新着
466件
-
12/17 08:27
【野村の朝解説】ナスダックは最高値を更新、ダウは続落(12/17)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 16日の米国株式市場は高安まちまちとなりました。NYダウは朝方に上昇する場面もみられましたが、週内にFOMCを控えるなかで方向感は乏しく、前週末の終値近辺でのもみ合い推移となりました。一方、S&P500は3営業日ぶりに反発し、ナスダック総合指数は11日に付けた史上最高値を更新しました。 この日発表された12月のNY連銀製造業景気指数や同月の製造業PMI速報値は、トランプ次期政権の関税政策への警戒感などもありいずれも悪化しました。もっとも、米国ではサービス業を中心に景況感が堅調であり、同月のサービス業PMI速報値は2021年10月以来の高水準を記録しました。25年以降の利下げペース減速が意識される中、米10年国債利回りは4.4%台に上昇し、ドル円は154円台を回復しました。 相場の注目点 米国では今晩からFOMCが開催されますが(17-18日)、市場はすでに0.25%ポイントの利下げをほぼ織り込んだ状況です。トランプ次期政権の政策を巡り不透明感が高まるなか、足元では25年以降にいったん利下げを打ち止めとの見方も浮上しており、今回の焦点はパウエルFRB議長の記者会見に加えて、FOMC参加者の政策金利見通し(ドット・チャート)です。25年の利下げ幅については、9月FOMC時点で1.0%ポイントと想定されていましたが、今回のFOMCで見通しは上方修正される公算が大きいとみられます。米国株式市場では、米長期金利の上昇が株価の重石となる一方で、米経済の軟着陸期待が支えとなってきましたが、長期金利の上昇が続くとこれまでの上昇にブレーキがかかる可能性もあり、先行きの利下げペースについて、どのような見解が示されるのか注目されます。 (野村證券 投資情報部 引網 喬子) (注)データは日本時間2024年12月17日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
-
12/16 18:00
【週間ランキング】日本株の値上がり/値下がり銘柄は?(12月第2週)
※画像はイメージです。 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(上位) 2024年12月第2週(2024年12月6日~12月13日) 2024年12月月間(2024年11月29日~12月13日) 2024年年間(2023年12月29日~2024年12月13日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2024年12月13日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(下位) 2024年12月第2週(2024年12月6日~12月13日) 2024年12月月間(2024年11月29日~12月13日) 2024年年間(2023年12月29日~2024年12月13日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2024年12月13日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 <参考>今週の日本株式市場パフォーマンス 主要指数 TOPIX: 東証33業種 (注)業種分類は東証33業種ベース。直近値は2024年12月13日時点。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
-
12/16 16:23
【野村の夕解説】日米中銀の会合を前に上値は重く、日経平均は12円安(12/16)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は前週末比80円高の39,551円で取引を開始しました。米国で12日(木)引け後に好決算を発表したブロードコムを含む、主要半導体企業で構成されるフィラデルフィア半導体株指数が13日(金)に大幅上昇しました。これを受けて、国内半導体関連銘柄が上昇し、日経平均株価を押し上げ、一時上げ幅は161円まで拡がりました。 外国為替市場では、日銀の追加利上げ観測の後退を受けて円安米ドル高が進んでおり、本日11:30頃には、一時153.9円台になりました。しかし、円安進行は株式市場にとって追い風とはならず、日経平均株価は40,000円を前に上値は重く、徐々に上げ幅を縮小しました。今週17-18日の12月FOMC、18-19日の日銀金融政策決定会合を前にした様子見姿勢の強まりも重石となったとみられます。引けにかけて前週末終値近辺での値動きを続け、大引けは前週末比12円安の39,457円で取引を終えました。東証プライム市場の売買代金は、3兆3,314億円と、10月25日以来の低調な水準でした。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時45分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日、米国では12月ニューヨーク連銀製造業景気指数が発表されます。12月FOMCを前に、米国景気の動向を確認するうえで、注目されます。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
-
12/16 08:12
【野村の朝解説】FOMCを控え米株は動意を欠く展開(12/16)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 13日の米国株式市場は動意を欠く展開となり、S&P500は前日比横ばい、ナスダック総合も小幅高で引けています。米国では17-18日にFOMCを控える中で、先週は11月消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)と注目度の高いインフレ統計が発表されました。CPIは事前予想通り、PPIは予想比で小幅上振れましたが、市場では今週の利下げ判断を妨げるものではないと評価され、0.25%ポイントの利下げを概ね織り込んでいます。この日注目されたのは円安です。円は一時1ドル153円80銭まで売られ、日中としては11月26日以来の安値を付けました。先週のブルームバーグに続き共同通信が「日銀が金融政策の据え置きを検討している」と報道したことで、市場の利上げ観測が後退し、円安につながっています。 相場の注目点 市場は今週のFOMCでの利下げを概ね織り込む一方で、25年末の政策金利見通しはむしろ上昇しています。結果、米国債市場では長期金利を中心に金利は上昇しています。足元の利下げ観測の後退は景気堅調を織り込んだ「良い金利上昇」の面が大きく、米株は堅調に推移しています。ただし、10年国債利回りが4.5%を明確に上回る展開になれば、トランプ次期政権の誕生など、不透明感の高い中での金利上昇が米国株式市場で嫌気される可能性があり、注意が必要です。 先週発表された日銀短観は、景況感は堅調、企業の設備投資計画も予想に反して上方修正されるなど、日銀の利上げを後押しする結果であったと評価できます。日銀は今週の会合で利上げを見送るとの観測報道が増えていますが、足元で進行している円安に対する日銀の評価が注目されます。ドル円相場が155円を超える際には口先介入の再開なども想定されることから、日銀が円安阻止に向けて政府と足並みを揃える可能性もあります。 (野村證券 投資情報部 尾畑 秀一) (注)データは日本時間2024年12月16日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
-
12/15 16:00
水稲メタン削減の将来性と課題
執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネスビジネス・コンサルティング部 ヴァイス・プレジデント 石井 佑基(2024年12月10日) はじめに 二酸化炭素の25倍の地球温暖化係数(GWP[1])を持つメタン(CH4)は、近年削減が求められている温室効果ガス(GHG)である。このうち、昨今報道されるようになったのが家畜由来(げっぷと糞尿発酵)のメタン排出であるが、水稲からのメタン排出も無視できない状況になりつつある。それは、イネがコムギとトウモロコシに並ぶ主要穀物であり、人口増加や所得向上による消費拡大が見込まれるアジア・アフリカ地域での主要食糧であることによる。今後、人口増加や経済発展によって需要の増加が予想され、生産の拡大に伴って水稲からのメタン排出量が増加する懸念がある。 本稿では、世界中で動き始めた水稲メタン削減とそのビジネス化やカーボンクレジットの動向や展望、日本における取り組み可能性について述べる。 1.水稲栽培におけるメタン排出原理と削減手法 (1) 水稲栽培におけるメタン発生メカニズムと発生量 天然ガスの主成分でもあるメタンは、自然界では有機物の嫌気発酵によって排出されるアルカンの一種であり、火力発電や都市ガスなどに利用されている。メタンは2021年には人類の活動によるものだけで6.4億トン(二酸化炭素換算179億トン(GWP-100=28))が排出されている。GHG全体の排出量が590億t-CO2/年であること、過去20年に排出量が10%以上増加しているなど、短期的に気候変動への影響が大きなGHGである。メタンの主要な排出源としては、農業分野が約40%と最も大きく、石油・ガス(23%)、廃棄物処理(20%)、石炭採掘(12%)など、一般に排出が多いとイメージされる産業を上回る。 メタン発生のメカニズムは嫌気発酵である。メタン細菌は酸素がない条件(嫌気条件)でエネルギーを生産し、メタンを副産物として作り出す。ウシなどの反芻動物の消化管内発酵や、家畜糞尿からのメタン排出はこうしたメカニズムによって起こっている。実は、ウシのげっぷメタンと水田からのメタン発生は同じメタン細菌によるものである。似た例として生物による独立栄養生産があり、植物の光合成の場合はエネルギーの副産物として酸素を排出する。 それでは、なぜ水稲からメタンが発生するのか。水田は湛水された状態であり、嫌気発酵する条件が整っているためである。実は、自然界でも湿地などから排出されるメタンが少量存在し、それらも嫌気発酵に由来している。自然に発生するものであるのにも関わらず水田からのメタン排出が問題視されているのは、それが人為的な活動によるものであることと、灌漑設備の普及などで稲作の生産性が改善したことの副作用であるからである。 (2) 世界的な米の増産とメタン発生量増加 米はアジアを中心に主要な穀物であり、人口増加により需要が増加している。このような背景から収量の改善が大きなテーマとなっていたこともあり、灌漑設備の普及や化学肥料の投入、品種改良(緑の革命)が続けられてきた。イネは大きく分けてインディカ種(Oryza sativa subsp. indica)とジャポニカ種(Oryza sativa subsp. japonica)の2亜種があるが、いずれの亜種でも陸稲と水稲がある。陸稲は畑で生産可能な手軽さや水使用量が少ないメリットはあるが、収量が低い。水稲は水田設備が必要なことと水使用量が多いデメリットがあるものの、収量が高い。そのため、灌漑設備の普及によって水稲栽培が広がれば収量が増加するが、負の側面として水稲では水田からのメタン発生を伴う。 (3) 水稲栽培におけるメタン発生抑制法 解決策として、①日本を中心に進んでいる水田中干(AWD: Alternate Wetting and Drying:図表1参照)、②水稲種から陸稲種への切り替えなどがある。AWDでは収量を落とさずにメタンの発生を3割程度削減できるが、削減量の変動が環境や地域で大きいデメリットが存在する。削減量が環境や地域で大きく変動してしまうと、GHG削減効果の検証の際に重要となるMRV(測定、報告及び検証)に影響を与えるという問題がある。AWDでメタンの発生が少なくなる原理は、水田の水を抜く中干によってメタン細菌の働きが抑えられるためであるが、メタン細菌の活動抑制効果が外部環境の影響受けやすいため、前述のように削減量が変動しやすくなる。AWDについてはもう一つメリットとして、水使用量の削減効果がある。農業生産の拡大にとって必要不可欠な水資源だが、FAO(国連食糧農業機関)の「 AQUASTAT」によると、世界の水資源の75%は農業用水として利用されている。AWDを使うことで水資源利用量も削減でき、農業生産者は灌漑コストの低下というメリットも享受することが可能である。 水稲種から陸稲種への切り替えではメタン発生量は大きく減ることと、削減量が安定しているが、収量が低下するデメリットが存在する。この収量の低下を省力化で補うことで普及を促す動きもある(後述)。 図表1 水田中干(AWD)の概要 (出所) 各種資料より、野村證券フード・アグリビジネス・コンサルティング部作成 2.水稲栽培におけるメタン削減の事業化 (1) 国際的な取組状況とビジネス展開 水田中干は日本の農林水産省が早くから注目して研究し、2023年3月にJ-クレジットの方法論として認められた。これに伴い、農林水産省はフィリピンやベトナムなどの東南アジア諸国のJCM(日本の炭素クレジット二国間取引制度)を通じた拡大を模索している。日本では、クレアトゥラ株式会社(東京)が東京ガス株式会社およびクボタ株式会社と連携して、株式会社フェイガー(東京)がヤンマーアグリ株式会社とそれぞれ連携して、フィリピンでのAWDのJCM創出に乗り出している。Green Carbon株式会社(東京)はベトナム北中部農業科学研究所と連携して、同国でのAWDのJCM創出を始めている。 陸稲種への切り替えでは、種子メジャーを中心とした推進がみられる。農薬と種苗などの農業ソリューションを手掛けるドイツのBayerは、同社の零細農家支援プログラム「DirectAcres」を通じ、2030年までにインドの水田100万ヘクタールに直播栽培(陸稲への切り替え)を導入し、零細農家200万人以上を支援する計画を実施している。同社は2023年10月16日、コメ生産で、移植栽培(田植え)から乾田直播に移行することで、米農家でのGHG排出量を最大45%、水使用量を同40%、手作業も同50%削減できると発表した。今後、同社は農薬などを組み合わせたソリューション・ビジネスの展開を計画している。 (2) 水稲栽培におけるメタン削減の課題 先にも述べた通り、AWDは削減効果の変動が大きいことが課題であるが、他にも測定手法や検証方法の簡素化が挙げられる。MRVはサンプル測定の結果を元に計算で求められることが一般的だが、削減効果の変動が大きいAWDはカーボンクレジットの正確性に課題がある。そこで、アグリテックを利用してAWDの正確性を向上させようという動きが出てきている。日本のリモートセンシングスタートアップであるサグリ株式会社(兵庫県)は、自社が持つリモートセンシングとAI解析を活用してベトナム政府と共同で実証事業を開始している。 AWDは、国連が主導した炭素クレジットの認証機関であるGold Standardでも方法論として採用されるなど、国際的にも注目されている。しかし、ボランタリークレジット最大の認証機関であるVERRAはMRV算出に課題があるという理由で方法論として採用していないなど、認証機関ごとに対応が異なっている点も課題である。 AWDで課題となっている正確性や低コストでの測定は、日本を中心にリモートセンシングや土壌分析の技術開発が行われているため、技術革新によって正確性が向上していくことを期待する。また、統計的にはAWDの利用面積が増加すれば、それだけ測定データも蓄積されて正確性が改善される。AWDの推進は、正確性の向上にも寄与するであろう。 陸稲種は水稲種よりも収量が低くなるため、陸稲種への切り替え時には最適な農薬との併用などによって農業生産者に省力化を提供できる対策が必要である。そのため、種苗開発と農薬開発などのソリューションを提供してきた種子メジャーが、技術開発と普及を行っている。種苗開発と農薬開発を組み合わせたソリューションは、かつて遺伝子組換え作物の普及の要因となった生産性向上と同じ戦略であり、陸稲種普及の課題を解決してくれると期待している。 3.日本における取り組みの可能性 (1) J-クレジットへの採用と企業の参入状況 先にも述べた通り、クレアトゥラ株式会社、株式会社フェイガー、Green Carbon株式会社、そして株式会社バイウィ(東京)などが国内外の水田におけるAWD事業に参入している。大企業では三菱商事株式会社が2023年にJ-クレジットにプロジェクトの登録を行っているほか、株式会社鈴生は、クミアイ化学工業株式会社と連携し、静岡県でプロジェクトを開始するなど、地域での取り組みも始まっている。2024年8月現在、AWDの国内プロジェクトはJ-クレジットに14,996 t-CO2登録されており、これはバイオ炭の農地施用1,033 t-CO2、家畜糞尿処理146 t-CO2よりもはるかに大きい。 日本国内の水田だけでは市場規模は小さいものの、東南アジア諸国でのJCM制度を活用してより大きなビジネス規模に拡大していくことが可能であることから、いち早く大企業の参入が見られたのも特徴である。 (2) AWDカーボンクレジットの想定市場規模と普及に向けた課題 水田からのメタン排出量について、日本の排出量は1,307万t-CO2と見積もられている。AWDによってこの3割が削減できるとすると、削減量は392万t-CO2となり、現在J-クレジットに登録されているプロジェクト1.4万t-CO2と比較すると大きなポテンシャルがある。直近落札価格(2023年5月入札)の1,551円/t-CO2で見積もると、日本の水田における想定市場規模は約60億円/年である。 また、世界の水田からのメタン排出量は25Tg/年(2021年 IPCC報告書)と見積もられている。2022年以降の数値は公表されていないが、このデータに着目すると25Tgは2,500万tであり、二酸化炭素換算(GWP-100=28)では7億t-CO2となる。AWDで3割のメタンが削減できるとすれば、クレジットの単価を10ドル/ t-CO2とすると、21億ドル/年の市場規模が見込まれる。 このように、AWDカーボンクレジットは十分な市場ポテンシャルを持つが、環境や地域によって削減量が変動しやすいことがMRV上での課題となっている。一方、技術革新は進んでおり、衛星データの活用や、水田に設置するタイプの測定器なども開発されている。MRVの正確性はカーボンクレジットの質に影響する(正確性が高いカーボンクレジットは価値が高い)。そのため、カーボンクレジットの買い手である削減義務者にAWDによるカーボンクレジットが受け入れられるよう、正確性をより向上させる技術革新は不可欠である。 おわりに 日本の畑作地は197.3万haと非常に小さいが、実は、全耕作地の54%を占める水田のAWDによるメタン削減は日本が先行している。そのため、日本企業がJCMの仕組みを活用することで東南アジアでのGHG削減とクレジットビジネスの創出に動いており、注目される分野である。また、Gold Standardを活用すればボランタリークレジット市場にもアクセスが可能である。このように、日本の実情に即した独自のカーボンファーミングや農地関連脱炭素技術を探求できる可能性が、我が国には残されている。 AWDの仕組みを通じて、日本は脱炭素化とビジネス化、そして国際貢献の「一石三鳥」を狙うことを考えていくことが重要である。 [注釈] [1] GWPは温室効果係数。二酸化炭素を1として、その物質がどの程度温室効果が高いかを示す。ただし、物質は分解することもあるので、100年間での温室効果を示すGWP-100、20年間の温室効果を示すGWP-20など種類がある。一般的に温室効果を測る場合はGWP-100を使用する。メタンの場合はGWP-100が28、GWP-20が84であり、短期的な影響が大きい。 ディスクレイマー 本資料は、ご参考のために野村證券株式会社が独自に作成したものです。本資料に関する事項について貴社が意思決定を行う場合には、事前に貴社の弁護士、会計士、税理士等にご確認いただきますようお願い申し上げます。本資料は、新聞その他の情報メディアによる報道、民間調査機関等による各種刊行物、インターネットホームページ、有価証券報告書及びプレスリリース等の情報に基づいて作成しておりますが、野村證券株式会社はそれらの情報を、独自の検証を行うことなく、そのまま利用しており、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。また、本資料のいかなる部分も一切の権利は野村證券株式会社に属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。 当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。 国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。 外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
-
12/15 09:00
【動画 3分チャート塾】シーズンⅡ:第9回 チャート分析の古典:グランビルの法則
「動画 3分チャート塾」は、株価チャートの見方を学びたい初心者から中級者の方向けの動画シリーズです。 シーズンⅡ「相場の見方の強い味方、移動平均線」最終回の今回は、チャート分析の古典と言われる「グランビルの法則」について解説しています。 シーズン I:意外と知らないローソク足(全8回)ローソク足の基本の読み方や中長期的な相場の捉え方などについてわかりやすく解説していきます。シーズンII:相場の見方の強い味方、移動平均線(全9回)移動平均線の基礎や活用法についてわかりやすく解説していきます。シーズンIII:上値、下値のメドを探ろう(全10回)上値、下値メドの探り方についてわかりやすく解説していきます。シーズンIV:相場の過熱感を測るには?(全9回)オシレーター系指標についてわかりやすく解説していきます。シーズンV:トレンドラインを引いてみよう(全9回)トレンドラインについてわかりやすく解説していきます。 ご投資にあたっての注意点
-
12/14 19:00
【来週の米国株】堅調なテック株、よくみると明暗/FOMCの注目点は(12/13)
※執筆時点 日本時間12月13日(金)12:00 今週:米CPI無事通過&テック決算明暗 ※12月6日(金)- 12月12日(木)4営業日の騰落 11月の米CPI(消費者物価指数)の内容が概ね市場予想通りとなったことから先物金利は2024年12月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げをほぼ完全に織り込み、市場金利が低下しました。これを受けて金利に敏感な情報技術関連株が上昇し、ナスダック総合指数は一時、史上初の20,000ポイント台を付けました。 注目決算はまちまちの内容 ただ、情報技術株のファンダメンタルズは必ずしもポジティブなものばかりではありませんでした。注目されたソフトウェア大手2社、アドビ(ADBE)とオラクル(ORCL)の2024年9-11月期決算発表では、いずれも2024年12月-2025年2月期のEPS(一株当たり利益)会社見通しが市場予想を下回りました。アドビは生成AI需要増による画像編集ソフトウェアの業績拡大が、オラクルは生成AI向けを中心としたクラウドサーバー需要増による業績拡大がそれぞれ期待されていただけに、決算発表日翌日にはどちらの株価も下落しました。 一方、通信向け半導体及びソフトウェア大手のブロードコム(AVGO)の2024年11月-2025年1月期のEPS会社見通しは市場予想を上回りました。アップル(AAPL)がAI用半導体を自社開発すると伝わり業績懸念もありましたが、ブロードコムは決算発表の際にアップルとのAI半導体開発が複数年契約になるとコメントし、安心感が広がりました。 同社は、2024年8月-10月期決算で部門別売上高も開示しましたが、インフラストラクチャーソフトウェア部門が市場予想を下回り、半導体部門が市場予想を上回っています。なお、インフラストラクチャーソフトウェア部門の売上急増は買収効果に起因しています。 (ご参考)ブロードコム決算 個社の決算内容だけでセクター全体を判断することに注意は必要ですが、前述の3社を見る限り生成AIの活用によるソフトウェアセクターの業績上振れシナリオにはまだ注意が必要と考えられます。まずは、設備投資などで堅調なハード(特に半導体)が情報技術セクターのけん引役であることに注目すべきでしょう。 AI関連の成長は終わっていないが、それ以外にも目を 野村では、AI関連産業を引き続き強気にみていますが、2025年後半からAIの投資テーマが変化する可能性が高いことから、局面変化に応じ柔軟に投資対象を選抜すべきだと考えています。指標として注目されるのは、クラウド事業者の設備投資計画とAIサーバーメーカーの在庫です。向こう6~9ヶ月間の短期については、エヌビディア(NVDA)のGB200の納入が2025年のAIサイクルの上昇局面を維持するカギになるでしょう。ただし、エヌビディアが公表しているロードマップによると、次のAIシステム性能の大幅な向上は2027-2028年との見通しが示されており、2027年前半頃までに設備投資が鈍化する可能性があります。足元ではGB200自体が米国の大手クラウド事業者の設備投資を一段と高めますが、2年後頃から不透明感が出てくると想定されます。また、足元ではビットコイン採掘の需要も想定されますが、これまでの歴史から考えるとAIサーバーメーカーにおける過剰在庫はAI半導体にとっても良くない兆候とされており、その動向を確認していきたいと考えます。 AI関連以外の情報技術銘柄について、仕様アップグレード(特にオンデバイスAI)とバリュエーションの割安感を踏まえ、L字型サイクルの底から脱しつつあるなかで選択肢の一つであると考えています。 来週:FOMCでは「見通し」の上振れに注意 17日(火)~18日(水)に米国でFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。FRB(米連邦準備理事会)の政策判断を見極める上で注目された11月CPI(消費者物価指数)は食品・エネルギーを除くコア指数の前月比上昇率が市場予想に一致したことから、市場では今回のFOMCにおける利下げをほぼ織り込んでいます。 ただし、コアCPIは4ヶ月連続で前月比+0.3%と、年率換算でインフレ目標である2.0%を上回る上昇率を続けていること、11月PPI(生産者物価指数)は市場予想を上回ったこと、トランプ次期政権が関税の引き上げを公言していること等から、「FRBは早晩、様子見に転じるのではないか」との見方が高まっています。今回の会合では経済・政策金利見通しが公表されることから、FRBが次期政権の政策をどの程度経済見通しに織り込んでいるかを含めて注目が集まります。 株価に水を差す「長期金利上昇」をどこまでとみるか? 足元では米長期金利(10年国債利回り)がやや上昇し、4.3%台で推移しています。米長期金利上昇は株価への下押し圧力となりますが、野村ではインフレ再燃リスクが台頭しても米長期金利が5%超へ上昇することは見込み難いと考えています。米長期金利は、利下げ到達点の市場期待を示す3年先1ヶ月金利と相関が高いことが知られています。過去の相関に基づけば5%超となるのは、 3年先1ヶ月金利が4.5%前後以上となるような場合と想定されます。ただ、12月FOMCで0.25%ポイントの利下げが実施され政策金利が4.25%~4.50%となれば、 3年先1ヶ月金利が4.5%以上となるシナリオは再利上げが視野に入るケースに該当することになります。景気・インフレは1~2年のようなスパンで見れば減速傾向を辿っているため、金融政策は引き締め的と推察され、再利上げはあくまでリスクシナリオの位置づけです。インフレ再燃時に米10年長期金利が4%台後半まで上昇した場合の株価への下押し圧力は想定しなければなりませんが、仮に5%が近づけば行き過ぎと考えることができます。 堅調な景気は続くかを年末商戦でチェック そのほか、11月小売売上高(17日)では、業種別の売上動向等から、年末商戦の個人消費動向を確認したいと考えます。FRBが重視する11月コアPCEデフレーター(20日)は、FOMC直後でもあり、相場に与える影響は限定的とはみられますが、足元のインフレの状況を把握する上で、確認が必要です。 ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール
-
12/14 16:00
国内の薬用植物の現状と生産拡大に向けた方策
執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネスビジネス・コンサルティング部 シニア・コンサルタント 髙田 健(2024年12月10日) はじめに 薬用植物(生薬)は、古来、漢方薬や医薬品の原料として用いられ、近年は、漢方製剤市場の拡大に伴い、その需要が増加している。しかし、国内で使用される生薬の80%以上は中国から輸入されており、輸入価格の高騰や供給の安定性が課題となっているため、国内での安定供給を求める声が高まっている。農林水産省や関連団体も支援を行い、薬用植物の国内生産拡大に向けた取組を進めているが、未だ生産拡大や安定供給には至っていない状況にある。 本稿では、一般的に知られていない国内の薬用植物の現状と課題について一連の情報を提供しながら、薬用植物の国内生産拡大に向けた方策を考察することを目的とする。 1.薬用植物の定義 日本で使用される医薬品の品質や規格を定める厚生労働省監修の「日本薬局方」では、生薬を「動植物の薬用とする部分、細胞内容物、分泌物または鉱物など」と定義している。 生薬は植物由来のものが大部分を占めるため、平易な言葉で表すと、薬用植物の全部または一部に乾燥や加工を施したものが生薬となる。また、複数の生薬を組合わせたものが漢方製剤等になる。 生薬は医薬品に該当するため、薬用植物の全部または一部を乾燥・加工する際は、日本薬局方の規格に基づかなければならない。一方、薬用植物は、医薬品以外にも健康食品や化粧品などの原料にも用いられるが、その利用は薬用植物の部位毎に区分されており、厚生労働省ではこれを「食薬区分」としてリスト化している。 具体的には、①専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リストと、②医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リストの2つがあり、リスト①には約270種類の植物が含まれ、リスト②には約800種類の植物が納められている。つまり、リスト①に該当する薬用植物等の部位は医薬品として扱われるため、健康食品等の原料としては使用できない。一方、②に該当する薬用植物等の部位は、医薬品的な効能や効果を標ぼうしない限り、健康食品等の医薬品以外に活用できる。 なお、本稿で表記する薬用植物は、上記リスト①の医薬品(生薬)の原料となる薬用植物のことを指し、生薬の原料以外に用いる薬用植物について説明する場合は、その旨を別途記載する。 2.国内の薬用植物の現状 (1)国内の薬用植物の栽培状況 国内では、東京と神奈川を除く全ての道府県で薬用植物が栽培されている。農林水産省の資料によると、図表1に示すように、薬用植物の生産者の戸数は2010年に1,791戸だったが、2015年には2,065戸に増加した。しかし、その後は生産者の高齢化などの影響により、2022年には1,306戸にまで減少している。 一方、栽培面積は多少の変動はあるものの、ほぼ横ばいで推移している。2022年の薬用植物の栽培面積は494haであるが、そのうち北海道の栽培面積は224haとなっており、国内全体の約45%を北海道での栽培が占めている状況にある。背景には、大手製薬会社の生薬の生産・加工・保管施設が北海道に多く存在することが影響している。 薬用植物の特徴の一つに、栽培期間が比較的長いことが挙げられる。しかし、国内で栽培されている薬用植物の栽培面積上位10品目を見ると、ミシマサイコ、センキュウ、トウキなど、栽培期間が1~2年と比較的短い品目が多く栽培されている(図表2参照)。また、一戸当たりの栽培面積は1ha以下の生産者が多いという特徴もある。これは、薬用植物が野菜などに比べて栽培期間が長く、収益が上がるまでに時間がかかるため、生産者の多くは、薬用植物を複合栽培経営の一品目として栽培しているためと推察される。 図表 1 薬用植物の栽培面積・生産者戸数推移 (出所)農林水産省「薬用作物(生薬)をめぐる情勢」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 図表 2 薬用植物の栽培面積上位10品目 (出所)農林水産省「薬用作物(生薬)をめぐる情勢」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 (2)薬用植物の国内需要 近年、漢方製剤等の生産金額は増加傾向にある。厚生労働省の「薬事工業生産動態統計調査」によると、2015年の漢方製剤等の生産金額は1,671億円であったが、その後も増加が続き、2022年には2,332億円に達した(図表3参照)。この傾向は、漢方製剤等への需要が高まっている証拠であり、健康志向や自然療法への注目が影響していると考えられる。特に、2020年以降の伸びは、新型コロナウイルスの影響により、健康への意識がより一層高まったことが要因である。 図表3 漢方製剤等の生産金額の推移 (出所)厚生労働省「薬事工業生産動態調査」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 漢方製剤等の生産金額の増加は、そのまま生薬の需要の増加につながる。日本漢方生薬製剤協会の調査によると、当協会の会員(漢方製剤・生薬製剤・生薬の製造業者/製造販売業者等)62社が漢方製剤等に使用した生薬の種類と総使用量は、2019年度は273品目で27,240tであったものが、2020年度には276品目で27,997tとなり、品目、使用量ともに増加している。 図表4に、2020年度の276品目の内、使用量上位30品目における使用量と原料供給国を示している。それによると、国内での使用量が最も多い生薬はカンゾウである。カンゾウは、グリチルリチンという成分を含み、その甘さは砂糖の約150倍で、喉の炎症を和らげる効果がある。これにより、風邪や咳の症状を緩和するための主要な成分として幅広く使用されている。また、他の生薬との相性が良く、苦みが強い生薬を甘くして飲みやすくする役割も持つ。こうした特性により、カンゾウは漢方製剤等の原料として多く使用されるが、寒冷かつ乾燥した地域を原産とするため、高温多湿な日本の気候では栽培が難しい。そのため、使用量2,019tのうち、国産供給量はわずか0.1tで、多くが中国からの輸入に頼っている。 次に国内での使用量が多いブクリョウは、利尿作用に優れ、体内の余分な水分を排出するため、むくみの解消に効果がある。また、消化器系の働きを助ける作用を持ち、食欲不振や消費不良の改善などに活用されるが、ブクリョウもカンゾウ同様に国内ではほとんど栽培されていない。数値で見た場合、国内使用量1,950tのうち、約100%にあたる1,949tを中国からの輸入に依存している。 特異な存在としては使用量5位のコウイがある。コウイは主成分がマルトースで、その他にグルコースやマルトトリオースを含み、滋養効果や止痛・止咳効果がある。コウイは水分を好むため、日本の湿潤な気候がコウイの水分要求に合致し、国内で多く栽培されている。そのため、2020年度の使用量1,031tの全てを国産で賄っている。 しかし、コウイのように国内供給が可能な生薬がある一方で、多くの生薬は中国からの輸入に依存している。具体的には、上位30品目の生薬の総使用量21,685tのうち、国内供給量はわずか9.0%であり、80%以上が中国からの輸入に頼っている状況にある。 図表4 2020年度 上位30品目の生薬使用量と生産国 (使用量単位:t) (出所)日本漢方製剤協会「日本における原料生薬の使用量に関する調査報告」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 図表5 カンゾウ・ブクリョウ・コウイの特徴 (出所)公益社団法人 東京生薬協会「新常用和漢薬集」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 (3)生薬の中国への依存リスク 財務省の貿易統計データで、過去10年間の中国からの生薬の輸入状況を見ると、2014年の輸入量は13,733tであった。その後、輸入量は増加し、2020年には17,013tに達した。2021年には一時的に16,535tに減少したが、翌年から回復し、2023年には18,697tに達している(図表6参照)。 一方、輸入額の推移を見ると、直近の数年間は、輸入量の増加率を上回るペースで輸入額が増加している。これは円安の影響もあるが、中国国内では乱獲により自生の薬用植物が減少していること、そして、経済発展に伴って自国での生薬需要が増加し、価格が上昇していることが要因である。 さらに、中国では環境保全を目的に、一部の野生薬用植物について採取規制や輸出規制等を行っている。特に高い需要を持つカンゾウについては、輸出総量枠が定められている。2008年~2012年の輸出総量枠は毎年3,600tの枠が設定されたが、それが2013年~2014年には4,000t台へと緩和された。しかし、2021年にはこの枠が2,900tに引き締められ、その後、2022年は3,400t、2023年は3,800tと再度緩和されたものの、依然として規制は継続されている。こうした輸出総量枠によっても輸入価格が影響を受け、中国からの生薬の安定的確保が難しくなることが懸念されている。 このため、生薬の原料となる薬用植物の国内での栽培拡大の重要性が高まっている。国内栽培を推進することで、輸入依存度を減らし、供給の安定性を確保することが必要である。 図表6 中国産の生薬・カンゾウの輸入状況 (出所)財務省 貿易統計より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 3.国内の薬用植物の課題 中国からの生薬の安定的な調達が難しくなることが懸念される中、国内での薬用植物の栽培拡大が重要となるが、その実現には多くの課題が存在する。ここでは、薬用植物の課題を生産面と流通面から考察する。 (1)薬用植物の生産面の課題 ①栽培期間の長さとその影響 薬用植物の栽培では、栽培期間が大きな課題となる。例えば、シソのように5ヵ月程度で収穫が可能な植物もあるが、多くはセンキュウやサイコのように1年以上の期間を要する。国内で最も使用されているカンゾウに至っては、栽培期間が3~5年にも及ぶ。これは、カンゾウの根に含まれる有効成分(グリチルリチン酸)の含量を高めるためである。日本薬局方では、カンゾウのグリチルリチン酸の含量が2.0%以上であることが基準となっており、その含量を満たすために根を十分に成長させる必要があり、栽培に長い期間が必要になる。長期間の栽培は、生産者が収益を得るまでに長い期間を要することを意味し、資金繰りや労働力の確保を含む経営リスクを高めることになる。 ②作業の効率性に関する課題 薬用植物は地上部の茎や葉ではなく、主に根や地下茎を収穫するため、特定の機械が必要となる。しかし、現状では薬用植物専用の農業機械がほとんど存在しない。これは、薬用植物が一般的な農作物と比べて市場が限定されているため、農業機械メーカーが専用機械を販売していないことが要因である。そのため、生産者は既存の農業機械を使用し、工夫しながら作業を行っている。専用機械の欠如は収穫作業の効率を低下させ、作業時間が増えることで生産コストが上がる要因となる。また、薬用植物を生薬として出荷するには、収穫後に根や地下茎を洗浄・乾燥し、ひげ根の除去などを行う調整作業が必要となり、これにも手間がかかる。 (2)薬用植物の流通面の課題 ①流通の限定とその影響 生薬は一般の農作物のような流通市場が存在しない。そのため、多くが特定の製薬会社との契約に基づいて取引される。この契約栽培の形式は、生産者にとっては販売先が確保されている利点がある一方で、日本薬局方の基準に加え、製薬会社が独自に設定する厳格な出荷基準を満たさなければならず、常に高い品質を維持するための生産・管理技術が求められる。 ②産地化の必要性 製薬会社との契約栽培においては、製薬会社は一定の数量を求めるため、単独での生産や少量出荷の生産者とは契約が行われないことが多い。このため、薬用植物の栽培には生産者や自治体、企業などが連携し、生産性や流通効率を向上させる産地化が必要になる。産地化は共同で事業を行う手間を伴うが、その一方で、知識や技術の共有、作業プロセスの標準化、資源の最適化、問題の早期発見・対応などを通じて、品質の向上やコスト削減が可能となる。 なお、薬用植物の産地化事例として、高知県超知町と岡山県高梁市の例を以下紹介する(図表7)。 図表7 薬用植物の産地化事例 (出所)農林水産省「薬用作物の産地化事例集」より、野村證券フード&アグリビジネス・コンサルティング部作成 4.薬用植物の国内生産拡大に向けた方策 薬用植物の栽培を拡大するため、国内では様々な取り組みが進められている。農林水産省や関連団体は、薬用植物の産地化を推進している。千葉大学と富士通株式会社はICTを活用して薬用植物や機能性植物の栽培技術を確立するための実証実験を実施しており、国立研究開発法人医療基盤・健康・栄養研究所と株式会社プランテックス、ロート製薬株式会社は、3社で薬用植物の植物工場栽培に関する共同研究を行っている。これらの研究や取り組みを通じて、生産拡大や路地以外での栽培方法、栽培期間の短縮化等が模索されている。一方、市場環境を見た場合、これら以外の視点として、高需要品目に着目した薬用植物の栽培拡大と、医薬品以外の薬用植物の活用についての可能性が高まると筆者は考える (1) 高需要品目に着目した薬用植物の栽培量の拡大 国内の薬用植物の栽培を拡大するための一つの戦略としては、高需要の生薬の栽培を増加させることが挙げられる。具体的には、図表5で示した、漢方製剤等の原料としての使用量が多い生薬をターゲットにする。つまり、カンゾウ、ブクリョウ等に注力して栽培の拡大を図ることが考えられる。 カンゾウは寒冷で乾燥した地域を好み、ブクリョウは高温で乾燥した地域での栽培が適している。そのため、高温多湿な日本の気候では上手く育たず、国内ではあまり栽培が行われていない。しかし、過去に寒冷地での栽培が適し、日本の気候では育てるのが難しかったケールが品種改良を経て国内で栽培が可能になった例や、気温や日照時間に敏感で栽培管理が難しいとされたパプリカが、温室栽培や栽培管理技術の向上によって国内でも栽培が行われるようになった例もある。カンゾウやブクリョウも、生産者と行政や研究機関が協力して栽培方法の確立や技術の向上に努めれば、国内栽培の可能性も高まると考えられる。 安定した供給体制が整えば、製薬会社との契約栽培が可能になる。また、新製品・治療法の研究・開発も進展することが期待され、更なる需要が見込まれる。2020年でカンゾウは2,019t、ブクリョウは1,949tも国内で使用されているが、国内からの供給はどちらも0.1%にとどまっている。このことから、拡大の余地は非常に大きいと言える。 (2)医薬品以外での薬用植物の活用 これまでは漢方製剤等の原料を中心とした生薬や薬用植物について述べてきたが、もう一つ重要な展望として、医薬品以外での薬用植物の活用を拡大させていくことが考えられる。国内には多くの薬用植物が存在し、これらの多様な利用方法を探ることは重要である。特に、サプリメントを含む健康食品の市場は、近年拡大している。健康産業新聞によると、2021年の国内の健康食品市場は1兆2,700億円、2022年は1兆2,900億円(前年比1.6%増)、2023年は1兆3,150億円(同1.9%増)と推計されており、これらの分野での更なる活用が期待される。例えば、薬用植物をベースとした新しい製品の開発や、地方の特産品と組み合わせた商品化が進めば、地域経済の発展にも寄与する。 また、薬用植物を活用した健康・美容イベントやワークショップを実施することで、その知識や価値を広める手段となる。観光業との連携を図れば、地域の活性化にも貢献する。 こうした取り組みから始め、生産者同士の連携を強化し、量の確保を図ることができれば、健康食品会社等との契約栽培の可能性も生まれる。国内での薬用植物の拡大については、生産体制の強化だけでなく、薬用植物の活用にも目を向け、需要を喚起していくことが重要になる。 おわりに 薬用植物(生薬)は、漢方薬や医薬品の原料として重要な役割を果たしており、健康志向が高まる現代において注目されている。しかし、多くの生薬が中国から輸入されており、輸入価格の高騰や供給の安定性が課題となっている。 国内の薬用植物生産者が直面している課題は多岐にわたり、その詳細については本稿では触れなかったが、今後は新しい栽培方法や技術の進展により、国内栽培が拡大することが期待されている。また、高い需要の薬用植物を国内で栽培できるようになれば、国産の原料を使った医薬品や健康食品等の開発も促進される。 新しい市場が開かれることで地域経済の活性化が進み、若い世代が農業に参入するきっかけになる可能性もある。日本の農業は高齢化や担い手不足に悩まされているが、薬用植物が農業の発展を促す一因となることを期待したい。 ディスクレイマー 本資料は、ご参考のために野村證券株式会社が独自に作成したものです。本資料に関する事項について貴社が意思決定を行う場合には、事前に貴社の弁護士、会計士、税理士等にご確認いただきますようお願い申し上げます。本資料は、新聞その他の情報メディアによる報道、民間調査機関等による各種刊行物、インターネットホームページ、有価証券報告書及びプレスリリース等の情報に基づいて作成しておりますが、野村證券株式会社はそれらの情報を、独自の検証を行うことなく、そのまま利用しており、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。また、本資料のいかなる部分も一切の権利は野村證券株式会社に属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。 当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。 国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。 外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 野村證券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第142号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
-
12/14 12:00
【注目トピック】半導体製造装置市場は2026年にかけて拡大へ、業界団体が市場予測を発表
※画像はイメージです。 SEMIの2024年末世界半導体市場予測 2024年・2025年とも上方修正 米国時間12月9日にSEMI(国際半導体製造装置材料協会)は、半導体製造装置の2024年末市場予測を発表しました。 2024年7月時点の予測と比較すると、2024年は上方修正されていますが、2025年については、下方修正されています。ただし、前年比マイナス成長となった2023年に対し、2024年には拡大に転じ、2025年も拡大が続くという方向に変わりはありません。また、今回新たに示された2026年予測については、一段の拡大が予想されています。 中国とAI関連需要がけん引 発表資料の中でSEMIは、2024年7月の予測以来、2024年の半導体製造装置販売額の見通しは明るくなっており、特に中国およびAI関連分野からの投資が予想を上回っていると述べています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)灰色は実績、薄い赤色は2024年7月時点、赤色は2024年12月時点のSEMI(国際半導体製造装置材料協会)による予測。(出所)SEMI、LSEGより野村證券投資情報部作成 半導体製造装置販売額の内訳で一番大きな前工程(半導体材料であるシリコンウエハー等を処理する工程)のウエハーファブ装置について、2024年の上方修正は、AIコンピューティングからの需要にけん引されたDRAMおよびHBM(広帯域メモリー)への好調な設備投資の継続を主に反映しているとしています。加えて、中国の投資も引き続き、ウエハーファブ装置市場の拡大に大きく貢献しているとしています。そして、先端ロジックとメモリー・アプリケーションの需要増加により、2025年、2026年と拡大が続くとしています。 後工程(処理されたシリコンウエハー等を半導体製品として組み立てる工程)装置分野は、過去2年連続して減少したものの、2024年は特に下半期において力強く回復したとしています。2025年以降の後工程分野の成長を支えるのは、ハイパフォーマンス・コンピューティング用半導体デバイスの複雑化、モバイル、車載、産業用の需要が増加するためとしています。 地域別動向 地域別では、中国、台湾、韓国が、2026年まで装置購入額のトップ3を維持し、中国は景気減速が予測されているにもかかわらず、装置購入が引き続き底堅いことから、今回の予測期間中はトップの座を維持する見込みと予想しています。中国への装置出荷額は、2024年に過去最高の490億米ドルに達するとのことです。 なお、ほとんどの地域で設備投資額は2024年に減少し、中国以外の地域では2025年に回復することが予想されるものの、中国は2022~2024年の3年間の大規模投資を受けて、2025年は縮小する見込みとのことです。2026年には、すべての地域で増加することが予測されるとしています。 今後の注目点 半導体製造装置メーカーであるアプライド・マテリアルズ、KLA、ラムリサーチ、ASMLホールディングなどの株価は、2024年夏以降、軟調に推移しています。半導体製造装置の需要が、AI向けは好調なものの、自動車など他の分野の需要が弱いことなどが各社の決算発表などの機会で示され、株価の重石となっていました。 (注)データは日時で2024年初=100とする指数。直近値は2024年12月10日。ASMLホールディングはADR(米国預託証券)の価格の推移。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 このような状況を踏まえると、今回のSEMIの予測は、概ね想定の範囲内と考えます。 とはいえ、2025年の予想は下方修正されたものの、2024年には拡大に転じて2025年も拡大が続くという方向に変わりはなく、今回新たに示された2026年には一段の拡大が予想されているという点は、ポジティブに受け止めてよいと判断します。 今後も、半導体業界に関する報道や、半導体製造装置メーカー及び半導体メーカーの決算発表などの機会を通し、半導体製造装置市場の動向を確認していきたいと考えます。 12月18日には、半導体メモリー大手のマイクロン・テクノロジーが、2024年9-11月期(2025年8月期・第1四半期)決算を発表する予定です。マイクロン・テクノロジーは、自社で半導体を製造する垂直統合型の半導体メーカーで、半導体製造装置を購入する企業であり、同社の設備投資計画などを確認したいと思います。 (野村證券投資情報部 村山 誠) ご投資にあたっての注意点