結論:米国を中心とする主要国の金融引き締めが終了する中で景気と企業業績への信頼感が回復し、株価の追い風になるだろう

目次
・米国利上げ終了は株価の転換点
・米国インフレは十分減速していない
・米国企業業績は2023年上半期が底
・ユーロ圏は利上げが続く/中国景気は復調
・日本の景気復調要因は豊富
・日本企業の資本コストを意識した姿勢の変化に注目
・投資戦略

米国利上げ終了は株価の転換点

日米で景気敏感株が上昇しています。米国中小銀行の経営への懸念など、局所的なリスクはあるものの、米国の利上げが最終局面を迎える中で、長期金利は落ち着いており、株価の支援材料となっています。我々は米国の利上げ終了は大きな転換点となり、インフレの低下が確認され、企業業績の底打ちが視野に入れば、株価の復調は明確になるとみてきました。インフレの低下は着実なものになるまでもう少し時間を要するとみられますが、2023年1-3月期決算発表を受け、2023年上半期に日米企業業績は底打ちとの確度が高まっています。

米国インフレは十分減速していない

主要国・地域の景況感は、製造業は半導体やPC、スマホなどのエレクトロニクス製品の調整局面にあるため悪化していますが、非製造業は好調を維持しています。米国では、中小銀行の経営難の問題もあり、金融機関の貸出し態度は、ビジネス向けを中心に厳格化が進んでいます。消費の伸びは減速していますが、住宅市況は既に十分低下しており、大底圏にあるとみられます。雇用のひっ迫状況の緩和は緩やかに進んでいますが、賃金上昇率はインフレ沈静化には程遠い高い伸び率が続きます。

米国企業業績は2023年上半期が底

FRBは、次回6月のFOMCで利上げを終了させるか、判断することになるでしょう。ただし、FRB高官の殆どが、インフレ状況から年内の利下げに否定的とみられます。市場の金利は年内の利下げを織り込んでいるようですが、両者の金利観の差が埋まる過程で、金利のボラティリティー(変動率)が高まる可能性には注意が必要でしょう。2023年1-3月期の企業業績は、事前の市場予想を上回る決算発表が続き、2023年上半期が業績の底になるとの確度が強まりました。特に先んじてリストラを行った大手テクノロジー企業は、業績への信頼感が高まっています。

ユーロ圏は利上げが続く/中国景気は復調

ユーロ圏のインフレ率は日米よりも高く、夏以降にかけても利上げが続く可能性はあります。ただし、長期金利のボラティリティーは以前よりも低下しています。中国では、ゼロコロナ政策の終了に伴う経済活動の再開が進み、生産の増加が価格押し下げに寄与している面もあります。

日本の景気復調要因は豊富

日本では自動車を中心に生産の増加が加速しています。半導体やPC・スマホなどのエレクトロニクス製品の市況は調整局面にありますが、半導体については地政学リスクの回避や政府の支援姿勢などから、日本での投資期待が強まっています。訪日外国人の増加や30年ぶりとなる歴史的な賃上げは、国内経済の支援材料です。

日本企業の資本コストを意識した姿勢の変化に注目

日本のインフレ率は、年内3%台の上昇率が続くと野村證券は予想しますが、日本銀行は2023年度後半にインフレ率が減速するとみており、金融緩和の修正に慎重姿勢です。日本の金利は上昇しづらく、米ドル円相場は米国利上げ終了後の次の材料が出るまで、横ばい圏での推移が続くとみられます。2023年度の企業業績は、+3.3%と4期連続の経常増益が見込まれています。加えて、企業は資本コストや資本の収益性を意識した経営の説明が求められることとなりました。投資家の期待の高まりにより、足元の株価が押し上げられた面もあります。

投資戦略

投資戦略については、米国を中心とする主要国の金融引き締めが終了する中で景気と企業業績への信頼感が回復し、株価の追い風になるとみます

(野村證券投資情報部 小髙 貴久)

※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 6月号」(発行日:2023年5月22日)「投資戦略の概要」より

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