リスク回避、原油高が続く可能性は限定的

イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの衝突を背景に、金融市場では株価の下落などリスク回避の動きが強まり、一部で悲観的な見方も出ています。

過去の中東紛争は、大規模な紛争や戦争を理由に安全資産への逃避が起こる地政学リスクと、産油国への攻撃やその関与による原油価格の高騰リスクという2点から注目されてきました。

地政学リスクについて考えると、欧米が戦闘に参加したイラン・イラク戦争や湾岸戦争では、金融市場におけるリスク回避が一時的に見られました。しかし、今回の衝突はイスラエルとハマス、そしてレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラを中心としています。両者の軍事力には大きな差があるため、一方的な戦闘になる可能性が高いと見込まれます。そのため、米軍の介入の可能性は低く、欧米が紛争当事国にならない以上は、株価の調整は一時的と考えられます。

イスラム教国やアラブ諸国がイスラエルと戦火を交える可能性も低いでしょう。イスラエルは事実上の核保有国であり、報復のリスクを考慮すれば、多くの国が参戦を避けるとみられます。また、イスラエルに隣接するエジプトやヨルダンは既にイスラエルと和平を結んでおり、サウジアラビアなどの湾岸諸国も米国の支援などと引き換えに、イスラエルとの関係を改善してきました。イランの主導によるイスラエル包囲網に参加することには慎重な立場を取っていると思われます。

一方、イランについてはハマスへの支援を表明していますが、イスラエルとは直接の国境を有していないため、地上戦への参加は難しいでしょう。また、イラン国内の経済低迷やインフレにより国民の不満が高まっており、イスラエルとの交戦は体制の不安定化を招きかねません。イランが参戦するリスクも限定的でしょう。

原油価格の高騰リスクも限定的です。産油国の関心は石油収入の最大化であり、アラブ諸国がイスラエルを支援する西側諸国を制裁するために原油価格を政治的理由で引き上げる可能性は低いでしょう。さらに、ガザ地区は産油地帯ではなく、石油の輸送路からも離れています。また、イランへの制裁強化については、イランに対する米国の金融制裁はすでに実施されており、各国がイランから正規に原油を輸入することは難しくなっています。

(FINTOS!編集部)

要約編集元アナリストレポート「政治レポート – 中東情勢:パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘拡大の金融市場へのリスクを考える(2023年10月13日配信)」(プレミアムプラン限定)

(注)画像はイメージ。

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