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03/19 16:50
【野村の夕解説】日経平均株価は日銀会合後勢い失い安値引け 93円安(3/19)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日寄り付き前に発表された1月の機械受注統計で、設備投資の先行指標とされる船舶・電力を除く民需は前月比で-3.5%となりましたが、持ち直しがみられるとの基調判断は維持され、影響は限定的でした。日経平均株価は前日比6円安の37,839円で始まり、値がさの半導体株の上昇が追い風となり、日経平均株価も上げに転じました。前場終了直前、日銀の金融政策決定会合の結果が公表され、市場の事前予想通り政策金利の据え置きが発表されました。結果を受け外国為替市場では一時乱高下があったものの、1米ドル=149円台半ばから大きく外れることはありませんでした。日経平均株価は結果公表直後の前場引け時に前日比283円高となったものの、日本時間20日(木)未明に米国で公表されるFOMCの結果発表を控え、また同日は東京市場が休場となることから手控えムードが広がりました。引けにかけては徐々に上げ幅を縮小させ再度下げに転じ、大引けは前日比93円安の37,751円で安値引けとなりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 20日(木)の日本市場は春分の日で休場です。日本時間20日(木)未明に、FOMCの政策金利の見通しが発表されます。日本と同様、今会合では政策金利の据え置きが予想されています。パウエルFRB議長の記者会見で、今後の金融政策についてどのような見解が披露されるかが注目です。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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03/19 08:19
【野村の朝解説】FOMC結果公表を控え、米国株は反落(3/19)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り トランプ米大統領の関税政策を巡る先行き不透明感や米国の景気減速懸念が引き続き相場の重石となるなか、18日の米国株式市場で主要3指数は揃って反落しました。NYダウは前日までの2営業日で1,000ドル余り上昇していたものの、この日はリスク心理の流れが一服し、持ち高調整の動きもみられました。トランプ大統領とプーチン大統領の電話協議では、ロシアとウクライナの停戦交渉において一部進展がみられましたが、FOMCの結果公表を翌日に控えた様子見機運が広がるなかで、NYダウは前日比260ドル安で引けました。 相場の注目点 本日は日米金融政策が焦点となりますが、いずれも政策金利据え置きがほぼ確実視されています。米国では19日のFOMCの結果に加えて、政策金利見通しの変化や、先行きの利下げ再開に関するパウエル議長の発言が注目されます。米国の景気減速懸念がくすぶるなかで、4月2日には米国による相互関税の発動も予定され、市場はFRBに対する利下げ期待を維持しています。一方で、FRBは米国の景気減速への対応とあわせて、関税によるインフレ再燃リスクにも目を配る必要があります。現在、市場は2025年中に2~3回程度の利下げの可能性を織り込んでいますが、早期の利下げに慎重な姿勢が維持された場合は、リスク心理の悪化が相場の重石となる可能性もありそうです。 本日のイベント 本日は日米金融政策の結果が公表されます。また、日本では1月の機械受注や2月の訪日外国人客数が発表されます。 (野村證券 投資情報部 引網 喬子) (注)データは日本時間2025年3月19日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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03/18 16:25
【野村の夕解説】バフェット効果再び、日経平均株価448円高(3/18)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 前日引け後に、著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイが日本の5大商社株を買い増したことが判明しました。このことが日本株への注目につながるとの期待から、本日の日経平均株価は前日比472円高の37,868円で取引を開始しました。前日の米国株高も追い風となり、商社株をはじめ幅広い銘柄の上昇に押し上げられ、日経平均株価は一時2月27日以来約3週間ぶりに38,000円を上回る場面もありました。しかし、4月2日の米国による相互関税の発動など、トランプ政権の政策が世界景気に与える悪影響への懸念も根強く、強弱感拮抗となり37,900円近辺で一進一退を続けました。日米の金融政策決定会合を明日に控え、引けにかけては様子見機運も広がり、前日比448円高の37,845円と3営業日続伸して取引を終えました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 3月17-21日に米国で開催される会議「NVIDIA GTC 2025」において、日本時間19日午前2時からエヌビディアのジェンスン・フアンCEOが講演を行います。AI向け半導体開発のトップランナーの講演が、株式市場の期待を喚起する内容となるか注目されます。経済指標では、日本で19日に1月機械受注、2月訪日外国人客数が発表されます。他にも、日米ともに18-19日に開催されている金融政策決定会合の結果発表が予定されています。 (野村證券投資情報部 神谷 和男) ご投資にあたっての注意点
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03/18 09:30
【週間ランキング】日本株の値上がり/値下がり銘柄は?(3月第2週)
※画像はイメージです。 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(上位) 2025年3月第2週(2025年3月7日~3月14日) 2025年3月月間(2025年2月28日~3月14日) 2025年年間(2024年12月31日~2025年3月14日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2025年3月14日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(下位) 2025年3月第2週(2025年3月7日~3月14日) 2025年3月月間(2025年2月28日~3月14日) 2025年年間(2024年12月31日~2025年3月14日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2025年3月14日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 <参考>今週の日本株式市場パフォーマンス 主要指数 TOPIX: 東証33業種 (注)業種分類は東証33業種ベース。直近値は2025年3月14日時点。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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03/18 08:16
【野村の朝解説】消費減速懸念緩和で米国株は続伸(3/18)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 17日の米株式相場は続伸。寄り前に発表された2月小売売上高が消費減速懸念を緩和させる内容だったことから、市場の安心感につながったようです。2月の小売売上高は前月比+0.2%と市場予想の同+0.6%を下回ったものの、1月の同-1.2%から反発、GDPの算出に使用されるコントロールグループでは同+1.0%と堅調でした。為替市場では、米ドルが主要通貨に対して下落する中、円に対しては上昇するなど、先行き懸念の緩和を示唆する動きとなりました。 相場の注目点 18~19日に、日本では日銀の金融政策決定会合、米国ではFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。市場ではどちらも金融政策の据え置きが予想されており、FRBの政策金利見通しと、FOMC後のパウエルFRB議長の記者会見に注目が集まっています。17日の米国株は続伸したものの、トランプ政権の関税政策を巡る不透明感から、市場は「関税疲れ」といった様相を呈しており、「次の利下げタイミングを探りたい」との思惑が高まっているようです。FRBは24年12月FOMC会合で、25年中に2回の利下げ見通しを示しました。野村證券では、政策金利見通しは据え置きを予想しています。また、これまでパウエル議長は「利下げを急ぐ必要はない」との姿勢を示してきました。同氏の政策スタンスに変化がないことを確認するだけにとどまれば市場では失望感が広がるリスクがあります。トランプ政権の政策を見定めたうえで、「利下げの可能性もあり得る」と言った発言が聞かれるかどうかが注目されます。 本日のイベント 日米で金融政策会合の初日。米国では2月住宅着工統計、鉱工業生産統計が発表されます。 (野村證券 投資情報部 尾畑 秀一) (注)データは日本時間2025年3月18日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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03/17 16:38
【野村の夕解説】日経平均株価343円高 米株高と円安進行が支えに(3/17)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 14日の米国株市場は、関税政策に新たな悪材料が無かったことに加え、短期的な株価の大幅下落により米主要3指数は自律反発しました。この流れを引き継ぎ、本日の日経平均株価は前営業日比400円高の37,453円で寄り付きました。19日に発表される予定の日銀金融政策決定会合では、1月に利上げを行ったばかりであることと、米国の関税政策を巡る経済の下振れリスクへの警戒から、金利据え置きが市場のコンセンサスとなる中、国内長期金利が前営業日比で低下しました。また、トランプ米大統領が18日、ウクライナとの停戦を巡ってプーチン露大統領と協議を行うと報じられ、市場では地政学リスクの後退が意識されました。これらの材料から、米ドル円が一時149.0円台後半まで円安方向に進みました。円安進行を支えに日経平均株価は底堅く推移し、大引けは前営業日比343円高の37,396円となりました。個別銘柄では三菱重工業が前営業日比+12.16%と大幅上昇しました。政府が地上発射型の長射程ミサイルを九州に先行配備する方向で検討に入ったとする報道が材料視されたとみられます。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日、米国では2月小売売上高が発表されます。足元では景気減速を示唆する経済指標の発表が相次ぐ中、1月分の大幅な落ち込みから回復がみられるのか、結果に注目が集まります。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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03/17 08:27
【野村の朝解説】政府機関の閉鎖回避で米国株は大幅反発(3/17)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 14日の米国株式市場では主要3指数が揃って反発しました。NYダウが前日までの4営業日で2,000ドル近く下落するなど、このところの米国株安の反動の影響があったほか、14日に失効する米連邦政府の現行のつなぎ予算を巡り、上院民主党トップが13日引け後に連邦議会下院で可決したつなぎ予算の延長法案に賛成する意向を示し、政府機関の一部閉鎖が回避される可能性が高まったことも好感されました。一方、3月ミシガン大学消費者センチメント指数と同時に発表された1年先の予想インフレが4.9%と、2年4ヶ月ぶりの高水準となりました。引き続き先行きのインフレ高進には警戒が必要です。 相場の注目点 週末の米国株の反発を受けて、本日の東京市場は買いが優勢で始まることが予想されます。今週は18~19日にかけて日銀の金融政策決定会合、米FOMCが開催されます。今会合では、日米中銀は政策金利を据え置くと予想されています。日米いずれも、今後の金融政策の方向性に関する言及があれば、金融市場が大きく動く展開も考えられることから、植田日銀総裁、パウエルFRB議長の会合後の会見に注目しています。重要イベントを控えて、週前半の日本株は様子見姿勢を強める可能性がありそうです。 本日は東京市場の取引時間中に、中国1-2月の小売売上高や鉱工業生産などの経済指標が発表されます。また米国では2月小売売上高が発表されます。トランプ関税の影響や、米小売大手ウォルマートが2月下旬の決算発表時に2026年1月期の見通しに慎重な姿勢を示したことなどから、個人消費の先行きに対する不透明感が強まっています。個人消費は米国の名目GDPの7割近くを占める最大需要項目であり、今後の米国経済の動向を占う指標として注目です。 (野村證券 投資情報部 岡本 佳佑) (注)データは日本時間2025年3月17日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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03/16 16:00
「日本ワイン」の持続成長と発展に向けて
執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネスビジネス・コンサルティング部 シニア・アソシエイト 鈴木 拓実(2025年3月13日) はじめに 2024年は日本ワインにとって快挙の年であった。同年6月、イギリスで開催された世界最大級の国際ワインコンペティション「DWWA(デキャンター・ワールド・ワイン・アワード)」において、サントリー登美の丘ワイナリーが製造した「登美 甲州 2022」が日本ワインとして初めて最高賞(Best In Show)を受賞した。このワインには白ブドウ品種の「甲州」が原材料に使用されているが、甲州は日本独自の品種として、2010年に国際ブドウ・ワイン機構(以下、「OIV」と記載)に認定されている。この受賞は正に日本ワインがグローバルで認められた瞬間であり、グローバル展開に向けた黎明期を迎えたと筆者は考えている。本レポートでは、国内のワイン市場の現状を確認し、課題について考察する。 1.国内のワイン市場 本論を進める前に、まず、「日本ワイン」と「国内製造ワイン」の定義について述べる。2018年に国税庁は「果実酒等の製法品質表示基準」で日本ワインおよび国内製造ワインの定義を定めており、「日本ワイン」は国産ぶどうを原材料として、日本国内で製造された果実酒であり、「国内製造ワイン」は海外から輸入した濃縮ぶどう果汁等を使用して、国内で製造されたワインとしている。本論では両者を合わせて「国産ワイン」と表現する。 図表1に記載の通り、国内のワイン消費量は2010年ごろに安価で高品質なチリ産等のワインが輸入されたことや国産ワインの消費量が増えたことにより上昇傾向に転じ、2015年に過去最高の380千KLを記録した。それ以降は横ばい傾向で、2023年には363千KLと概ね360千KL台で推移している。そのうち、国産ワインの消費量も同様に、2015年に112千KLを記録した後、2023年に至るまで横ばい傾向である。 一方でワイナリー数は大幅に増加しており、2015年の国内ワイナリーは280箇所であったが、2024年には493箇所となっている。国産ワインの消費量が大幅に増加しているわけではないため、新規参入のワイナリーは比較的小規模事業者であると推測される。 国産ワイン消費量のうち、日本ワインと国内製造ワインの内訳は公表されてはいないが、国税庁の「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和6年アンケート)」によると、日本ワインは14千KL、日本ワイン以外が67千KLと推計されている。そのため、国内のワイン市場のうち、日本ワインが占める割合は4%程度(14千KL/363千KL)である。国内ワイン市場における日本ワインの存在感はまだまだ薄いというのが現状であるが、換言すると、今後の“伸びしろ”は大きいと言える。 図表1 国内のワイン消費量推移 (出所)国税庁HP「統計情報」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 それではグローバルでみたときの日本ワインの存在感はどうか。OIVによると、2023年における全世界のワイン生産量は2,367万KLであり、日本ワインの生産量は14千KL程度であるため、全世界で生産されるうち日本ワインの生産量のシェアは僅か0.06%程度である。ただし、日本のワイン産業が発達していない理由を単純に「日本人のワイン消費量が少ないから」と片付けることはできない。事実として、日本のワイン消費量は世界で16番目に位置し、アジア地域では中国に次ぐ第2位の消費量を誇る。このことから、日本は世界的に見ても消費大国とまでは言えないものの、十分な市場規模を持つ国であることがわかる。 2.日本ワインの課題 本章では、日本におけるワインの消費量が少ない背景を原材料供給の観点から考察する。図表2は農林水産省が発表した「特産果樹生産動態等調査」に基づく、ぶどうの生食用品種および加工用品種ぶどうの栽培面積の統計値である。生食用ぶどうの栽培面積は年々減少しているが、醸造用ぶどうの栽培面積は増加している。 図表2 ぶどう栽培面積(加工用品種・生食用品種) (出所)農林水産省HP「特産果樹生産動態等調査」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 農林水産省の作況調査によれば、ぶどう全体の収穫量は16.7万トンに達しているが、生食用と加工用の仕分けは行われていない。仮に生食用と加工用の反収が同程度であると仮定し、前述のぶどう栽培面積(加工用品種・生食用品種)を基に計算すると、加工用ぶどうの生産量は約1.8万トンと推測される。また、OIVのデータによると、ワインの一大生産地であるフランスとイタリアのぶどう生産量はそれぞれ628万トンと590万トンである。このうち、生食用ぶどうはフランスで4.1万トン、イタリアで86万トンとなっており、日本とは正反対の状況が見受けられる。日本では生産されるぶどうの大半が生食用であり、フランスやイタリアでは生産されるぶどうの多くが生食以外の用途に使われている。 こうした事象は、日本古来のアルコール飲料である日本酒や焼酎等が愛飲されてきた背景もあるが、それ以上に日本の豊かな土壌と生産者の高い生産技術によって、ぶどうを加工することなく、生食用ぶどうとして高い価値を提供することができた表れであると筆者は考えている。 次に、生食用品種と加工用品種のぶどうにおける反収および取引単価について確認する。前提として、反収を論じる際には、栽培地域の気候、品種の特性、栽培方法(棚栽培や垣根栽培等)によって数値が大きく異なることに留意する必要がある。 山梨県農政部が公表した「仕立てや整枝・剪定方法の違いが白ワイン用ブドウ『シャルドネ』の特性に及ぼす影響」によると、日本で一般的な生食用ぶどうの栽培方法である「棚仕立て」の反収が1,930kgであるのに対し、欧州のワイナリーで一般的な加工用品種ぶどうの栽培方法である「垣根仕立て」の反収は1,168kgである。また、長野県農政部が公表した「作物別経営指標(一覧表)」によれば、生食用品種である巨峰の反収が1,700kgであるのに対し、加工用品種のぶどうの反収は1,000kgである。いずれのデータからも、加工用品種の反収は、生食用の6割程度であることがわかる。 また、取引単価であるが、加工用品種のぶどうは200円後半/kgで取引されることが多い(単価に糖度加算するケース等取引形態において異なる)。一方、生食用品種は、長野県農政部が公表している「作物別経営指標(一覧表)」に基づくと、露地のシャインマスカットは1,587円/kg、巨峰が780円/kgとなっている。もちろん、栽培している品種や労務、コスト等の要因により一概に比較することは難しい。しかし、取引単価だけを基に考えれば、生食用品種のぶどうの方が高い収益を見込みやすい傾向がある。そのため、新規にぶどう栽培に参入する者にとって、経済合理性を感じやすいのは生食用品種であると言えるだろう。 そのような環境において、国内ワイン製造事業者の調達環境は易しくない。国税庁の「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和6年アンケート)」によれば、ワイナリーが国産生ぶどうを受け入れる形態の構成比は、契約栽培が最も高く50.0%を占め、次いで購入が29.3%、自営農園が18.2%、受託醸造が2.5%という内訳となっている(図表3)。 図表3 国内ワイン製造事業者による国産 生ぶどうの受入形態別の構成比 (出所)国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 筆者の推測ではあるが、原材料のうち自社生産が約2割を占めるという水準は、他のアルコール飲料と比較しても高い割合であると推測される。反対に言えば、8割のぶどうは他社から調達されたものであり、ワイン製造におけるぶどうの供給が、ワイナリー自身の農園だけでは賄いきれないことがわかる。 さらに、農業従事者の平均年齢は69.2歳と高齢化が進行しており、加工用品種のぶどう農家への新規参入者が爆発的に増加する可能性は低いと想定される。このような状況を踏まえると、日本ワインを製造するワイナリーにとって、安定的に原材料となるぶどうを調達する仕組みを確立することは、喫緊の課題であると言えるだろう。これはひいては日本ワイン業界全体の持続可能性を左右する重要な要素であり、今後の業界発展において避けて通れない議論である。 3.日本ワインの持続成長と発展に向けて 前章で述べたように、日本ワインの主要な原材料である加工用品種のぶどうの供給量が急激に増加することは難しいと考えられる。そのため、長期的には日本ワイン全体の生産量が伸び悩む可能性が高い。また、少子高齢化が進む日本においては、ワインの生産・消費の両面から市場が縮小する未来も十分に考えられる。日本ワインを持続的な産業として発展させていくためには、地域が一体となってこの産業を支えることが不可欠である。 例えば、日本ワインの生産量が最も多い山梨県では、「醸造用甲州産地育成強化事業」として、醸造用品種である「甲州」を新たに植える事業者に対する補助事業が実施されている。この補助事業では、単に補助金を交付するだけでなく、醸造用ぶどうの安定的な取引を促進するために、情報交換や生産者とワインメーカーのマッチングを行う「醸造用ぶどう安定取引推進会議」等も設置されている。 また、山梨県甲州市では、公営事業として1975年から「甲州市勝沼ぶどうの丘」を運営している。この施設では、市内のワイナリーが手掛ける約100銘柄以上のワインを試飲でき、地域のワインに関する情報発信の重要な観光拠点となっている。甲州市は、日本初の民間ワイン醸造所が設立された地であり、創業100年を超える老舗企業が複数存在している。官民一体となって日本ワインを地域の産業として盛り上げた結果、令和5年12月末時点で山梨県内のワイナリー数は全国1位の89カ所に達している。 さらに、歴史ある山梨県においても新進気鋭のワイナリーが誕生している。例として、2010年代に設立した株式会社ショープルが手掛ける“ドメーヌヒデ”は、創業からわずか数年でDWWAの銀賞を受賞した。同社はSDGsを意識したぶどう栽培を心がけており、肥料はぶどうの搾りかすを堆肥として使用し、土壌の酸性を保つためにぶどうの枝を炭化させて畑に撒く取り組みを行っている。また、クラウドファンディングを積極的に活用しており、現代的な経営手法を試みる事業者でもある。 日本ワインは、供給面や消費面でいくつかの課題を抱えているが、それらを克服するための取り組みが地域ごとに進められている。特に山梨県を中心とした地方自治体や事業者の努力は、日本ワインの可能性を広げ、持続可能な産業としての基盤を築く重要な鍵となる。伝統と革新が共存する中で、地域コミュニティが一丸となり、ぶどう栽培からワイン醸造、観光や情報発信までを包括的に支える取り組みは、他地域へのモデルケースになると考えられる。 これからの日本ワイン産業の発展には、地域社会、官民の協力、そして消費者が一丸となり、その価値を守り育てていくことが不可欠である。日本ワインが持続可能な形で世界に広く認められるためには、伝統を大切にしながらも、常に革新に挑戦し続ける姿勢が求められる。未来に向けてさらなる業界の発展を願い、この文章を締めくくりたい。 ディスクレイマー 本資料は、ご参考のために野村證券株式会社が独自に作成したものです。本資料に関する事項について貴社が意思決定を行う場合には、事前に貴社の弁護士、会計士、税理士等にご確認いただきますようお願い申し上げます。本資料は、新聞その他の情報メディアによる報道、民間調査機関等による各種刊行物、インターネットホームページ、有価証券報告書及びプレスリリース等の情報に基づいて作成しておりますが、野村證券株式会社はそれらの情報を、独自の検証を行うことなく、そのまま利用しており、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。また、本資料のいかなる部分も一切の権利は野村證券株式会社に属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。 当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。 国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。 外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
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03/16 09:00
【動画 3分チャート塾】シーズンⅣ:第3回 かいり率(2) チャートで検証してみよう
「動画 3分チャート塾」は、株価チャートの見方を学びたい初心者から中級者の方向けの動画シリーズです。 今回は前回に続き、もっとも代表的なオシレーター系指標である、移動平均線からのかいり率について、サンプルチャートを用いて説明しています。 シーズン I:意外と知らないローソク足(全8回)ローソク足の基本の読み方や中長期的な相場の捉え方などについてわかりやすく解説していきます。シーズンII:相場の見方の強い味方、移動平均線(全9回)移動平均線の基礎や活用法についてわかりやすく解説していきます。シーズンIII:上値、下値のメドを探ろう(全10回)上値、下値メドの探り方についてわかりやすく解説していきます。シーズンIV:相場の過熱感を測るには?(全9回)オシレーター系指標についてわかりやすく解説していきます。シーズンV:トレンドラインを引いてみよう(全9回)トレンドラインについてわかりやすく解説していきます。 ご投資にあたっての注意点