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昨日 18:00

【投資と税金】相続税を払った人が得をする?相続税の取得費加算の特例

相続した不動産を売却するべきか迷っていたところ、相談した不動産会社の方から早めに処分した方が良いとアドバイスを受けました。理由を尋ねたところ、「相続で取得した不動産は、特例適用対象期間内に売却すると減税になる」とのことでした。いったいどんな制度なのか、大手町トラストの税理士に伺いました。 (注)画像はイメージです。 はじめに 相続または遺贈により取得した土地、建物、株式等の財産を売却したときに利益(譲渡所得)が発生すると所得税や住民税がかかります。取得した財産を一定期間内に譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。この特例を「相続税の取得費加算の特例」といい、適用により所得税・住民税の負担が減少します。 「相続税の取得費加算の特例」とは 相続または遺贈により取得した財産を、相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内、すなわち相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内に売却した場合には、その売却した人が負担した相続税のうち一定金額を取得費に加算して譲渡所得の計算を行うことができます。 対象者または対象物 特例の適用を受けるためには以下の要件をすべて満たす必要があります。 相続や遺贈により財産を取得した者であること。その財産を取得した人に相続税が課税されていること。その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。 計算方法・計算式 ① 通常の譲渡所得の計算  譲渡所得の金額 = 売却収入 -(取得費+譲渡費用) ② 取得費加算の特例を適用する場合の譲渡所得の計算  譲渡所得の金額=売却収入-{(取得費(※)+取得費加算額)+ 譲渡費用 } ※相続又は遺贈により取得した財産を売却した場合の取得費は、被相続人における取得費を引き継ぎます。 また、取得時期も被相続人の取得日を引き継ぎます。 例えば、相続した土地を売却した際の譲渡所得を①と②の計算方法で比較すると、以下のようなイメージになります。 取得費 : 土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費等。建物の取得費は所有期間中の減価償却相当額を差し引いて計算。譲渡費用 :土地や建物を売るために支払った仲介手数料や印紙税、測量費用・建物の解体費用等。 取得費に加算する相続税額は、次の算式で計算した金額となります。 ただし、その金額がこの特例を適用しないで計算した譲渡益の金額を超える場合は、その譲渡益相当額となります。なお、譲渡した財産ごとに計算します。 相続や遺贈により取得した株式と同一銘柄の株式を保有している場合において、特例適用対象期間内にその株式の一部を譲渡したときには、その譲渡については、その相続や遺贈により取得した株式の譲渡からなるものとしてこの特例を適用することができます。 土地を売却した場合の具体例による計算 取得費加算額の計算 ・相続税額:1000万円 ・売却した土地の相続税評価額:2000万円 ・相続税の課税価格(相続時の現金・土地等を含めた額、債務控除前):1億円 上記の計算式で計算すると、「取得費加算額」は200万円となります。 1000万円(相続税額)× 2000万円(売却した土地の相続税評価額)/1億円(相続税の課税価格) 例えば、相続した土地を3000万円で売却し、取得費、譲渡費用が以下であった場合、課税対象となる金額は1200万円となります。 ・土地の購入費(取得費 10年前に購入):1500万円 ・譲渡費用(仲介手数料等):100万円 ・取得費加算額:200万円 取得費加算額の特例を利用することによって所得税や住民税を軽減することができます。 利用する際の注意点 「相続税の取得費加算の特例」を適用するためには、一定の書類を添えて確定申告をすることが必要です。 また、この特例は、定められた期限内に取得した財産を売却した場合に適用されるため、注意が必要です。複数の不動産を相続した場合は、優先順位を決めて売却されるとよいでしょう。 まとめ 土地の場合は売却まで時間がかかるため、相続した財産の処分を検討する場合は、早めに不動産会社や税理士に相談されるとよいでしょう。 この資料は情報提供を唯一の目的としたもので、投資勧誘を目的として作成したものではありません。この資料は信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、野村證券は、その正確性および完全性に関して責任を負うものではありません。この情報は、ご覧いただいたお客様限りでご利用いただくようお願いいたします。詳しくは、所轄税務署または顧問税理士等にご確認ください。 ご投資にあたっての注意点