米国株
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08/24 09:59
【米国株決算速報】エヌビディア(NVDA):生成AIの導入競争が始まる、株価は+8.14%(時間外取引)
決算概要:2023年5-7月期(2024.1期第2四半期) EPS実績は市場予想を上回った 米国時間8月23日引け後に、グラフィックスや、AI、データセンター向けなどの半導体の設計・販売を行うエヌビディア(NVDA US)が2023年5-7月期(2024.1期第2四半期)決算を発表しました。売上高は市場予想を20.3%上回り、EPSは市場予想を29.4%上回りました。 会社の2023年8-10月期売上高見通しは市場予想を上回り、粗利率見通しも5-7月期実績を上回る水準です。 生成AIの導入競争が始まる 会社は、データセンター向けの売上高が前年比で大幅に増加したことについて、クラウド企業による生成AIの導入競争が始まっていると決算書で説明しました。また会社は、販売量の四半期毎の増加は来年を通じて継続すると決算説明会でコメントしました。 売上高とEPSの推移 株価は時間外取引で最高値を更新 エヌビディアの株価は、前日比3.17%高で引けた後、決算発表を受けて時間外取引では、終値比8.14%高の509.53ドルで推移しています(NY時間17:30)。 売上高やEPSの実績や、売上高と粗利率見通しが市場予想を大きく上回り、当社の生成AI向け製品の高い需要による価格決定力の強さが業績に追い風となると市場が受け止めたためと推察します。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は非米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。粗利率(売上高総利益率)は非米国会計基準。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2023年8月23日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2023年5-7月期(2023/7)。2023年8-10月期の売上高の白丸は会社見通し中間値。灰色はリフィニティブ集計による市場予想平均。2023年8-10月期以降の予想は2023年8月22日時点。(出所)会社発表、リフィニティブより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・竹綱 宏行) 【米国株決算速報】エヌビディア(NVDA):生成AI向け需要急増、株価は+27%(時間外取引) 野村の米国株決算リンク集:2022年1-3月期・4-6月期・7-9月期・10-12月期決算 野村の米国株決算リンク集:2021年10-12月期 ご投資にあたっての注意点
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08/21 20:00
【今週の米国株】”今年株価3倍”のエヌビディアが決算発表、ジャクソンホールにも注目(8/21)
1分でわかる今週の米国株 先週発表された米経済指標の多くが市場予想を上回りました。米長期金利(10年債利回り)は上昇したことが重石となり、株式市場は軟調に推移しました。 今週のPoint1. デカップリングする米中経済、米国株の重石に 15日(火)に発表された7月の米小売売上高は前月比+0.7%と市場予想(同+0.4%)を大きく上回るなど、米国経済は堅調な指標が相次いでいます。一方、同日発表となった中国の7月工業生産高や7月小売売上高は総じて軟調、中国恒大集団の米国における破産申請などネガティブな報道も相次いでいます。また物価の観点でも、米国はインフレ懸念が根強い一方、中国はデフレ基調とデカップリング(分離)しています。 先週だけを見れば、米国での「経済堅調×インフレ懸念」は米長期金利上昇と米国株のPER(株価収益率)への低下圧力に、中国での「経済軟調×デフレ」はグローバル企業の予想EPS(一株当たり利益)への下押し圧力になっていると見られます。こうした状況が続くかは見通せませんが、経済指標から目が離せない状況は続きそうです。 米経済を見る上では、景気指標では23日(水)の8月S&PグローバルPMI速報値に注目が集まります。インフレ指標では、24日(木)の新規失業保険申請件数(8/19の週)、25日(金)のミシガン大学調査の8月消費者マインド確報値での期待インフレ率が重要です。 今週のPoint2. 23日(水)のエヌビディア決算 今週も、小売や情報技術関連企業の2023年5-7月期決算発表が続きます。中でも、23日(水)引け後に発表が予定されるエヌビディアの決算には注目したいと考えます。当社の株価は2022年末比で約3倍(2.96倍,8/18時点)にまで上昇しており、当社を含む生成AI関連や半導体関連は、米国株全体をけん引するテーマとなっています。決算発表では、5-7月期の実績に加え、8-10月期見通し、AI関連の今後の市場動向などについてのジェンスン・ファンCEO(経営最高責任者)の見解に注目したいと考えます。 今週のPoint3.週末のジャクソンホール会合 金融政策関連では、FRB(米連邦準備理事会)幹部の講演が複数予定されています。24日(木)~26日(土)にカンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム、いわゆるジャクソンホール会合が開催されます。パウエルFRB議長は25日(金)に経済見通しについて講演する予定です。 (以上、「1分で読める今週の米国株」) もっと知りたい!経済指標&金融政策 ジャクソンホールは何に注目?「中立金利」の議論 目先1か月で、もっとも大切なイベントは9月19日(火)-20日(水)に開催される9月FOMCです。同会議ではドッツ(政策金利見通し)の2024年末分以降が上方修正され、FOMCによる利下げの想定が市場予想よりも小幅なものとなる可能性があります。 このため、市場は9月FOMCまで不安定な展開が続きそうです。その間は、FRBからの情報発信やFRB高官の発言が注目を集めると想定されます。先週は、NY連銀の経済ブログ(投稿は8/9及び8/10)における自然利子率(r*)についての議論が話題になりました。自然利子率は、景気・インフレを加速も減速もさせない金利水準を指します。(大幅利上げに対して、米国経済が堅調に推移していることを説明する理由に対する関心が強まる中で)同ブログでは「短期的な自然利子率はコロナ後に上昇した可能性がある」との見方が示され、注目を集め、株価へは重石となりました。一方、「長期的な自然利子率が上昇した証拠は弱い」との結論も示しています。ドッツに対する示唆としては、手前の予想期間での見通しは上方修正されやすく、長期水準の見通しは上方修正されづらいと解釈されます(小清水ストラテジスト)。 24日(木)~26日(土)に開催されるジャクソンホール会議の各セッションではコロナ禍前後での中立金利水準の変化が討議されると考えられます。各セッションは反対意見を持つパネリスト同士が討議するため、両論併記となり、いずれかの結論が示されることまでは想定しづらい形式です。一方、市場では中立金利が引き上がったとの見方が既に強まっており、今回の討論もそのような見方を補強する材料として捉えられる可能性があります。米長期金利が上昇すれば、米国株にとって重石となることから注意が必要です。 もっと知りたい!決算発表 先週から5-7月期決算発表が始まっています。今週は23日(水)のエヌビディアの決算発表に注目が集まります。 先週の半導体製造装置大手の決算発表は好調 17日(木)に半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズが決算を発表しました。年初から大きく株価が上昇した半導体セクターに対する高値警戒感が広がる中で、実績・見通しともに市場予想を上回る好決算で、発表翌日の18日に株価は上昇しました。半導体製造装置と半導体メーカーの業績は必ずしも連動はしないものの、上流工程である製造装置の最大手が受注も含め好調であったことは、半導体セクターの安心材料となりました。 エヌビディアの前四半期決算を振り返り 上記の通り、エヌビディアの2-4月期決算発表では、最大セグメントであるデータセンター向けが生成AI需要を取り込み前年同期比でプラスとなり、市場予想も大きく上回りました。また、5-7月期の見通しが市場予想を54%上回り、前四半期比で再拡大する見通しを示したことも株価上昇の一因となりました。 5-7月期決算発表のポイント まずは、前回決算発表時に大きく引き上げた5-7月期会社見通しを、超えられるかが注目となります。また、6-8月期を通じて成長軌道を維持し得るかも重要でしょう。IT投資自体は抑制傾向にありますが、マイクロソフトやアマゾン・ドットコム、アルファベットといった大手クラウド事業者は自然言語処理やレコメンドエンジンなど内外の作業用に、当社の最新GPU「H100」の導入を増やそうとしています。また、メタ・プラットフォームズはメタバース推進のため積極的なインフラ投資を続けており、これも当社製GPU の需要を押し上げるとみられます。こうした需要の恩恵を実際に受けられているか、注目が集まります。 AI関連の技術は日進月歩で変化しており、スーパーコンピューター並みの仕様で建設される現在のデータセンターが未来永劫使われ続けるとは限りません。当社も含め社会実装の現場にいる企業のコメントによく目を配りながら、投資に活かしていく局面と考えます。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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08/18 09:42
【米国株決算速報】ウォルマート(WMT):食料品堅調継続・一般消費財は回復の兆し、株価は-2.24%
決算概要(2024.1期第2四半期) EPS実績は市場予想を上回り、2024年1月期通期の売上高・EPS見通しを引き上げ 米国時間8月17日寄り前に、店舗小売、Eコマース事業を運営するウォルマート(WMT US)が2023年5-7月期(2024.1期第2四半期)決算を発表しました。売上高は市場予想を0.8%上回り、EPSは市場予想を7.9%上回りました。 会社の2023年8-10月期EPS見通しは市場予想を下回りました。一方で、会社は2024年1月期通期の売上高・EPS見通しを引き上げ、EPS見通しは市場予想を上回りました。 食料品堅調継続・一般消費財も回復の兆し 会社は、インフレによる消費者の節約志向の中で食料品や消耗品の販売の好調が継続した一方、アパレルや家電などの一般消費財の販売が、7月4日の独立記念日や9月からの新学期セールなどのイベント関連で回復の兆しがあることをコメントしました。また、抗肥満薬を中心に医薬品も堅調でした。 売上高とEPSの推移 株価は下落 ウォルマートの株価は、前日比2.24%安で引けました。株価は、寄り付き直後は上昇したものの、主要株価指数が下落に転じたことや、利益率の低い食料品や消耗品、医薬品の堅調などにより2023年8-10月期EPS見通しがやや下回ったことが重石となり、下落に転じたと考えられます。一方で、一般消費財に回復の兆しが見え始めたことは、当社の年末商戦の業績にとって明るい話題と考えます。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は非米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2023年8月17日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2023年5-7月期(2023/7)。2023年8-10月期のEPSの白丸は会社見通し中間値。灰色はリフィニティブ集計による市場予想平均。2023年8-10月期以降の予想は2023年8月16日時点。(出所)会社発表、リフィニティブより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・竹綱 宏行) 【米国株決算速報】ウォルマート(WMT):グローバルで販売好調、株価は+1.30% 野村の米国株決算リンク集:2022年1-3月期・4-6月期・7-9月期・10-12月期決算 野村の米国株決算リンク集:2021年10-12月期 ご投資にあたっての注意点
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08/16 10:02
【米国株決算速報】ホーム・デポ(HD):小規模なリフォーム工事が下支え、株価は+0.66%
決算概要 EPS実績は市場予想を上回った 米国時間8月15日寄り前に、消費者、業者向けのホームセンター事業を行うホーム・デポ(HD US)が2023年5-7月期(2024.1期第2四半期)決算を発表しました。売上高、EPSは共に前年同期を下回りましたが、売上高は市場予想を1.6%上回り、EPSは市場予想を4.6%上回りました。 2024年1月期通期について会社は、売上高は前年度比-5%~-2%、EPSは同-13%~-7%と従来の見通しを維持しました。 また会社は、従来のプログラムに代わる新たな150億ドルの自社株買いプログラムを発表しました。 小規模なリフォーム工事が下支え 会社は「小規模なプロジェクトに関連するカテゴリーでは好調だったが、一部の高額で裁量性の高いカテゴリーでは逆風が続きました。住宅改修の中長期的な見通しと、大規模で細分化された市場でシェアを拡大する能力については、引き続き非常に前向きです」とコメントしました。 売上高とEPSの推移 株価は上昇 ホーム・デポの株価は、前日比0.66%高で引けました。売上高、EPS共に市場予想を上回り、新たな自社株買いを発表したことが好感されたためと推察されます。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2023年8月15日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2023年5-7月期(2023/7)。灰色はリフィニティブ集計による市場予想平均。2023年8-10月期以降の予想は2023年8月14日時点。(注4)見通しの市場予想比は金額ベースで、会社見通し中間値と市場予想との比較。(出所)会社発表、リフィニティブより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・岩崎 晴弥) 【米国株決算速報】ホーム・デポ(HD):住宅関連需要軟調で見通し下方修正、株価は-2.15% 野村の米国株決算リンク集:2022年1-3月期・4-6月期・7-9月期・10-12月期決算 野村の米国株決算リンク集:2021年10-12月期 ご投資にあたっての注意点
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08/14 20:00
【1分で読める今週の米国株】年初来高値圏のウォルマートが決算発表、米消費の強さを試す週に(8/14)
1分で読める今週の米国株 先週は、インフレ指標が注目されました。10日(木)に発表された7月の米CPI(消費者物価指数)は市場予想を下回った一方で、11日(金)に発表された同月の米PPI(生産者物価指数)は市場予想を上回りました。足元の経済指標はインフレ減速を示唆する内容が多くなってはいるものの、PPIの一部の項目はFRB(米連邦準備理事会)が政策決定の際に重視するインフレ指標であるPCE(個人消費支出)デフレーターに影響を及ぼす要素にもなっていることから、PPI上振れはFRBの追加利上げの思惑を呼びました。 なお、7日(月)に格付会社ムーディーズが米地方・中堅銀行の格下げ及び一部大手の格付け方向見直しを発表し大手行も連れ安しましたが、米大手銀行のCDSプレミアムは大きく拡大していません。米金融機関の信用リスク全般に対する懸念が高まっているという状態ではないと推察されます。 今週のPoint1. PPIの上振れ要因に注目 PCEデフレーターに影響するPPIの項目としては、資産運用・投資助言サービス価格(前月比+7.4%)と病院サービス価格(同+0.3%)が挙げられます。今回のPPIの結果を踏まえて野村は7月のPCEデフレーター(インフレ率)の見通しを上方修正しました。食料品・エネルギー価格を除くコア指数の予想を0.192%(CPI発表直後の予想0.152%から上方修正)、コア指数から家賃までを除いたスーパーコア指数を0.418%(CPI発表直後の予想0.354%から上方修正)と予想しています。 なお、現在FF先物市場では2024年年初の利下げ転換を織り込んでいます。仮にインフレ率の鈍化が想定より緩やかとなり利下げ転換が2024年後半にずれ込めば、長期金利は年初来のピークを超える可能性もあります。金利高止まりは株価の下押し圧力になるため、インフレ指標には引き続き注視が必要です。 今週のPoint2. 株価好調、ウォルマートの決算発表は17日(木) 17日(木)に米小売り大手のウォルマートが決算を発表します。現在同社をはじめとした小売セクターの株価は堅調です。背景には3点あると考えられます。第一に米消費が全体として堅調であること、第二にインフレに苦しむ消費者にとって低価格な必需品への需要が大きいこと、第三に3日(木)に発表されたアマゾン・ドットコムのEC部門の業績が好調であったことが同セクターの強気材料として挙げられます。16日(水)にはウォルマート競合のターゲットも発表を予定しています。 今週のPoint3.15日(火)発表の米小売売上高 米経済のソフトランディングシナリオがけん引する現在の米国株式市場にとって、GDPの7割近くを占める消費への関心が高まっています。このためマクロ経済指標では、7月米小売売上高(15日発表)が注目されます。 (以上、「1分で読める今週の米国株」) もっと知りたい!経済指標&金融政策 小売売上高、6月の振り返り 6月の小売売上高は、前年同月比+1.5%と底堅い数字でした。ただ全体としては、4月頃から裁量的品目の多い業種が苦戦している様子が窺えることに加え、前年同月比の推移をみると、小売売上高全体では徐々にペースが鈍化しています。長引くインフレや景気減速に対する警戒感から、消費者の購買意欲に影響が出ている可能性が懸念されます。なお、小売売上高統計は名目値で、売上高が増加して堅調に見える業種に関しても、支出額の増加がインフレによって押し上げられている可能性がある点には注意が必要です。 個別の項目で特筆すべきは3点です。第一に、飲食店が前年同月比+8.4%と高いことから、外食などのサービス消費が堅調であることです。第二に、コロナ禍明け以降弱含んでいた無店舗販売が復調しています。3日(木)に発表されたアマゾン・ドットコムの決算でもオンライン販売の好調さが確認されました。第三に、前年同月比でマイナスが続いていた電気製品がプラスに転換しています。 なお、先週10日(木)にNRF(全米小売業協会)はニュースリリースで、米国の個人消費支出は減速しつつあるとの見解を示しました。6月の傾向・変化が継続しているかが、7月小売売上高の注目点と考えられます。 もっと知りたい!決算発表 日本と比べると2週間ほど早く、今週から5-7月期決算発表が始まります。ホームセンター大手のホーム・デポ(15日)、ソフトウェア大手のシスコ・システムズ(16日)、小売大手のウォルマート(17日)のほか、半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズ(17日)など、小売以外の主要セクターでも決算発表が予定されていることが日本の企業決算との大きな違いといえるでしょう。また、市場の期待も高まっておりウォルマートの株価は先週、史上最高値を更新しました。今週は特に小売業に注目し、ホーム・デポとウォルマートを整理したいと考えます。 15日(火)のホーム・デポ 住宅関連の経済指標は改善傾向にあります。しかし、代表的な住宅ローン金利である30年固定金利は7%程度と高止まりしているうえ、中古住宅販売は在庫不足のため回復は緩慢です。2023年2-4月期の当社決算もマクロ環境と同様に軟調で、売上高で見て実績・見通しともに市場予想を下回りました。 一方、6月に行われたインベスターデーでは、特にプロ向けの中でも工程が複雑なプロジェクトで市場シェア拡大が続くとしており、長期の増収率目標は 3~4%と市場全体の成長率(一桁台前半)を上回る見込みとしています。当社では、住宅の資産価値が高水準であることや、修繕・改築ニーズがあること(現在の米既存住宅の 53%は築 40 年以上)などから環境は良好とみています。当社によれば、とりわけ当社顧客は自宅所有率は 80%で(米国平均では 66%)、所有する住宅価格の中央値は約 40 万 US ドル(米国の住宅価格中央値の 1.5 倍)、年間所得は約10万米ドル(米国の世帯収入の中央値の 1.3 倍)であるとしています。つまり、当社の顧客は平均的な米国人より購買力が高いと判断しているようです。 こうした当社見立てが実現するか、注目が集まります。今週は米住宅指標の発表も多く、22日(火)に予定される競合ロウズの決算発表もあり、米景気の先行きを見る上でも目が離せません。 17日(木)のウォルマート ウォルマートの2023年2-4月期決算は既存店増収率と一株当たり利益がともに市場予想を上振れました。食料雑貨の構成比拡大によって利益率には縮小圧力がかかっているものの、低価格を売りにシェアを拡大することができています。同社の5-7月期決算で注目したいのは4点です。 第一に、食料品などの低価格商品(特にプライベートブランド)を軸にシェアを高められているか、という点です。当社はEDLP(Every Day Low Price)戦略を継続しているほか、有料会員制のサービス、ウォルマートプラスの年会費を政府による生活保護受給者を対象に 98米ドルから 49米ドルへ引き下げることを発表しました。同サービスは、利用に応じたポイント付与、ガソリン値引き(ガロン当たり 0.10 US ドル)、定額制動画配信サービス「パラマウント プラス」、無料動画配信サービス「プルートTV」、食料雑貨の無料配送、オンラインショッピング時の無料配送、返品時の無料集荷といった特典が受けられます。米国では、政府からなんらかの生活保護を受けている人は 7,000 万人を超えており(フードスタンプの対象者は約 4,000 万人)、65 歳以上においては 9 割超が該当します。生活保護受給者を対象に会費を引き下げることで市場シェアを維持する狙いがあるほか、アマゾン・ドットコムへの対抗策ともみられます。短期間で大きな効果が発揮される可能性は低いものの、同社の低価格へのこだわりを示す施策として注目に値します。 第二に、デジタル化の進捗です。2023年6月の年次株主総会では、価格を自動で表示させるデジタルシェルフ、フルフィルメントセンター(受注、梱包、発送、受け渡し、代金回収、顧客のアフターサポート(CSセンター)までのバックヤード業務の一連のプロセス)の刷新、アパレル分野でのデジタルディスプレイとデジタルマネキンを通じた売り場改善などが言及されました。現在はいずれも投資段階とみられますが、消費が再度成長軌道に乗った際に利益率を高める原動力となりうるため、要注目です。 第三に、広告事業の成長性です。全世界の広告事業は2-4月期に前年同期比+30%超の成長を記録し、米国で展開する広告事業「ウォルマート コネクト」は同+40%近い成長となっています。広告事業は利益率が高く、Eコマース事業の収益性の向上にもつながるため、会社は今後もこの分野の強化に注力するとみられます。同事業は米国ウォルマートの既存店増収率に 2.7%ポイント寄与し、これはコロナ禍の2021年2-4月期以来の高い水準でした。 マクロの逆風が止まない中、上記のような戦略がどのような結果となっているか、小売業全体を見る上でも市場の注目が集まる決算です。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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08/10 09:30
【特集】米CPI発表直前!日本株への影響は?
6月までのCPI振り返り コロナ禍からの回復局面での人手不足に伴う賃金上昇圧力や米国政府による経済刺激策等で、インフレ圧力は強い状態が続いていましたが、徐々に伸び率鈍化の兆しが見え始めています。財政政策による後押しが弱まり、これまでの利上げ効果から景気が減速し、今後はインフレが減速するとみられますが、米国のタイトな労働市場が賃金上昇を支え、このことが米国の物価押し上げの一因となっていることもあり、その動向には留意が必要です。 (注)コア指数はエネルギー・食品を除く。直近値は2023年6月。(出所)労働省、リフィニティブより野村證券投資情報部作成 今回(7月)のCPI予想:ディスインフレ傾向は不変 今夜発表される7月米消費者物価(CPI)について、野村ではコアCPI上昇率は前月比+0.2%と予想しています。これは6月の同+0.158%からは上向きますが、2022年12月~2023年5月のレンジ(+0.4~0.5%)を大きく下回ります。これまで指摘してきた3つのディスインフレ(インフレ減速)要因、すなわち1) 中古車価格、2) 借家賃料/持家帰属家賃、3) 観光関連 (例えば、宿泊費や航空運賃) の項目、の影響が継続していることが主因と考えます。この予想通りとなれば、7月の利上げが現行の引き締め局面で最後の利上げになる(との野村の金融政策見通しと整合的です。 日本株の「グロース vs バリュー」選好に変化も 野村では、米国のインフレは株式市場の「バリュー vs グロース」選好を左右すると考えます。米コアCPIが前月比+0.2%以下に収まれば、グロース優位に作用すると考えられます。野村では、現時点でグロースを日本株のセクター選好の中心に据えていますが、これはインフレ率が軟化するというシナリオを前提としています。しかし、仮に米インフレ指標が予想外の上振れ傾向を示せば、バリュー寄りの物色が強まることがあり得ます。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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08/04 12:18
【米国株決算速報】アップル(AAPL):iPhone売上高が市場予想をやや下回る、株価は-2.25%(時間外取引)
決算概要 EPS実績は市場予想を上回った 米国時間8月3日引け後に、モバイル端末の製造販売とクラウドサービス事業を行うアップル(AAPL US)が2023年4-6月期(2023.9期第3四半期)決算を発表しました。売上高は市場予想を0.1%上回り、EPSは市場予想を5.5%上回りました。 会社は2023年7-9月期について、4-6月期と同様の傾向となるとコメントしました。 iPhone売上高が市場予想をやや下回る 製品別売上高では、iPhoneが市場予想をやや下回り、会社はインドなどの新興国での販売が堅調だった一方で、為替が悪影響を与えたことをコメントしました。 サービス(広告、保証、クラウド、app、決済等)の売上高は、製品利用者数が増加し、サブスクリプション収入が増えたことで四半期として過去最高となり、市場予想を上回りました。 ストリーミング動画配信のApple TV+は、サッカーのリオネル・メッシ選手がインテル・マイアミに加入したことで、2022年に放映権を獲得したMLS(メジャーリーグサッカー)の加入者が世界中で増加しました。 売上高とEPSの推移 株価は下落 アップルの株価は、前日比0.73%安で引けた後、決算発表を受けて時間外取引では、終値比2.25%安の186.86ドルで推移しています(NY時間18:46)。iPhoneの売上高が市場予想をやや下回ったことに反応していると考えられます。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2023年8月3日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は野村證券投資情報部作成実績で、直近値は2023年4-6月期(2023/6)。灰色はリフィニティブ集計による市場予想平均。2023年7-9月期以降の予想は2023年8月2日時点。(出所)会社発表、リフィニティブより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・竹綱 宏行) 【米国株決算速報】アップル(AAPL):iPhoneが新興国で好調、株価は+4.69% 野村の米国株決算リンク集:2023年1-3月期・4-6月期決算 野村の米国株決算リンク集:2022年1-3月期・4-6月期・7-9月期・10-12月期決算 野村の米国株決算リンク集:2021年10-12月期 ご投資にあたっての注意点
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08/04 11:44
【米国株決算速報】アマゾン・ドットコム(AMZN):生成AI需要拡大でクラウド回復の兆し、株価は+10.18%
決算概要 EPS実績は市場予想を上回った 米国時間8月3日引け後に、イーコマースやメディアサービス、クラウド事業のAWSなどを運営するアマゾン・ドットコム(AMZN US)が2023年4-6月期(2023.12期第2四半期)決算を発表しました。 売上高は市場予想を2.2%上回り、EPSは市場予想を85.7%上回りました。 コスト抑制や出資先の新興EVメーカーのリビアン・オートモーティブの株式評価が前年同期の評価損から評価益に転じたことにより、EPSは前年同期比で大幅に上昇しました。2023年7-9月期売上高見通しは市場予想を上回りました。 生成AI需要拡大、クラウド事業回復の兆し クラウド事業のAWSの営業利益は生成AIの需要拡大もあり、前年同期比で6%減と前期の同21%減から減益率が縮小し、回復の兆しが示されました。 売上高とEPSの推移 株価は上昇 アマゾン・ドットコムの株価は、前日比0.55%高で引けた後、決算発表を受けて時間外取引では、終値比10.18%高の142.03ドルで推移しています(NY時間18:21)。 会社の2023年7-9月期の売上高見通しが市場予想を上回り、生成AIの需要拡大やコスト抑制が好感されたためと考えられます。 株価推移 (6ヶ月日足) (注1)EPS は米国会計基準の希薄化後一株当たり利益。(注2)株価推移:データは日次で、直近値は2023年8月3日時点。(注3)売上高とEPSの推移:赤色は実績で、直近値は2023年4-6月期(2023/6)。売上高の2023年7-9月期の白丸は会社見通し中間値。2023年1-3月期以前のEPSは保有するリビアン・オートモーティブ株の評価損益を除いた値。灰色はリフィニティブ集計による市場予想平均。2023年7-9月期以降の予想は2023年8月2日時点。 (出所)会社発表、リフィニティブより野村證券投資情報部作成 (文責:野村證券 投資情報部・岩崎 晴弥) 【米国株決算速報】アマゾン・ドットコム(AMZN):クラウド事業が減速、株価は1.91%安 野村の米国株決算リンク集:2023年1-3月期・4-6月期決算 野村の米国株決算リンク集:2022年1-3月期・4-6月期・7-9月期・10-12月期決算 野村の米国株決算リンク集:2021年10-12月期 ご投資にあたっての注意点
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07/31 20:00
【1分で読める今週の米国株】アマゾン&アップル…4-6月決算発表後半戦の見どころは(7/31)
1分で読める今週の米国株 7月21日~7月28日の振り返り 企業決算は概ね堅調に推移し、7月FOMC(米連邦公開市場委員会)も大きなサプライズなく無事通過しました。NYダウは26日(水)までに13連騰(1987年1月以来36年半ぶりの連騰記録)となりましたが、27日(木)には前日比で下落しました。 今週のPoint1. 米10年債利回りは一時4%に到達 27日(水)に発表された4ー6月期実質GDP成長率(速報値)は、前期比年率+2.4%(市場予想:同+1.8%)、6月耐久財受注が前月比+4.7%(市場予想:同+1.5%)といずれも市場予想を上回る良好な結果が確認されました。米国景気の堅調さが示されたことで、市場ではFRB(米連邦準備理事会)による利上げが継続する可能性が意識され、米10年国債利回り(長期金利)が一時4%を上回る水準まで上昇しました。米長期金利4%超で推移した2022年秋口は米国株の調整局面とも重なるため、市場の注目が集まっています。 今週のPoint2. 4日(金)の雇用統計に注目 米長期金利を考える上で、1日(火)の7月のISM製造業景気指数、3日(木)のISMサービス業景気指数に加え、4日(金)の7月雇用統計は重要です。個人消費を支える家計の「過剰貯蓄」は、雇用の堅調さを背景にしていると考えられ、改めて雇用への関心が高まっています。7月非農業部門雇用者数の市場予想は前月比+19.0万人(6月同+20.9万人)と、小幅鈍化するとはいえ堅調な推移が予想されています。 今週のPoint3.3日(木)のアマゾン、アップル…4-6月期決算発表も終盤戦 4-6月期決算発表の山場となるのは、アマゾン・ドットコム(AMZN)とアップル(AAPL)が発表を予定する3日(木)でしょう。7月28日(金)までにS&P500指数構成企業の半数超が決算を終えており、ポジティブサプライズ比率は純利益で見れば78%と直近4四半期平均を上回っています。 純利益の上振れはEPS(一株当たり利益)と株価の推し上げ材料となるため、この環境が続くか確認をしたいと考えます。 (注1)ポジティブサプライズ比率は、S&P 500 企業のうち決算実績がアナリスト予想平均を上回った企業の比率。2023年4-6月期には、2023年3-5月期決算、2023年5-7月期決算企業も含む。(注2)直近4四半期平均とは2022年4-6月期~2023年1-3月期の平均。長期平均とは、売上高は2002年以降、純利益は1994年以降の平均。(注3)リフィニティブによる2023年7月28日時点(売上高について253社、純利益について254社)の集計。(出所)リフィニティブより野村證券投資情報部作成 (以上、「1分で読める今週の米国株」) もっと知りたい!経済指標&金融政策 米国家計の「過剰貯蓄」後ずれ、米金利上昇の足音か? 米国の長期金利上昇は現時点ではメインシナリオではないものの、実現すれば米国株への重石となるため注視が必要です。 市場では、注目を集める経済の堅調さは家計の「過剰貯蓄」によるところが大きいとされています。野村の小清水シニア・ストラテジストによれば、過剰貯蓄は2024年前半には解消されると試算されていますが、後ずれ傾向となっています(昨年末時点では、2023年半ばに解消と試算)。背景には、実質雇用者報酬や政府支給・減税があり、今年に入って10州以上が地方減税を行っていることが可処分所得の増加につながっています。 実質雇用者報酬の上昇は、堅調な雇用環境による名目賃金の上昇と、インフレ率の鈍化によって引き起こされています。エネルギー価格高騰や供給制約の多くが解消され、インフレ減速に大きく貢献していると推測されます。雇用が良好な状態が続く場合、来年のFRBによる利下げ期待が消滅するため、米長期金利が4.5%前後まで上昇するリスクがあると試算されます(小清水シニア・ストラテジスト)。 もっとも、実際には雇用の伸びは緩やかながら減速しつつあります。年初には雇用の伸びは3ヶ月平均で30万人台前半でしたが、最新6月分では3ヶ月平均で20万人台前半です。半年で10万人程度の減速ペースであり、2024年前半までには、雇用の伸びは労働力人口のコロナ禍前平均である月15万人を割り込み、失業率が上昇し始めていると考えられます。来年の利下げ期待が全て解消することはあくまでもリスクシナリオの位置づけであり、雇用の堅調が持続的との見方が強まり金利上昇・株価下落となる場合には、押し目買いの好機とも考えらえます。 もっと知りたい!決算発表 先週発表された米国株決算はおおむね堅調で、当記事シリーズで取り上げたマイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)、メタ・プラットフォームズ(FB)、ビザ(V)のEPSはいずれも市場予想を上回りました。株価の反応が大きくプラスとなったのは広告2社(アルファベット、メタ・プラットフォームズ)で、景気後退による広告減少などが懸念材料だった同業界にとって、広告収入の持ち直しは明るい兆しとなりました。 今週の決算発表で注目となるのは、3日(木)に発表されるアマゾン・ドットコム(AMZN)とアップル(AAPL)です。 アマゾン・ドットコム 経済統計やクレジットカード決済大手の決算を確認する限り、米消費は堅調といえます。また、6月の米小売売上高で内訳をみるとオンライン販売(統計の「無店舗小売」)が、他の業態に比べて堅調であることが見て取れます。 (注)すべてを網羅しているわけではない。 (出所)米商務省、リフィニティブより野村證券投資情報部作成 また、同社の利益のけん引役であるクラウドサービス、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)についても、競合となるマイクロソフト(MSFT)のAzure、アルファベット(GOOGL)のGCP(グーグル・クラウド・プラットフォーム)いずれも売上高で市場予想を上回っていることから、業界環境は良好であると考えられます。 アマゾン・ドットコムはオンライン販売、IaaS(インフラとして利用されるクラウドサービス)いずれにおいても最大シェアであることから、投資のインプリケーション(示唆情報)を確認したいと考えます。 アップル 同社が取り扱う商材は、前述の6月米国売上高では「電気製品」に該当します。「電気製品」は、5月までは前年同期比マイナスとなっていましたが、6月にプラスに転じています。米消費は財よりサービスに偏重した状態が続いていますが、米国の財消費の動向を見るうえでも同社決算が注目されます。 また、もう一つの重要市場である中国も注目に値します。6月の中国小売売上高統計によると、通信機器(スマホ等)は前年同月比+6.6%と堅調でした。好調であった5月の反動減は見られず、中国における通信機器の販売が底堅くなってきたとみられます。野村のアナリストは「昨年は6月の618商戦(注:中国のECサイトが開催したネット通販セール)に向けたスマホ作り込みが販売不振で過剰流通在庫となり、7月以降の生産減につながった。今年は低い期待値に沿った生産だった分、今後流通在庫調整が起こるリスクは低いだろう」とコメントしています。5月の中国携帯電話出荷台数(セルイン、中華人民共和国工業情報化部基準)に基づけば、ファーウェイのスマホが復権しつつあり、iPhoneの出荷水準も好調だった5月比でも堅調でした。野村では「3月の値下げで、中国での販売が復調している可能性がある」としています。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点