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09/27 15:00農食分野における電子商取引(EC)ビジネスの要諦
執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネス・コンサルティング部 シニア・アソシエイト 津田 瞳美(2025年9月24日) はじめに インターネットの普及は、人々の生活や商取引活動を大きく変化させ、現在ではなくてはならないインフラとなっている。今回は国内の農食分野における電子商取引(以下、「EC」と記載)に焦点を当てる。 インターネット上で商品やサービスを取引するEC市場は急速に拡大している。動画やゲームなどデジタルコンテンツの提供、宿泊予約、オンライン学習といったサービスの提供、そして商品の売買など、あらゆる分野でECは伸長している。産業やセクター、業種などの各分野におけるECの普及度合は、「EC化率」という指標で測ることができる。自社ECの分析にもEC化率が活用されるなど、EC市場における重要指標の1つとなっている。多くの分野でEC化率が高まる一方、農食分野のEC化率は相対的に低い。 本稿では、農食分野でEC化率が低い要因を探るとともに、先進事例を通して、当分野におけるECビジネスの成功要因を分析する。 1. 国内EC市場の現状と農食分野におけるECビジネスの課題 現在、我が国のEC市場はAmazonや楽天市場を筆頭に、様々なプラットフォームやオンラインショップが軒を連ねている。国内における物販系分野のBtoC-EC市場規模は2023年に14兆6,769億円に達し、EC化率は9.4%である[1]。EC化率の高い分野は書籍、映像・音楽ソフトで53.5%、次いで生活家電、AV機器、PC・周辺機器が42.9%である。それに対して農食分野のEC化率は4.3%に留まり、BtoC-EC市場規模は2兆9,299億円である。その中では、ミネラルウォーター、お茶、炭酸水など重量がある飲料や、ストックできる冷凍牛丼の具などの売上が上位に位置している[2]。 全体平均と比較しても農食分野のEC化率は著しく低い。その要因として、農食分野のEコマース参入には、例えば、利便性や鮮度などの「顧客提供価値」、生産や梱包、保管・配送、賞味期限などの「コスト・管理」の観点からみても、他分野にはない課題が存在している(図表1)。 図表1 農食分野のECビジネスにおける主な課題 (出所)野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部 上記に加えてプラットフォーム利用の場合は、手数料を踏まえた価格設定が必要となる。それぞれの段階で課題を乗り越えて、再生産可能な利益を出すためには一定の利幅が必要である。さらに、認知度向上やスーパーマーケットなどで取扱う商品と差別化をするためには、EC上でのプロモーションは必須であり、そのコストを考えた時、高付加価値化(高付加価値商品の開発)の視点が不可欠となる。 その際、農食分野のECが抱える各課題の解消に資する商品の開発・選定を前提とし、これまでとは異なる視点で消費者へ訴求する高付加価値商品の開発が求められよう。 2. 高付加価値食品のEC成功事例と戦略 消費者へ訴求する高付加価値商品の開発の要諦は何か。様々な考えがあるが、議論の余地がないポイントの一つはブランド化(ブランド開発)であろう。筆者が考えるブランド化の基本要素は次の4つである。製品開発や製造者の想い、ストーリー(背景)を伝えることにより、その製品は消費者にとって価値のある体験へと変化する。 ① 使用している原材料や生産者、製造者が開発にたどり着くまでのストーリー② 製造工程のストーリー③ ①②を反映したこだわりの製品が消費者に届くまでのストーリー④ ①②③のストーリーを明確に消費者へ訴求できる商品の写真や説明 現在、食に関するオンライン市場では、比較的高価格帯の商品やブランドが目立つ。いずれも上記①~④をクリアしているブランドが多い印象である。ここでしか取れない原料やストーリーを含めて特徴のある原産地、その原料が保有する機能やサービス、古来より伝わる製造工程など、生産者や製造者のこだわりなどの特徴的なストーリー(メッセージ)がたっぷりと詰まった商品などだ。それらに加え、少し贅沢をしたい日の“ご褒美”、時間を短縮できる“手間の減少”、十分な“栄養の摂取”など、生活の質の向上に資する付加価値の高い商品が多く見受けられる。 また、食品は、手に取って鮮度や品質を直接確認したいという消費者も多く、特に生鮮食品はその傾向が顕著である。生鮮食品にはどうしても旬、産地のブランドや製造方法の特徴などが強く影響する。そのため、筆者は、上記のようにブランドストーリーを明確に設定した付加価値のある製品を唯一無二で提供することを強く推奨する。食品小売店で手に取る商品の背景にあるこだわりや魅力を伝えることができるのはEコマースの最大のメリットでもある。 食品EC分野で、このような高付加価値な商品を取り扱う主な事業者を図表2にまとめた。それぞれが明確なコンセプトを持ち、原料や世界観など他にない商品を開発し、高付加価値な商品として販売されている。例えば、ミツカンの「ZENB」であれば、「開発のためにあらゆる植物を試した結果、『黄えんどう豆』に辿り着いた」というストーリーの記載がある。これには、健康志向で主食を控える人が増える中、ごはんや麺を我慢せず美味しく食べ続けることで健康になれる主食を作りたいという開発者の想いがある[3]。 図表2 食品EC分野で高付加価値な商品を取り扱う主な事業者 (出所)各社HPより、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 その他、特徴的な商品としては、原料にヒュウガトウキ(日本山ニンジン)を使った製品などもある。いずれの商品もブランドの世界観、ストーリーが確立しており、コンセプトが明確である。そして各商品に共通する戦略は、他にない唯一無二のブランドとして尖った商品開発、ブランディングの実践であろう。 このような商品開発やブランディングの実践に向けて、商品開発の段階で、ターゲットとなりうるセグメントの消費者にヒアリングしながら改良を行うことが望ましい。その段階で、響く訴求ポイントも明確になるとなおよい。Eコマース展開時には、自社ECであればMETA広告やLINE広告、TikTokなど対象に合わせたプロモーションの場で検証を重ねる。プラットフォームでは、その中での動画広告やキーワード広告の運用に注力する。プロモーションにおいては、訴求に合わせた写真や動画、キャッチコピーなど、様々な仮説を立てた上で、まずは反応のよい広告を探り検証を進め、マーケティングの精度を高める。高い反応率のプロモーションが確定した後も、継続すれば反応は落ちてくるため、定期的に見せ方、伝え方を変えていく必要がある。 3. 農食分野のEC参入を後押しするサービスと今後の有望市場 商品開発後は、新規顧客を獲得し、優良顧客からロイヤルカスタマーへと「育成」する仕組みづくりが必要となる。そのためのプロモーションや世界観づくりに最適なのは自社ECサイトである。自社ECサイト構築のサービスとしての筆頭は、世界シェアNo.1のShopifyである。ノーコードで本格的なネットショップを開設・運用できる。 他にも国内サービスであれば、BASE、STORESなどがある。EC市場は動きが速いため、各タイミングで、よりよいサービスを選択するのがよい。 自社ECサイトである程度の認知を獲得した後に、Amazonや楽天市場などの大手プラットフォームでの販売や、ギフトになりうる商品であればLINEギフトなどへの応用も可能だ。ギフト全体の国内市場規模は2024年に11兆円に及び、そのなかでもソーシャルギフトの認知と市場の拡大が見込まれる。2023年にLINEギフトで贈られた贈答品ランキングでは、女性向け、男性向けともに、上位をスイーツやグルメが占める。 また、現在、筆者が最も注目している市場は、メタバース市場である。メタバースとは、インターネット上に構築された3次元の仮想空間のことで、利用者は自身に代わるアバターを操作し、他者との交流やメタバース上で商品を購入するなど、現実世界と連動した経済活動も可能となる。さらにBtoBでの仮想的なワークスペースとしても活用が期待されている。総務省「令和7年版 情報通信白書」によると、世界のメタバース市場は2024年の744億ドルからCAGR(年平均成長率)37.7%で伸長し、2030年には5,078億ドルまで拡大すると予測されている。その内訳はメタバース内でのEC分野が最も大きい。次いでゲーム、ヘルス&フィットネス分野となる。日本でも2024年に2,750億円(前年度比47.6%増)、2028年には2兆程度までの急速な拡大が見込まれている。 おわりに コロナ禍による後押しもあり加速したEC市場の拡大は、コロナ禍の収束により2024年はいったんリアル回帰が起こったものの、2025年は再び拡大傾向にある。農食分野のECビジネスへの参入や売上高の拡大には様々なハードルがあるが、農食分野の商品は継続購入割合も高く、解決を見越した商品やブランド開発で乗り越えられる可能性は十分にある。また、その先には国内だけでなく海外、ソーシャルギフト市場、メタバース市場など、今後大きく拡大しうる市場が拡がっている。 それらの市場開拓を見据えた中長期のビジョンを持ちながらも、足元の農食分野のECが抱える課題解決は必須となる。顧客の需要や市場の変化を捉えながら、商品やブランドそのものの改良や検証、再構築など、日々の地道な活動を積み重ねていくことが肝要となる。 [1] 経済産業省「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」 [2] 株式会社Nint 「2024年のECトレンド振り返り&2025年の売れる商品予測【食品・ファッション・コスメ】」(2025年1月16日公開)https://www.nint.jp/blog/2024-2025trend/ [3] 株式会社ミツカンHP「ZENBについて」https://zenb.jp/pages/about ディスクレイマー 本資料は、ご参考のために野村證券株式会社が独自に作成したものです。本資料に関する事項について貴社が意思決定を行う場合には、事前に貴社の弁護士、会計士、税理士等にご確認いただきますようお願い申し上げます。本資料は、新聞その他の情報メディアによる報道、民間調査機関等による各種刊行物、インターネットホームページ、有価証券報告書及びプレスリリース等の情報に基づいて作成しておりますが、野村證券株式会社はそれらの情報を、独自の検証を行うことなく、そのまま利用しており、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。また、本資料のいかなる部分も一切の権利は野村證券株式会社に属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。 当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。 国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。 外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
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09/27 09:00【オピニオン】AIデータセンターの着工でAIブームは継続へ
※画像はイメージです。 AIブーム(生成AIや機械学習の活用拡大)は、関連企業の受注状況からは、当面は継続する可能性が高いと考えられます。 下図は、AIブームのフェーズと代表的な米AI関連企業の株価の推移を示しています。2022年には、コロナ禍によるデジタル活用の拡大とブロックチェーン技術を中心とした「Web3」の人気が一段落したことで、テクノロジー株は下落しました。 AIブームのフェーズと代表的な米AI関連企業の株価の推移 (注)AIブームは、本稿では2022年11月のChatGPT発表以降の生成AIや機械学習の活用拡大を指す。米AI関連企業や出来事は全てを網羅している訳ではない。データは日次で、直近値は2025年9月19日時点。S&P500は米国株式市場のベンチマークとして記載。 (出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 転機となったのは、2022年11月にOpenAIがChatGPTを発表し、2023年1月にOpenAIとマイクロソフトが提携を強化したことです。これがAIブームの黎明期と位置付けられます。ChatGPTは革新的でしたが、有料版の利用者は限定的であったため、一部の市場参加者は将来の成長継続に懐疑的な見方を示していました。 一方、マイクロソフトはビジネスソフトにアシスタント機能「Copilot」を導入するとともにクラウドサービスAzureにAI機能を加えました。また、メタ・プラットフォームズはAIモデル「Llama(ラマ)」をSNSや広告に活用しました。アマゾン・ドットコムはクラウドサービスAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)にAI機能を加え、アルファベットはAIモデル・ツール「Gemini」をGoogle Cloudに組み込みました。これらAI・クラウド大手を中心に、AI関連の設備投資が加速し、AIの活用も急速に進展しました(流行期)。 2025年1月に中国のDeepSeekが発表した推論モデル「R1」を用いたアプリが米国のダウンロードランキングで上位となりました。推論モデルの普及によって、AIの必要演算量が大幅に減少すると予想されたため、関連株は一時下落しました(幻滅期)。その後、実際には推論モデルの活用で演算量が増加すると判明し、株価は回復しました(回復期)。 現在では、2025年1月に発表された米国での2029年までに5,000億ドル規模のAIデータセンター・プロジェクト「スターゲート」、および、これに触発された世界中での大規模AIデータセンター・プロジェクトが、関連企業の業績の追い風となっています。 データセンターとネットワーク間や、サーバー間の通信に使用されるOS(オペレーティング・システム)やイーサネットスイッチを提供するアリスタネットワークスの製品・サービスの繰延収益(顧客と契約済で今後計上される売上高)は、2025年3月末比で同年6月末に約6割増加しました。「スターゲート」の初期出資者であるオラクルの2025年8月末の残存履行義務は、同年5月末比で約3.3倍に急増し、今後更に増加する見込みです。AI関連製品の受注残にあたる数値が増加していることは、AIデータセンターが計画から着工段階へ移行し、需要が供給能力を上回っていることを示唆しています。AI活用とその設備投資の拡大を背景に、AIブームはもうしばらく継続しそうです。 ご投資にあたっての注意点
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09/27 07:00【来週の予定】自民党総裁選、短観、FRB議長選任、米雇用統計
日本では、10月4日(土)の自民党総裁選挙の投開票に向けて候補者による討論会や演説会が開催されています。総裁選の結果は株価や金利、為替などに影響を与える可能性があり、要注目です。また、10月1日(水)に日銀短観(9月調査)が発表されます。7月23日(水)に日米が関税交渉に合意し、9月4日(木)にトランプ大統領が自動車関税率を15%に引き下げる大統領令に署名するなど、ここ数ヶ月で米国の関税政策を巡る環境は大きく変化しており、日銀短観ではその影響を確認したいと思います。 米国では、2026年5月のパウエルFRB議長の議長としての任期満了を控えて、次期FRB議長候補の1回目の面談を10月第1週までに終わらせる見込みです。ベッセント米財務長官は候補者10人程度と面談の上、最終候補者のリストをトランプ大統領に提出するとみられます。新議長の政策スタンス次第で今後の金融政策運営が大きく変わる可能性があります。また、今後の利下げペースを占う上では、9月30日(火)の9月シカゴ購買部協会PMI、9月消費者信頼感指数(コンファレンスボード)、10月1日(水)の9月ISM製造業景気指数、9月ADP全米雇用レポート、3日(金)の9月雇用統計、9月ISMサービス業景気指数などの重要指標にも注目です。 欧州では、10月1日(水)にユーロ圏の9月消費者物価指数(HICP)が発表されます。野村證券では、2025年後半にインフレ率が政策目標の+2%に到達する一方で実質GDP成長率が加速するとみており、25年6月でECBの利下げ局面は終了したと予想しています。 8月の経済指標の悪化を受けて景気減速懸念が強まった中国では、9月30日(火)に9月政府版及び9月RatingDog版の製造業及び非製造業(サービス業)PMIが発表されます。政府による過剰生産と低価格競争を是正する政策や、消費財下取り制度の効果が剥落することによる消費需要の反動減、公務員の会食を禁止する倹約令による飲食店売上の減速などが景況感を下押ししたと予想されます。 (野村證券投資情報部 坪川 一浩) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2025年9月26日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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09/26 16:32【野村の夕解説】日経平均株価は4営業日ぶり反落 399円安(9/26)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 26日の日経平均株価は、4営業日ぶりに反落となりました。寄り付き前には日本の9月東京都区部消費者物価指数(CPI)が発表され、生鮮食品を除くコアCPIは前年比+2.5%と前月から伸びが横ばいとなり市場予想を下回ったものの、株式相場への影響は限定的でした。日経平均株価の寄り付きは、25日の米利下げ観測の後退による米国株安を受け前日比120円安の45,634円となりました。直近で相場のけん引役となっていた値がさの半導体関連株や、業種別では非鉄金属、電気機器などが下落し相場の重石となり、終日軟調な動きが続きました。米10年国債利回りの上昇を受け、外国為替市場で円安米ドル高が進行したことが相場を下支えしたものの、日経平均株価の終値は前日比399円安の45,354円と安値引けとなりました。一方TOPIXは、不動産や食料品、建設業などの内需セクターが堅調となり、前日比+1.67ポイントの3,187ポイントとなり、4営業日続伸し最高値を更新しました。個別株では、アドバンテスト、ソフトバンクグループ、東京エレクトロンの終値はそれぞれ前日比-3.72%、同-3.75%、同-4.23%となり、3銘柄で日経平均株価を約420円押し下げました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 米国では8月の個人消費支出・所得統計が発表され、PCEコアデフレーターが注目されます。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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09/26 08:13【野村の朝解説】米政府閉鎖や金利上昇が懸念される(9/26)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 25日の米国株式市場で、主要3指数はそろって3営業日続落となりました。米国では暫定予算成立の見通しが立たず、10月1日以降の政府機関の一部閉鎖の可能性が高まっており、その場合の経済への悪影響が引き続き懸念されています。 2025年4-6月期米GDP確報値は個人消費を中心に改定値から上方修正され、市場予想を上回り、また週間新規失業保険申請件数(9/20の週)は市場予想を下回りました。これら堅調な経済指標を受け、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げの早期化期待が後退し金利が上昇したことも、株式市場の重しとなりました。 相場の注目点 来週の米国の経済指標では、雇用関連が注目されます。9月30日には8月JOLTS求人件数、10月1日には9月ADP雇用報告、3日には9月雇用統計の発表が予定されています。FRBは9月FOMCで6会合ぶりに利下げを再開し、パウエル議長は予防的な利下げであることを強調しました。一方で、雇用関連の実績データは軟調なものが多いことから、市場ではビハインド・ザ・カーブ(引き締め的な金融政策の長期化が景気悪化を招き、後追い的に利下げが行われること)に陥るか否かの観点から雇用関連の最新のデータへの関心が高くなっていると考えられます。 雇用以外では1日発表の9月ISM製造業景況感指数が注目されます。同指数は2025年3月の50.3以降、景気の拡大・後退の分水嶺である50を6ヶ月連続で下回っています。 (野村證券 投資情報部 竹綱 宏行) 注)データは日本時間2025年9月26日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、中心限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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09/25 16:32【野村の夕解説】日経平均株価 方向感に欠ける中で最高値更新(9/25)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は、目立った新材料に乏しく、終始方向感のない展開となりました。24日の米国株式市場で大手ハイテク株が軟調だった流れを受け、日経平均株価は小幅安で始まりました。寄り前に公表された日銀政策決定会合の議事要旨はおおむね想定通りで、市場への影響は限定的でした。もっとも、10時頃に外国為替市場で米ドル円が1ドル=148円50銭台から148円70銭台へと円安方向に振れると、株価は持ち直しました。その後は前日終値を挟んで方向感に欠ける動きが続き、終値は前日比124円高の45,754円となり、3営業日連続で最高値を更新しました。業種別では、インドネシア銅鉱山の操業停止長期化を背景に銅価格が急伸し、建値を引き上げたJX金属を含む非鉄金属セクターが前日比3.24%上昇しました。個別では、オリオンビールがプライム市場に新規上場し、公開価格(850円)の2.29倍となる1,950円で引けました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日米国にて、4-6月期実質GDP確報値と週間新規失業保険申請件数(9/20の週)と、8月耐久財受注と8月中古住宅販売件数が発表予定です。また、FRB理事や地区連銀総裁の講演等が相次ぎ、今後の利下げへの言及があるかに注目されます。 (野村證券投資情報部 笠原 光) ご投資にあたっての注意点
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09/25 08:13【野村の朝解説】高値警戒感が意識され、主要3指数は続落(9/25)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 24日の米国株式市場で、主要3指数はそろって続落となりました。主要な経済指標の発表がない中、ハイテク株を中心に高値警戒感から、利益確定売りに押される展開となりました。英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が、シカゴ連銀のグールズビー総裁が拙速な利下げに消極的な見解を示したと報じました。また、26日(金)にFRBが重要視する8月米PCE(個人消費支出)デフレーターの発表を控えていることなどから、投資家が様子見姿勢を強めた可能性が考えられます。 相場の注目点 日本株が足元で騰勢を強めており、日経平均は初の4万6,000円台が視野に入ってきました。10月4日には自民党総裁選が予定されています。それに向けて候補者による討論会などが行われており、新政権下での経済対策への期待が日本株の追い風となっています。また、資本コストや株価を意識し、株主還元を強化する上場企業が増えていることも株式市場の支援材料です。本日の東京市場では、急ピッチな上昇により高値警戒感が強まっているほか、昨晩の米国株式市場でハイテク株が軟調だったことなどが、相場の重石となる可能性があります。一方、26日は3月期決算企業の中間配当の権利付き最終売買日であり、配当権利取りを狙った買いが株価を下支えする展開も期待されます。 本日、日本では7月開催の日銀金融政策決定会合の議事要旨が公表されるほか、8月全国スーパーマーケット売上高や8月全国・東京地区百貨店売上高といった消費関連統計が発表されます。米国ではグールズビー総裁やNY連銀のウィリアムズ総裁などが講演を行う予定です。FRB高官の今後の政策姿勢に関する発言が注目されます。そのほか、2025年4-6月期米実質GDPの確報値、8月米耐久財受注、8月米中古住宅販売件数などが発表されます。 (野村證券 投資情報部 岡本 佳佑) 注)データは日本時間2025年9月25日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、中心限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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09/24 16:16【野村の夕解説】日経平均136円高 米国の巨額AI関連投資を好感(9/24)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 24日の日経平均株価は、米国でAI関連の巨額投資が相次いで発表されたことを受けて、AI・データセンター関連企業がけん引役となって上昇しました。23日の米国株市場で、パウエルFRB議長が今後の利下げに慎重な姿勢を示し、また上昇が続く米国株に警鐘を鳴らしたこと受けて主要3指数が下落しました。これを受けて、24日の日経平均株価は前場に、一時前営業日比288円安の45,205円となりました。しかし、22日に発表されたエヌビディアによる巨額のAIインフラ投資や、23日に米OpenAIがスターゲート計画の一環として巨額のデータセンター投資計画を発表したことが好感され、ソフトバンクグループやフジクラなどAI・データセンター関連株が上昇し、日経平均株価は下げ幅を縮小しました。為替市場で米ドル円が小幅ながら円安方向に推移したことも下支えとなり、午後に入って自民党総裁選候補者討論会が行われる中で上昇に転じた日経平均株価は、引けにかけて上げ幅を広げ、終値は前日比136円高の45,630円となりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 米国で、24日に8月新築住宅販売件数、25日に8月中古住宅販売件数が発表されます。住宅ローン金利が低下傾向にある中、米国住宅市場に回復の兆しがみられるか、注目されます。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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09/24 08:00【野村の朝解説】米国株は大型ハイテク銘柄中心に反落(9/24)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 22日の米国株式市場は半導体大手エヌビディアがOpenAIに最大1,000億ドル投資するとの報道を受けて続伸し、S&P500は終値ベースで今年28回目の最高値更新となりました。ただし、23日には主要3指数は揃って反落しました。米国債市場では長期債中心に金利が低下したものの、米ドルは総じて横ばい圏で小動きにとどまっているなど、景気や金融政策見通しが大きく変化した様子はみられず、米国株の下落は連日の最高値更新に対する反動の面が大きいとみられます。 相場の注目点 日本では10月4日の投開票日に向けて、自民党総裁選挙の火ぶたが切って落とされました。各候補の政策に対して注目が集まっていますが、誰が次期総裁となっても自公連立では少数与党であることから、政策を実現するためには連立の組み換え、あるいは野党の協力が必要です。結果として財政政策は拡張方向の圧力がかかると想定されます。日銀によるETF(上場投資信託)等の売却決定を受けて、市場では金融緩和政策の正常化観測が一段と高まっています。足元の日本株の上昇は業績見通しの改善を伴っていることから、仮に年内中に追加利上げ実施との観測が高まったとしても、株価の調整につながるリスクは限定的だとみられます。 FRBは予想通り9月FOMCで利下げを行いました。ただし、インフレ率が高止まりしていることから、FOMC内では利下げに対して慎重な見方も少なくありません。来週にかけて月末月初の重要指標の発表が予定されています。最大の注目点は、3日(金)発表の9月雇用統計です。直近2ヶ月の同指標は雇用増加ペースの大幅な減速を示したことが、FRBの利下げ再開の主因となりました。 (野村證券 投資情報部 尾畑 秀一) 注)データは日本時間2025年9月24日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、中心限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点