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昨日 12:00
【5月の投資戦略】悪材料が出揃えば、利益成長への信頼回復とともに株価も復調へ
目次・衝撃的なトランプ政権の関税政策・金融市場は年央にもFRBの利下げを見込む・悪材料出尽くし後は利益成長への信頼感が回復へ・米中対立は厳しい状況・関税交渉の進展が日本株市場の信頼回復の第一歩 衝撃的なトランプ政権の関税政策 米国トランプ政権の関税政策は衝撃的で、主要国の株価は急落しました。一方、株価のバリュエーション(評価指標)も大きく切り下がり、株式市場は経済や企業業績の悪化を、早くも一定程度織り込んだとみます。トランプ政権が打ち出した厳しすぎる関税政策は持続可能性に乏しく、各国政府との交渉によって、譲歩や着地点を探る動きが進むでしょう。当面は、株式市場に不透明さは残るものの、今後は、関税の影響を受けにくいテクノロジー分野を中心に、企業業績の増加や株式市場の信頼感の回復が進むとみます。 金融市場は年央にもFRBの利下げを見込む トランプ政権の関税政策により、主要国で景気下押し圧力が強まっています。関税交渉の出発点は相当厳しい条件から始まりました。ただし、最終的な着地点では、主要国の景気後退は回避されると予想します。一方、中国に対しては経済の覇権争いを背景に、米国との交渉は厳しいものになるでしょう。経済にインフレなどの影響が現れるのは、これからとみます。FRBは、景気下押し圧力と物価上昇圧力に挟まれ、難しい選択を迫られる可能性があります。政策判断の見極めに向けて、FRBは状況が明らかになるまで、金融政策の現状を維持するとみますが、金融市場は年央にも利下げが開始されることを織り込んでいます。 悪材料出尽くし後は利益成長への信頼感が回復へ 米国企業業績のけん引役は、テクノロジーセクターとみます。特に、AI関連やクラウドサービスは政府による支援もあり、中長期的な成長期待も崩れていません。サービス分野は、相対的に関税の影響も限定的です。株式市場の悪材料の出尽くしが進めば、利益成長への信頼感の回復と共に、バリュエーションも再び上昇し、株価は復調に向かうとみます。 米中対立は厳しい状況 欧州もトランプ政権の関税政策の影響により、景気への下押し圧力が懸念されます。ECBの追加利下げが、予想されます。中国は、米国から145%の輸入関税率が発動され、逆に125%の報復関税を課すなど、貿易取引が持続不能な状況に陥っています。スマホなど中国からの代替が困難な製品に対する猶予措置も講じられていますが、貿易取引を通じたサプライチェーン(供給網)の混乱が需給の歪みを生み、様々な影響を及ぼすことが懸念されます。 関税交渉の進展が日本株市場の信頼回復の第一歩 日本の貿易動向に関する不透明感は強まっているものの、トランプ政権とは最優先で関税交渉が行われています。雇用のひっ迫や賃金上昇が続く中、日本銀行は将来における利上げ姿勢を崩していません。しかし、その判断実施に向けては、経済情勢を丁寧に見極めるための時間が必要とされるでしょう。米国の政策に対する不透明さから米ドル安が進み、短期的には米日金利差と米ドル円相場の連動性が失われています。この様な外部環境の下、日本企業の業績予想は、保守的な期初計画になることが予想されます。ただ、2025年度の主要企業の経常利益は、現時点で増益が見込まれています。日経平均株価のPER(株価収益率)は13倍台へと大きく低下し、悪材料の織り込みが進みました。トランプ政権との関税交渉で譲歩が認められ、景気悪化懸念の後退と共に企業業績への信頼感が戻ることで、株価は徐々に復調に向かうとみます。野村證券は、2025年末の日経平均株価を36,000円と予想します。 投資戦略については、トランプ政権の政策判断により、国内外の株式市場のボラティリティー(変動率)が高まる局面はまだあるとみます。しかし、関税の影響を受けにくいテクノロジーやサービスなどの業種を基軸とする見方は変えず、実力以上に株価の調整が進んだ企業は、株式市場の安定化と共に再評価の余地も大きいとみます。 (野村證券投資情報部 小髙 貴久) ※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 5月号」(発行日:2025年4月21日)「投資戦略の概要」より※掲載している画像はイメージです。 Nomura21Global参考銘柄について ご投資にあたっての注意点
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昨日 09:00
【動画 3分チャート塾】シーズンⅣ:第9回 4種の指標を同じチャートで比較したらどうなる?
「動画 3分チャート塾」は、株価チャートの見方を学びたい初心者から中級者の方向けの動画シリーズです。 シーズンⅣ「相場の過熱感を測るには?」最終回の今回は、これまでのまとめとして、同じチャート上で4種類の指標を比較するケースについて説明しています。 シーズン I:意外と知らないローソク足(全8回)ローソク足の基本の読み方や中長期的な相場の捉え方などについてわかりやすく解説していきます。シーズンII:相場の見方の強い味方、移動平均線(全9回)移動平均線の基礎や活用法についてわかりやすく解説していきます。シーズンIII:上値、下値のメドを探ろう(全10回)上値、下値メドの探り方についてわかりやすく解説していきます。シーズンIV:相場の過熱感を測るには?(全9回)オシレーター系指標についてわかりやすく解説していきます。シーズンV:トレンドラインを引いてみよう(全9回)トレンドラインについてわかりやすく解説していきます。 ご投資にあたっての注意点
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04/26 12:00
【注目トピック】日本株決算、1-3月期は堅調に推移か 今後の展望は?
※画像はイメージです。 日本:2025年1-3月期決算プレビュー 2025年1-3月期決算発表が始まる 2025年4月下旬より、2024年度通期業績の発表が本格化します。2024年度の最後の四半期にあたる2025年1-3月期の、ラッセル野村Large Cap(除く金融)の市場コンセンサス推定では、増収率が前年同期比+2.6%、営業増益率は同+15.2%となっています。 2025年1-3月期は、認証不正問題などで生産活動が低調な状態が続いていた自動車で挽回生産が本格化したことや、電子部品や資本財の一部で在庫調整が進展したことなどから、久しぶりに二桁増益になったと見られます。 なお、市場コンセンサスの推定営業増益率は、鉱工業生産や為替レートから考えられる増益率に対してやや高い印象ですが、人件費も含むコスト上昇の商品・サービス価格への転嫁が順調に進んでいることから内需・サービス系の業種の活躍も期待できるため、コンセンサス程度の増益率達成のハードルはそれほど高くはないでしょう。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)ラッセル野村Large Cap(除く金融)の四半期・増収率および営業増益率、経常増益率の推移。(注2)2024年10-12月期までは実績値、2025年1-3月期は、2025年3月31日時点のQUICKコンセンサス予想が存在する企業のみで集計している。(注3)実績値からは、ソフトバンクグループを集計から除外している。2024年1-3月期以降はさらに公益セクターに属する企業を除外している。(出所)QUICKなどより野村證券投資情報部作成 製造業の業況感が改善するが 我が国においては、自動車の認証不正問題や当初想定以上の中国経済の減速などから、年度ベースで2022~2024年度の3期連続で、四半期ベースでは2023年7-9月期~2024年10-12月期までの6四半期連続で、鉱工業生産はマイナス(前年同期比)の展開が続いてきました。 2025年1-3月期の業績は、自動車を中心に挽回生産が進んだことや、電子部品などで在庫調整が進展したことなどから、生産活動が活発化し、久しぶりにほぼすべての輸出型製造業が業績のけん引役になる公算が大きくなっています。 なお、事前コンセンサスでは内需・サービス系は比較的控えめな印象ですが、人件費も含めたコスト上昇の転嫁は概ね順調に進んでいると見られ、業績の上振れが期待できます。 (注)ラッセル野村Large Cap(除く金融)の営業利益の、2025年1-3月期・業種別増減益寄与額。前年同期(2024年1-3月期)の利益額を100としている。2025年3月31日時点の市場コンセンサス予想で、コンセンサス予想が存在している企業のみ集計している。(出所)野村證券投資情報部作成 不透明な業績をとりまく環境 2025年4~5月にかけての2024年度通期決算発表シーズンでは、例年以上に新年度(2025年度)業績の行方に注目が集まると見られます。 まず、2025年度の業績を取り巻く環境を整理しておくと、2024年10-12月期決算が出そろった2025年3月月初時点で、野村證券では2025年度以降の業績予想前提を150円/米ドルとおいていました。その後、為替市場ではトランプ政権の関税政策の影響を憂慮し、4月14日時点では143円/米ドルにまで円高が進んでいます。このままの水準が続くと、2024年度比で10円/米ドル前後の円高となり、業績への影響は無視できないものになるでしょう。 (注)図は、米ドル円レートの年度平均値(赤線)と、月次平均レート(灰色線)の推移。月次の直近値は、2025年4月14日。(出所)野村證券投資情報部作成 4期ぶりに前年度比で増加が見込まれていた2025年度の鉱工業生産も予断を許さない状況です。4月2日のトランプ政権による相互関税の公表を受けて、野村證券では2025年度の生産の見通しを3月月初時点の前年度比+1.9%から同+0.8%にまで引き下げました。ただ、トランプ政権の関税政策の実体経済への影響を現時点で正確に把握することは困難で、2025年度の業績をとりまく状況は不透明です。 (注)図は、年度ベースの鉱工業生産(赤線)と、四半期ベースの鉱工業生産(灰色線)。2024年10-12月期までが実績値、2025年1-3月期以降は2025年4月14日時点の野村證券経済調査部による予測値。 (出所)野村證券投資情報部作成 流動的な2025年度企業業績予想 2025年3月月初時点の、生産+1.9%(前年度比)、150円/米ドルの組み合わせでは2025年度は1桁台半ばの増益率が期待できました。ただ、現時点での生産+0.8%(前年度比)、140円/米ドル台半ばの組み合わせでは、微増益しか期待できません。 メインシナリオが微増益予想のもとでは、日々の状況の変化により、将来の利益イメージは上下に振れやすくなります。その結果、容易に減益予想の見方が浮上しがちです。こうした状況が株価の不安定さを増す要因の一つになっていると見られます。 (注)鉱工業生産および米ドル円レートを変化させた場合の2025年度推計経常増益率。1米ドル当たり1円の円安で0.4%弱、1%の鉱工業生産増で3%強、経常利益が増加する前提で試算を行っている。(出所)野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 伊藤 高志) ご投資にあたっての注意点
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昨日 12:00
【5月の投資戦略】悪材料が出揃えば、利益成長への信頼回復とともに株価も復調へ
目次・衝撃的なトランプ政権の関税政策・金融市場は年央にもFRBの利下げを見込む・悪材料出尽くし後は利益成長への信頼感が回復へ・米中対立は厳しい状況・関税交渉の進展が日本株市場の信頼回復の第一歩 衝撃的なトランプ政権の関税政策 米国トランプ政権の関税政策は衝撃的で、主要国の株価は急落しました。一方、株価のバリュエーション(評価指標)も大きく切り下がり、株式市場は経済や企業業績の悪化を、早くも一定程度織り込んだとみます。トランプ政権が打ち出した厳しすぎる関税政策は持続可能性に乏しく、各国政府との交渉によって、譲歩や着地点を探る動きが進むでしょう。当面は、株式市場に不透明さは残るものの、今後は、関税の影響を受けにくいテクノロジー分野を中心に、企業業績の増加や株式市場の信頼感の回復が進むとみます。 金融市場は年央にもFRBの利下げを見込む トランプ政権の関税政策により、主要国で景気下押し圧力が強まっています。関税交渉の出発点は相当厳しい条件から始まりました。ただし、最終的な着地点では、主要国の景気後退は回避されると予想します。一方、中国に対しては経済の覇権争いを背景に、米国との交渉は厳しいものになるでしょう。経済にインフレなどの影響が現れるのは、これからとみます。FRBは、景気下押し圧力と物価上昇圧力に挟まれ、難しい選択を迫られる可能性があります。政策判断の見極めに向けて、FRBは状況が明らかになるまで、金融政策の現状を維持するとみますが、金融市場は年央にも利下げが開始されることを織り込んでいます。 悪材料出尽くし後は利益成長への信頼感が回復へ 米国企業業績のけん引役は、テクノロジーセクターとみます。特に、AI関連やクラウドサービスは政府による支援もあり、中長期的な成長期待も崩れていません。サービス分野は、相対的に関税の影響も限定的です。株式市場の悪材料の出尽くしが進めば、利益成長への信頼感の回復と共に、バリュエーションも再び上昇し、株価は復調に向かうとみます。 米中対立は厳しい状況 欧州もトランプ政権の関税政策の影響により、景気への下押し圧力が懸念されます。ECBの追加利下げが、予想されます。中国は、米国から145%の輸入関税率が発動され、逆に125%の報復関税を課すなど、貿易取引が持続不能な状況に陥っています。スマホなど中国からの代替が困難な製品に対する猶予措置も講じられていますが、貿易取引を通じたサプライチェーン(供給網)の混乱が需給の歪みを生み、様々な影響を及ぼすことが懸念されます。 関税交渉の進展が日本株市場の信頼回復の第一歩 日本の貿易動向に関する不透明感は強まっているものの、トランプ政権とは最優先で関税交渉が行われています。雇用のひっ迫や賃金上昇が続く中、日本銀行は将来における利上げ姿勢を崩していません。しかし、その判断実施に向けては、経済情勢を丁寧に見極めるための時間が必要とされるでしょう。米国の政策に対する不透明さから米ドル安が進み、短期的には米日金利差と米ドル円相場の連動性が失われています。この様な外部環境の下、日本企業の業績予想は、保守的な期初計画になることが予想されます。ただ、2025年度の主要企業の経常利益は、現時点で増益が見込まれています。日経平均株価のPER(株価収益率)は13倍台へと大きく低下し、悪材料の織り込みが進みました。トランプ政権との関税交渉で譲歩が認められ、景気悪化懸念の後退と共に企業業績への信頼感が戻ることで、株価は徐々に復調に向かうとみます。野村證券は、2025年末の日経平均株価を36,000円と予想します。 投資戦略については、トランプ政権の政策判断により、国内外の株式市場のボラティリティー(変動率)が高まる局面はまだあるとみます。しかし、関税の影響を受けにくいテクノロジーやサービスなどの業種を基軸とする見方は変えず、実力以上に株価の調整が進んだ企業は、株式市場の安定化と共に再評価の余地も大きいとみます。 (野村證券投資情報部 小髙 貴久) ※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 5月号」(発行日:2025年4月21日)「投資戦略の概要」より※掲載している画像はイメージです。 Nomura21Global参考銘柄について ご投資にあたっての注意点
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【動画 3分チャート塾】シーズンⅣ:第9回 4種の指標を同じチャートで比較したらどうなる?
「動画 3分チャート塾」は、株価チャートの見方を学びたい初心者から中級者の方向けの動画シリーズです。 シーズンⅣ「相場の過熱感を測るには?」最終回の今回は、これまでのまとめとして、同じチャート上で4種類の指標を比較するケースについて説明しています。 シーズン I:意外と知らないローソク足(全8回)ローソク足の基本の読み方や中長期的な相場の捉え方などについてわかりやすく解説していきます。シーズンII:相場の見方の強い味方、移動平均線(全9回)移動平均線の基礎や活用法についてわかりやすく解説していきます。シーズンIII:上値、下値のメドを探ろう(全10回)上値、下値メドの探り方についてわかりやすく解説していきます。シーズンIV:相場の過熱感を測るには?(全9回)オシレーター系指標についてわかりやすく解説していきます。シーズンV:トレンドラインを引いてみよう(全9回)トレンドラインについてわかりやすく解説していきます。 ご投資にあたっての注意点
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04/26 12:00
【注目トピック】日本株決算、1-3月期は堅調に推移か 今後の展望は?
※画像はイメージです。 日本:2025年1-3月期決算プレビュー 2025年1-3月期決算発表が始まる 2025年4月下旬より、2024年度通期業績の発表が本格化します。2024年度の最後の四半期にあたる2025年1-3月期の、ラッセル野村Large Cap(除く金融)の市場コンセンサス推定では、増収率が前年同期比+2.6%、営業増益率は同+15.2%となっています。 2025年1-3月期は、認証不正問題などで生産活動が低調な状態が続いていた自動車で挽回生産が本格化したことや、電子部品や資本財の一部で在庫調整が進展したことなどから、久しぶりに二桁増益になったと見られます。 なお、市場コンセンサスの推定営業増益率は、鉱工業生産や為替レートから考えられる増益率に対してやや高い印象ですが、人件費も含むコスト上昇の商品・サービス価格への転嫁が順調に進んでいることから内需・サービス系の業種の活躍も期待できるため、コンセンサス程度の増益率達成のハードルはそれほど高くはないでしょう。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)ラッセル野村Large Cap(除く金融)の四半期・増収率および営業増益率、経常増益率の推移。(注2)2024年10-12月期までは実績値、2025年1-3月期は、2025年3月31日時点のQUICKコンセンサス予想が存在する企業のみで集計している。(注3)実績値からは、ソフトバンクグループを集計から除外している。2024年1-3月期以降はさらに公益セクターに属する企業を除外している。(出所)QUICKなどより野村證券投資情報部作成 製造業の業況感が改善するが 我が国においては、自動車の認証不正問題や当初想定以上の中国経済の減速などから、年度ベースで2022~2024年度の3期連続で、四半期ベースでは2023年7-9月期~2024年10-12月期までの6四半期連続で、鉱工業生産はマイナス(前年同期比)の展開が続いてきました。 2025年1-3月期の業績は、自動車を中心に挽回生産が進んだことや、電子部品などで在庫調整が進展したことなどから、生産活動が活発化し、久しぶりにほぼすべての輸出型製造業が業績のけん引役になる公算が大きくなっています。 なお、事前コンセンサスでは内需・サービス系は比較的控えめな印象ですが、人件費も含めたコスト上昇の転嫁は概ね順調に進んでいると見られ、業績の上振れが期待できます。 (注)ラッセル野村Large Cap(除く金融)の営業利益の、2025年1-3月期・業種別増減益寄与額。前年同期(2024年1-3月期)の利益額を100としている。2025年3月31日時点の市場コンセンサス予想で、コンセンサス予想が存在している企業のみ集計している。(出所)野村證券投資情報部作成 不透明な業績をとりまく環境 2025年4~5月にかけての2024年度通期決算発表シーズンでは、例年以上に新年度(2025年度)業績の行方に注目が集まると見られます。 まず、2025年度の業績を取り巻く環境を整理しておくと、2024年10-12月期決算が出そろった2025年3月月初時点で、野村證券では2025年度以降の業績予想前提を150円/米ドルとおいていました。その後、為替市場ではトランプ政権の関税政策の影響を憂慮し、4月14日時点では143円/米ドルにまで円高が進んでいます。このままの水準が続くと、2024年度比で10円/米ドル前後の円高となり、業績への影響は無視できないものになるでしょう。 (注)図は、米ドル円レートの年度平均値(赤線)と、月次平均レート(灰色線)の推移。月次の直近値は、2025年4月14日。(出所)野村證券投資情報部作成 4期ぶりに前年度比で増加が見込まれていた2025年度の鉱工業生産も予断を許さない状況です。4月2日のトランプ政権による相互関税の公表を受けて、野村證券では2025年度の生産の見通しを3月月初時点の前年度比+1.9%から同+0.8%にまで引き下げました。ただ、トランプ政権の関税政策の実体経済への影響を現時点で正確に把握することは困難で、2025年度の業績をとりまく状況は不透明です。 (注)図は、年度ベースの鉱工業生産(赤線)と、四半期ベースの鉱工業生産(灰色線)。2024年10-12月期までが実績値、2025年1-3月期以降は2025年4月14日時点の野村證券経済調査部による予測値。 (出所)野村證券投資情報部作成 流動的な2025年度企業業績予想 2025年3月月初時点の、生産+1.9%(前年度比)、150円/米ドルの組み合わせでは2025年度は1桁台半ばの増益率が期待できました。ただ、現時点での生産+0.8%(前年度比)、140円/米ドル台半ばの組み合わせでは、微増益しか期待できません。 メインシナリオが微増益予想のもとでは、日々の状況の変化により、将来の利益イメージは上下に振れやすくなります。その結果、容易に減益予想の見方が浮上しがちです。こうした状況が株価の不安定さを増す要因の一つになっていると見られます。 (注)鉱工業生産および米ドル円レートを変化させた場合の2025年度推計経常増益率。1米ドル当たり1円の円安で0.4%弱、1%の鉱工業生産増で3%強、経常利益が増加する前提で試算を行っている。(出所)野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 伊藤 高志) ご投資にあたっての注意点