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【オピニオン】トランプ「相互関税ショック」の正体

※画像はイメージです。 2025年4月2日にトランプ大統領が発表した、相互関税は、事前の観測を大きく上回る規模、税率水準であったことから、全世界の金融市場に大きな動揺をもたらしました。特に米国においては、通貨、債券、株価のトリプル安が進行しました。わが国もその例外ではなく、発表前の4月1日から4月7日まで(4営業日)のTOPIXの下落率は14%に達しました。その後、追加関税の執行猶予などが発表された結果、株価は底打ちし5月14日時点でTOPIXは、相互関税発表前の水準を上回っています。果たして、トランプ政権による関税政策は株価に織り込まれたのか、物色動向から探ってみることにしましょう。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 ※注記は③の表の下に集約 【リスク・ファクター】‥相互関税発表直後の下落過程で際立ってパフォーマンスが悪化したのが、高β(注2)株や、流動性の乏しい中小型株でした。価格変動や、流動性のリスクが大きい銘柄が敬遠されるのは、市場がパニック的な状況の際の典型的な現象です。 ※注記は③の表の下に集約 【バリュー・ファクター】‥リスク・ファクターに続き、低PER・PBR(注2)銘柄もパフォーマンスが悪化しました。今回のケースでは、相互関税の影響を推し量ることが困難だったこともあり予想EPSやBPSの変化は僅少でした。低バリュエーション銘柄は、割安と捉えられることが多い反面、リスクが高く割引率が大きいともいえ、今回はこの属性が問題視された可能性もあります。 (注1)TOPIXの推移と、主要ファクターの2025年3月31日以降の日次累積リターン。直近の値は2025年5月14日。いずれもファクタースコアの高い上位20%と下位20%の銘柄群のリターン・スプレッド。例えば予想ROEでは、ROEの高い20%と低い20%の銘柄群のリターン・スプレッドとなっている。分析の母集団はラッセル野村Large Cap。(注2)PERは株価収益率、PBRは株価純資産倍率、EPSは1株当たり利益、BPSは1株当たり純資産。βは過去60ヶ月間の株価で算出している。β値(ベータ値)とは、特定の資産やポートフォリオの価格変動が市場全体に対してどの程度連動するかを示す指標。(出所)JPX総研、野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成 【グロース・ファクター】‥今回の下落局面で最も相対的に優れた結果を残したのは、ROEやアナリストによる業績修正などのグロース・ファクターでした。 【その後】‥興味深いのは、今回指摘した初期の下落過程で生じたリスク/バリュー/グロース・ファクターの累積リターン・スプレッドは、(β値を除けば)足元でTOPIXが相互関税発表前の水準を回復したにもかかわらず、依然温存されたままです。 以上より、市場はトランプ政権の政策発動による警戒感を完全に解いたわけではないことがまず指摘できるでしょう。また、政権の今後の動き次第で再びリスク/バリュー性の高い銘柄を中心に変動率の高い展開になる可能性は念頭に置いておいた方が良いかもしれません。逆に、今回の調整局面では、ROEや業績モメンタムが良好な銘柄が物色される動きも顕著でした。ある程度の期間、ボラティリティーの大きさに耐える覚悟があれば、クォリティーの高い銘柄の物色の良い機会かもしれません。 ご投資にあたっての注意点

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