結論:日本では製造業、米国ではテクノロジー関連などの景気敏感株への選好が強まる。半導体関連企業の業績復調のタイミングにも注目。

目次
・米国でソフトランディングの蓋然性が高まる
・米国利上げは最終局面
・米国ではテクノロジー企業が利益成長のけん引役に
・ユーロ圏と中国は景気の低迷が強まる
・日本の企業業績は連続増益へ

米国でソフトランディングの蓋然性が高まる

米国では、1980年代のオイル・ショック時以来の速さと幅で利上げが行われてきました。逆イールド(長短金利の逆転)など、景気悲観指標も一部に見られますが、実体経済は底堅く推移しています。市場の景気悪化時期の予想は時間と共に後ろ倒しが続いています。米国政府高官の多くからは、景気後退は想定されないとの発言が増え、「ソフトランディング」シナリオの蓋然性が高まっています。我々は、米国の利上げ終了は大きな転換点となり、インフレの低下が確認され、企業業績の底打ちが視野に入れば、株価の復調は明確になるとみてきました。米国の利上げは最終局面にあり、2023年4-6月期は企業業績の底になる見通しが強まっています。

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米国利上げは最終局面

米国景気は消費や雇用などで緩やかに減速する一方、住宅市況のように底打ちを示すものもあります。利上げが近く終了したとしても、インフレの減速は緩やかなため、年内の利下げ開始の可能性は低いでしょう。8月24-26日のジャクソンホール会合におけるパウエルFRB議長の発言で、市場の金利観が揺れ動く可能性はありますが、インフレは緩やかながらも着実に低下しており、長期金利が急上昇するリスクは限定的とみられます。

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米国ではテクノロジー企業が利益成長のけん引役に

米国企業の2023年4-6月期決算が始まりましたが、当四半期が業績の当面の大底とみられます。中小金融機関の経営難が懸念されていますが、序盤に発表された大手金融機関の決算に、問題はないようにみられます。先んじてリストラを行っていたテクノロジー企業を中心に、増益転換が予想されており、同セクターが今後の業績のけん引役になるでしょう。

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ユーロ圏と中国は景気の低迷が強まる

米国では8月23日に共和党の候補者討論会が開かれます。2024年の大統領選挙に向けて候補者の絞り込みが進むとみられます。米国の輸入には減少がみられ、ユーロ圏、中国共に景気の低迷が強まっています。ユーロ圏は、インフレの抑制を着実なものとするため、ECBは金融引き締め姿勢を続けざるを得ません。中国では、消費喚起策なども発表されましたが、地方政府の融資平台(LGFV)を通じた債務への対応の必要性が高まっています。金利減免や返済期限の延長など、過去にも行われた手段による債務軽減措置が取られる可能性が高いでしょう。

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日本の企業業績は連続増益へ

日本の輸出からみて、円安やエネルギー価格の低下に伴う交易条件の改善により、輸出企業の採算は改善しています。国内の半導体関連投資の拡大など、企業の設備投資意欲は旺盛です。人口動態から、人手不足による賃金上昇は構造的に続く可能性があります。ただし、需給ギャップなどでみて、物価の持続的・安定的な2%目標の達成にはもう暫く時間がかかるとみられます。日本銀行が副作用を軽減するために、仮にイールドカーブ・コントロールを修正したとしても、市場の金利変動は一時的で、最終的には日本銀行の強い金融緩和姿勢に金利の見方は収れんしてゆくとみられます。米ドル円相場は日米金利差に沿って推移するとみられます。日本企業の業績は、1米ドル=130円前提の予想が過半を占めており、同120円といった極端な円高へ進まない限り、連続増益は続くとみられます。株価のバリュエーションでみた割高感も限定的で、野村證券は2023年末の日経平均株価の見通しを34,000円と予想します。

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(野村證券投資情報部 小髙 貴久)

※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 8月号」(発行日:2023年7月24日)「投資戦略の概要」より

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