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07/17 08:30
【野村の朝解説】ダウ大幅高、連日で史上最高値を更新(7/17)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 16日の米国株式市場で主要3指数は揃って続伸しました。NYダウは大幅続伸して始まると終日堅調な推移となり、2日連続で史上最高値を更新しました。また、ナスダック総合の上昇率は限定的となりましたが、S&P500は3日続伸し再び史上最高値を更新しました。市場予想を上回った米6月小売売上高を受けて米国経済のソフトランディング期待が高まり、素材や消費、金融など幅広い銘柄が買われたほか、寄り前に決算を発表したユナイテッドヘルス・グループが大幅高となりました。また、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレーなどの大手金融も決算内容が好感され上昇しました。 相場の注目点 米国ではFRB(米連邦準備理事会)が9月に利下げを開始するとの見方が相場を支える中、景気敏感株や小型株への資金流入もみられ、小型株指数のラッセル2000は5日続伸しています。先週、6月消費者物価(CPI)で、特にエネルギーと食料品を除くコア指数が大幅に低下したことがFRBに対する利下げ期待を一段と高めたとみられます。引き続きFRB高官の発言が注目されるほか、本日発表されるベージュブックでは、米国経済のソフトランディング期待が高まるのか、特に住宅市場が持ち直しているか注目されます。株高の持続性を占ううえでは、発表が本格化している米国企業の2024年4-6月期決算も注目されます。 本日のイベント 米国ではベージュブックが発表されます。また、英国やニュージーランドでは6月の消費者物価(CPI)が発表されます。インフレ減速が確認され、利下げ期待につながるか注目されます。 (投資情報部 引網 喬子) (注)データは日本時間2024年7月17日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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07/16 19:00
【週間ランキング】日本株の値上がり/値下がり銘柄は?(7月第2週)
※画像はイメージです。 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(上位) 2024年7月第2週(2024年7月5日~7月12日) 2024年7月月間(2024年6月28日~7月12日) 2024年年間(2023年12月29日~2024年7月12日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2024年7月12日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(下位) 2024年7月第2週(2024年7月5日~7月12日) 2024年7月月間(2024年6月28日~7月12日) 2024年年間(2023年12月29日~2024年7月12日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2024年7月12日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 <参考>今週の日本株式市場パフォーマンス 主要指数 TOPIX: 東証33業種 (注)業種分類は東証33業種ベース。直近値は2024年7月12日時点。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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07/16 16:14
【野村の夕解説】日経平均株価、小幅に反発 (7/16)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 米国では、米国大統領選挙でトランプ氏が勝利するとの見方が強まり、各種規制が緩和されるとの思惑が広がったほか、9月利下げへの期待が継続しました。これらを背景に週明け15日の米国株主要3指数は揃って続伸し、NYダウは約2ヶ月ぶりに史上最高値を更新しました。米国株高を受け、連休明けとなる本日の日経平均株価は前週末比176円高の41,366円で取引を開始しました。業種別では、トランプ氏が再選した場合の米経済のソフトランディング期待や、米長期金利の上昇基調が強まるとの見方から、金融セクターや、輸出関連株の機械セクターが上昇しました。また日経平均株価は前週末12日に下げ幅が今年最大となったことから、自律反発の動きもみられました。これらを背景に日経平均株価は一時前週末比329円高となりましたが、その後は材料に乏しく徐々に上げ幅を縮小させました。大引けは前週末比84円高の41,275円で本日の取引を終えました。個別企業では「トランプ・ラリー」関連として防衛関連の事業を手掛ける銘柄の上昇が目立ち、三菱重工業の終値は前週末比5.04%高、IHIは5.17%高となりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 米国では16日(火)に6月小売売上高が発表されます。米国の個人消費の底堅さが維持されているか注目されます。ます。また、中国では15日(月)から18日(木)まで三中全会が開催されています。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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07/16 08:17
【野村の朝解説】トランプ氏優勢、ダウは再び4万ドル台に(7/16)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 12日の米国株式市場で主要3指数は揃って上昇しました。NYダウは3日続伸し、およそ2ヶ月ぶりに終値で4万ドル台を回復しました。11日発表の米消費者物価(CPI)が前月比で上昇するとの市場予想に反して低下し、また12日発表の7月ミシガン大学消費者態度指数が8ヶ月ぶりの低水準となったことを受け、FRB(米連邦準備理事会)が9月にも利下げを開始するとの見方が強まりました。トランプ前大統領の暗殺未遂事件の衝撃が残る中、週明け15日の米国株式市場は続伸して始まりました。11月米大統領選挙でトランプ氏が勝利するとの見方が強まり各種規制が緩和されるとの思惑が広がったほか、9月利下げへの期待が継続し、主要3指数は揃って続伸、NYダウは約2ヶ月ぶりに史上最高値を更新しました。 相場の注目点 米国では9月利下げ期待を背景とした株高が続いています。パウエルFRB議長は年内に利下げを実施する意向を示しているものの、FOMC(米連邦公開市場委員会)内では年内の利下げ回数の想定は0~2回の間で分かれているとみられます。今週も複数のFRB高官による発言機会が予定されていますが、CPIの減速などを受けて利下げに前向きな姿勢が増えるのか注目されます。また、11月米大統領選挙に向けては、バイデン大統領の撤退論を巡って揺れる民主党とは対照的に、銃撃を受けた後の対応からトランプ氏の強いリーダーシップが好感され、政権奪還を狙う共和党の勢いが強まっています。トランプ氏は共和党候補者に正式指名され、党大会最終日の18日に予定されている指名受諾演説が注目されます。 本日のイベント 米国では6月の小売売上高が発表されます。また、中国では三中全会が開催されています(18日まで)。 (投資情報部 引網 喬子) (注)データは日本時間2024年7月16日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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07/15 12:00
【投資と税金】デジタル遺産の落とし穴
日常生活に無くてはならない存在となったパソコンやスマートフォン。便利なサービスも続々と提供され、ついアプリをダウンロードしてさまざまなサービスを利用。しかし、その存在を家族に知らせていなかったために、家族が思わぬトラブルに巻き込まれることも。デジタル遺産に関する注意点を大手町トラストの税理士に伺いました。 (注)画像はイメージです。 はじめに 近年利用が増えているデジタル財産は相続人がその存在自体に気づかず、のちにトラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。また、デジタル財産は、土地や建物などの財産と同じく相続の対象となることから遺産相続のための手続きが必要となります。 デジタル遺産とは デジタル遺産とは、一般的にネット銀行の口座・電子マネーの残高・暗号資産(仮想通貨)・FXなど、スマートフォン・タブレット・パソコンなどのデジタル機器で故人が管理していた財産のことをいいます。 金融商品・ネット銀行・ネット証券口座ネット銀行やネット証券の口座、暗号資産(仮想通貨)、FX(外国為替証拠金取引) 電子マネー電子マネーの残高 ポイント各種ポイント、マイレージ SNSなどのサービスでの収益(残高) 相続時の問題点 相続において、ほかの遺産と比較すると存在自体が分かりにくいデジタル遺産ですが、そのまま放置するのは危険です。デジタル遺産については、以下のポイントに注意が必要です。 相続人による把握が難しい デジタル遺産は主に個人のスマートフォンやパソコンで管理されているため、遺族からすると「書類も見当たらないし、何があるのかまったく分からない」ということが少なくありません。例えば、ネット証券の運用報告などは、故人のメールアドレスに届いているだけで、その存在がわかるような書類などは自宅にも一切存在しないこともあります。そのため、相続の手続きがひと段落してから発見されるなどということもあります。 携帯電話の解約はデジタル遺産を確認してから? 故人のデジタル資産を確認する際、スマートフォンなどのデジタル機器のロックを解除するパスワードが必要になります。運よくロックが解除できたとしても、デジタル遺産を管理しているアプリ等にアクセスするログインIDやパスワードを入力しないと詳細を確認することができません。 ログインの際、SMSなどに2段階認証コードが送信される設定の場合、すでに故人の携帯電話を解約していると送られたコードが受信できずにログインできなくなってしまいます。 また、顔認証や指紋認証、2段階認証といった複雑な設定をされている場合は、相続人でもロックの解除をすることができず、携帯電話会社・専門業者等に依頼するなど手間と時間がかかります。 名義変更ができない? 名義変更の手続きが明確でないデジタル遺産が存在することも想定されますので、相続手続きについて事前に確認しておくとよいでしょう。 相続税納付完了後、デジタル遺産の存在が発覚! 新たに見つかった遺産については、分割協議が必要 遺産分割協議がまとまってからデジタル遺産の存在を把握した場合、そのデジタル遺産についても分割協議が必要になります。 相続税の納付は? 新たに遺産が見つかった場合、相続税の申告書をすでに提出した後でも申告期限内であれば訂正をして不足分を追加で納税することができます。 申告期限を過ぎている場合は、相続税の修正申告または期限後申告が必要です。修正申告等をした場合には、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じた延滞税を納付しなければなりません。利息に相当する延滞税が自動的に課されるため、早めに修正申告をする必要があります。税務署の指摘を受ける前に自主的に修正申告をした場合などには過少申告加算税はかかりませんが、税務調査を受けた後に修正申告をしたり、税務署から申告税額の更正を受けたりした場合は、延滞税のほか、過少申告加算税または無申告加算税が課税されます。 デジタル遺産の評価額は相続発生時の価額 相続税の申告・納税にあたっては、相続発生時点の評価額に基づいて行われます。有価証券であれば原則相続発生時点の時価になります。そのため、新たにデジタル遺産を発見した時点の評価額が1500万円であっても、相続発生時点の評価額が2500万円の場合、2500万円として申告するため、実際に受け取る額との乖離がおきることもあります。 なお、相続人がパスワードを知らない場合であっても、被相続人が保有していた暗号資産(仮想通貨)は相続税の課税対象になると解されていることに留意する必要があります(第196回国会 参議院「財政金融委員会会議録 第6号」平成30年3月23日)。 対策 デジタル遺産を所有している人は、相続人がその存在を把握できるよう、遺言書やエンディングノートに、デジタル遺産の内容やアクセス方法、処分方法を記録に残しておくとよいでしょう。 遺言書・エンディングノートなどにデジタル遺産のIDとパスワードを記載した目録を作成する亡くなった後、確実に発見されるようにしておく また、使わなくなった月額課金性サービス(サブスクリプション)は、解約をしないと料金がかかり続けてしまいます。残された家族の負担となるため、あらかじめ解約しておくとよいでしょう。 まとめ 近年では、ネット銀行を利用している人も増え、証券口座や暗号資産(仮想通貨)、電子マネーの取引をスマートフォン上で行っている人も増えてきました。自分の保有しているデジタル財産を把握し、目録を作ることで家族が困らないように対策をしておくとよいでしょう。 この資料は情報提供を唯一の目的としたもので、投資勧誘を目的として作成したものではありません。この資料は信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、野村證券は、その正確性および完全性に関して責任を負うものではありません。この情報は、ご覧いただいたお客様限りでご利用いただくようお願いいたします。詳しくは、所轄税務署または顧問税理士等にご確認ください。 ご投資にあたっての注意点
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07/15 09:00
【特集】SNS型投資詐欺が急増 著名人かたる手口に警戒を「被害回復は困難」
※写真は全てイメージです。 「SNS型投資詐欺」という新たな投資詐欺が増加しています。主にSNSを通じて接触し、投資の名目で金銭をだまし取るという手口で、実在する著名人の名をかたるケースも発生しています。警視庁や国民生活センターに具体的な手口や予防策について取材しました。 SNS型投資詐欺は2023年から急増 警察庁報道発表資料「SNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況等について」では、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺ともに2023年下半期の増加が顕著であり、2023年1~12月の認知件数は全国で2,271件、被害総額は277.9億円に上ると発表されています。発表の詳細については以下のとおりです。 同時に集計されたロマンス詐欺(外国人や海外居住者を名乗り、SNSなどを通じて恋愛感情や親近感を抱かせ、金銭等をだまし取る詐欺)を含め、被害者の年齢層は男性が50代~60代、女性は40代~50代が多い。1件あたりの平均被害額は1,000万円超で、被害額は500万円以下がもっとも多く、1億円を超える被害は26件。被疑者は国内の投資家や会社員、会社役員を名乗り、当初の接触ツールはFacebookやLINE、インスタグラムなどで、被害時の連絡ツールはLINEが88%と多い。警察庁は2024年3月、全国の都道府県警察に対し、捜査と抑止を含む総合的な体制を構築し、対策を強化するよう通達済み。 昨年は都内でも210件の被害が発生 警視庁によると、「都内でも多くのSNS型投資詐欺事件が発生しています。2023年のSNS型投資詐欺の認知件数は210件で被害額は約38億円。2024年も4月末現在で、昨年の被害額を上回る約48億円の被害が発生している」という回答でした。 警視庁によると、特に被害額が大きかった事案は以下のようなものでした。 「スマートフォンで著名な投資家のネットニュースを閲覧していたところ、その投資家のSNSアカウントを登録する画面が表示されたため、興味があり登録した。 すぐに挨拶のメッセージを送信したところ、『投資のテクニックを教える』との返信があり、SNS上の投資のコミュニティーに参加するよう促された。 コミュニティーにおいて、投資家や指南役に紹介された投資アプリをインストール、投資家を尊敬していたことや、アプリ上の画面で儲けが出ていたことから、投資名目や口座出金手数料名目の送金を繰り返した。投資家からもSNSのメッセージで数十億の利益がでたと言われ、さらに送金を続けたものの連絡が取れなくなり、騙されていることに気付いた。 約半年に渡り騙され続け、犯人側の口座への送金や現金を手渡しするなど、総額1億4,000万円の被害に遭った」 著名人の名をかたって勧誘 警視庁の担当者は、最近目立つSNS型投資詐欺の手口について、以下のように回答しました。 「近年、特に目立つ手口は、『本人の知らないところで、SNSの“投資グループ”を名乗るグループに勝手に参加させられた』『インターネット上で投資について検索し、著名人が『投資に興味のある方はSNSで繋がりましょう』などと宣伝する広告を見つけてクリックし、SNSで詐欺グループと友達登録してしまった』というもの。 その後、参加したSNSグループで著名人を騙った者や指南役が登場し、グループメッセージで『〇〇万円儲かった』などのやりとりがあり、高額な利益が出ると被害者が誤信させられます。同時に偽の投資アプリケーション(金、原油先物取引、仮想通貨、FXなど)のインストールを勧められ、アプリ上のチャートでは、あたかも利益が出ているような偽の表示が出たケースもあります。 被害者は、最初に少額の投資を実行し、アプリ上で儲けが出たことや、実際に利益が振り込まれたことで、犯行グループを信じ込みます。その後は高額の送金を繰り返しますが、出金をする前に連絡が取れなくなり、被害が拡大してしまう、というものです」 ターゲットは「投資に興味がある人」 警視庁は以下のように注意喚起しています。 「ターゲットは、投資に興味がある方々。投資して資産を増やそうと思っている方すべてが、被害に遭う可能性があります。インターネット上で著名人を騙り、高利回りをうたう広告や儲け話は注意が必要です。特にSNSに誘導しようとする時点で詐欺を疑ってください。SNSにおけるメッセージのやり取りもよく確認をしてください。日本語が不自然である場合があります。 また、騙った会社名と送金先の会社名が違ったり、毎回違った名義や個人宛てに送金させたりするケースにも注意してください。『出金のために手数料が数千万円かかる』『税金を払うため送金を指示する』などは冷静に考えればありえないことです。さらに、相手方が金融商品取扱業者を名乗っていても、実際に取引を開始するときには、金融商品取引法に基づき金融庁に申請・登録をしている正規の業者かを確認してください。 金融商品の販売、勧誘には金融商品取引法でルールが定められています。『金融商品取扱業者』であることや、『登録番号』などが表示されているか必ず確認してください。また、著しく人を誤認させるような広告も禁止されています。『必ず値上がりする』『楽して儲ける』などメリットのみ強調する広告には注意してください。 大切な資産を失い、家族にも相談できない方も多いと思います。特定非営利活動法人『証券・金融商品あっせん相談センター』(フィンマック)や最寄りの警察署で相談を受け付けています。投資に関する情報にすぐに飛びつくことなく、よく調べる、身近な人に相談するなどの防御する術を身に付けてください。不安に感じることがあれば、遠慮することなく警察に相談してください」 国民生活センター「被害回復が困難」と注意喚起 消費者問題を扱う独立行政法人「国民生活センター」も5月、SNSをきっかけに、著名人を名乗るなどして勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増しているとして、「いったん振り込みしてしまうと、被害回復が困難です!」と注意喚起を行いました。 同センターHPによると、「『○○(著名人)が主催する投資の勉強会』『○○(著名人)が投資のノウハウを教える』『○○(著名人)と知り合いで儲かる』などと勧誘され、投資名目で振込をしたものの、『追加費用を支払わないと出金できないと言われた』『相手と連絡が取れなくなった』などの被害が発生。全国の消費生活センターに寄せられた相談と平均契約購入金額※は、2022年度には170件、平均契約購入金額234万円だったのに対し、2023年度は1,629件と約9.6倍に増加。被害額も687万円に急増(※)」とのことです。 (※)PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)における「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブル」の相談件数及び平均契約購入金額の推移 具体的な相談事例として、「有名経済評論家の投資相談に参加したところ、アシスタントを名乗る人に次々と投資を勧められ、総額1,500万円を振り込んだが出金できない」というものを掲載しています。 「母から相続した資産で投資をしようと考えていたところ、有名経済評論家が主催する投資相談のSNS広告が表示され、100万円が1億円になったとの体験談が掲載されていたので興味を持ち、メッセージアプリへ登録した。すると有名経済評論家のアシスタントを名乗る人からメッセージが届き、海外株が短期で値上がりすると投資話を持ちかけられた。有名経済評論家が言うことなら信用できると思い100万円を振り込んだ。すると後日『100万円では利益が少ない。追加で100万円を振り込むように』とメッセージが届き、別の銀行口座へ振り込んだ。 1週間後、『もっと利益が高い投資がある。経済評論家の先生へメッセージを送ってください』と連絡があり、別の銀行口座へ750万円と50万円を振り込んだ。さらにその2週間後、短期投資の話を持ち掛けられて250万円を2回、計500万円を新たな指定口座へ振り込んだ。 その後、運用状況で確認すると6,000万円の利益があったので資金を引き出したいと申し出たところ、出金手数料900万円と、運用している海外の株式市場に税金1,300万円を支払わないと出金できないと言われた。(2024年1月受付 60歳代 女性)」 そのほか、「『有名投資家がノウハウを発信すると謳っていたが、その有名投資家は関与しないものだったうえ、投資額を勝手に決められて違約金も請求された』『『絶対に負けない投資家を知っていて自分も投資で儲かった』という有名投資家の姪から勧められてFX取引を始めたが、連絡が取れなくなった』といった相談が寄せられている」とのことです。 SNS上での勧誘は疑って 同センターは消費者へのアドバイスとして、「▽SNS上で勧誘を受けた場合は、まず疑ってみる▽投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合、それは詐欺なので振り込まない▽被害回復が難しいため、安易に投資資金を振り込むことは控える▽不審に思ったら、すぐに消費生活センター等に相談しましょう」と呼びかけています。 ※本コラムで取り上げられた投資に関する基本的な考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。 ご投資にあたっての注意点
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07/14 19:00
【特集】株価に影響を与える主な要因~金利・企業業績・リスクプレミアム・VIX指数~
株価に影響を与える要因として主に「金利」「企業業績」があり、「リスクプレミアム」も要因として挙げられます。可視化しにくい要因であるリスクプレミアムについては「VIX指数」という指標が参考になります。株価と各指標の関係や見方について、野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの小高貴久が解説します。 株価に影響を与える主な3つの要因 ――最近、米国の金利と株価のニュースをよく耳にします。株価と金利はどのような関係にあるのでしょうか。 一般的に、金利が上昇すると、株価が下がる要因となり得ます。直感的には「金利が上昇すると企業の資金調達コストも上昇し、企業の業績が圧迫されるのではないかと投資家が不安視するため」と考えると分かりやすいのではないでしょうか。 ただ、より重要なのは、金利は「お金の将来の価値を現在の価値に計算し直す(現在価値に割り引く)」役目を担っている、という点です。 金利が上昇すると企業が生み出す将来のお金の価値が同じだとしても、現在の価値に計算しなおしてみると割引率が大きくなり、現在の価値が下がることになります。その結果、企業価値を映し出す株価も下落するのです。 以下の図を例に解説します。 (出所)野村證券投資情報部作成 例えば1年後の価値が2,000円、今の金利が0%と考えてみます。1年後の価値を今の価値に計算しなおしてみると、金利は0%であれば、今の2,000円と1年後の2,000円は価値が同じです。次に、仮にこの瞬間、金利が0%から1%に上昇したとします。すると、1年後の2,000円の価値は、今、1,980円(≒2,000円÷1.01)に下落することになります。 さらに、金利がこの瞬間に2%に上昇したとすると、1年後の2,000円という価値は、今、1,960円(≒2,000円÷1.02)に下落することになります。株価は1年後、2年後……、10年後……、の利益や価値を、市場参加者が「今買うならばいくらか」と考えることによって値付けされるため、金利の影響は小さくないと言えます。 米国では、中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が高い金利水準を維持する金融政策によって景気の過熱を抑え、耐え難いほどのインフレが徐々に減速しています。このため、そろそろ金利を引き下げて、金利水準を正常化しても良いのではないか、といった市場の見通しが広がっています。 しかし、毎月発表されるCPI(消費者物価指数)や雇用統計などの景気指標で、まだまだインフレ率が安心できるほど抑制されていなかったり、逆に強い経済指標であったりすると、「利下げが先送りされる」という見方が強まり、金利の上昇とともに株価が下落してしまうケースもあります。 好景気が続いているのに株価が下落する、という理屈が不自然だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これまでに説明した金利による株価への影響を踏まえると、納得いただけるのではないでしょうか。 金利の代表的な指標である国債の利回りは、1年、2年、3年……と様々な年限がありますが、それだけたくさんの金利を全て見ることはできません。このため、代表的な指標と言われる10年国債の利回りを見ることで、株価との関係を判断するのが良いと思います。 日本銀行のマイナス金利政策が2024年3月に解除された影響で、2024年5月22日には約11年ぶりに10年物国債の利回りが1%に上昇しました。長期の住宅ローンなどを組もうとしている方だけでなく、株式や投資信託などに投資し、資産を運用している方も、今後の動向を注視した方がいいでしょう。 ――では、企業の業績はどうして株価に影響するのでしょうか。 これは3つの要因の中でも最も基本的な話ではありますが、企業が事業によって生み出した利益は、設備や新規事業への投資の原資となるだけではなく、配当金などとして株主に還元されます。業績が良くなって利益が拡大していけば、その企業の将来の価値が増えてゆくことが期待されるため、株価の上昇要因となります。 個別の企業に限らず日経平均株価やTOPIXなどでも同様に、組み入れ銘柄の利益が拡大することに関係しそうなニュースや、アナリストなどの業績予想の上方修正などが、値動きに影響すると言えます。 ――「リスクプレミアム」という言葉はやや聞きなれないのですが、これはどういったものなのでしょう。 リスクプレミアムとは、その金融資産を保有した場合の「期待収益率」のうち、長期国債金利など相対的にリスクが低いとされる安全資産の利回りを上回る部分を指します。「危険負担料」などと呼ばれることもあります。リスクプレミアムが拡大すると、株価が下落する要因となり得ます。 例えばある企業を例に考えてみましょう。この企業が進めている事業が、利益が出るかどうかが不透明な事業や、利益の変動の大きい事業、つまり投資資金の回収リスクがあると判断されれば、投資を手控える投資家が増え、株価が下落する要因となります。 具体例を挙げるとすると、ウクライナへの軍事侵攻に対するロシアへの経済制裁は、「ロシアの企業との金融取引ができなくなる」という非常に大きなリスクプレミアムと考えられます。影響範囲はロシアの企業だけでなく、ロシアの企業と取引をしていた他国の企業など世界の市場に影響が及びました。 一方で、リスクプレミアムが大きい金融商品は「期待収益率の不確実性」が大きいため、期待できるリターンも大きくなるとも言えます。 ただ、株式のリスクプレミアムには、CAPM(資本資産価格モデル)といった理論による公式などもありますが、直接的には観測しにくい指標と言えます。 リスクプレミアムの代替指標としてのVIX指数とは ――リスクプレミアムが直接観測しにくい指標なのであれば、ほかに「期待収益率の不確実性」を示す指標はありますか。 「VIX指数(ボラティリティー・インデックス)」という指標があります。株価が大きく下落すると、VIX指数も上昇するケースがあります。VIX指数はCBOE(米シカゴ・オプション取引所)が米国の代表的な株価指数の一つ、S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティー(変動率)を基に算出・公表している指数です。 オプション取引は(1)将来のあらかじめ決められた期日に、(2)金融商品を現在取り決めた価格で(3)売買でき、都合が悪ければしなくても良い、という権利の取引のことです。経済の先行き不安などで投資家のリスク回避姿勢が強まり、株式を売却したいという動きが強まると、「今の時点で一定の価格を決めておいて、その後もっと株価が下がったとしても、下がる前の株価で売り抜けることができる」というオプションの権利の価値が高まります。 他にも細かくは色々とあるのですが、このような変化を指標として反映するVIX指数も上昇します。このため、投資家の恐怖心理を表しているとされ、「恐怖指数」とも呼ばれます。過去の株価変動の結果が将来の株価に影響を与えると考えられるためです。 VIX指数自体は米国株市場の指標ではありますが、米国には世界的な企業も多く、特に米国と日本は経済的な結びつきも深いこともあり、日本経済は米国経済の影響を強く受けやすいと言えます。 このため、VIX指数が変動すると日本の市場にも影響します。ちなみに、日本にも日経平均株価のオプション取引のボラティリティーを基に算出される「日経平均ボラティリティー・インデックス」という指数もありますが、世界的に注目度の高いのはやはりVIX指数の方ではないでしょうか。 VIX指数は20を超えると市場に参加している投資家の不安心理が高いと見なされることが多く、この水準を下回ることが、市場が安定していると判断される一つの目安になっています。VIX指数はこれまで、リーマン・ショック時の2008年10月に89.53、コロナ・ショック時の2020年3月に85.47まで上昇しました。 (注)データは日次で、直近の値は2024年5月30日。政策金利はFF(フェデラル・ファンド)金利翌日物のレンジの中央値。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ――直近のVIX指数の推移を見てみると、2023年10月と2024年4月に上昇しています。何がVIX指数に影響を及ぼしたのでしょうか。 これは、イスラエルとイランを取り巻く地政学リスクの高まりを受けたものと考えられ、特に、産油地域の混乱が世界経済に悪影響を及ぼす可能性が懸念されました。 ただ、2022年2月のロシアによるウクライナへの侵攻開始や、2022年3月からの米国の利上げが始まった時に比べると、VIX指数の上昇は限定的でした。イスラエルやイランが相互に報復を続けることを自重する動きも見られるため、市場参加者も現時点で中東の地政学リスクが株価に与える影響も限定的なものにとどまると見ているのではないでしょうか。 これは、世界経済における存在感が大きいサウジアラビアなどの主要な産油国に戦闘が広がっていないためとも言えます。ただし今後、主要な産油国にまで戦闘地域が拡大し、原油価格がさらに高騰することになれば、株価下落を通じて株式市場の見通しが変化します。VIX指数が20を超えるような際には、株価が不安定になることを想定していると考えられるため、注意が必要でしょう。 ご投資にあたっての注意点
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07/14 17:00
食農分野における「物流2024年問題」への対応策 - 今後の対応策検討に向けた追加視点 -
執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネスビジネス・コンサルティング部 シニア・コンサルタント 門間 圭紀 (2024年7月5日) はじめに 「物流2024年問題」とは、働き方改革関連法により労働基準法が改正され、2024年4月以降、自動車運転業務を対象とした年間時間外労働時間の上限規制の適用や、自動車運転にかかるドライバーの拘束時間の制限等が設定されることに伴って発生する問題の総称である。自動車運転業務自体はもちろん複数の業種にまたがるが、近年は特にトラック運送を指すことが多い。自動車運転業務以外の一般事業に従事する労働者には、2024年4月より以前に類似する規制が適用されていたが、物流・運送業界への適用が始まる数年前や特に数ヶ月前から様々なメディアで取り上げられ、我々が耳にする機会も多い。 「物流2024年問題」として想定されている問題は、大きく2つに分けられる。1つは、トラックドライバー1人当たりの走行距離が短くなることによる物流・運送業の売上や利益の減少およびトラックドライバーの賃金減少といった物流・運送業界に直接的に発生するものである。そしてもう1つは、トラック輸送に支えられている他分野において配送が滞るといった間接的に発生するものであるが、その影響は甚大であり、食農分野もその例外ではない。鉄道・海運・自動車といった輸送機関別の貨物割合を輸送量から計測した場合、農水産品はその輸送量の約96%を自動車輸送に頼っている現実がある[1]。時に我々消費者は、日々の安定的な生活が物流・運送業界の下支えによって成立していることを忘れがちであるが、規制適用から3か月近くが経過した今、改めて食農分野の特徴を踏まえた上で、「物流2024年問題」にどのように対応しているかを整理し、加えて今後の対応策を考察する。 1.食農分野の特徴と物流問題に対する政府の対応状況 ドライバーの長時間労働・低賃金・人手不足などによる食品流通への悪影響に関しては、「物流2024年問題」という言葉が一般化するよりも先んじて政府内での検討が始まっていた。2019年秋、食品流通についてサプライチェーン全体で一貫した合理化対策を検討するために、地方自治体・発荷主・運送業・着荷主の団体等からなる「食品流通合理化検討会」(以下、検討会)が設置され、農林水産省・国土交通省および経済産業省が協力しながら議論を深めていた。2020年4月には、それまでの検討結果を取りまとめた「食品流通の合理化に向けた取組について(第1次中間取りまとめ)」[2]を公表している。この資料の中で、食品流通、特に生鮮食品の輸送には、一般のドライ商品に比べて、下記の特徴があると整理されている。 手積み、手降ろし等の手荷役作業が多い出荷量が直前まで決まらないこと、市場や物流センターでの荷下ろし時間が集中することにより、待ち時間が長い品質管理が厳しいこと、ロットが直前まで決まらないこと等により、運行管理が難しい小ロット多頻度での輸送が多い産地が消費地から遠く、長距離輸送が多い 上記の内容は、この検討会より前に開始されていた「農産品物流対策関係省庁連絡会議(以下、連絡会議)」で挙げられた特徴に類似しており、過去に議論された課題及び取組方向が、順次別の検討の場へ踏襲されていたことが分かる。例えば、連絡会議と検討会の中間取りまとめ資料の双方において、産地、幹線輸送、消費地という3つに分類して取組方向が整理されており、各分類が全て異なる方向性を必ずしも掲げているわけではなく、産地と消費地という川上と川下が共通して取り組むべき点も同時に挙げられている(図表1)。これは、農産品の流通合理化を、サプライチェーン全体が連携し合って解決を図っていく必要がある、という政府側の強いメッセージであると筆者は捉えている。 図表1 農産品物流の課題と対応方策(農産品物流対策関係省庁連絡会議) (出所)農林水産省、経済産業省、国土交通省「農産品物流の改善・効率化に向けて(農産品物流対策関係省庁連絡会議中間取りまとめ)」 食品物流合理化の議論の場を検討会へと移した際に生じた異なる点を挙げるならば、対応方策がより具体的なものへと発展したことであろう(図表2)。勿論、時間の経過により詳細なポイントまで煮詰めることが出来たことや、対応方策に従って事業支援の補正予算や次年度予算の計画を作るという政府内の別の目的が存在していたこと等が、具体性を高める背景になり得たとも考えられる。ただし重要なのは、検討会にサプライチェーンを構成する地方自治体・発荷主・運送業・着荷主の団体等がメンバーとして参画し、実現性のある取組を合意しようとした跡がしっかりと見受けられることである。 また、新たな論点として、「食品ロス削減」が加わったことも大きな変化である。川上や川中といった生産や製造加工の場面で多く取り上げられることが多かった食品ロスの問題は、生産現場や企業側の努力により改善し、その議論の場を徐々に川下の小売や消費者の方へ移し始めている。納品タイミングや納品期限は川下への影響の一部であると想定され、このタイミングで物流に関する施策として盛り込まれたものと考えられる。 図表2 食品流通の合理化に向けた取組の課題と対応方策(食品流通合理化検討会) 論点課題対応方策パレット化等による手荷役軽減時間外労働の上限規制の適用を控え手荷役から機械荷役への転換が前提輸送資材導入に対応する施設・機材の導入、流通・保管体制構築・積載率低下の抑制輸送資材(パレットや台車)の規格の統一、管理回収体制の構築パレタイザー導入、選果施設の改修パレットに適合する段ボール・青果物の規格の検討集出荷拠点の集約等による効率化大ロットでの直送、地方卸売市場の活用産地での集出荷拠点の集約花きの効率的な集荷物流拠点の整備・活用集出荷場の集約共同輸配送の推進モーダルシフトによるトラック以外の輸送手段への分散リードタイムの延長、ロットの確保高機能鮮度維持設備の整備季節波動が大きく、輸送の平準化が必要交通ネットワークの充実北海道からの輸送の維持鉄道の定温物流サービスの拡大、年末年始やGW等の輸送確保出荷を平準化するための長期貯蔵技術の開発効率的な具体方策策定に向けた鉄道貨物輸送業界等と産地との意見交換の実施小口ニーズへの対応小口ニーズの効率的な集荷・配送手段の確立小規模産地の良品配送宅配便との連携ドローンの実用化の検討高速バス等による貨客混載の活用の拡大ICTの活用食材情報、生産・流通履歴等の可視化物流事業者同士のマッチングや荷物の情報共有の仕組みICTを活用した商品・物流情報の共有運送依頼情報と車両の空きスペース情報のマッチングによる輸送効率化品質・付加価値・価格バランスの見直し少量生産で市場流通に乗らない産品を大消費地で販売する仕組み物流・販売チャンネルの工夫・多様化貨客混載を活用した地域産品の高付加価値化・マーケティングの強化高速バスの上下便の組合せ等による販売チャンネル・エリアの拡大荷待ち時間の削減や附帯作業の適正化荷待ち時間や附帯作業の削減に対する意識の向上サプライチェーン全体での待機時間や附帯作業コストの見える化、適正なコスト負担先着順から予約制への変更ホワイト物流推進運動等への参加事業者の拡大及び当運動を通じた待機時間料や附帯作業料の適正収受の浸透事前出荷情報の提供や予約受付システムの導入促進食品ロス削減需要変動への対応季節性商品の切替時期における在庫の積み上がり消費実態に合わせた容量の適正化店舗に欠品があることで消費者が離れるおそれ輸送中に毀損した商品を廃棄する範囲等があいまい需要予測の高度化や受発注リードタイムの調整売り切るための取組(値引き・ポイント付与等)やフードシェアリングの推進フードバンク活動との連携食品ロス削減に資する取組事例の共有消費者の欠品を許容する意識の醸成輸送中に毀損した商品の廃棄等の基準をまとめた報告書について、その内容を消費者、小売等に対して周知(出所)農林水産省、経済産業省、国土交通省「農産品物流の改善・効率化に向けて(中間取りまとめ)」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部が一部変更を加えて作成 「物流2024年問題」が身近なワードとして認知され始めた2023年、政府は「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」(以下、関係閣僚会議)を設置し、同年6月にはこの関係閣僚会議が「物流革新に向けた政策パッケージ」を決定した。この政策パッケージは、前述の連絡会議や検討会のように食品や農産品だけに着目したものではなく、物流業界全般に関連するものとして公表されている。しかしながら、その詳細は食品または農産品の流通合理化で議論されていた内容を柱として策定されたと見受けられる点が多い。食農分野における自動車輸送割合の多さ、輸送中の品質管理の困難さ、(加工製造も含めた)生産品の需要者や消費者の分散度合い・広さを総合的に鑑み、さらに当該分野の課題解決する過程が他分野・他業種への解決へ寄与する可能性もあると考えられる。 図表3の通り、2024年4月以降の潜在的課題を含め、あらゆる物流問題に向けた様々な具体的な対策を、(1)商慣行の見直し、(2)物流の効率化、(3)荷主・消費者の行動変容、に整理しなおしている。対策の中でも特に黄色でハイライトした箇所は、食農分野輸送の特徴を踏まえた事項になっており、現在色々な民間企業・関連団体等が協力して取り組み、数多くの取組実績を積み上げている最中のものでもある。 図表3 物流革新に向けた政策パッケージ (出所)農林水産省物流対策本部 「令和5年12月27日 説明資料」 当レビューでは取組事例を数多く取り上げることは割愛するが、一例として紹介したいのは、上記「(1)商慣行の見直し ②納品期限(3分の1ルール、短いリードタイム)」に関する事例である。3分の1ルールとは、加工食品を製造した日から賞味期限までの期間を、食品メーカーから小売店へ納品する「納品期限」、小売店が商品を棚に陳列する「販売期限」、消費者が美味しく食べられる「賞味期限」のように3等分してスケジュール管理をしながら取引を実施するという日本独自の商慣習である。この商慣習は消費者側の安心・安全には寄与するのだが、一方で納品期限を超えた製品は消費期限までかなりの猶予があっても返品が行われ、廃棄による食品ロス問題を引き起こす一つの原因となっていた。それに加え、この納品期限を守るために生じる輸送回数の増加やスケジュールの詳細管理、返品の際の輸送及びそれに伴う入出庫作業などは、物流業界の負担となっていた。 10年ほど前より、この商慣習の緩和策として、製造日から賞味期限までを2等分して納品期限を延ばす2分の1ルール適用が少しずつ開始され、一部の総合大手スーパーをはじめとする複数のスーパー、生協、コンビニエンスストア、ドラッグストアにまで広がってきた。その見直しを進める過程で納品期限が3分の1のものと2分の1のものが混在し、物流及び在庫管理を複雑化させている点が問題視されていたが、物流2024年問題を見据えて、さらに首都圏を中心に展開する大手スーパー4社が加わり、企業間の対象品目の統一化をはじめとする課題へ立ち向かっている。 図表4 「3分の1ルール」等商慣習の見直し (出所)農林水産省食料産業局 「1/3ルール等の食品の商慣習の見直し」 また、輸送のタイミングという点で、小売から製造・卸への発注時間の見直しが、両者間合意の下で始まっている。トラックドライバー不足による車両手配が困難になるため、小売からの定番品・日用品発注時刻を、荷物到着2日前の午後から3日前の午前へ変更し、輸送リードタイムを1日延長し、さらに夜間配送を減らすという効果を狙った動きである。 このように、議論を長く重ねてきた政府側が策定した施策や対応方策に沿って、多くの事業会社が協働し、新しい食農分野の物流が形成され始めている。 2.更なる対応策検討に向けた追加視点 前章の通り、以前から顕在化または潜在化していた課題について検討や整理が行われ、物流・運送業界のみならず食品流通に関わる事業体が横断的な行動をとることで、我々消費者の生活が支えられている。規制適用から3か月近くが経過したが、食品や農産品が手に入りにくくなった等の不便を被った方の存在や混乱等は報道などで大きく取り扱われていない。 ただし、現時点で大きな問題が発生していないことを理由に、ここまでの対策を継続しさえすればよいという結論を出すのは時期尚早と思われる。過去1990年代から2000年代初頭において、トラック運送業の規制が大きく緩和され、新規参入と運賃値下げを伴う過当競争が進み、物流・運送業界が荷主のあらゆる要望に応える構造が形成され、ドライバーの激務と給与処遇の低さが発生し、人手不足を引き起こした。30年近くかけて出来上がったこの物流・運送業界の構造的課題を、この数年で実施された対処法だけで解決できたと判断することはできず、中長期で解消できたかを継続的にモニターすることが重要ではないだろうか。そして、現時点では未だ挙がっていない対応策の視点や、中長期にこそ実施できる対応策の視点を以て準備することも必要なのではないかと考える。 その上で、食農分野が物流・運送業界と関与しそうな点に着目し、改めて前章にある政策を見てみると、現在採られている対応策の多くは、物流の生産性向上へ寄与する内容へ偏り気味なのではないかと考えられる。例えば、食農分野に特有の荷待ち・荷役時間の削減に向けては、時間制限規制を設け、更に荷下ろしをドライバーだけではなく、荷物を受ける業者側が必要な機器を手配するなどの対応をしている。別の例では、ある大手の卸売市場において、トラックドック誘導時間をドライバーに伝える情報システムを市場が導入したうえで、市場関係者が共同で組織化する市場内物流組合がドライバーに代わって荷卸し業務を行う計画を立てている。これらの課題には、現在の物流量を保ちながら輸送を滞らせないことを前提した視点が多い。勿論、これまでの業務の中に何らかのムダが存在するならばそれらを排除すべきであろう。しかしながら、生産性が向上したことで輸送時間が短くなった分他の荷物の輸送へ時間が回せることになっても、ドライバーの高齢化や絶対人数の減少に歯止めをきかせることまでを解決することが出来ないため、やはり食農分野への影響を100%緩和することは難しいと思われる。よって、それらを補完する視点や方法にも目を向け、様々な対応方策を組み合わせて全体最適を実現するのも一つの動き方ではないだろうか。 筆者が注目している視点は、「消費地としての地方の立ち位置」と「輸送量削減」である。まず「消費地としての地方の立ち位置」とは、地方が食品や農産品の生産地としてそれをどう輸送するかという議論に加え、その地方が他の生産地から見た時の消費地でもあるという両面を前提に議論することである。食品や農産品は、新鮮なうちに生産地である地方から、別の地方へ迅速に輸送されなければならず、その距離は大都市圏向けよりもはるかに遠いケースが存在するという特徴がある。長距離輸送先の地方では、自身の消費に見合う量が確保できないリスクを保有している。そして、次に「輸送量削減」だが、こちらは単純に輸送ルートのムダや輸送の全体効率の観点から生産地を戦略的配置することを指している。 3.追加視点に沿って検討しうる対応策例 前章で挙げた「消費地としての地方の立ち位置」と「輸送量削減」については、それぞれに沿って対応策を検討することも、併せて包括的に検討することもできるのではないかと考えている。本章では、対応策の例を2つ挙げたい。 まず一つ目は、ムダな輸送ルートの排除である。先進事例として、2021年11月に発表[3]された株式会社神明ホールディングとNTTグループの共同実験を通じた輸送量削減の共同実験を紹介したい。大手食品卸、株式会社神明ホールディングは国内有数のコメ卸であると同時に、現在は資本提携により野菜や果物も扱う青果市場の大卸(荷受)などを傘下に収めている。産地の農協は輸送距離に関係なく高値が付きそうな中央卸売市場へ向けて出荷し、卸売市場法の規定で生鮮品の荷受けを拒否できない大卸へ農産物が集中するケースがある[4]。大卸は翌朝の到着品目と量を急に知らされるため対処しきれず、その結果、需給が緩んで値崩れし、余った農産物は元の生産地から比較的近い中央卸売市場へ逆戻りすることもある。このようなある種のムダな輸送を減らし、「極力農産物を動かさない」新しい形の物流の仕組みを目指しているのが、当該共同研究の背景である。当時公表された内容によると、サイバー空間上に仮想市場を構築し、デジタルツインコンピューティング[5]を用いた予測技術により仮想の相対取引や競りを実施する。仮想相対取引では、卸売市場に集まる取引データや気象情報等による一般的な生産予測に加え、突発的なイベントや市場間の価格変動、消費動向の変化等、複雑に絡み合った要素から特徴を捉えて需給を予測し、仮想空間上で売り手と買い手を結び付ける。また、農産品の品質について正確に測定・数値化し、買い手が農産物の良し悪しが判断できるようになるという。卸売流通の伝統的な慣習を伴う食農分野の特徴に、新たなテクノロジーを組み合わせた全く別のアプローチだと考えられる。政府が掲げている商慣習の見直しという方向性にも合致する点を考慮すると、今後も動向を注目したい取組である。 図表5 農産物流通DXの全体概要 (出所)NTT西日本 News Release「農産物流通DXによる流通コストやフードロス、温室効果ガス削減へ貢献~最先端の情報通信技術の活用によるフードバリューチェーン最適化~」 そして二つ目は、植物工場建設地の戦略的選定である。植物工場は、栽培品質・収穫量の安定性・栽培条件と品目に関する研究等を含む様々な点から話題に挙がるテクノロジーである。近年は、気候変動に対応する手段の一つとしてメディアで目にすることも多い。これまでの植物工場の活用メリットの検証ポイントに加えて、物流コストの削減という観点から建設効果というのを改めて算出することが出来るのではないかと考える。物流中継地拠点を戦略的に選定するのと同様に、植物工場建設候補地を輸送距離削減や消費地としての地方の需要を支えられる場所に選定することで、現在の物流・運送業界の負担を軽減することが出来るのではないだろうか。植物工場の収益力については更なる議論やアイディアが必要であり、事業を大きくする上では未だ研究や追加品目の検討が必要ではあるが、物流自体が将来逼迫する可能性が高い今、物流の川上にあたる生産側でできうる選択肢を一つでも多く増やすことも必要なのではないかと思われる。地方を支えるための植物工場の建設や運営となれば、特定の企業だけではなく、自治体・金融機関・既存の業界団体との協議や連携も大事になると想定される。 おわりに 当レビューでは、本年4月の働き方改革関連法による労働基準法改正に端を発した「物流2024年問題」について、食農分野における対応策の整理を試みた。複数の官公庁による長い議論の積み上げを経て、現時点では消費者が大きな問題に直面することから回避できているように見受けられる。しかしながら、この問題は一度解決すると全て完了といった類のものではなく、継続的且つ積極的に関与しなければならない。安心且つ持続的な食料調達と消費を維持するためには、生産だけに関心を持つのではなく、生産と物流を繋げた上で目標を達成できる対策を検討し続けなければならないのである。そのためには、現在の対応策で何が満たされていてどのような視点が不足しているのか、何をすればその不足が補えるのかについて関心を高めていく必要がある。 そしてもう一つ大事なことは、実行した対応策が実際に効果を発揮しているのか、発揮したのかという評価を実施することである。効果があれば継続し、効果が無ければ改善や変更をしなければならない。政府が公表している「物流革新に向けた政策パッケージ」(前述)の中では、施策の効果について、荷待ち・荷受け業務で削減された時間、モーダルシフトを実行した貨物量、宅配の再配達削減率等を数値化し、ポイントという形に置き換えてその効果を定量化している。但し、これらは分野毎に分かれているものではないため、例えば食農分野での効果の有無を個別に評価することが出来ない。また、それらの効果が結果としてどこにベネフィットをもたらしたかが見えにくい。 弊社は以前、食品流通合理化に関する調査の一環として、川下から川上までの流通実態の把握手法の検討調査[6]を受託・実施したことがある。この調査の中で、地域別の農産品の生産量や消費量を政府統計で把握すること自体は比較的容易だが、具体的にどの地域へ輸送され経由して川下と川上が繋がっているのかを統計などで把握するのは困難であった。また、政府統計は数多くの事業体からの協力の下でデータ収集するため、調査開始からデータの検証、算出、結果の公表まで長い時間がかかり、即時性を満たせない。その際弊社は、品目によって流通構造が異なるためその品目が属する業界において導入・活用されているプラットフォームツールを選定し、BtoB取引の注文・輸送に係るビッグデータの提供を受けながら、複数の異なるフォーマットデータや過去の天候データなどを併せて食品取引の実態を可視化し、国内輸送や物流実態を推計することを提案した。振り返ってみると、当該調査テーマは、現状の輸送実態を推定し、何らかのアクションを加えることでどのような中長期的な変化が生じたかなどを評価するのに有効かもしれないと考える。この点についても、具体的にどのようなデータ解析ができるかを再度検証してみる必要はあるが、いずれにしても、「物流2024年問題」については、食農分野の特徴を踏まえた対応策を検討することは勿論、その対応策の効果の評価プロセス構築とフィードバックを含めた中長期的管理が存在して初めて、食農分野の物流問題対策が有効になると考える。 [1] 国土交通省「2022年度 貨物地域流動調査 品目別輸送機関別貨物輸送量(全国輸送量)」より野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部算出 [2] 農林水産省、経済産業省、国土交通省「食品流通の合理化に向けた取組について(第1次中間取りまとめ)」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-32.pdf [3] NTT西日本 News Release「農産物流通DXによる流通コストやフードロス、温室効果ガス削減へ貢献~最先端の情報通信技術の活用によるフードバリューチェーン最適化~」 https://www.ntt-west.co.jp/news/2111/211105a.html [4] 日経ビジネス「農作物に最適ルート 物流2024年問題、NTTと仮想空間で解決策」 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00365/111600007/ [5] 従来のデジタルツインの概念を発展させて、多様な産業やモノとヒトのデジタルツインを自在に掛け合わせて演算を行うことにより、都市におけるヒトと自動車など、これまで総合的に扱うことができなかった組合せを高精度に再現し、さらに未来の予測ができるようにする技術 NTT 研究開発ウェブサイト「デジタルツインコンピューティングとはなにか」 https://www.rd.ntt/iown/0003.html [6] 農林水産省 食品流通合理化に関する調査について「【令和4年度事業】川下から川上までの流通実態の把握手法の検討調査委託事業」 ディスクレイマー 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07/14 16:00
【オピニオン】米国:大統領選挙後は好景気になる?
※画像はイメージです。 米国の次期大統領による財政政策と、それによる景気への影響は金融市場にとっての関心事です。下図のように、米国の財政収支は、好景気の際に黒字化、もしくは、財政赤字が縮小しました。これは、税収などの歳入増加や、景気対策の縮小による歳出減少が要因とみられます(収入が増え、支出が減るため、収支が改善)。一方で不況時には、景気対策を強化するため歳出を増やし財政赤字を拡大させる形で、金融政策とともに景気を支えました。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)コメントは、黒文字は財政黒字が拡大もしくは財政赤字が縮小した局面、赤文字は財政赤字が拡大した局面で、全てを網羅しているわけではない。年度は前年10月から9月。(出所)米議会予算局、セントルイス連銀より野村證券投資情報部作成 財政赤字の拡大には、下記のような影響があると考えられます。 ① 短期的に景気にプラス ② 連邦債務上限の引き上げが必要(過去には議会交渉の難航で一部の政府機能が一時停止) ③ 米国債格下げリスクが増加 民主党バイデン候補と共和党トランプ候補の、どちらが勝利した場合でも米国の財政赤字は拡大するとみられます。予算見通し等を作成する中立的な機関である米国議会予算局が2024年6月に公表した見通しでは、現行法、つまりバイデン政権の従来の政策が継続した場合には、財政赤字が高い水準で維持されると試算されています。これに含まれない、バイデン候補が公約する2025年末で失効するトランプ減税の一部延長が法制化されれば、2026年度以降の財政赤字は更に拡大することになります。 トランプ候補は、歳入面では減税を公約する一方で、歳出面では社会保障費の削減を明確にしておらず、当選した場合の財政赤字の水準が不透明です。トランプ前政権はトランプ減税を実施し、オバマ政権時の見通しより歳入が減少した一方で、歳出の削減額は減税分より少額で、財政赤字が拡大しました(共和党政権は伝統的に予算面で小さな政府)。 2024年6月27日に開催された両大統領候補者によるTV討論会では、バイデン候補が精彩を欠き、トランプ候補が優勢と報道されています。ただ、公約が実行される前提では、どちらの勝利でも財政赤字は拡大し、短期的に景気にはプラスと考えられます。 一方で、議会選挙の結果により、大統領、上院・下院の多数派について共和党、民主党が分かれた場合は、選挙後の2025年1月1日まで停止されている連邦債務上限の引き上げ交渉が、より難航するリスクがあります。金融市場への影響の観点からは、大統領選挙、議会選挙の結果と、それによる選挙後の予算教書などが注目されます。 ご投資にあたっての注意点