原油価格の上昇に対する懸念が広がっています。代表的な指標であるWTI原油先物価格(NYMEX・期近物、以下の文中では原油価格と表記)は、今年5~6月には1バレル=70ドル前後で一進一退の小動きとなっていましたが、その後上昇に転じると、今月に入って90ドルを超え、昨年7月以来の100ドル大台回復も視野に入ってきました。

原油高に歩調を合わせる形で米国長期金利(財務省証券10年国債利回り)も上昇基調を強めています。今月に入って昨年10月のピーク水準を超え、約16年ぶりの高水準となる4.6%台まで切り上がってきています。「インフレのピークアウト」→「利上げ打ち止め」→「利下げ転換」の楽観シナリオを描いていた株式市場にとって、「インフレ高止まり」→「利上げ継続」のリスクシナリオの顕在化に警戒が強まっています。

原油価格の上昇は一体どこまで続くのでしょうか?今回はサウジアラビアの供給削減策による需給逼迫懸念などが背景にあると考えられますが、原油価格は需要と供給のバランスだけでなく、産油国の政治動向や地政学的なリスクに対する不透明感の有無に加え、投機的な売買などにも影響を受けやすく、非常に予測が難しい一面があります。そういう意味では、チャート面から見た分析の方が、シンプルに原油価格の今後の展望を見通すことができるかもしれません。

過去のパターンを参考に、今後の値動きを予測してみましょう。まず最初に、今回の上昇局面(今年3月~)は、2022年3月高値(123.70ドル)から2023年3月安値(66.74ドル)までの下落に対する反発局面と捉えることができます。足元9月高値(91.48ドル)までの戻し率は43.4%と計算されます。

今回の局面との比較対象としては、①2018年12月安値から2019年4月高値にかけての反発局面、②2011年10月安値から2012年2月にかけての反発局面が、注目されます。いずれも歴史的な急落後の中期上昇局面に対して1/3~50%押しの調整をこなした後の最初の反発局面と位置付けられます。  

①の戻し率は70.2%、②の戻し率は89.1%でしたので、今回も同様の展開ならば、先行き半値戻し(95.22ドル)や2/3戻し(104.71ドル)を超え、2011~2014年の上値抵抗水準となった110ドル前後まで戻してもおかしくない計算となります。株式市場にとっては悩ましい相場環境が続きそうです。

テクニカル分析は過去の株価・為替等の値動きを分析・表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。また、記載されている内容は一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。

※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。

【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら

業種分類、Nomura21 Globalについて

ご投資にあたっての注意点