主要国・地域の2023年4-6月期決算の概要が明らかになり、それを受けてアナリストによる将来の業績予想の見直しも進みました。本稿執筆時点で、主要国・地域の中で、日本と米国のみがリビジョン・インデックス(RI)がプラス、すなわち業績予想の上方修正が優勢となっています(図表1)。同時に、ここ数ヶ月間の主要国・地域の株価指数のリターン格差もおおむねRIの強弱で説明がつくようです。

このように、相対的に業績モメンタム面で優位に立っている日本と米国ですが、物色の傾向はまったく異なっています(図表2~3)。日本では2023年6月以降、バリュー・ファクターの有効性が顕著です。対して米国では逆にグロース・ファクターの有効性が際立っています。経験則上、各国間の有効ファクターは、年単位の長期の時間軸では、構造的な事情を反映して異なる方向性をたどることは珍しくありません。ただ、週~月単位といった比較的短い時間軸で、これほど異なった方向性となることは珍しいと思われます。

なぜ、これほど日米間で有効ファクターが異なるのか、今回は好調な業績モメンタムの範囲が日米で異なることに起因している、と考えられます。日本では7大セクターグループ中、6グループで業績上方修正が優勢、唯一下方修正が優勢な素材でもRIは改善傾向にあります(図表4)。すなわち、業績モメンタムが良好な領域が広く、その中から物色する投資家はバリュー性の高い銘柄を選ぶ可能性が高くなります。

一方、米国では上方修正優勢セクターの数と、下方修正優勢セクターが拮抗しています。さらに、現時点で上方修正が優勢でも、足元でRIが減速気味なセクターも存在します。また上方修正優勢セクターの中には、エネルギー価格に業績が連動しやすく、業績モメンタムの持続性に疑問符がつくエネルギーや公益事業なども含まれています。こうした、業績モメンタムの下では投資家は少数のグロース性の高いセクターを選好しがちになると考えられます。

最後に、今後の日米の物色を占ってみると、まず日本については(好調な業績モメンタムを背景に)今後仮に順調に株価が上昇した場合、徐々にバリュー面での魅力が低下することは避けられないでしょう。来期以降の日本全体の業績拡大を牽引する、グロース性の強い企業/業種の台頭が望まれます。逆に米国では、業績モメンタム回復セクターの偏りの是正が急務です。金利上昇や通貨高の圧力が低減した後の業績モメンタムの広がりが期待されます。

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(注1)図表1のリビジョン・インデックス(RI)の直近値は2023年9月6日時点。
(注2)図表2~3は日本(MSCI-Japan)、米国(MSCI USA)のPER及び利益成長率(今来期利益成長率)の累積ファクター効果。各々、最も高スコアな20%の銘柄の買いと、低い銘柄20%の売りのリターンスプレッド。
(注3)図表4は、S&P500及びラッセル野村Large Capのセクターを9/11時点のRIが良好な順に表示している。RNLはラッセル野村Large Capの略。業種名の右の矢印は2023年5月末と比べRIが改善(↑)、悪化(↓)していることを示している。
(出所)野村證券投資情報部作成

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