1分で読める今週の米国株

6月9日~20日の振り返り

(19日は、ジューンティーンス(奴隷解放記念日)で米国株式市場は休場でした)

注目された6月FOMC(米連邦公開市場委員会)では、政策金利が据え置かれた一方、年内2回の追加利上げの可能性が示唆されました。タカ派的なサプライズとなったにも関わらず、週を通せば米国株の主要3指数は揃って上昇しました。

今週のPoint1. なぜタカ派サプライズでも上昇したのか

FOMC後の記者会見でパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長は、政策金利を据え置いた理由について「これまでの政策金利引き上げの効果を見極めるため」「今後の政策金利についてはデータ次第」と言及しました。FRBは、政策スタンスそのものを従前から大きく変えなかったとも考えられます。加えて、先週発表の5月CPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)はともに市場予想を下回り、インフレ鈍化を示唆するものでした。市場は総じてこれらを安心材料と捉えたようです。

今週のPoint2.パウエル議長の議会証言

FRBが今後の利上げ可能性を示唆した背景には、6月FOMCで利上げを見送り、今後も追加利上げがないという姿勢を明確に打ち出すと、市場参加者は、その先の利下げ開始時期などを織り込み始めるなど、これまで行ってきた金融引締めの効果が減殺されてしまうことから、そのような事態を避けたいとの考えがあると推察されます。

こうした意図と株式市場の上昇での反応を考えると、21日(水)と22日(木)に予定されているパウエルFRB議長による半期議会証言は重要です。FRBの現状認識と市場へのメッセージを改めて確認したいと考えます。

今週のPoint3.アクセンチュアなど3-5月期決算発表が相次ぐ

3-5月期決算発表が本格化します。先週2-5月期決算を発表したソフトウェアセクターのオラクルやアドビなどは市場予想を上回る決算を発表しており、こうした流れが続けば、S&P500構成企業の8割以上を占める4-6月期企業決算へも期待が高まります。まずは、22日(木)発表のアクセンチュアに注目したいと考えます。

(以上、「1分で読める今週の米国株」)

もっと知りたい!経済指標&金融政策

長期金利4%超えはありうるか?

6月FOMCでパウエルFRB議長は明確なフォワードガイダンス(先行きの指針)を示しませんでしたが、年内あと2回の利上げが想定されていることが示唆されました。これに対して、市場は年内あと1回の利上げしか想定していません。計0.5%ポイントの追加利上げが必要になるほど景気・インフレが堅調に推移し続ければ、市場では年内の利上げ期待が高まるだけでなく、2024年の利下げ時期が後ずれし、米10年国債利回りが4%超となるリスクが高まると考えられます。利回りが4%に接近する過程は、2022年末にかけて米国株が下落した期間とも重なるため、仮に市場が4%超を織り込めば、株価の変動も大きくなることが予想されます

ただし、野村では2023年後半以降には景気減速が強まり利上げは7月の0.25%ポイントが最終と想定しています。よって、4%超はリスクシナリオの位置づけです。また、11月の利上げ判断には7月以降3ヶ月分の指標が必要となるため、利上げ期待が目先で急拡大することは考えにくい状態です。

もっと知りたい!決算発表

3-5月期決算発表が本格化します。足元のソフトウェアセクターの業績はおおむね好調であり、今週は22日(木)発表のアクセンチュアに注目したいと考えます。

アクセンチュアとは

当社は世界的なコンサルティングサービス大手で、IT分野に強みを持ちます。売上高では、コンサルティングとマネージドサービス(バックオフィス)のセグメントで二分されています。

アクセンチュアを見る意義は各セクター・地域の「強さ」が分かること

2022年12月-2023年2月期決算の売上高は現地通貨建て前年同期比+9%と、ガイダンスの上限となりました。マネージドサービスが同 +12%と2桁増収を記録し、コンサルティングが一桁台半ばの減収となったことをカバーしました。業種別では、5つのうち3つの業種(金融・ヘルスケア・資源)で2桁増収を記録しています(製造・流通は同 9%増、通信・メディア・ハイテクは同横ばい)。こうしたセクターごとの強弱は、他セクターの銘柄を見るうえでも参考になります。また、地域別では米国がけん引したほか、欧州も売上高で同+12%と予想外の底堅さをみせ、ドイツ、イタリア、フランスが好調でした。

受注は好調だが、会社は慎重

2022年12月-2023年2月期の受注は220億ドルと2022年9月-11月期の160億ドルから増加し、過去最高を更新しています。会社は2023年3-5月期の受注について、北米の通信・メディアからの需要が弱いことに加え、全体的に契約規模が縮小傾向にあることから、伸びが鈍化するとの見通しを示しており、ガイダンスは成長率の上限を1%ポイント下方修正しています。当社がこうした見通しを上回ることができれば、当社の株価だけでなくソフトウェアセクター全体にも追い風となるでしょう。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点