結論:企業業績は上方修正局面に入ったと予想。景気敏感株など、これまでの株価上昇を踏まえたセクター選別が重要に
目次
・企業業績は上方修正局面入り
・米国で年内追加利上げ見通しも長期金利は落ち着いている
・米国ではテクノロジー企業が利益成長のけん引役に
・ユーロ圏は景気後退入りも利上げが続く
・中国で景気対策期待
・日銀は金融緩和を維持
・33年ぶりの株高の背景
企業業績は上方修正局面入り

日米で景気敏感株の上昇が続いています。米国やユーロ圏ではインフレが粘り強く、利上げ局面は終盤を迎えつつありますが、各中央銀行は追加利上げが必要との見方を示しています。我々は米国の利上げ終了は大きな転換点となり、インフレの低下が確認され、企業業績の底打ちが視野に入れば、株価の復調は明確になるとみてきました。利上げ終了とインフレの低下にはもう暫く時間を要するとみられますが、日米で企業業績の上方修正が確認され、株価の追い風になっています。
米国で年内追加利上げ見通しも長期金利は落ち着いている

主要国・地域の景況感は、製造業でエレクトロニクス製品の循環的な調整が続いており、日本を除いて悪化しています。一方、非製造業は相対的に良好です。米国では、これまでの利上げや金融機関の貸出態度の厳格化により、景気悪化が懸念されています。しかし、個人消費や雇用環境は良好です。そのため、コアのインフレ率の減速は限定的で、FRBは年内0.25%ポイント2回分の追加利上げ見通しを示しています。一方、長期金利は3%台後半で落ち着いており、市場は早晩利上げは終了し、インフレ再加速のリスクは低いとみているようです。
米国ではテクノロジー企業が利益成長のけん引役に

米国企業業績は2023年前半を大底に、後半からは増益転換が予想されています。業績修正は上方修正局面入りしており、特に、リストラを先行させていた大手テクノロジー企業については、2023年4-6月期にも増益に転じる企業が増えるとみられます。2024年度にかけてもテクノロジー企業が利益成長のけん引役になるでしょう。株式市場の不透明さを示すVIX指数は大幅に低下し、テクノロジーのウエイトの高いナスダック総合指数の上昇が顕著です。
ユーロ圏は景気後退入りも利上げが続く

ユーロ圏は2四半期連続のマイナス成長となり、小幅ながらも景気後退局面入りとなりました。コアのインフレ率は高止まりしているため、7月にも追加利上げが見込まれます。ただし、ユーロ圏主要国の長期金利のボラティリティー(変動率)は低下しています。
中国で景気対策期待

中国では足元で景気が失速しつつあります。中国政府は利下げを実施し、不動産市場や内需を支えるために、広範にわたる経済対策を準備しているようです。
日銀は金融緩和を維持

日本の製造業の挽回生産は、品目によって増減の方向に濃淡が出てきています。その中で、米国依存度の高い自動車産業の増産の確度は高いとみられます。春闘では31年ぶりの賃上げとなりましたが、実際の賃金上昇はこれからです。インフレ率は3%を超えていますが、日銀は将来のインフレの下振れリスクを警戒し、金融緩和解除への慎重姿勢を崩していません。日米金利差や金融政策の方向性の違いから、1米ドル=140円前後へと円安が進んでいます。
33年ぶりの株高の背景

日経平均株価は33年ぶりの高値となりました。製造業を中心とする業績上方修正や、バリュエーションを長期で見ると割高感は限定的なこと、資本コストや株価を意識した経営が強化されるとの期待が背景にあります。このような構造的な変化への期待は、短期間で失敗/失望の評価が下される可能性は低く、今般の株高を正当化しているものとみられます。
(野村證券投資情報部 小髙 貴久)
※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 7月号」(発行日:2023年6月19日)「投資戦略の概要」より
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