公的年金額は、なかなか上がらないという論調が昨年までは多かった。しかし今年の動きはこれまでとは少し違うようだ。

具体的には、今年度の年金受給額の改定は、67歳以下の方は前年度から2.2%増、68歳以上の方は1.9%増になった。この動きが今後も続くのか考察してみたい。その為にまず改定の仕組みを簡単に説明する。

2021年度からの新ルールにおいては、

①67歳以下の方は、現役世代の「賃金変動率」を用いた改定になる。

②68歳以上の方は、「賃金変動率」か「物価変動率」のどちらか低い方の変動率に合わせた改定になる。

①、②の段階がプラス改定の時には、そのプラスの範囲で「マクロ経済スライド調整率」を差引く。マイナス改定の場合は、プラス改定の年度まで持ち越される。

※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。

「マクロ経済スライド調整率」は、現役人口の減少と平均余命が伸びることによる現役世代の負担を出来るだけ軽減させるために算出している。

年金額のプラス改定という、新たな動きが継続する為には、①や②で用いられる「賃金変動率」及び「物価変動率」がプラスになることが必要である。しかし、考え方としては、年金の直接的な原資となる賃金の上昇の方がより重要である。今年度の参考指標では、賃金の上昇が物価の上昇を上回った。

昨年から、「賃上げ」や「物価上昇」の話題には事欠かない。年金額改定に使う賃金の指標は2年度前から4年度前までの過去3年度の平均をとって平準化しているので、これから徐々に上がってくる可能性も考えられる。これからの動きが楽しみだ。

(野村證券投資情報部 山本 昌幸)

※野村週報 2023年6月5日号「投資の参考」より

【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら

※掲載している画像はイメージです。

ご投資にあたっての注意点