2023年7月の訪日外国人客数は、232万600人となり、200万人を突破した前月から約12%増加した。コロナ禍前の19年7月に比べると8割に迫る水準となるなど、着実な回復を続けている。
注目されるのは、訪日外国人の消費額、いわゆるインバウンド需要の増加である。観光庁が発表した23年4~6月期の訪日外国人消費動向調査によると、訪日外国人1人当たりの消費額(旅行支出)が、20.5万円とコロナ禍前(2019年4~6月期)より5万円程度高くなっている。
この最大の理由として、この間の円安進行によって、日本への旅行が割安になり、滞在期間が長期化したことが挙げられる。
また、コロナ禍前と比べると買い物を中心とする「モノ消費」から体験を重視する「コト消費」へとインバウンド需要の変化もみられている。1人当たりの消費額では、買い物代が減少する一方、テーマパークや現地ツアー・観光ガイドなどの娯楽・サービス費や宿泊費の増加が顕著である。
このようなインバウンド需要の変化が、宿泊や飲食、陸運、レジャーなど体験型の商品やサービスを提供する企業の業績押し上げに寄与している。一方、株式市場の評価はまちまちで、インバウンド需要の持続性とそれに伴う企業業績の拡大に対して懐疑的な見方があるとみられる。
今後、企業が魅力あるコンテンツを充実させ、日本でしか体験できない「コト消費」を提供することができれば、日本の観光地としての付加価値が高まり、インバウンド需要の継続的な増加が期待される。
飲食やホテル業の中には、日本の文化や歴史に触れながら食事や宿泊ができる施設を提供し、リピート客を獲得している企業もある。今後、こうしたコト消費に関連する企業の動向が注目される。
(野村證券投資情報部 澤田 麻希)
※野村週報 2023年8月28日号「投資の参考」より
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