ガソリンスタンドと、付随する各種サービス業務を手掛けるSS(サービスステーション)業界は、ガソリン需要の減少や後継者不足等により市場が年々縮小している。生き残りをかけ、新たな可能性を模索する動きが見られ始めている。

国内のSS は2019年度末に3万件を下回り、25年間で半数以下になった。SS 市場の縮小は、経営者の高齢化や自動車の燃費向上が要因と見られる。国土交通省の統計では、ガソリン乗用車の燃費は21年度に24.6km /ℓと25年間で約2倍に向上した。

一般社団法人全国石油協会の22年度の調査によると、経営店舗数5店舗以下のSS事業者の30%以上が営業赤字であり、6店舗以上の事業者でも20%近くが営業赤字と厳しい事業環境である。また、同調査によると、全体の14.5%のSS 事業者は廃業または事業縮小を検討しており、事業拡大を目指すSS 事業者はわずか1.3%に留まる。

SS 事業者の多くは現状維持の方針のようだが、ガソリン需要の減少が続く中では現状維持すら難しくなる可能性も考えられる。今後は、事業の継続が困難となったSS事業者と事業の維持・拡大を目指すSS 事業者が、M&A(合併・買収)の買い手と売り手に分かれる可能性もあろう。

足元では、年300社ペースでSS事業者が廃業している。将来的に廃業を検討する事業者も少なくないことから、M&Aの対象先になり得るSS 事業者は一定数存在すると言えよう。M&A したSS を閉店し、跡地を複合レジデンスや飲食店、ゴルフショップ等に活用する動きも見られる。

また、登場までには時間を要すると見られるが、次世代のSS の事業形態を模索する動きもある。石油元売り最大手のENEOSホールディングスは、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池自動車)等の次世代自動車や、水素等の次世代エネルギーを軸とした、次世代のSS を構想している。

既に一部のSS 事業者は、積極的なM&A等による既存事業の強化や業容拡大に取り組んでいる。また、住民拠点SS(自家発電設備を備え災害時に地域の燃料供給拠点となるSS)の整備等で、SS の役割は再認識されつつある。SS事業者自身の取り組みや、次世代のSS に向けた自動車やエネルギー等関連業界の動向に注目したい。

(野村證券フロンティア・リサーチ部 草間 亮佑)

※野村週報 2023年10月16日号「新産業の潮流」より

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