結論:米国の利上げは年内終了が明確となり世界的な調整局面は反転へ。金利は落ち着き、業績拡大が株価を支援するとみる

目次
・いずれ米国の利上げ局面は終了
・米国経済の成長が続く
・米国テクノロジー企業の業績拡大
・テクノロジー産業は調整から復調へ
・日本では生産財に好転の兆し
・日本企業の業績は上方修正へ

いずれ米国の利上げ局面は終了

米国では、FRBの金融引き締め姿勢が長期化するとの見方から、長期金利が上昇し、株価の上値が重くなっています。我々は、米国の利上げ終了は大きな転換点となり、インフレの低下が確認され、企業業績の底打ちが視野に入れば、株価の復調は明確になるとみてきました。FRBがインフレへの警戒を解くには時間がかかるでしょうが、業績の増益復帰の確度が高まりつつあり、次の決算シーズンで業績拡大が確認されれば、株価の追い風になるとみられます。

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米国経済の成長が続く

米国の成長率見通しに対する市場予想の上方修正が続き、景気後退予想はほぼ見られなくなりました。商業用不動産市場の低迷は、大手銀行への深刻な影響にはならないとみます。コロナ禍で始まった学生ローンの救済措置の失効や、住宅ローン金利の再上昇は、個人消費や住宅投資の重石となりますが、良好な雇用環境は維持されており、景気を下支えするとみられます。産油国の減産により原油価格は上昇していますが、天然ガス価格は落ち着いており、米国のCPIコア(消費者物価除く食品・エネルギー)の上昇率は緩やかな減速が続いています。

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米国テクノロジー企業の業績拡大

9月に公表されたFRBのドットチャートでは、2023年内に1回の追加利上げと、2024年はそこから2回の利下げの予想が示されました。市場の過度な金融緩和期待が高まるのを防ぐ効果とともに、長期金利の上昇を誘発しています。一方、企業の業績見通しについては、テクノロジー企業を中心に業績の拡大が予想されており、米国株式市場の支援材料となっています。

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テクノロジー産業は調整から復調へ

ユーロ圏経済は、外需の弱さなどから景気後退懸念が強まっています。インフレ抑制の焦点は利上げ幅から、高い政策金利維持の期間へと移っています。中国経済は、失業率の上昇や不動産開発企業の経営難など、様々な問題を抱えています。中国政府は金融緩和や住宅関連支援策など、矢継ぎ早に政策支援を発表しています。一方、中国の在庫調整は進展し、テクノロジー製品の中核となる半導体市場は、世界的に反転拡大へ向かいつつあります。

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日本では生産財に好転の兆し

日本では、自動車の輸出は好調ですが、製造業全般に挽回生産の加速局面は一巡しています。一方、生産財は在庫調整が進展するなど、好転の兆しがみられます。交易条件の改善は製造業の収益拡大要因で、円安はインバウンド需要を増加させています。名目賃金の上昇に対し、インフレを差し引いた実質賃金は2%近くのマイナスです。賃上げ圧力は強く、政府は賃上げや投資促進、物価高対策などを想定した経済対策を10月中に策定する予定です。

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日本企業の業績は上方修正へ

銀行貸出しは、貸出利率を高めつつ伸びも加速しています。長期金利は緩やかに上昇し、日銀は経済指標を確認しつつ、異例の金融緩和策終了の条件が整うのを見極める段階です。ただし、相対的には米日金利差は拡大し、円安が進んでいます。為替介入が警戒されるものの、円安は製造業を中心に業績の追い風となり、良好な経済環境の下で企業業績は上方修正に転じています。野村證券は2023年末の日経平均株価の見通しを34,000円と予想します。

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(野村證券投資情報部 小髙 貴久)

※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 10月号」(発行日:2023年9月25日)「投資戦略の概要」より

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