S&P500指数は4,100ポイント前後で膠着状態となっています。下押し材料としては、中堅・地方銀行を巡る信用リスクが燻っていること、連邦債務の法定上限の期限(イエレン財務長官は6月1日と表明)を目前にして民主党、共和党の指導部の交渉が行き詰まっていること、景気後退(リセッション)の可能性が更に高まっていること、などです。
一方、下支え要因としては、先行きの不透明感が強い中でも、米国主要企業のボトムラインである純利益が概ね堅調さを維持していることが挙げられます。リフィニティブによる5月12日時点の集計によれば、S&P500構成企業で1-3月期決算発表を終えた457社のうち、73.5%の企業のEPS(1株当たり利益)がアナリスト予想平均を上回っています(2022年12月-2023年2月期、2023年2-4月期決算企業も含む)。
今次決算は目線が低いことや、長期的に(1994年以降の平均)市場予想を上回る比率は6割を超えているとの傾向があるにせよ、不透明要因が多い中でも小幅な減益にとどまったことは市場にそれなりの安心感をもたらしています。ただし、従来は1-3月期が減益率の底との見通しでしたが、足元の予想では4-6月期に先送りとなっているため、余談は許しません。
他方、市場の変動要因(ボラティリティー)として金融政策を巡るFRB(米連邦準備理事会)と市場期待のギャップが挙げられます。3月FOMC(米連邦公開市場委員会)で公表された参加メンバーの政策金利見通しによれば、今年一杯は政策金利の据え置きが想定されています。一方、FF(フェデラル・ファンド・レート)金先市場では今年の夏場から利下げを織り込んでいます。
市場では、中堅・地方銀行の破綻や一部で預金流出が続く現状を受けて、金融政策の運営上、相当程度配慮するのではと見立てています。金融当局の迅速・機動的な対応により、金融システム全体の健全性は保たれている、との評価から破綻直後に高まった利下げ期待からは利下げ幅は縮小してはいますが、利下げパスを描いていることに変わりはありません。
一方、FRBサイドからは後1-2回の利上げを主張する発言も見られますが、総じて利上げは終了に近い、とのコンセンサスが窺われます。しかし、ハト派(インフレよりも景気重視)のメンバーでさえも利下げを示唆する発言は見られません。インフレ自体はピークアウトしていますが、下図の通り、遅行系列である労働関連の統計では依然高い伸びが続いています。従って、FRBの引き締めスタンス継続を市場が改めて認識する形で、今後、両者のギャップが収束してゆくものと思われます。その過程で徐々に市場のボラティリティーが安定化してゆくでしょう。