ChatGPTなど生成AI(人工知能)をビジネスに取り入れる企業が増えている。ゲーム開発の現場でも活用が注目される。

従来、ゲーム開発の現場では、Unity やUnreal Engineなどのゲームエンジン(グラフィックや動作処理などの多くのプログラミング要素があらかじめ実装されたソフトウェア)を利用してきた。ゲームエンジンの活用は、①膨大なプログラミング時間や人員を削減できることや、②最小限のコストでPC やコンソール、スマートフォンなど複数のプラットフォーム向けにプログラミングができることなどの効用をもたらした。その結果、安価にインスタントゲームを生産できるようになったほか、ゲームの質の向上にもつながった。ゲームエンジンはプログラミング領域でのDX(DigitalTransformation の略:デジタル技術を活用して業務プロセスを改善すること)に大きく貢献したと言える。

今後は、生成AI を導入することで、ゲームの企画やデザイン領域でのDX への貢献が期待される。従来は複数の企画担当者が意見を出し合い、企画書を作成してゲーム開発をスタートしてきた。これからは、企画担当者と生成AIが対話して企画書を作成するようになると想定される。生成AIは即座にアイデアを文章化したり、企画書を作成できることから、従来と比較してゲーム開発のスピードが加速しよう。

グラフィックにおいても、生成AIが作成したキャラクターを少数のデザイナーが手直しすることで省人化が進み、キャラクターの大量生成が可能になる。

生成AIの活用は、ゲームエンジンが導入された当時と比較しても、ゲーム開発の低予算化や、大量生産を更に進めるだろう。一方で、安価なゲームが大量に販売されるため、ユーザーに認知されないゲームタイトルも増えよう。生成AIの活用は、ゲーム開発の効率化を進める半面、マーケティングの重要性を高めることになる。

日本企業は「面白いゲームを作ること」に重点を置いてきたため、海外マーケティングは現地協力企業に一任することが多かった。省人化によって削減できるゲーム開発コストを広告宣伝に費やし、自社でマーケティング戦略を練るなど、マーケティング競争に打ち勝ち、事業収益を拡大させる企業の登場が待たれる。

(野村證券フロンティア・リサーチ部 俣野 洸太郎)

※野村週報 2023年8月28日号「新産業の潮流」より

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