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【オピニオン】NATO防衛費増額合意、欧州防衛産業への波及効果

※画像はイメージです。 NATO(北大西洋条約機構)は、2025年6月24-25日の首脳会議で加盟国が35年までに防衛費を名目GDP比5%に引き上げることで合意しました。5%の内訳は、兵器購入などの中核的分野が名目GDP比3.5%、軍事関連インフラおよびサイバーセキュリティー関連が同1.5%で、従来よりも兵器や軍事システムの近代化のための比率を高くしています。 背景には、NATOの防衛費の内訳が、金額ベースで米国は約3分の2を占め、対GDP比で見ても欧州主要国やカナダが米国より低いことが挙げられます。ウクライナ紛争や米トランプ政権の意向などにより、自国周辺地域の防衛を強化する必要性が従来よりも高まったことも要因です。 各国の防衛費 (注)中国、ロシア、日本は防衛省による2022年時点の数値。それ以外はNATOによる2024年の推計値。NATOは為替についてはIMF(国際通貨基金)、GDPについてはOECD(経済開発協力機構)の数値から試算。防衛省によれば、中国の数値は上記の公表予算の数値より実際には著しく大きい。国旗は防衛費の金額が大きい3ヶ国を強調。(出所)NATOより野村證券投資情報部作成 これに先立つ24年3月、EU(欧州連合)の執行機関である欧州委員会は、欧州独自の防衛力を拡充するべく、「欧州防衛産業戦略」を公表しました。そして翌25年3月に、EUは特別首脳会議で「欧州再軍備計画」を全会一致で承認し、防衛強化のための総額8,000億ユーロの計画を公表しました。内訳は以下の通りです。 ① 防衛費をEUの財政ルールの対象から除外し、今後4年間で6,500億ユーロ拡大② 最大1,500億ユーロのEUから加盟国への融資「欧州の安全保障行動(SAFE)」 (安全保障・防衛への支出増加に用途を限定し、EUおよびウクライナからの調達を義務付ける条項付き) ドイツでは主要政党が防衛関連の財政支出を拡大することで合意し、25年3月に必要となる憲法改正が成立しました。欧州では拡張的な財政政策が計画通り実施された場合、名目成長率やインフレ率が従来よりも高くなることが想定されます。 欧州株式市場では、一部の防衛関連株が25年初来で上昇しました。EU域内での防衛関連投資の拡大により、従来に比べて関連企業の業績が向上すると考えられたためです。一方で、これらの企業の向こう1年間の予想1株利益を用いた予想PER(株価収益率)の水準は高く、株価は中長期的な業績の拡大をある程度織り込んでいると言えそうです。 戦車や弾薬、防衛システムなどを手掛ける独ラインメタルの売上高は、24年度から29年度にかけて約3.5倍に、同じく純利益は約6倍になると市場では予想されています。防衛関連企業の業績は、今後の各国の防衛費増額の進捗に左右されると考えられます。 独ラインメタルの売上高・純利益 (注)予想はLSEGによる2025年7月11日時点の市場予想平均。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点

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