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06/09 09:00
【注目トピック】インド総選挙、与党連合が辛勝 今後注意すべきポイント
※画像はイメージです。 インド総選挙:与党連合が苦戦ながらも勝利 与党連合は辛勝 インドの総選挙(連邦下院:ローク・サバー。総議席数543、過半数272)の投票が2024年4月19日から6月1日まで7回に分けて実施され、6月4日に開票が終了しました。インド人民党(BJP)の率いる国民民主同盟(NDA)は過半数の議席を獲得しましたが、BJPは単独では過半数の議席を確保できませんでした。開票直前になって、BJPが単独過半数を獲得するのではとの観測が一部に流れ、インドSENSEX指数は2024年6月3日に、一時76,000ポイント台後半へ上昇し、史上最高値を更新しました。しかし、6月4日に開票が進むにつれ、NDAは辛うじて過半数を維持する見込みとの観測を受けて、6月4日には前日比-5.7%と急落しました。NDAの中でも最も企業寄りの政策を志向するBJPが苦戦したことが主因と思われます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 インドではIT産業の集積化が進む インドは国土が広く、多民族、多宗教、多言語の国であるがゆえに、従来より多くの政党が乱立し、少数与党の時代も余儀なくされてきました。そうした中、グジャラート州の州首相時代に電力インフラを整備し、外資の自動車メーカーなどの誘致に成功し、高成長を遂げた実績を背景にモディ現首相が2014年の総選挙でインドの首相に選出されたことはインド経済の転機となりました。少数与党の時代には、経済成長のポテンシャルはあるものの、それを顕在化させる様々なインフラを整備するための法案の成立が困難でした。議会の過半数を有する安定したモディ政権の10年間は、まだまだ道半ばながらも道路、鉄道、港湾、電力などのインフラ整備が前進しました。金融制度や税制の整備も加わり(下表)、スマホ、半導体など米国のハイテクを中心とした外資系企業の進出も相次ぎ、自動車に加え、IT産業の集積化が進んでいます。 引き続き、製造業の育成がカギ 実際、インドの輸出総額に占める電気機器のシェアは近年伸びています(下図)。インドのGDPに占める製造業の割合は20%に満たないため、雇用の受け皿となる製造業の育成が引き続き経済政策の中心となるでしょう。BJPのマニフェストでは、自動車、半導体などのセクターでグローバルハブになることを目標に掲げ、AI(人工知能)、量子コンピューターの研究に軸足を置くことが掲げられています(左下表)。こうしたセクターがインド経済の牽引役となることが想定されています。なお、国際通貨基金(IMF)の推計によると、インドのGDPは2025年に4兆3,398億ドルとなり、4兆3,103億ドルの日本を抜いて世界4位に浮上する見込みです。 与党内での政策のすり合わせが必要 モディ首相は連立パートナーの主要2政党の支持を確保したと報じられています。これによりモディ首相は政権継続が可能となります。ただし、BJP自らも議席数を大幅に減らしたため、今後、主要閣僚のポストの割り当ても含めて、連立パートナーの政策の意向をくみ取る必要があるでしょう。今回の大幅議席減少の要因は、所得格差の拡大、ヒンズー至上主義を掲げるBJPに対する反発などが考えられます。BJPのマニフェストの中にも貧困層対策が掲げられていますが、より弱者に寄り添った政策へ軌道修正することも考えられます。 財政赤字拡大がリスク インドの2024年1-3月期の実質GDPは前年同期比+7.8%と2023年10-12月期の同+8.6%からは鈍化したものの、高成長が続いています。また、インド国債は2024年6月28日からJPモルガン新興国債券指数に、2025年1月にはブルームバーグの債券指数にそれぞれ組み入れられる予定です。更に、米大手格付け会社はインドのソブリン(政府債)格付け見通しを「安定的」から「ポジティブ」に変更しました (※)。こうした好材料の一方、注意すべき点はインドの財政赤字です。IMFは2024年のインドの財政赤字対GDP比を7.8%と予想しています。前述の政策の軌道修正次第で財政赤字が拡大する可能性には注意が必要です。 (※)格付けは金融商品取引法に基づく信用格付業者以外の格付業者が付与した格付け(無登録格付け)です。無登録格付けについては最終頁の「無登録格付けに関する説明書」をご参照ください。 (野村證券投資情報部 佐々木 文之) ご投資にあたっての注意点
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06/08 19:00
【来週の米国株】開発者会議でアップルに注目/CPIとFOMC重なる「12日」に熱視線(6/8)
※執筆時点 日本時間7日(金)12:00 今週:エヌビディアの時価総額が一時3兆ドル超 ※5月31日(金)-6月6日(木)4営業日の騰落 AIの業績貢献期待が高まる 今週の米国株式市場は、インフレ懸念が後退する中でAI(人工知能)の企業業績貢献への期待が高まり、S&P500とナスダック総合は史上最高値を更新しました。 主要経済統計がインフレ後退を示唆 今週発表された3日(月)の5月ISM製造業景気指数や5日(水)のADP雇用統計(編注:執筆時点では7日(金)の5月雇用統計は発表されていない)では弱い内容が相次いだことから、米金利は低下しました。また、5日(水)の5月ISMサービス業景気指数は市場予想を上回りましたが、内訳の項目の仕入れ価格指数が4月から鈍化したことから、市場ではインフレ懸念後退→FRB(米連邦準備理事会)の利下げ後押し要因と受け止め、株価を押し上げる一因となりました。。 エヌビディアが初の時価総額3兆ドル超え 米国時間5日(水)にエヌビディア(NVDA)の株価が前日比+5.15%の1,224.40ドルとなり、上場来高値を更新しました。時価総額は3兆118億ドルとなり、初めて一時3兆ドル台に乗せました。この時点の時価総額では、アップル(AAPL)を抜き、マイクロソフト(MSFT)に次ぐ世界2位となりました。なお、アップルの時価総額は昨年、世界の上場企業で初めて3兆ドル台に乗せ、時価総額では当時世界最大となっていました。今年に入りマイクロソフトがアップルを抜き、時価総額で世界最大の企業となっていました。 WSTSの見通しとエヌビディアの業績は整合的 4日(火)にWSTS(世界半導体市場統計)が、2024年春季の半導体市場の見通しを発表しました。WSTSは、世界の半導体市場は、2023年は前年比縮小したものの、2024年については拡大に転じ、これまでの過去最高だった2022年の5,741億ドルを超えるとの見通しを示しました。 (注)灰色は実績、薄い赤色は2023年11月時点、赤色は2024年6月時点のWSTS(世界半導体市場統計)による予測。 (出所)WSTS、LSEGより野村證券投資情報部作成 牽引役として、世界的に旺盛なAI関連投資を背景に需要が急拡大しているメモリーや一部ロジック製品を挙げています。 (注)世界半導体市場の地域別・製品別内訳。2024年、2025年は2024年6月時点のWSTS(世界半導体市場統計)による予測。 (出所)WSTS、LSEGより野村證券投資情報部作成 WSTSからは、地域別、製品別での内訳が公表されていますが、前年比伸び率を製品別についてみると、メモリーは2023年に前年比-28.9%と最も足を引っ張っていましたが、2024年には同+76.8%と急回復が予想されています。一方、WSTSが生成AIの恩恵を受けるとコメントしているロジック製品は前年比+10.7%と予想されています。エヌビディアのGPUはここに分類されているとみられます。 なお、2024年の前年比伸び率ではメモリーの方がロジック製品よりも高くなっています。しかし、金額をみていただきますと、メモリーは2023年に、パソコンやスマートフォンの販売が低調となったことを受けて大きく落ち込んでいたところから回復しているため、変化率としては大きくなっています。一方、ロジックについては2023年もプラス成長した上で、2024年、2025年と二桁成長が予想されています。 今週のポイントは3点です。 10日(月)~アップル開発者会議 このような半導体をめぐる環境を背景に、生成AI向けにGPU(画像処理半導体)を中心とした半導体製品で圧倒的な競争力を有するエヌビディアの株価が直近、上昇していると推察されます。 なお、アップルの時価総額がエヌビディアに抜かれたことを捉えて、アップルの凋落ぶりを示すという論調が出てくるかもしれません。アップルは10日(月)-14日(金)に、同社の年次開発者会議、WWDC(Worldwide Developers Conference)を、オンライン及びサンフランシスコ本社の会場で開催する予定です。同会議では例年、ソフトウェア技術を中心に、新技術等の発表が行われ、今年はアップルのAIへの戦略がより明確に示される可能性があります。内容によっては再びアップルに対する関心が高まる可能性があり、注目したいと考えます。 そのほか、11日(火)にオラクル(ORCL)、13日(木)にアドビ(ADBE)など大手ソフトウェア企業の3-5月期決算が発表されます。2-4月期決算発表では、セールスフォース(CRM)が失望決算となるなど、一部の法人向けソフトウェア分野で弱さが確認されました。4-6月期決算を見通す上でオラクル、アドビ両企業の決算内容が注目されます。なお、13日(木)には通信インフラ向けの半導体製品、ソフトウェアを提供するブロードコムの3-5月期決算も発表されます。 12日(水)に6月FOMC結果発表 11日(火)~12日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。多くのFRB(米連邦準備理事会)高官は利下げに慎重な姿勢を維持しており、インフレ鈍化の傾向が確認される中でも市場の関心は政策金利見通し(ドッツ)に集まっています。2024年について1回当たりの利下げ幅が0.25%ポイントとして、年内2回の利下げがメインシナリオとして示されることが見込まれています。前回の3月FOMCでは3回の利下げが想定されていました。仮に1回の利下げが示されれば、タカ派サプライズとなり、米国株安や円安ドル高といった市場の反応が予想されます。パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長のFOMC後の記者会見では利下げを急がない姿勢を見せると予想されます。 FOMC結果と同日に5月CPI 12日(水)には5月CPI(消費者物価指数)が発表されます。季節性の影響もありコアCPIが前期比+0.312%と4月(同+0.292%)から小幅に加速すると予想されます。FOMC直前の公表とはなりますが、今回のFOMCへの影響は限定的と思われます。 (野村證券投資情報部 小野崎 通昭) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール
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06/08 12:00
【特集】生前贈与に関する税制改正 110万円を超えて贈与したほうがよい?
※写真はイメージです。 2023年の税制改正では相続税・贈与税に関する法律が改正され、2024年1月に施行されました。制度変更のポイントはどこにあるのでしょうか。そもそも、生前贈与を検討したほうがいいのはどんな人なのでしょうか。証券会社で相続や贈与の相談を受けることが多い大手町トラストの野田美沙子税理士に生前贈与について聞きました。 生前贈与を検討したほうがいい人とは ――2024年から施行された法改正によって生前贈与への関心は高まっているのでしょうか。 野田美沙子さん(以下、同) そうですね。私は主に資産管理や生前贈与、遺言の作成、相続などにまつわる税金のご相談を受ける仕事をしています。法改正もあり、「いざというときのために何を準備すればいいのか?」「相続対策はいつから始めればいいのか?」という質問や相談が増えています。 まず前提として、贈与とは当事者の一方が相手方に財産を無償で譲ることで、成立にはお互いの合意が必要です。ですから、親が勝手に子供名義の口座にお金を振り込んでいて本人が知らなかった、などのケースは贈与にあたりません。 口頭でも贈与契約は成立するとはいえ、後に贈与と認められないなどのトラブルを回避するために、贈与契約書を作成することをお勧めします。 ――生前贈与を検討するべきなのはどんな人なのでしょうか。いわゆる資産家でしょうか。 相続資産が何億円というご家庭でなくても、生前贈与を検討したほうが節税になる場合は多くあります。2015年に相続税の基礎控除額が4割引き下げになり、相続税の対象となる方が大幅に増えました。 基本的に、相続税の基礎控除額である「3000万円+(600万円×法定相続人の数)(注)」以上の資産(相続税の課税価格)をお持ちの方は相続税がかかりますので、軽減策として生前贈与を考えたほうがいいと思います。 (注)法定相続人の数は、税法上は相続放棄についてはその放棄がなかったものとして、養子については実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで算入して計算 資産が多い方ほど相続税の税率は高くなりますので、想定される相続税の実効税率と贈与税の税率を比べて、トータルの税額が低くなるように考えていくことが節税につながります。不動産だと一部を生前贈与しづらいのですが、金融資産を多く持つ方は生前贈与しやすいですね。 ※「①特例贈与」・「②一般贈与」の税額は、各々その年の贈与が「①特例贈与」だけであった、「②一般贈与」だけであった場合の税額です。同じ年に「①特例贈与」と「②一般贈与」を受けた場合の税額は上記表とは異なります。※1 2022年3月31日以前は20歳(出所)野村證券「税金の本」2023年度版 非課税で贈与しても7年さかのぼって相続税の対象に ――なるほど。生前贈与は一部の資産家だけでなく、ある程度の財産がある人は検討したほうがよいんですね。今回の税制改正では何がどう変わったのでしょうか? 大きなポイントは、暦年課税の生前贈与加算対象期間が3年から7年に延びたことです。 まず、暦年課税とは、贈与税の課税方式の一つで、1年間に贈与された財産の合計額に応じて税金の額が決まる仕組みで、110万円の非課税枠があります。暦年贈与はこの仕組みを利用した贈与方法で、例えば、年間110万円の贈与を10年間続けた場合には1,100万円が非課税となります。 生前贈与加算とは、相続の発生日から遡って贈与を受けた資産を相続財産に含めて相続税の計算をすることです。これまでは3年だった加算期間が、毎年1年ずつ段階的に引き上げられ、2031年開始の相続からは7年になります。ですから、せっかく非課税で贈与しても、相続財産として相続税の課税対象になってしまう場合が増えるのです。 (出所)野村證券「税金の本」2023年度版 ――つまり、基礎控除額である年110万円を非課税で贈与をしても、亡くなる前の7年分は相続税の対象となるということですか。7年とは長いですね。どうしたらいいのでしょう? 生前贈与を早く始めることが、今まで以上に重要になります。生前贈与加算の対象者は相続、遺贈や相続時精算課税にかかる贈与によって財産を取得した人となりますので、お孫さんがいる方は孫に贈与するという手もあります。孫が遺贈や死亡保険金の受取人になっていない場合は生前贈与加算の対象にはならないため、遡って相続税が課されることはありません。 基礎控除額を超える贈与が効果的なケースも ――なるほど、早いうちから贈与を始めること、生前贈与加算の対象にならない人にも贈与することが、生前贈与を効果的に行うポイントなんですね そうですね。ただ、非課税枠があるからといって、生前贈与を非課税枠内に収めたほうがいいとは限りません。贈与税がかかっても、生前贈与額を増やしたほうがトータルで節税になるケースもあります。 先日、私が生前贈与をご提案したお客様のケースでは、財産額は約4億円、法定相続人は子1人のみでした。子1人とお孫さん3人(孫のうち1人は18歳未満、18歳未満と18歳以上では税率が異なる)の計4名に10年間生前贈与するというシミュレーションをしました。その結果、年間約710万円の贈与を続けると、合計3,850万円の贈与税を払うことになりますが、贈与をしなかった場合に比べ、10年で約8,500万円の税負担軽減効果が見られました。 (注)生前贈与加算の対象外として計算 このように、相続資産が大きいと相続税率が高いので、贈与税を払ってもトータルで数千万円単位の節税ができるケースもあります。一部を生前贈与すれば贈与税と相続税の税率差分の節税効果がでますので、税率の乖離を見ながら、計画的に考えることが大切です。 有価証券を贈与する意味 ――有価証券をたくさん持っている場合は、どのように贈与するのがよいでしょうか 有価証券などは贈与した時点の時価で贈与税が計算されるため、「値が上がる」とご自身が考えるものは早めに贈与すると、相続資産を抑えられるというメリットがあります。贈与額が大きく贈与税が多額になる場合は、相続時精算課税制度を利用されるとよいです。(相続時精算課税制度については後述) 現金や有価証券を一旦売却して贈与するときは、証券口座(MRF)を利用すると贈与の記録にもなります。加えて、贈与を受けた人がそのまま資産運用に回しやすいというメリットもあります。 有価証券を贈与により移転した場合、値上がりを続けている株式だと相続財産を抑えられるメリットはありますが、取得コストが引き継がれるため、売却時の税金は大きくなります。一方で、相続開始から3年10か月以内に売却した場合は、相続税の一部が取得コストに加算されるという特例もあります。ですので、生前贈与の際に有価証券を渡すか、一旦売却して現金化してから渡すか、または相続させるのか、どのように引き継ぐのが有利になるかを検討する必要があります。 もう一点注意したいのが、上場株式などを贈与する場合、一つの銘柄を特定口座へ贈与するのは1回限りしかできず、2回目以降の贈与は一般口座に入ることです。(一部のケースを除く) 特定口座だと取得コストなどを証券会社が記録し、売却時には譲渡所得税を計算し、源泉徴収までしてくれますが、一般口座の場合は贈与を受ける人がご自身で書類などを保管しておかないといけません。取得コストが不明だと売却時に自分で調べることになり、不明な場合は不利な条件で取得コストを計算することになります。 ――値上がりしそうなものは早めがいいのですね。非上場株の贈与について、注意するポイントはありますか 非上場株を多く持つ方は渡す時期を考えたほうがいいですね。非上場株は現金化しにくいことが多く、相続時点での時価が高ければ、相続税の納税に苦労するケースもあります。株価が高い非上場株式をお持ちの方は、経営者が退職金を受け取った翌年など株価が下がったタイミングで、相続時精算課税制度を使って贈与するケースが多いです。 生命保険を使って贈与する方法も ――生前贈与のメリットは分かりました。ただ、毎年贈与するのが面倒に感じるのですが、何か良い方法はないのでしょうか そういう場合は現金で渡すのではなく、生存給付金付終身保険などを活用する方法もあります。 この保険では、一時払いで保険料を払うと、一定の保険期間に毎年生存給付金の受取人に給付金が支給されます。例えば1,100万円を一括払いして、子どもが110万円×10回で受け取ることもできます。贈与契約書などは必要なく、保険会社が作成した書類が贈与契約書の代わりとなります。 生存給付金付終身保険は、一括して贈与税が発生する連年贈与(毎年贈与を行うこと)に該当しないような仕組みであることもメリットです。 相続時精算課税制度にも基礎控除が新設 ――なるほど。生前贈与と言っても様々なやり方があるのですね。相続税の納付に困ったり、残された家族がもめたりという話はよく聞きますので、早めに検討していきたいですね はい、その通りです。とにかく早めに検討を始めることをお勧めします。お子さんが複数いる場合、誰かに偏って生前贈与を行うと、ご本人が亡くなった後に兄弟、姉妹間でのトラブルになることもあります。生前贈与はなるべく計画的に行うとともに、遺言を作成しておくと、円滑な相続ができると思います。制度をよく理解し、判断力が鈍らないうちによく検討しておくことが大切です。 ちょっと難しいので補足としてお話しますが、今回の法改正では、相続時精算課税に2,500万円の特別控除額に加え、新たに年110万円の基礎控除ができたこともポイントです。この110万円は生前贈与加算の対象にはならないため、暦年贈与のように遡って相続税が課されることはありません。 相続時精算課税制度は、生前贈与した財産の税額を相続時に精算する、いわば「相続財産の前渡し」の制度です。基礎控除110万円を超えた部分の贈与について、累計2,500万円までの贈与は贈与税が課税されません。ただし、「相続時精算課税」という名のとおり、相続時に相続財産に含めて相続税が課税されます。 節税効果はないのですが、値上がりが予想される不動産や非上場株式があるときに、評価額が低いタイミングで贈与するために制度を利用する方が多いですね。ただ、相続時精算課税制度を一度利用すると、その後に暦年贈与制度に戻ることはできないので、その点を考慮して選んでください。 大手町トラスト/税理士野田美沙子(のだ・みさこ)相続税、贈与税、財産評価及び譲渡所得などの資産税が専門。主に証券会社の顧客の相続対策や事業承継対策などを担当している。相続対策や事業継承についてのセミナー講師の経験も豊富。「相続税通達逐条解説Digital」(第一法規株式会社)で一部執筆を担当した。 この資料は情報提供を唯一の目的としたもので、投資勧誘を目的として作成したものではありません。この資料は信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、野村證券は、その正確性および完全性に関して責任を負うものではありません。この資料は提供されたお客様限りでご使用いただくようお願いいたします。詳しくは、所轄税務署または顧問税理士等にご確認ください。 ご投資にあたっての注意点
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06/08 09:00
【オピニオン】飛躍するエヌビディア、AI活用企業の好循環へ
※画像はイメージです。 「1ドルの設備投資が5ドル超の売上高をもたらす」。AI演算用チップやプログラミング環境を提供するエヌビディアの2024年2-4月期決算説明会でのコメントです。これは、AIサービス事業者の向こう4年間の数値で、成功した事業の場合と推察されますが、高い投資効率といえます。 2023年1月の、マイクロソフトと生成AIチャットを手掛けるOpenAIの提携強化以降、AIの利用が拡大しました。マイクロソフトは、クラウドやビジネスソフトへAIを導入し、収益化で先行しました。マイクロソフトの2024年1-12月期の設備投資額の市場予想は2023年初時点から2024年5月30日までに172億ドル分(約55%)増加しました。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)正式名称は、アマゾンはアマゾン・ドットコム、メタはメタ・プラットフォームズ。AI・クラウド大手企業は全てを網羅しているわけではない。2024年は暦年(1-12月期)。数値は2023年初時点から2024年5月30日への変化額。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 クラウド、インターネット広告、サービスでAIを活用するアルファベットやアマゾン・ドットコム、メタ・プラットフォームズは主に2024年初以降に設備投資の増額を発表しました。 AI向け設備投資の受け皿企業であるエヌビディアの2026.1期通期の1株当たり純利益(EPS)市場予想は2023年初時点から約5.5倍となり、これに連動する形で同社の株価も上昇しました。 (注)データは日次で、直近値は2024年5月30日時点。EPS は非米国会計基準の希薄化後1株当たり純利益。株価とEPSは1:10株式分割前。(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成 2024年5月26日、テスラCEOのイーロン・マスク氏が設立したAI企業のxAI(エックスエーアイ)が60億ドルの資金を調達したと発表しました。AI事業の収益化の確実性が高まり、市場の評価が上がり、融資につながったと推察されます。金融による資金流入の拡大が、AI業界の発展を加速させると考えられます。 経済成長の3要素は、①労働、②設備(資本)、③生産性(技術進歩や人的資本の向上など、労働と設備以外の要因)です。AIに関しては、②の設備投資が行われており、膨大なデータを活用し「希少・高価なモノ・サービスを手軽・安価にする」ことで③の生産性を向上させ、経済成長に貢献するとみられます。 既に、インターネット広告ではAIの活用が収益成長に貢献し始めています。また、ビジネスでは文章要約や校正、検索、グラフの作成などのAI機能の利用が始まっており、業務効率化が期待されます。AIによる高度な生成画像・動画が、ゲームや映画に活用されることも見込まれます。 今後は、例えば小売では、需要予測の精度を上げて廃棄を削減し、省資源やコスト削減を達成することが期待されます。創薬では、従来は時間とコストをかけて行うことが一般的でしたが、AIの利用による開発期間の短縮やコスト削減が期待されます。物流や輸送では、完全自動運転(レベル5)の実装が注目されます。日本では2027年にレベル5の公道での実証実験が計画されています。 AI活用により収益性が高まる産業や企業には、高所得を背景に優秀な人材が集まり、生産性がさらに高まるといった好循環が生まれると想定されます。 ご投資にあたっての注意点
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06/08 07:00
【来週の予定】日米で金融政策決定会合が開催、政策金利は据え置きが見込まれる
来週の注目点:日米の金融政策決定会合 今週は日米で金融政策決定会合が開催されます。6月11日(火)~12日(水)に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)では、政策金利は据え置きが市場コンセンサスです。インフレ鈍化の傾向が確認される中でも、多くのFRB(米連邦準備理事会)高官は利下げに慎重な姿勢を維持しており、市場の関心は政策金利見通しに集まっています。 日本では13日(木)~14日(金)に日銀金融政策決定会合が開催されます。今会合では、政策金利を据え置き、国債買い入れ減額のアナウンスを行うと野村證券では予想します。2%近辺でインフレが安定的に推移する可能性が高く、景気の回復を確認しながら、2024年10月に追加利上げを決定すると予想します。 ユーロ圏では、ラガルドECB総裁による講演が14日(金)に行われます。ECB(欧州中央銀行)は7月以降の追加利下げを急がないと見られていますが、今後の金融政策について何らかの示唆が与えられるか注目です。 経済指標では、米国で12日(水)に5月消費者物価指数(CPI)、13日(木)に5月生産者物価指数、14日(金)に6月ミシガン大学消費者マインド(速報値)が発表されます。最大の注目点は消費者物価指数です。6月FOMCにおける決定そのものに与える影響は限定的ですが、コアCPIが鈍化すれば、年内の利下げ開始に向けた後押し材料になると見られます。 日本では10日(月)に2024年1-3月期実質GDP(2次速報値)、5月景気ウォッチャー調査が発表されます。野村證券では、設備投資や公共投資が上方修正されることで同実質GDP成長率は前期比年率-1.8%(市場予想は同-2.0%)と、1次速報値から上方修正されると予想します。 その他には、13日(木)にイタリアでG7首脳会議が開催されます。報道によれば、ウクライナに対する支援に向けて対ロシア経済制裁で凍結したロシアの資産の取り扱いなどが話し合われる模様です。 (野村證券投資情報部 坪川 一浩) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2024年6月7日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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06/07 16:03
【野村の夕解説】米国雇用統計を控え、日経平均株価は小幅な値動き(6/7)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は前日比105円安の38,597円で本日の取引を開始しました。値がさ株のレーザーテックが大幅反発したこと等を受けて上昇に転じ、寄り付き後には本日の高値となる前日比43円高の38,747円を付ける場面もありました。しかし、前日の米国週間新規失業保険申請件数により雇用の鈍化が示され、為替市場で円高・米ドル安が進行したことから、日経平均株価は頭を押さえられ軟調に推移しました。その後は、米国の5月雇用統計発表を前に様子見の展開となり、前日比42円安の38,661円で午前の取引を終えました。 様子見の姿勢は午後に入っても変わらず、また国内で目立った材料も無かったことから、小幅な値動きで推移し、日経平均株価は前日比19円安の38,683円で取引を終了しました。東証プライムの売買代金は3兆4,623億円と年初来2番目の低水準でした。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日、米国で5月の雇用統計が発表されます。FOMC(米連邦公開市場委員会)を来週11-12日に控え、市場の金融政策見通しにどのような変化をもたらすのか注目されます。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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06/07 12:00
【今週のチャート分析】日経平均株価、5月20日高値超えとなればダブルボトム完成へ
※画像はイメージです。 ※2024年6月6日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 今後、史上最高値更新も視野に 今週の日経平均株価は、日米の長期金利低下が好感されたものの、上値は重い展開となりました。 チャート面からこれまでの動きを振り返ってみましょう(図1)。日経平均株価は、5月20日高値(39,437円)形成後の上値は重く、30日には25日移動平均線(6月6日:38,586円)を割り込み、一時37,617円まで下落しました。 しかし、昨年10月以降の上昇トレンドライン上で下ヒゲを引き反発しており、この先、5月20日高値(39,437円)を超えることができるか注目されます。同高値突破となれば、4月19日安値を大底とし、5月30日安値を二番底とするダブルボトムが完成することとなり、下値の固さが確認されます。その場合、まずは、4月12日戻り高値(39,774円)や、心理的フシの4万円の水準へ向けた動きとなると考えられ、先行きは史上最高値(41,087円)更新が視野に入ってくるとみられます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2024年6月6日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 一方で、この先再度調整となり38,000円台を割り込む場合は、5月30日安値(37,617円)や、4月19日安値(36,733円)の水準が下値メドとして挙げられます。今年4月安値までの下落率(9.3%)は、波動分析上の参考局面である昨年10月安値までの下落率(9.6%)と比較し、値幅調整は概ね十分と捉えられます(図2)。この先、上値を抑えられ仮に本格調整再開となった場合も、さらなる調整は限定的だと考えられます。 (注1)直近値は2024年6月6日時点。 (注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社データより野村證券投資情報部作成 ドル円相場、米大統領選挙が転換点となるか 今年最大の注目イベントの一つは米国の大統領選挙です。過去のドル円相場と米国大統領選挙前後の動きをみると、大統領選挙前後でドル円相場の中長期的なトレンドが変化するケースが何度かみられました(図3)。 (注1)直近値は2024年6月3日。 数値は日銀公表値で東京市場、取引時間中ベース。 (注2)縦線は大統領選挙の月。尚、大統領就任は翌年1月。(出所)日本銀行、各種資料より野村證券投資情報部作成 トランプ氏が勝利した2016年11月のケースでは、ドルは対円で100円前後で底練りだったところから、大幅上昇し、底練り局面を脱することに成功しました。また、現バイデン大統領が勝利した2020年11月以降の動きをみると、翌年1月をボトムとして中長期上昇(円安・ドル高)トレンドに転換したことがわかります。今回は中長期的な上昇(円安ドル高)トレンドが続く中で、大統領選挙まであと約5ヶ月に迫っています。 チャート分析の観点からみれば、これまで続いてきた中長期上昇(円安・ドル高)トレンドは天井形成の可能性に注意が必要な時間帯に入っているとみられます。ドルは対円で、1975年以降は8年前後(83ヶ月~107ヶ月)の周期で主な高値を形成してきました(図4)。 (注1)直近値は2024年6月5日時点。数値は日銀公表値で東京市場、取引時間中ベース。 (注2)日柄は両端含み。(注3)トレンドラインには主観が含まれておりますのでご留意ください。(出所)日本銀行より野村證券投資情報部作成 今年5月高値時点で、前回のサイクル高値(2015年6月)から約9年(108ヶ月)となり、過去5回のサイクルの中で最長の期間となりました。今年5月高値や、この先の高値がサイクル高値となる可能性に注意が必要だと考えられます。 これらチャート分析面に加え、米国の金融政策の転換点が近いとみられることも併せて考慮すれば、米大統領選挙前後がこれまでの円安・ドル高トレンドの転換点となる可能性も考えられます。 (野村證券投資情報部 岩本 竜太郎) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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06/07 08:41
【野村の朝解説】雇用統計の発表を控え、米国株は小動き(6/7)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 6日の米主要3指数は、まちまちの展開でした。朝方発表された週間新規失業保険申請件数が22.9万件と、市場予想の22万件を上回りました。前日発表された5月ADP雇用統計に続き、労働市場の鈍化が示唆されたことで、FRBによる利下げ開始が先送りになるとの懸念が後退し、株式市場を下支えしました。NYダウは小幅上昇した一方、前日AIに対する成長期待などから上昇が目立った半導体などハイテク関連株が下落したことから、ナスダック総合指数は4営業日ぶりに反落しました。米国株式市場は、7日に5月雇用統計の発表を控え、その内容を見極めたいとして小幅なレンジでの値動きとなりました。 相場の注目点 米国市場では、FRBによる早期利下げへの期待が回復しています。今週は、5日にカナダ中央銀行が利下げに踏み切り、6日にはECB(欧州中央銀行)が4年9ヶ月ぶりとなる利下げを決定しました。先進各国で利下げが相次ぐ中、来週のFOMC(11-12日)に対する市場の関心が高まっています。本日米国では、FRBの金融政策の動向を見極める上で重要となる5月雇用統計が発表されます。5月雇用統計の非農業部門雇用者数は、概ね4月並みの前月差+18.0万人が市場で予想されています。今会合では政策金利は据え置きが市場コンセンサスですが、雇用統計の結果を受けて、年後半の利下げ期待が一段と回復するか、注目されます。 本日のイベント 日本では、4月全世帯家計調査や4月景気動向指数が発表されます。海外では、中国の5月貿易統計が発表されるほか、インドとロシアで金融政策決定会合が開催されます。いずれも金融政策を据え置くとみられます。 (投資情報部 澤田 麻希) (注)データは日本時間2024年6月7日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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06/06 15:59
【野村の夕解説】日経平均株価、3日ぶり反発 半導体関連の上昇目立つ(6/6)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は、前日比351円高の38,841円で取引を開始しました。前日の米国株式市場で、5月ADP雇用統計で雇用者数の伸びが市場予想を下回ったほか、5月ISMサービス業景気指数の仕入れ価格指数が下落し、雇用鈍化及びインフレ圧力の減退が示唆され、ナスダック総合指数を中心に米主要3指数が上昇したことが追い風となりました。米国で半導体関連株の上昇が目立ったことで、国内株式市場でも東京エレクトロンやアドバンテスト、ディスコといった指数寄与度の高い値がさ株が上昇し、寄り付き後には、本日の高値となる39,011円を付ける場面もありました。 後場は、上昇幅を縮小する展開となりました。日銀の植田総裁が参議院財政金融委員会で、金融政策について「現時点でのデータに基づくと当面は現状の政策維持が妥当」としたものの、金融政策正常化を進める際には、「国債買い入れを減額することが適当である」との考えを示ました。また7日には米国で、5月米雇用統計の発表が控えていることから、積極的に上値を追う展開とはならず、前日比213円高の38,703円で取引を終了しました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日は、ユーロ圏でECB金融政策理事会が開催予定で、市場予想では0.25%ポイントの利下げが決定されると見込まれています。今後の政策についてラガルド総裁がどのような見方を示すか注目されます。 (野村證券投資情報部 金井 一宜) ご投資にあたっての注意点