30,000円到達の背景と今後の伸びしろ

日経平均株価は2021年9月以来となる30,000円に到達しました。この背景を時系列順に振り返ると、まずは米欧の金融不安が収まったことが挙げられます。続いて、4月28日には植田総裁が就任後初となる金融政策決定会合で、YCC(イールドカーブ・コントロール)の継続を決定し、金融引き締めへの懸念が和らぎました。さらに、企業決算が予想以上に好調だったことも、株価上昇の要因となりました。これらの要素が組み合わさり、5月以降は日本株が欧米株に対して高いパフォーマンスを発揮しています。

日本株の中長期的な強気を支える要素としては、以下の点が挙げられます。一つ目は、明確なリスクが存在しないことからくる相対的な安心感です。二つ目は、インバウンドの回復を背景に、景気が上向くという期待があります。三つ目は、物価と賃金の上昇により、デフレからの脱却が進んでいることです。そして最後に、東京証券取引所からの要請によるガバナンスの強化が挙げられます。

海外の投資家が日本株への投資を増やす余地もまだ大きいとみています。さらに、これからのイベントを見ても、好材料が優勢になりそうです。広島でのG7サミット後には、解散・総選挙への期待が高まる可能性があります。一方で、YCCの修正についての警戒感はそこまで強くありません。金融市場では、「植田総裁は突然の政策変更を行わない」という認識が広く受け入れられつつあります。

先行きの業績下振れリスクは要警戒

しかし、海外の状況については下方リスクが完全に払拭されているわけではありません。米国の債務上限問題に関しては、両当事者からは楽観的なコメントが出ていますが、交渉が具体的に前進しているとは言えません。また、中国の景気については、4月の経済低迷が一層明らかになっており、回復の兆しもまだ見られません。この点は、日本企業の「好調な決算」がまだ反映できていないリスクとなり得ます。そして、期初の業績予想が保守的でなくなっている可能性も、懸念事項の一つです。

需給が主導して株価上昇が続く可能性もありますが、日本株については引き続き、外需に対するディフェンシブ性を優先すべきと考えます。同一セクター内で見れば、在庫リスクが低い銘柄が優位と考えられます。バリューとグロースの比較では、FRB(米連邦準備理事会)のタカ派化により金融環境が引き締まるリスクは緩和されていると考え、グロースが優位だと見込んでいます。推奨するセクターとしては、食品、医療機器、インバウンド関連を挙げます。ファクトリーオートメーション(FA)関連については、中国経済に敏感な商品であるホットコイルや鉄鉱石の価格が反転するまで、押し目待ちの姿勢を保ちたいと思います。

(FINTOS!編集部)

要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 注目点とトピック(2023年5月18日)(5月18日配信)」(プレミアムプラン限定)

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