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06/14 09:00【オピニオン】米20年国債入札不調 国債市場への懸念が浮き彫りに
※画像はイメージです。 2025年5月の米国債市場は下記の要因により、不安定な値動きとなりました。 ■米国の信用格下げ■トランプ減税による財政赤字拡大懸念■低調な米20年国債入札(5月21日) 米10年国債利回りは4月末の4.16%から、5月22日には4.63%に上昇し、米30年国債利回りは同期間に4.68%から5.16%に上昇しました。 5月16日に米格付け会社ムーディーズ・レーティングスは、米国の信用格付けを引き下げました。理由として、①過去10年間に連邦債務が急増したこと、②トランプ減税の恒久化により今後10年間で約4兆ドル(注)の財政赤字拡大を見込むこと、を挙げました。これらは、下図に示された米国連邦債務の対名目GDP比率の実績(赤色の実線)および「トランプ減税が恒久化された場合」の試算と概ね整合的です。 経済危機を財政政策で救ったが国の債務は増加 (注)イベントは全てを網羅している訳ではない。米議会予算局(CBO)の試算は2025年4月10日公表。灰色の網掛けは景気後退期局面。年度は前年10月から当年9月。データは四半期毎で、直近値は2024年10-12月期。矢印は灰色の網掛けの景気後退期以降に米国連邦債務の対名目GDP比率が上昇したことを強調。(出所)セントルイス連銀、米議会予算局、NBER(全米経済研究所)より野村證券投資情報部作成 これらを受けて米20年国債入札は不調でした。20年国債や30年国債などの超長期債は投資家が限られ、需給が一方向に傾くことが懸念されます。加えて、2022年に当時の英国トラス政権の減税案をきっかけに発生した英国債市場の混乱が想起されたことも要因と考えられます。 今後の金融市場に対しては以下の点が期待されます。 ■経済危機の回避■適温経済の継続 過去の経済危機の際は、その後米国の債務は急拡大しました。2008年前後のリーマンショックは、家計や企業が債務の返済を進めたため「バランスシート不況」と呼ばれました。国は「最後の借り手」として対応し、景気を支えました。 経済危機は、その対策により国の財政悪化を招くため、回避のための予防措置が必要です。また、経済が好調な時に、危機の最中のような大規模な財政政策を行うことは、短命な景気過熱とその後の悪化を招く懸念があります。現在がコロナ禍からの回復途上にあると仮定すると、過度の悲観も過熱もない適温経済の継続が、限られた財源の範囲内で達成されることが金融市場には望ましいと考えられます。 米下院を通過したトランプ減税法案の上院審議について野村では、州・地方税控除や公的医療費、再生可能エネルギーなどに関する修正を経た上で7月上旬までに成立する可能性が高まったとみています。8月末までに必要とみられる米連邦債務上限引き上げと併せて、米国議会の動向が注目されます。 (注)米議会予算局が2025年6月4日に発表した試算では、2025年から2034年までの減税を含むトランプ政権の減税を含む政策による財政赤字拡大への影響は累計で2.4兆ドル(2034年の名目GDP推計値の約6%)。 ご投資にあたっての注意点
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06/14 07:00【来週の予定】G7サミットが15日から開幕 関税交渉の行方は
来週の注目点:日米金融政策会合とG7首脳会議 16日(月)~17日(火)に日銀の金融政策決定会合が開催されます。今回は政策金利の据え置きが予想されます。注目点は2026年4月以降の国債買い入れ額の減額ペースです。日銀は現在、国債買い入れを段階的に減らしており、月間の購入予定額を24年7月の5.7兆円程度から毎四半期に4,000億円程度ずつ減らし、26年1-3月に2.9兆円程度とする計画です。今回の会合では、現行計画の中間評価と26年4月以降の国債買い入れ方針を議論する予定であり、市場は新計画における減額ペースに注目しています。ブルームバーグの調査では4割のエコノミストが2,000億円程度への減額を予想しています。 17日(火)~18日(水)には米国でFOMCが開催されます。米国でも金融政策は据え置きが予想され、併せて公表される経済見通しに注目が集まっています。3月FOMC時点では25年、26年ともに2回の利下げ見通しが中央値でしたが、今回どのような見通しが示されるかが、最大の注目点です。 経済指標について日本では、18日(水)に4月機械受注、5月貿易統計、20日(金)に5月全国消費者物価指数が発表されます。近年、日本の貿易統計に対する市場の注目度は低下していますが、今回は関税の影響を確認するうえで注目されることが予想されます。 米国では16日(月)に6月NY連銀製造業景気指数、17日(火)に5月小売売上高と5月鉱工業生産、18日(水)に5月住宅着工・建設許可件数、20日(金)に6月フィラデルフィア連銀製造業景気指数と、景気に先行性の高いサーベイ調査と実体経済の動向を示すハードデータが共に発表されます。トランプ関税やそれに伴う金利上昇が消費や住宅需要にどのような影響を与えているのかが注目点です。 15日(日)~17日(火)にはG7首脳会議が予定されており、トランプ関税やウクライナ紛争等、山積する課題に対する対応が注目されています。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2025年6月13日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点