通し下方修正、株価は-2.15% 野村の米国株決算リンク集:2022年1-3月期・4-6月期・7-9月期・10-12月期決算 野村の米国株決算リンク集:2021年10-12月期 ご投資にあたっての注意点